【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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295. あれ、中尉? 少し見ない間に機体がなんかでかく……?

オペレーター「楔の塔の稼働を確認、防壁世界1の通行が可能になりました! 突入部隊は全員無事、00ユニットの保護にも成功しています!」

 

 総旗艦インファクトリの戦闘指揮所(CIC)に設置された戦略情報統括センターで、担当オペレーターが指揮所を振り返って報告した。

 

トピア「上手くやってくれたようですね」

 

ラリー「だな」

 

 第一段階をつつがなく完了したことで、幹部達に安堵の空気が流れた。

 全軍を指揮するマイン・ストリアニューダ総軍大元帥がまずは出撃準備の進捗を確認する。

 

マイン「生産部、万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)の準備はどうか?」

 

サティ「万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)Mk.3の搭載は2100兆、各星系7,000隻までは進んでるわ。轟雷用のMk.3/Sは全機搭載完了」

 

夕呼「待って、憑依(ポゼッション)用の個別調整はあと5分かかるわ」

 

 轟雷に関しては各自の記憶と認識に左右される憑依(ポゼッション)の成功率を少しでも万全にするために、技術開発部の手で細かい調整が行われている。突貫だが、憑依(ポゼッション)要員はマブラヴ世界の地球出身者だけなので、人力で何とかなっている。

 現有戦力では敵に撃破される危険よりも憑依(ポゼッション)に失敗するリスクの方が遥かに高いのだから、この調整は待つべきだろう。

 

マイン「よし、偵察・救援艦隊を防壁世界1の各星系に規定数100隻ずつ投入! 足りない場合は上申せよ! 交渉が必要な場合は外務本部がフォローせよ!」

 

 基本的に救援部隊はBETAの駆逐と住民の救助に入りつつ敵意が無いことを自動音声でアピールするのだが、それでも不安が拭えない場合は外務本部の出番だ。特にこの世界に存在しない文明との接触の場合は自動音声では意思疎通が出来ないため、ESPか念話術式の使い手が必要になる。

 なお、防壁世界以外にも論理和統合が開始されている世界があるので、そこには既に救援部隊の派遣を開始している。規定数とはこちらに送っている数を基準としたものだ。

 

マイン「防壁世界突入部隊第2陣は、全員分の調整と最終チェックが完了次第憑依(ポゼッション)のカウントダウンに入れ!」

 

 第1陣の冥夜達が防壁の一角を崩してからの第2陣憑依(ポゼッション)は、こちらも同時突入を前提としている。相互ロックが掛かった防壁世界に同時に負荷を掛けることで突破をより容易にするためだ。

 技術的にも、現地での作戦遂行も、生産体制の調整においても、作戦はつつがなく進みつつあった。

 

 

 

 2001年12月29日。

 H21佐渡島に属していたと目される4万体を超えるBETA群が大深度地下を経由し東京都町田市に出現、国連軍横浜基地を襲撃した。後の世で言う横浜基地防衛戦だ。

 

門兵1「くそッ、制御室には絶対に近づけるな……ッ!!」

 

門兵2「速いっ……!」

 

門兵1「撃て撃て押し込まれるぞッ! 動きに惑わされるな!」

 

 横浜基地の地下深く、B33フロア。兵士達が反応炉制御室前にロッカーなどを並べて急場しのぎのバリケードを組み、そこに押し寄せるBETA、闘士(ウォーリアー)級をアサルトライフルで迎撃していた。彼らは全部で四人で、その中に普段は横浜基地の門番をやっているお馴染みのモンゴロイドとネグロイド、通称門兵両伍長も含まれていた。

 発端は地下深くの制御室から反応炉を停止させる危険な任務に代わりがきかない夕呼を行かせるわけにはいかないと涼宮 遙中尉が自ら立候補したことだ。彼ら四人はその涼宮中尉の護衛ということになる。

 闘士(ウォーリアー)級の防御力は高くない。彼らが構えるアサルトライフルの銃弾が十分通用する。ただし動きが素早く、複数に迫られて全てを迎撃するのは困難だ。

 

門兵2「――畜生ッ、()()()でこれか!? ……結局()()()BETAに喰われて死ぬのかよォッ!!」

 

