【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

29 / 387
 [2025/11/19]一部の台詞を変更しました。一部加筆修正しました。


029. 私は探検家のスコア・パグキーパー。貴女のお名前を伺っても宜しいですか?

 四人目の仲間候補であるラリーとの挨拶を終えたトピアとサティの二人だったが、その挨拶の中に気になるワードがあった。

 

サティ≪()()()()()っていうことはもしかして他にも知ってる?≫

 

ラリー「おお、しっかり気づいたな。お察しの通り俺の他にもう一人いるぜ。今そいつの拠点に世話になってる」

 

 サティ達の読み通りの反応であった。つまりそれが五人目である可能性が高い。

 

サティ≪その人も紹介して貰うことは出来るかしら≫

 

ラリー「んー? まあいいんじゃねえか? 仲良くなれるかは保証出来ねえけど」

 

サティ≪そこはこっちで努力するわ≫

 

ラリー「おう、頑張ってくれ」

 

トピア「それでその、拠点というのはどちらに?」

 

 トピアの問いに対し、ラリーは下を指さした。

 

ラリー「大体-1,500くらいだな」

 

サティ≪……単位は?≫

 

ラリー「フィートだが? ああ、海抜高度な」

 

 返答を聞いたトピアが微妙な顔つきになった。サティも同様であろう。

 1,500ftなら約457mなので思ったより深くはないが、問題はそこではない。機材の規格だ。遂にヤード・ポンド法の刺客が出現してしまったのかと考えると気が重くなる。ヤード・ポンド法はいずれ滅ぼさねばならぬが、今争っている場合ではない。

 

ラリー「どうした?」

 

トピア「いえ、ご案内いただけますか?」

 

ラリー「よし、ついてこい。こっちだ」

 

 言うなりラリーは箒に乗って宙に浮いた。

 

トピア「おお、魔法の箒ですか」

 

サティ≪やっぱり魔法側なのね≫

 

 トピア達の反応に、ラリーは振り返って問う。

 

ラリー「何だ、魔法が珍しいのか?」

 

トピア「私は別系統の魔法なら使えますね」

 

サティ≪科学文明圏の私には珍しいわ≫

 

ラリー「そうか、まあ後で詳しく聞こう」

 

 

◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■

 

 

 地下洞窟を辿ってラリーとトピアは深い地の底へと潜っていった。地下には様々なバイオームがあり、一面氷の世界であったり、青く光るきのこが辺り一面に生えていたりと見たことの無いものばかりであった。問題はそれがラリーにとっては既知のものであるということで、つまり先ほどの赤い森やクトゥルフの脳(Brain of Cthulhu)も含めてラリーの元いた世界から来たものらしい。

 ただそれらを総じて素材と見なしているのは理想郷の建設者(クラフトピアン)にも通じるところがあった。ちょっと違うところがあるとすれば、鉱石や石や砂だけでなくあらゆる土壌まで素材扱いすることであった。

 なおラリーがクトゥルフの脳(Brain of Cthulhu)という言葉を発した際に、発音的にはBrain of Cthulhuと聞こえながら同時にクトゥルフの脳という意味が伝わってきており、やはりアヌビス神と同じ魔法的な翻訳であると実感出来るものであった。

 

 寄ってくる敵はコウモリやスライム、スケルトンなど色々いたが、やはり今のところ大した強さではなく、接近する前にラリーが障害物を貫通する一撃で倒していたのでトピアの出番は無かった。このやたら強い魔法の剣はゼニス(Zenith)と言うらしく、やはり大地の冒険者(テラリアン)の間でも最強と名高い武器のようだった。

 

 ラリーは時折見つけたと言っては洞窟の壁につるはしを突き立て、鉱石を掘り当てていた。聞くところによるとあの触手目玉、怪しげな目玉(Suspicious Looking Eye)が壁を透過して鉱石のありかを示してくれるそうで、注意して見てみれば確かにそれらしい発光エフェクトがトピアにも見えた。

 この怪しげな目玉(Suspicious Looking Eye)は暗がりを照らすための光源ペットというものらしく、光源ペットとは別に普通のペットであるフェネックギツネ(Fennec Fox)もついてきていた。こちらは普通に可愛い。耳を羽ばたかせて飛ぶので本当にフェネックギツネ(Fennec Fox)であるかは疑わしいのだが、触手が生えた目玉に比べればさしたる問題ではない。普通のペットとは……?

