【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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293. 単機でこれだけのことが出来るのなら、一体何のための作戦だったのだ!?

武→ステーク「()()()()()()()……確かにオレが一番寝坊していたようだな。スマンみんな、助かった」

 

 憑依(ポゼッション)による並行世界の意識が完全に覚醒したことで、ステークはやるべきことを認識した。

 並行世界の侵略を開始したBETAを何とかするため、三千世界作戦(オペレーション・オーバー・ザ・ワールド)の第1段階ではまずBETA本拠地世界の防壁になっている世界の1つにステークを含む六人が憑依(ポゼッション)モードで突入し、この世界の地球のハイヴを壊滅させる手筈だった。

 憑依(ポゼッション)実行前に聞いてはいたが、こちらの防壁世界では桜花作戦(オペレーション・チェリーブロッサム)が始まった所だ。突入メンバー六人が一箇所に固まって作戦行動していることと、介入可能な時間的猶予が無いことからこの世界が選ばれたのだ。

 実際、ただでさえ一か八かの桜花作戦(オペレーション・チェリーブロッサム)にBETAの100倍強化まで加わって、先ほどまでは喀什(カシュガル)ハイヴ一つ落とすのも絶望的だった。

 しかし、意識が切り替わった瞬間に今度は全員の憑依(ポゼッション)さえ成功したなら後は楽なものだと思っていることに若干の違和感を覚える。まあそれだけ手持ちの戦力が桁違いということなのだが。

 

冥夜≪どうだ、我らも頼りになるであろう?≫

 

ステーク「全く冥夜の言う通りだな」

 

 冥夜が渾身のどや顔を見せつけているが、ステークには反論の余地が無い。

 同時に突入した筈だったが、憑依(ポゼッション)した意識が覚醒するまでに思ったよりも時間が掛かってしまい、冥夜達がいなければ危ない所だった。憑依(ポゼッション)が馴染むまでの時間には個人差があり、冥夜達は特に優秀な方だと聞いていたが、まさか自分が守られる側になるとは。

 いや、危機感を覚えると覚醒が早まると聞いてもいるので、土壇場で何とかなったかもしれないが、その場合軌道艦隊の犠牲はもっと多かっただろうし、純夏の負担も大きかっただろう。

 

ステーク「……霞、すまないが地上到達までもう暫く現状維持するように純夏に伝えてくれるか?」

 

 ハイヴの攻略をするだけならもはや降下する必要も無いのだが、問題は凄乃皇(すさのお)を停止出来る環境だ。

 ステークはこの時点で00純夏が大分無理をしていることを知っている。しかし凄乃皇(すさのお)のラザフォード(フィールド)を展開したまま保護アタッチメントを装着するのは危険と言われているし、宇宙空間や大気圏突入中に三人で乗り換えるのも危険だ。だから一旦地表まで降りる必要があった。その際安全のために当然周囲のBETAは殲滅する。

 

霞「……はい。純夏さんも現状の戦力なら喀什(カシュガル)の……いえ、全ハイヴの攻略が可能だと言っています」

 

ステーク「だろうな。すまないが()()()()()()のために事情は後で説明することになる。……こちらA-04! 軌道艦隊は当初の予定通りに安全圏に離脱してください!」

 

ネウストラシムイ艦長≪何だ、今こそが好機ではないのか!? あとその護衛のやたらでかい武御雷(Type-00)は一体何なんだ!? 帝国軍の秘密兵器がA-04以外にもあったのか!?≫

 

 通信を繋ぐと、ステークは旗艦ネウストラシムイの艦長から質問責めにあった。

 デザインの方向性が似た轟雷は、軌道艦隊からは巨大な武御雷(たけみかづち)、日本帝国軍の秘密兵器と認識されているようだった。先ほどまでの武も最初は武御雷(たけみかづち)だと思っていたのだから無理も無い。何しろ元々の武御雷(たけみかづち)そのものですら全く量産に向かない秘密兵器のようなものなのだ。

 

ステーク「その護衛が()()()()()()()()()()()()()! ここまでありがとうございました!」

 

ネウストラシムイ艦長≪は!?≫

 

 ステークは最低限伝えるべきことを伝えたとみなし、質問への回答を先送りにした。

 

千鶴≪よし、鎧衣はH01喀什(カシュガル)から順に、彩峰はH20鉄原(チョルウォン)から逆順にハイヴを潰していきなさい。この状況なら軌道上から轟雷で攻撃した方がいいわ。戦線補助のためのTOM(トム)投下、それから潮汐力キャンセラーの維持を忘れないように! 残りは私と一緒に凄乃皇(すさのお)四型と軌道艦隊の護衛よ≫

 

 先ほどまでに比べれば散発的とはいえ、BETAによるレーザー攻撃はまだ続いている。そのためハイヴ攻略とは別に護衛を残す必要がある。

 順や逆順というのは、かつて匠衆(マイスターズ)が地球のハイヴを攻略した際の順路を基準にしたものだ。H21佐渡島とH22横浜は既に頭脳(ブレイン)級を破壊済みなので、順路の最後にして逆順の最初がH20鉄原(チョルウォン)になる。

