ステーク「純夏、無事か?」
00純夏「タケルちゃん……どうして……?」
純夏は目の前に突如現れた武に目を見開いた。
現在の
いや、こんなことが出来るのはこの世界の武ではない。首元に魔導演算宝珠Mk.4がぶら下がっていることから見ても、あの人類側本拠地世界でステークと名乗っている、修行で特に鍛えている武の方だ。
ステークを認識していることから、ステークには目の前の純夏に
それは特にこの00純夏だけに集中しているのではなく、純夏自身が積極的に各方面の00ユニットに記憶をばらまいているせいだろう。そのせいで戻ってこられなくなったのだが。
ステーク「どうもこうもあるか、
00純夏「わわっ!?」
一人で無茶をする、というのは、目の前の00純夏が武を因果導体にした責任を感じて無理をしていることの他に、BETAに
ステークにヘッドフォンのような装備を着けられた瞬間に接続が断たれて00純夏は驚きの声を上げたが、代わりに頭痛が急激に治まっていくのを実感した。
00純夏「何これ、すごい」
ステーク「ODLを継続浄化して、並行世界との接続を遮断する装置だってよ。あっちの世界の夕呼先生が純夏のために作ってくれたんだ」
00純夏「そっか、また迷惑掛けちゃったね……」
自分のために武や冥夜達だけでなく夕呼にまで手間を掛けさせたと聞いて、純夏はやや表情を暗くした。
ステーク「違う、そんなんじゃない」
00純夏「えっ?」
純夏が問い質そうと声を上げたが、ステークが正面からハグしたことでそれを遮られ、顔を赤くした。
ステーク「
00純夏「タケルちゃん……!」
冗談めかしながらも純夏を絶対に諦めないと再び宣言したステークを目を潤ませた純夏が抱き返し、抱き合う形になった。
ステーク「まあ、オレも悪かったよ。純夏の様子に気付いてやれなかったからな。許してくれるか?」
00純夏「そんなことないよ! だって、タケルちゃんはここまで来てくれたもん!」
ステーク「そうか? ……それなら聞いてくれ。オレ達は今、純夏を救出してあらゆる世界からBETAを駆逐する
00純夏「勿論だよ!」
ステークが純夏の肩を掴んで正面から問うと、純夏は二つ返事で了承した。
ステーク「ありがとうな。よし、まずは霞を連れて乗り換えよう。オレの迅雷と轟雷も持ってきてるんだ」
00純夏「うん!」
迅雷は元々複座になっているし、更に補助シートもあるので、三人で乗ることも可能だ。このまま不完全な
ステーク≪……そういった事情で、オレ達は並行世界から救援に来たわけです。夕呼先生ならBETAによる並行世界侵略のリスクは理解出来ると思います≫
夕呼「……そうね」
ネウストラシムイ艦長≪それで急にあんな戦力が出てきたわけですな。てっきり茶番に付き合わされたのかと思いましたぞ≫
横浜基地の中央作戦司令室で、この世界の夕呼がステークの話を聞いていた。司令室なので当然夕呼以外にラダビノッドやピアティフなどの面子も揃っている。
通信画面越しのステークの後ろでは無表情の霞とニコニコ笑顔の00純夏が話を聞いている。
夕呼としてはあまり気が進まないのだが、別の通信画面で軌道艦隊の艦隊司令も話を聞いている。これは説明すると約束したステークの意向による。
BETAによる並行世界侵略。それによる並行世界の論理和統合。軍事用の上位種であるGAMMAの技術を取り入れた性能100倍の強化型BETA。
世界間協力BETA撲滅機関
BETAの防壁を破壊するとともに人類側の防壁を構築し、同時に
夕呼としては頭が痛いどころの話ではない。当然00ユニットの鹵獲によってBETAに並行世界を認識させるリスクは考えており、人類文明の成長基盤を確保してからその脅威に対処する所までは視野に入れていたが、既にBETAによる並行世界侵略は始まっているという。
いや、少し前から謎の記憶が混入したり、死んだはずの人間が出現したり、一部のBETAが理不尽に強化されたりと、兆候はあったのだが。
それだけでなく、その記憶混入の少し前から00ユニットが並行世界のBETAの脅威を訴え始め、あまつさえ謎の高度技術情報を濁流のような勢いで夕呼に送りつけてきた。その中には核融合炉、縮退炉、時空勾配推進システム、ワープエンジン、
幾らか性能を妥協すれば実現可能なものもあったが、既に陽動が開始されていた
まあ今現在の00純夏にはそのような悲壮感は欠片も残っていないが。
本当は
自前のG元素と電力が豊富な米国に縮退炉の1号炉か2号炉を提供することで協力出来れば何とかなるかもしれないといったところだ。そういう意味では記憶の流入によって
ともあれ、そのあたりを加味してもステークの話に矛盾は無い。
しかしこの世界の人類が並行世界の人類による10
夕呼「で、あんたはあたし達にそれに協力しろって言うの?」
ステーク≪いえ、邪魔しないでもらえるだけで有難いですね。
政治的事情は無視して良しと許可されたステークが選んだ手段は、お馴染みの砲艦外交だった。相手の心象はともかく、政治の機微を理解する必要も無く手っ取り早くある程度交戦を抑止出来て犠牲を減らせるからだ。
まあそもそも現地に派遣出来るのが魔導衛士しかいないので、彼らに政治的手腕を期待する方がおかしいのだ。その中ではステークはましな部類だ。
ただ、これまでの武を知っている夕呼は少し意外そうな顔をした。
夕呼「……あのガキ臭い少尉が随分言うようになったじゃない」
ステーク≪まあ今は大将を任されてますんで≫
ステークが自分の階級章を指さしてアピールする。国連軍でも日本軍でもない、別系統のデザインだが、デザインの複雑さからそれなりに高い階級であることくらいは分かる。
要するにこのステークと名乗る武は、こちらに協力を要請しているのではなく、こちらの意志に関わらず作戦を断行することを宣言し、邪魔をしても損をするだけだと説明しているだけなのだ。
ラダビノッド「香月博士、にわかには信じがたいが、彼が言っていることは本当かね?」
夕呼「実際の性能からすると控えめなくらいですわ。最初に大量の技術情報を送りつけてきたことから、こちらを助ける意志があるのも嘘ではないでしょう」
ネウストラシムイ艦長≪こちらが見た限りでもそのくらいの力はあるでしょう。
ラダビノッド「そうか……」
地球全軍を簡単にノックアウト出来るなどという文言はむしろ夕呼達を脅しすぎないように控えめになっているくらいで、轟雷の設計情報を見る限り、あれは魔法と組み合わせれば一撃で地球を粉砕出来るトンデモ兵器だ。そもそもBETAより遥かに強大な
今
そもそも最終的に一つの世界に統合されてしまうのなら、今の自分も
夕呼「まあ分かったわ。現状からしてあんたたちを邪魔しても何の得にもならないって国連上層部には上申しておくけど、結論がどうなるか、末端がどう動くかまでは責任は持てないわよ?」
ステーク≪十分です、ありがとうございます!≫
結局の所何度考えても、夕呼が政治的事情をあれこれ考えるよりも、このままごり押しの砲艦外交を通してしまった方が事態は手早く解決するだろうという結論にならざるを得ないのだ。材料さえあれば建造可能な縮退炉をどうやって建造するかに思い悩むような政治的事情など、全部無視出来るのならそれに越したことはないのだ。
その上で、夕呼がステークの要求を通したとしても、上層部や末端には「相手がこちらの人間を傷つけたがらないという善意に付け込めばどうにでもなるだろう」「10