 不幸中の幸いは、その中に強化型の闘士(ウォーリアー)級が混ざっていないことだ。見た目が体色程度しか変わらないのに隔絶した性能を誇る強化型BETAは1時間ほど前からユーラシア各地の戦線で観測されているが、H21佐渡島はそれよりも以前にG弾で壊滅させているため、佐渡島で生産されていたBETAは従来型のままなのだ。

 とはいえ、押し寄せるBETAに対して迎撃戦力が少ないので、従来型でも阻止するのは難しい。

 

門兵1「バカ野郎ッ!! 何しにここまで来たんだ、中尉を守れなきゃ基地そのものが全滅するんだぞ! 中尉にカッコいいこと言っちまったばかりだろうが! 銃弾が通じるだけマシだと思え!」

 

門兵2「へ……へへっ、そうだよな……もう後には引けねえよなァ……!」

 

門兵1「!!」

 

 門兵2が気を持ち直した所で、闘士(ウォーリアー)級の1体が跳躍してバリケードの突破を試みる。

 

門兵2「()()()()()()()()()()()()!!」

 

 このタイミングで闘士(ウォーリアー)級が突破を試みてそれが致命傷になることを()()()()()門兵2は、ここぞとばかりに銃弾を浴びせてその個体を沈黙させた。

 

門兵2「どうだッ!!」

 

門兵1「――いや次だ!!」

 

 突出した闘士(ウォーリアー)級を盾にするように、その影にもう一体の闘士(ウォーリアー)級が隠れており、まんまとバリケードを乗り越えたそれが、象の鼻のような前肢で随伴兵達を同時に二人蹴散らす。

 

門兵2「……ぐ……あ……ッ!」

 

 蹴散らされた内の一人、壁に叩き付けられた門兵2が吐血しながら呻く。幸いボディアーマーとヘルメットのお陰で即死はしていないが、決して状態は良くない。

 

門兵1「こっ……この野郎ォォォーーッ!!」

 

 バリケードの内側に侵入した闘士(ウォーリアー)級に門兵1がアサルトライフル弾をフルオートで浴びせる。しかし距離が悪い。次の前肢の一振りで胴を薙ぎ払われた門兵1も大ダメージを負った。

 

門兵1「が……っ」

 

 だが門兵1はただではやられなかった。攻撃を受けながら根性で闘士(ウォーリアー)級の前肢を掴んだ。彼らは衛士適性が無いだけで、その闘志は衛士にも引けを取らないのだ。

 闘士(ウォーリアー)級が振りほどこうとするが、()()()()()()()()()()()()

 

門兵1「()()()()()()()()……いてえ……な……! やれぇ!」

 

 闘士(ウォーリアー)級を掴んだ門兵1が視線で門兵2にやるべき事を促す。

 

門兵2「……うっ、ううう、うおおおおおおおおおおぉおぉォォーーーーーーッ!!」

 

 致命傷に近い大ダメージを負っていた門兵2は、門兵1の闘志に応えてアサルトライフルを拾おうとしたが、ひしゃげていたためそれを諦めた。その代わりに気力で立ち上がって闘士(ウォーリアー)級に()()()()()()()()()

 

 

 

 こちらは反応炉に面した制御室の内部。涼宮 遙中尉が非常停止手続きを試みていた。

 

遙「――……接続……確認……お願い、通って……!」

 

 当初の予定通りならもう停止作業は終わっているはずなのだが、肝心の非常停止プログラムで最終確認画面が()()()立ち上がらなかった。

 夕呼の指示でネットワーク管理画面を呼び出して接続状況を確認すると、やはり反応炉に接続するケーブルが断線していることが判明。その断線を反応炉室の不知火白銀機・速瀬機に修復してもらう必要があったため、かなりの時間がかかっていた。

 そうして修復後に再度非常停止画面を呼び出すと、今度は電子音が鳴って『停止コードを入力してください:』という文字列が表示された。

 一度も停止させたことがない筈なのにどうやって停止プロセスを確立したかは謎だが、恐らくBETAの代謝を低下させる酵素でも利用しているのだろう。

 

遙「……! やった……! α3涼宮よりHQ(ヘッドクォーター)! 非常停止プログラムにアクセス完了しました!」

 

 遙が喜色満面にHQ(ヘッドクォーター)へと報告を入れるが、残念ながらノイズしか返ってこない。()()()()()()。ここで戸惑っていると一手遅れる。遙は再確認もせずに作業を継続した。

