オペレーター「楔の塔の稼働を確認、防壁世界1の通行が可能になりました! 突入部隊は全員無事、00ユニットの保護にも成功しています!」
総旗艦インファクトリの
トピア「上手くやってくれたようですね」
ラリー「だな」
第一段階をつつがなく完了したことで、幹部達に安堵の空気が流れた。
全軍を指揮するマイン・ストリアニューダ総軍大元帥がまずは出撃準備の進捗を確認する。
マイン「生産部、
サティ「
夕呼「待って、
轟雷に関しては各自の記憶と認識に左右される
現有戦力では敵に撃破される危険よりも
マイン「よし、偵察・救援艦隊を防壁世界1の各星系に規定数100隻ずつ投入! 足りない場合は上申せよ! 交渉が必要な場合は外務本部がフォローせよ!」
基本的に救援部隊はBETAの駆逐と住民の救助に入りつつ敵意が無いことを自動音声でアピールするのだが、それでも不安が拭えない場合は外務本部の出番だ。特にこの世界に存在しない文明との接触の場合は自動音声では意思疎通が出来ないため、ESPか念話術式の使い手が必要になる。
なお、防壁世界以外にも論理和統合が開始されている世界があるので、そこには既に救援部隊の派遣を開始している。規定数とはこちらに送っている数を基準としたものだ。
マイン「防壁世界突入部隊第2陣は、全員分の調整と最終チェックが完了次第
第1陣の冥夜達が防壁の一角を崩してからの第2陣
技術的にも、現地での作戦遂行も、生産体制の調整においても、作戦はつつがなく進みつつあった。
2001年12月29日。
H21佐渡島に属していたと目される4万体を超えるBETA群が大深度地下を経由し東京都町田市に出現、国連軍横浜基地を襲撃した。後の世で言う横浜基地防衛戦だ。
門兵1「くそッ、制御室には絶対に近づけるな……ッ!!」
門兵2「速いっ……!」
門兵1「撃て撃て押し込まれるぞッ! 動きに惑わされるな!」
横浜基地の地下深く、B33フロア。兵士達が反応炉制御室前にロッカーなどを並べて急場しのぎのバリケードを組み、そこに押し寄せるBETA、
発端は地下深くの制御室から反応炉を停止させる危険な任務に代わりがきかない夕呼を行かせるわけにはいかないと涼宮 遙中尉が自ら立候補したことだ。彼ら四人はその涼宮中尉の護衛ということになる。
門兵2「――畜生ッ、
不幸中の幸いは、その中に強化型の
とはいえ、押し寄せるBETAに対して迎撃戦力が少ないので、従来型でも阻止するのは難しい。
門兵1「バカ野郎ッ!! 何しにここまで来たんだ、中尉を守れなきゃ基地そのものが全滅するんだぞ! 中尉にカッコいいこと言っちまったばかりだろうが! 銃弾が通じるだけマシだと思え!」
門兵2「へ……へへっ、そうだよな……もう後には引けねえよなァ……!」
門兵1「!!」
門兵2が気を持ち直した所で、
門兵2「
このタイミングで
門兵2「どうだッ!!」
門兵1「――いや次だ!!」
突出した
門兵2「……ぐ……あ……ッ!」
蹴散らされた内の一人、壁に叩き付けられた門兵2が吐血しながら呻く。幸いボディアーマーとヘルメットのお陰で即死はしていないが、決して状態は良くない。
門兵1「こっ……この野郎ォォォーーッ!!」
バリケードの内側に侵入した
門兵1「が……っ」
だが門兵1はただではやられなかった。攻撃を受けながら根性で
門兵1「
門兵2「……うっ、ううう、うおおおおおおおおおおぉおぉォォーーーーーーッ!!」
致命傷に近い大ダメージを負っていた門兵2は、門兵1の闘志に応えてアサルトライフルを拾おうとしたが、ひしゃげていたためそれを諦めた。その代わりに気力で立ち上がって
こちらは反応炉に面した制御室の内部。涼宮 遙中尉が非常停止手続きを試みていた。