 つまり一本道のルートを両側から辿ることで全ハイヴの合計攻略時間を半分に短縮出来るという算段だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

美琴≪わかったよ!≫

 

慧≪了解ボス≫

 

 元気よく返事をした美琴が瞬時に喀什(カシュガル)ハイヴの地表構造物(モニュメント)直上に移動した。

 一方、慧の轟雷は雷速機動のマッハ440で大気圏を離脱し、そこから時空勾配推進で亜光速に加速してH20鉄原(チョルウォン)地表構造物(モニュメント)直上500kmへと到達した。

 大気圏離脱で雷速機動を使うのは、魔法的に加速しているため大気との相互影響がほぼ無いという特性を生かした形だ。大気圏外ならば時空勾配推進の方が速い。鉄原(チョルウォン)ハイヴまで5,000km強ほどの距離なので、直接雷速で向かうならば約35秒、今回の組み合わせならば高度500kmまでの上昇に雷速で3.5秒、鉄原(チョルウォン)上空500kmまで1秒の合計4.5秒で到達出来る。

 

 両者は位置についた所でバリアを張ってレーザーを防ぎつつ、轟雷の肩関節を正面に固定。左右肩アーマーを展開して外向きに畳まれていた8mほどの1対の砲身を正面に向けた。

 

美琴&慧≪グレート……ブラスタアァァァーッ!!≫

 

 美琴と慧が叫ぶのと同時に轟雷の両肩からまばゆい光とともに膨大なエネルギーが放たれ、地表構造物(モニュメント)からハイヴの最深部までを瞬時に()()()()

 グレートブラスターは操作が四肢によらない内蔵型武器なので、発射は音声をトリガーにするのが推奨されている。武装配置はダイゼンガーのゼネラルブラスターと同じ肩内蔵型だが、名前がグレートマジンカイザーやマジンエンペラーGの必殺技と同じなのはトピアの趣味だ。

 原理的には凄乃皇(すさのお)と同じ荷電粒子砲で、構造としては艦載用のMeisters 荷電粒子砲Mk.3 Type G/Mとほぼ同じ物だ。つまり敵を殲滅するまで延々撃ち続けることが出来る。威力は2.5倍モードで19.8PW = 1980兆DPSになる。Mk.2の8倍の威力になっているのはマハトラ=ミエデ 二重帝国のビーム砲の技術を取り入れたためで、それでも轟雷の武装の中では()()()()()()な攻撃力なので、周囲への余波をあまり気にする必要が無い。

 荷電粒子砲を肩に装備したことで腕の自由度が制限されてしまっているが、これは胴体に内蔵することで縮退炉を内蔵する胴体の強度が下がるのを避けたためだ。

 対珪素生命体(シリコニアン)文明戦でこのグレートブラスターに全く出番が無かったのは、まずレーザー砲と同じ純科学射撃兵器なので術式による威力倍率が乗らない。更に射程が精々数百km程度しかないので、宇宙で艦隊戦に使うにはあまりにも短いからだ。だがハイヴ相手に使うならご覧の通りの御無体な威力を誇る。

 逆に魔導銃剣を使わないのは、こちらはラストプリズム(Last Prism)同様に地形に遮られた標的に対する攻撃に向いていないからだ。

 

美琴≪あ号標的撃破確認! 次はH06エキバストゥズだね! 行ってきます!≫

 

慧≪鉄原(チョルウォン)攻略完了。次はH18ウランバートルだね。行ってくるボス≫

 

 言うやいなや美琴機は雷速で大気圏を離脱し、慧機は残敵掃討のためのTOM(トム)をばらまいてから次のウランバートルへと向かった。

 

ネウストラシムイ艦長≪な……荷電粒子砲を内蔵しているのか! まさか5機ともか!? しかも攻撃、防御、速度、全ての性能がA-04を超えているのではないか!? 単機でこれだけのことが出来るのなら、一体何のための作戦だったのだ!?≫

 

ステーク「あ、すみません。さっきまでは出来なかっただけです。そのあたりは後で説明します」

 

 戦況が好転したのはいいのだが、決死の覚悟で挑んだ桜花作戦(オペレーション・チェリーブロッサム)が突然茶番と化したことに、国連宇宙総軍第3艦隊を率いるネウストラシムイの艦長は覿面に狼狽していた。

 ステークはそれをどうフォローするかを悩み始めていた。トピアからは三千世界作戦(オペレーション・オーバー・ザ・ワールド)を阻害する政治的事情は全て無視して良しとのお墨付きを貰っているので、妙な誤魔化しをする必要が無いのは助かるのだが。

 いや、それよりも今は純夏だ。なるべく早く救出するべく、ステークはインベントリから周辺掃討用のTOM(トム)を大放出しながら凄乃皇(すさのお)四型を地上へと降下させていった。

 今度は謎の蜘蛛型機動兵器が大量に湧いて出たことにまた周囲の味方機や味方艦から驚きの声が上がったので、ステークは慌てて味方の支援機であることを通達する羽目になった。

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