 ならばとフェネックギツネ(Fennec Fox)のように可愛い光源ペットがいないのかを尋ねてみると、一応いるにはいるが、目玉よりも性能が低いので選択の余地が無いのだそうだ。無念である。

 

 ところでトピアは素材を採掘したり壁を壊したりするのにはつるはしを使っているが、本格的に穴を掘るのに使ったことは無かった。ラリーに勧められて試しに周辺の壁に自前のつるはしを突き立ててみると、あっさり崩すことは出来たのだが天井や壁が安定せず崩落の危険がつきまとうという難点があった。土壌の堅さやかかっている力の方向を見抜いた上で天井や壁を崩さないように、ご丁寧にきっちり水平・鉛直の平面を出しながらトピアより高速で掘り進めているラリーの技量の異常さが窺えるというものだ。何なら最低限支える柱だけを残して周囲を掘削し赤い森のエリアを隔離することも可能だそうで、やはり大地の冒険者(テラリアン)の肩書きは伊達ではなかった。

 ここで赤い森についてサティが疑問を差し挟んだ。

 

サティ≪待って、もし隔離しないとどうなるの?≫

 

ラリー「おう、段々侵食して周囲に広がっていくぞ。石、砂、草経由で広がっていくから、侵食されない鉄やガラスの素材で柱や橋を作って地面から浮かせてやれば大丈夫だ」

 

サティ≪トピア、あなたそんなこと出来る?≫

 

トピア「無理ぃ」

 

 人力での採掘には自信のある理想郷の建設者(クラフトピアン)であっても、このような職人芸は簡単に真似出来るものではなかった。

 

サティ≪あともしかして紫色の方も侵食して広がるの?≫

 

ラリー「お、もう見つけたのか。そうだぞ。その紫色の不浄(The Corruption)とこの上の真紅(The Crimson)、あとまだ無いかもしれねえが草が真っ白で虹が架かってる聖域(The Hallow)の3つはほっとくと広がってくから早めに対処した方がいい」

 

 第3の侵食領域が話題に出てきたが、ラリーが言う条件に当てはまるエリアは今のところ衛星観測でも見つかっていない。まだ無い、ということは恐らく後で出現するのだろう。それに同じ侵食領域でも他に比べると呼び名に悪いイメージが無いという違いがある。

 

サティ≪聖域? 悪いものには聞こえないけど、それも排除対象なの?≫

 

ラリー「他と違って普通に人が住める分だけ害は少ないんだが、環境を侵食するから最低でも隔離はした方がいい。んでこいつら3つの対処方法は今言った隔離、浄化の粉(Purification Powder)環境変更液(Solution)を使っての浄化、もしくは汚染された土壌が全部無くなるまで掘り尽くすの3つだな」

 

トピア「3つの侵食領域の浄化……サティ姐さん、外敵駆除と別に環境浄化というミッションカテゴリがありますけど、4種類あって1つが全てのハイヴの攻略なので残り3つがこれのことでは?」

 

サティ≪なるほど、可能性は高いわね≫

 

ラリー「何の話か分からんが、そろそろ到着だぞ? ここから落ちるから注意しろよ」

 

トピア「えっ」

 

 下向きの穴からラリーは箒に乗ってするりと出て行ったが、その下の地面は30mほど下に見えた。話に気を取られていたトピアはその穴に足を滑らせて落ちた。

 

トピア「オウッ……とおォ!?」

 

 とはいえいつものように落着寸前に空中ジャンプで勢いを殺してトピアは地面に軟着陸を試みた。しかし空中ジャンプで前転の勢いが付いたため、足を滑らせて盛大に転んだ。

 