遙「――……接続……確認……お願い、通って……!」
当初の予定通りならもう停止作業は終わっているはずなのだが、肝心の非常停止プログラムで最終確認画面が
夕呼の指示でネットワーク管理画面を呼び出して接続状況を確認すると、やはり反応炉に接続するケーブルが断線していることが判明。その断線を反応炉室の不知火白銀機・速瀬機に修復してもらう必要があったため、かなりの時間がかかっていた。
そうして修復後に再度非常停止画面を呼び出すと、今度は電子音が鳴って『停止コードを入力してください:』という文字列が表示された。
一度も停止させたことがない筈なのにどうやって停止プロセスを確立したかは謎だが、恐らくBETAの代謝を低下させる酵素でも利用しているのだろう。
遙「……! やった……! α3涼宮より
遙が喜色満面に
そもそも遙がこの停止作業に志願した時点で、記憶の流入は始まっていた。もたついていると目標達成前に死ぬことは既に知っている。
遙「これより反応停止プロセスに――」
遙の背後で扉が開き、暗い通路から何者かが踏みこんできた。馬鹿な、
入口の扉の向こうでは、随伴兵四名が同じく死の運命を知りながら決死の覚悟でBETAを食い止めていたはずだ。
遙は出来る限りの速度と正確さでパスワードを打ち込み、認証実行と同時に振り返った。
遙「――伍長?」
遙は振り返りながら祈るように伍長へ呼びかけた。
だが遙の視線の先にあったのは、残念ながらいつもの両伍長の姿ではなかった。
もぎ取った敵対者の頭をその手にトロフィーの如く抱え、遙に接近したそれらは――
ちょっと見覚えが無いほど異様にバンプアップした半裸の肉体をサイドチェスト並びにモストマスキュラーで惜しげも無く見せつける、アルカイックスマイルと白い歯が眩しい無傷の門兵両伍長であった。
あまつさえ、大胸筋をぴくぴくと動かしてバルクアピールしてすらいる。首からは何やら懐中時計のようなものがぶら下がっていた。
両門兵「
あまりにも理解しがたい状況に、遙は硬直した。
両伍長の向こうでは残り2人の随伴兵も唖然としていた。
遙「えっ、あのっ……??」
門兵1「おっといけねえ、
門兵2「オレらはいつもここで死んでたようですからね。やはり
遙「ええー…………あっ、両
兎に角周辺のBETAを撃退した事だけは理解した遙の記憶の底から、突然現状を理解するに足る情報が湧き上がってきた。
目の前の元門兵こと
両少尉は1年近く経っても魔導衛士の水準をクリア出来ていないのに諦めずに特訓を続けていたため、教官並に鍛えられており、操縦技術や魔法技術はともかく生身での基礎能力がえらいことになっていた。両少尉が片手の握力だけで抱えている
随伴兵が全員無傷なのは、恐らく魔導演算宝珠に登録されたハイリザレクションでも使ったのだろう。
水月≪遙、反応炉停止の状況はどう?≫
遙「あっ、水月! 停止コードの入力と認証は終わったわ! でも
水月≪了解!≫
反応炉室の速瀬 水月
武≪あれ、中尉? 少し見ない間に機体がなんかでかく……?≫
水月≪気のせいよ!≫
武≪気のせい!? いやいやいや!≫
一方、水月の隣の武は一体何が起きたのか分からず困惑していた。迅雷のデザインは不知火に似ているが、サイズが1.26倍になっているのだ。遠目ならともかく、隣に並べば嫌でも違和感に気付くというものだ。
しかしこの状況で説明する必要性を感じない水月は気のせいの一言で切って捨てた。
水月≪そんなことより集中しなさい。死ぬわよ?≫
水月の視線の先では反応炉が停止とは違った反応を示しており、それから間もなくして、補給用端子だった部位から一斉に強化型のBETAが飛び出した。