 そもそも遙がこの停止作業に志願した時点で、記憶の流入は始まっていた。もたついていると目標達成前に死ぬことは既に知っている。()()()()()()()()()()()()()()()()。同じく記憶がある武達の作業も手早かったため、1分以上は短縮出来ている筈だ。

 

遙「これより反応停止プロセスに――」

 

 遙の背後で扉が開き、暗い通路から何者かが踏みこんできた。馬鹿な、()()()()

 入口の扉の向こうでは、随伴兵四名が同じく死の運命を知りながら決死の覚悟でBETAを食い止めていたはずだ。

 遙は出来る限りの速度と正確さでパスワードを打ち込み、認証実行と同時に振り返った。

 

遙「――伍長?」

 

 遙は振り返りながら祈るように伍長へ呼びかけた。

 だが遙の視線の先にあったのは、残念ながらいつもの両伍長の姿ではなかった。

 

 もぎ取った敵対者の頭をその手にトロフィーの如く抱え、遙に接近したそれらは――

 

 ちょっと見覚えが無いほど異様にバンプアップした半裸の肉体をサイドチェスト並びにモストマスキュラーで惜しげも無く見せつける、アルカイックスマイルと白い歯が眩しい無傷の門兵両伍長であった。

 あまつさえ、大胸筋をぴくぴくと動かしてバルクアピールしてすらいる。首からは何やら懐中時計のようなものがぶら下がっていた。

 

両門兵「POWEEEEER(パゥワ―ッ)……!!」

 

 あまりにも理解しがたい状況に、遙は硬直した。

 両伍長の向こうでは残り2人の随伴兵も唖然としていた。

 

遙「えっ、あのっ……??」

 

門兵1「おっといけねえ、()()を返り討ちに出来てテンションが上がっちまいました。制御室前のBETAは一掃して通路の向こうまで押し込みました! ここの正面の他に必ず通る所にレーザータレットを置いてきたんで暫く大丈夫な筈です」

 

門兵2「オレらはいつもここで死んでたようですからね。やはり筋肉(ATK)筋肉(ATK)は全てを解決する……!」

 

遙「ええー…………あっ、両()()、任務お疲れ様です!」

 

 兎に角周辺のBETAを撃退した事だけは理解した遙の記憶の底から、突然現状を理解するに足る情報が湧き上がってきた。

 目の前の元門兵こと地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団多脚戦車連隊員両少尉は、魔導衛士の合格水準にはやや足りないがある程度の技量に達していた。そのため最低限轟雷を扱うことが出来るということで、轟雷を使っての戦闘は禁止という条件でこの横浜基地防衛戦の最中にある防壁世界へと遙に随伴して憑依(ポゼッション)していたのだ。

 両少尉は1年近く経っても魔導衛士の水準をクリア出来ていないのに諦めずに特訓を続けていたため、教官並に鍛えられており、操縦技術や魔法技術はともかく生身での基礎能力がえらいことになっていた。両少尉が片手の握力だけで抱えている闘士(ウォーリアー)級の頭は、素手でもぎ取ったに違いない。

 随伴兵が全員無傷なのは、恐らく魔導演算宝珠に登録されたハイリザレクションでも使ったのだろう。

 

水月≪遙、反応炉停止の状況はどう?≫

 

遙「あっ、水月! 停止コードの入力と認証は終わったわ! でも()()()()()()()()()()()()()警戒をお願い!」

 

水月≪了解!≫

 

 反応炉室の速瀬 水月()()も既に迅雷に乗り換えているため、憑依(ポゼッション)が完了しているはずだと判断し、遙は端的に情報を伝えた。

 

武≪あれ、中尉? 少し見ない間に機体がなんかでかく……?≫

 

水月≪気のせいよ!≫

 

武≪気のせい!? いやいやいや!≫

 

 一方、水月の隣の武は一体何が起きたのか分からず困惑していた。迅雷のデザインは不知火に似ているが、サイズが1.26倍になっているのだ。遠目ならともかく、隣に並べば嫌でも違和感に気付くというものだ。

 しかしこの状況で説明する必要性を感じない水月は気のせいの一言で切って捨てた。

 

水月≪そんなことより集中しなさい。死ぬわよ?≫

 

 水月の視線の先では反応炉が停止とは違った反応を示しており、それから間もなくして、補給用端子だった部位から一斉に強化型のBETAが飛び出した。

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