ラリー「おう、大丈夫か? ここ滑るからな?」

 

サティ≪ちょっと大丈夫トピア?≫

 

トピア「うう、ダメージは軽微です。……一体何ですかこれ?」

 

ラリー「スライムの地面というらしいぞ。この辺りの常識については俺もよく知らん」

 

 見れば辺り一面が赤いスライムまみれになっており、滑りやすいのも当然と言った有様であった。落下音に気づいたスライムがこちらに寄ってきてはラリーに蹴散らされている。

 スライムまみれの地面は幅広の道として弧を描きながら遠くまで続いているようだった。しかし人が作った道ではないのなら、何かの通り道だろうか、何か……巨大な生物の。

 などとトピアが考えていると、いつぞやのように遠くから地鳴りが聞こえてきた。まさかと思いそちらを見やると、巨大な蟲が向こうから迫ってきていた。芋虫風のシルエットを成す山吹色の甲殻に青く光る一本角と硬そうな多数の黒い脚。

 

トピア「あれは……?」

 

ラリー「ああ、あれがここを周回しているっていう奴だな。俺も初めて見たな」

 

 どうやらあれがこの道を作った巨大生物のようだ。しかも何度も周回してここまで整えたらしい。熱心なことだ。大きさや突撃速度は突撃(デストロイヤー)級には遠く及ばないようだが、脅威度は不明だ。

 ラリーがゼニスを構えるが、まだ間合いには入らないのでそのまま待機。

 トピアはどうにか立ち上がってヒルデブラントを構えたが、足元がやや不安なのでノックバックを無効化出来そうに無い。ジェットパックで飛べば足元は関係ないが、理想郷の建設者(クラフトピアン)は空中での攻撃手段が限られてしまうという難点があった。

 まあ例によってラリー一人でも何とかなりそうだし最悪見送る手もあるので、あまり攻撃を考えずに上空に退避してもいいかなと思っていると、通路の横手から飛んできた光の矢が次々に蟲に突き刺さり、ヘイトがそちらに向いたと思う間もなくほんの数秒で蟲が爆発四散した。

 巨大な蟲を仕留めた人物。金色の弓を肩にかけた、ラリーと似たような茶髪ツンツン頭で赤いシャツにサスペンダー装備の男は、悠然とトピアに歩み寄って笑顔で手を差し出しながら名乗りを上げた。

 

サスペンダーの男「やあ大丈夫でしたか素敵なお嬢さん? 私は探検家のスコア・パグキーパー。貴女のお名前を伺っても宜しいですか?」

 

 イケメンっぽい台詞だが顔がフツメンなので微妙に似合っていないのが残念だった。

 男の不自然な態度に同じフツメンのラリーが何か気づいたようだった。

 

ラリー「あっ、こいつ出てくるタイミング伺ってやがったな? 好感度稼ぎか?」

 

サスペンダーの男→スコア「なっ、何を言うんだね君ィ! 言いがかりはよしてくれたまえよ!」

 

ラリー「オメーさっきまで英語で喋ってただろうがよ。何で突然日本語で話しかけてくるんだよ」

 

スコア「そ、それはァ……」

 

ラリー「それは?」

 

 言い淀んだスコアに対してラリーが重ねて問う。スコアは少し考え込んだ後で言葉をひねり出した。

 

スコア「きょ、今日は日本語の気分なのだよ!」

 

サティ≪ダウトね≫

 

トピア「これは厳しい」

 

 マーカーが味方と示している推定五人目の(マイスター)は、トピアにもバレバレなくらいに目が泳いでいた。




 本作に登場するキャラのゲームシステムはSteam版を基準にしていますが、TerrariaのSteam版は日本語に正式対応しておらず、プレイヤー製の日本語パック(非公式)やチュンソフト版の和訳(平仮名が多い)など対訳が色々と存在するため、Terrariaの固有名詞についてはラリーの台詞と地の文で元の英語をルビで併記します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。