【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

290 / 387
290. 水くさいぞタケルよ!

ターニャ「失礼、その万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)Mk.3とMk.3/Sの完成度は?」

 

 第3世代仕様になり憑依(ポゼッション)モードという新たな機能を付与された新型万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)だが、ワープエンジンからの機能解放版に過ぎないとはいえ、ここ1時間ほどで作ったものの筈だ。その動作信頼性についてターニャが確認を求めた。

 

夕呼「ロックがかかっていない世界でのテストまでは終わってるわ」

 

ゼメキア「そこは儂が保証する」

 

ターニャ「……ならば言うことはありません」

 

 夕呼以外に品質保証課長のゼメキアも太鼓判を押したので、ターニャも最低限必要な信頼性はあるだろうと認めた。まあ実際に防壁世界に突入出来るかはやってみるしかないが。

 

マイン「生産部、その第3世代型万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)の生産ペースはどうなる見込みだ?」

 

 第3世代型万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)の生産ペース、手元に揃う数によって展開出来る作戦が変わってくる。つまり現状でのボトルネックになりうると見たマインはその生産ペースを確認した。

 

サティ「ワープエンジンのライン拡張の話は先にこちらに来ていたから、既存ラインの転用で轟雷用の全数は1時間かからずに生産出来るし、艦船用は今日中に1(けい)、明後日までには10(けい)に届く見込みよ」

 

ボルクロ「じゃの」

 

 僅か3日で10(けい)もの万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)Mk.3を生産出来るのは既にインファクトリ級と同じ3000兆個/日の生産力を発揮しているワープエンジンMk.3製造ラインを転用するからだ。

 そしてラインの転用がこうも簡単なのは、工作機械が単機能型ではなく、設計情報を入力してそこから選択する方式になっているからだ。無論設計情報の追加と生産するものの変更も即時出来るように製造管理システムを組んである。また、作るのに必要な材料も同世代のワープエンジンと殆ど差が無いのと、原材料をストレージロジスティクスを介して移動させているために流量調整もほぼ必要ない。

 

マイン「ふむ、上々だな」

 

 そのペースならば考え得るプランの中でも迅速かつ確実な部類の作戦展開が可能だとマインは満足げに頷いた。

 

スコア「流石は生産部長と次長だな。ぬかりない」

 

フガル「そのペースなら天の川銀河周辺は余裕でカバー出来ますね」

 

 天の川銀河の恒星の数が約3000億、恒星系1つにつき10隻として3兆隻程度派遣出来れば並行世界1つ分くらいは即座に状況確認とハイヴ制圧が出来る筈だ。天の川銀河以外を含めてもまあ5兆隻あれば余るだろう。防衛すべき並行世界の数が少なければ、それぞれその10倍の100隻ずつ送ってもいい。

 匠衆(マイスターズ)加盟文明の保護に限るのなら救援を送るべき星系の数は200もなく、文明成立未満の生物が存在する恒星系を含めても3000億よりはるかに少ないのだが、ここで以前も出した天の川銀河周辺の勢力図を見ていただきたい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 この星図だと天の川銀河の(とも)座方向において太陽系、バーナード星系、グ・リグ・リストン星系がBETA進出の最前線でそれより(とも)座方向に進むとBETAによる侵略が随分前に終わっており、そこにあったはずの文明が生態系ごと完全に壊滅していることが分かる。

 しかしBETAが天の川銀河に来ていない世界と来ている世界が統合されると、前者世界では壊滅していない文明が突然BETAに襲われることになる。なのでそれを考慮に入れて銀河全体をチェックし、必要とあらば救助するのだ。

 まあBETAと遭遇すれば何千万年前に滅んだ筈の文明が滅びずにそれからずっと続いて発展したなら、もしかすると自力でBETAを撃退出来るかもしれないが。

 

夕呼「それで代表、万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)の製造許可は戴けるかしら?」

 

トピア「ええ、非常事態ですからね。今すぐ手配してください。但し全損以外の紛失を出さないように管理をお願いします」

 

 今までは悪用されないように万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)を全数管理かつ許可無しの製造を禁止としていたのだが、今回の場合はそんなことは言っていられない。トピアは全数管理の継続を条件に許可を出した。実際には製造番号タグと航行ログ自動提出機能を付けての管理になるだろう。

 ただでさえ数が多くなる上に戦闘で被害が出ると益々全数管理は難しいが、問題のBETAが片付いても万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)が悪用されればまた別の戦争が始まりかねないという頭の痛い問題は匠衆(マイスターズ)幹部陣全員で共有されている。

 

サティ「了解よ」

 

 サティとボルクロが頷き、夕呼から設計データを受け取って手元の端末でラインの転換作業に入った。

 

夕呼「防壁世界へ轟雷で突入する際には必要機材を一緒に持ち込んでもらうわよ。具体的にはこれね」

 

 夕呼が持ち込み機材の一覧を画面に出した。

 

・迅雷

・轟雷

TOM(トム)×400機以上

・蒸着装置Mk.2

・楔の塔

・00ユニット保護用アタッチメント

・時空観測機能付き携帯通信機

・魔導演算宝珠を含む白兵戦用装備品

ロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)

・Gイレイザー

 

 従来種に比べ性能が100倍の強化型BETAが存在する場合、現地の戦術機を使ってハイヴを攻略するのはおよそ不可能といえるが、迅雷四型を持ち込めるのであれば魔導衛士にとってそれほど難しいことではない。

 轟雷は質量が大きすぎ、地上では攻撃力が過剰なので基本的に使用禁止、というのが一般的な運用だが、潮汐力キャンセラーをOFFにしない条件付きで今回は使用が許可される予定だ。轟雷ならばハイヴの中に入らずに攻略が可能であるため、時間的猶予が無い状況ならばこちらの方が有利だからだ。

 

夕呼「00ユニット保護用アタッチメントはこれよ。見た目通り、頭に装着するだけでいいわ。効果はODLの継続的自動浄化と、並行世界接続の停止。装着した状態で凄乃皇(すさのお)の制御が可能な程度の演算リソースも確保してあるけれど、凄乃皇(すさのお)操縦中に装着すると混乱して重力制御が乱れるからやめた方がいいわよ」

 

 夕呼は00ユニット保護用アタッチメントをインベントリから取り出してテーブルの上に出した。

 ODL自動浄化機能については、40年以上未来の対話の時代では継続的に稼働可能な00ユニットが存在するので、並行世界の情報を得た夕呼がそこの技術を流用して00純夏を助けられるように外付けアタッチメントとして作ったものだ。並行世界接続の停止に関しては、折角00純夏を救助しても並行世界接続が有効なままでは敵本拠地に情報が筒抜けになってしまうためにその機能を一時停止させるということだ。00ユニット自体を停止させるわけではない。

 なお見た目はヘッドフォンのようになっており、両耳部分に『左右兼用』と書いてある。逆装着事故に配慮した形なのだろう。

 

ステーク「なるほど、これなら装着が簡単そうで助かります」

 

トピア「楔の塔は完成状態で持ち込むのが難しそうですが、それについては?」

 

 楔の塔は完成時で基礎の最下部から魔導アンテナの頂点まで、長軸が120mを若干超えている。これを何とかするためにコンパクトな未完成状態で持っていくと、完成させるための素材が大量に必要になるという問題がある。それに加えてその前にレガシー方式で時代を7段階目まで進める作業まであるならば、全部の素材を持ち込んだとしても作業に掛かる時間は割と馬鹿にならない。

 120m問題に関して、轟雷を入れている迅雷四型の兵装担架は、7番スロットだけ轟雷を入れるため240mまで格納出来るが、他のインベントリスロットはそうなっていない。

 また、迅雷の兵装担架に轟雷を収納した状態でインベントリに入れようとすると、収納がマトリョーシカのような入れ子状態になる。7番スロットだけはこれが出来るように特別仕様になっているが、これも他はそうなっていない。

 

夕呼「兵装担架をアップデートして完成状態の楔の塔が入るようにするわ。スタックや入れ子も可能にするから期待してくれていいわよ」

 

トリオ「インベントリの研究をあれからも続けておったのが役に立ったの」

 

 上述の問題を一挙に解決するために、インベントリの方の性能を上げるというのが提示されたアンサーであった。技術本部の頼もしさにトピアは深く頷いた。

 

テクス「アヌビス様、7つの楔の塔はどこに建てても問題無いのでござるか?」

 

アヌビス神「XX,XXX. XX,XXX,XXXX(敵本拠地との関係から、地球に建てる必要があるだろう。地球上のどこに立てるべきかは、星の状態と周囲の世界との繋がりようによって決まるが、完成状態の楔の塔を持ち込むならば設置すべき位置は光の柱による可視化が可能だ)」

 

夕呼「じゃあ迅雷や轟雷のマップデータベースに光の柱の位置を記録するようにするから、それに従ってちょうだい。地球一周くらいは轟雷なら数秒で終わるでしょう」

 

グレーテル「加護や身体能力についてはどうなりますか?」

 

夕呼「重ね合わせでこちらの状態を優先して憑依(ポゼッション)させるからそのまま使えるわ。これも()()()()()よ」

 

ステーク「夕呼先生、最初の防壁世界突入は俺に任せてもらっていいですか?」

 

 作戦上必要とはいえ、折角救った大切な人達に何度も死んだ記憶をわざわざ植え付けるのは、ステークとしては気が重い。それに防壁世界への憑依(ポゼッション)突入はテスト出来ていないので、むしろBETAとの戦闘よりも未知の危険がつきまとう。

 何とか()()()だけでも免除出来ないかと考えて、それはただのえこひいきだと却下し、ならば自分が初期リスクを肩代わりすればよいのではないかという結論になったのだ。ステークは因果導体だった頃に憑依(ポゼッション)の経験がある。適任だろう。

 

夕呼「ああ、白銀、初回にあんたが参加するのは止めないけど、()()()()()()()()()とチームを組んでもらうわよ? ……あんたたち、そろそろ入ってきなさい」

 

ステーク「えっ、いや、オレは一人でも――」

 

 ステークが反論しようとした所で、会議室の扉が開いて夕呼が呼んだ人員が入ってきた。

 

冥夜「水くさいぞ()()()よ!」

 

美琴「そうだよ()()()!」

 

千鶴「あまり私達を甘く見ない事ね、()()

 

壬姫「私達は置いて行かれるほど弱くないですよ()()()()()!」

 

慧「()()、今更仲間はずれは酷い」

 

ステーク「お、お前達()()()!?」

 

 夕呼と同じく、突然昔の呼び名に戻った彼女達の言葉に、ステークはその意味を察した。

 

夕呼「ええ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼女達には先行して第3世代型万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)憑依(ポゼッション)()()()になってもらったわ」

 

 ステークは絶句して夕呼を仰ぎ見た。その表情には『白銀が反対しそうだったし』と書いてあるように見えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。