【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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296. 絶対に気のせいじゃない。なんかレーザー出てる

 横浜基地90番格納庫(ハンガー)。ここには人類の切り札である凄乃皇(すさのお)弐型並びに凄乃皇(すさのお)四型が格納されている。

 横浜基地を襲撃したBETAの目標はエネルギー補給のための反応炉 = 頭脳(ブレイン)級の確保であり、それを阻止してBETAを撃退するのが人類側の目標だ。しかし反応炉停止作業の間にそこにBETAが集まってきては停止作業どころではない。そこで、敢えて切り札である凄乃皇(すさのお)弐型のムアコック・レヒテ機関を起動し、こちらに戦力を誘引する作戦が発令されたわけだ。

 90番格納庫(ハンガー)で待ち構えているのはα1部隊3個小隊、以下の面子だ。

 

■A小隊

・月詠 真那中尉

・神代 巽少尉

・巴 雪乃少尉

・戎 美凪少尉

 

■B小隊

・宗像 美冴中尉

・涼宮 茜少尉

・御剣 冥夜少尉

・彩峰 慧少尉

 

■C小隊

・風間 祷子少尉

・榊 千鶴少尉

・鎧衣 美琴少尉

・珠瀬 壬姫少尉

 

 この他に、反応炉に向かった水月と武がα2、制御室に向かった遙達がα3となっている。

 

 α1が対応している90番格納庫(ハンガー)の入口隔壁は既に崩壊しており、多数のBETAが雪崩れ込んできていた。

 

千鶴≪ああっ――BETAが凄乃皇(すさのお)に……!?≫

 

 待ち構えていた12機に対しBETAの物量は絶望的な多さで、早くも凄乃皇(すさのお)弐型には大量の戦車(タンク)級が取り付いてよじ登り始めていた。現在凄乃皇(すさのお)弐型は起動しただけで00ユニットが搭乗していないので戦闘は不可能だ。

 こうなることは()()()()()()ので事前にある程度の対処プランを練っていたのだが、それでもBETAの物量が上回った形だ。

 

美琴≪ボクが行く!≫

 

千鶴≪機体の損傷を最小限に留めて!≫

 

美琴≪了解!≫

 

 美琴が立候補して短刀を引き抜き、凄乃皇(すさのお)弐型からの戦車(タンク)級の排除に取りかかる。()()()()()ので以前よりも効率は良くなっているが、だがやはり手が足りない。

 目的を果たさないまま凄乃皇(すさのお)弐型が破壊されては、陽動が失敗する上に人類は切り札を1つ失う。

 

祷子≪ヴァルキリー4よりHQ! 敵が凄乃皇(すさのお)に取り付き始めています! 反応炉停止はまだですか!?≫

 

 反応炉の停止が終わっているのならば陽動はほどほどで切り上げて良いのだ。その願いを込めて、ヴァルキリー4風間 祷子はHQ(ヘッドクォーター)に進捗確認を求めた。

 だがその返答は芳しい内容とは言えなかった。

 

ピアティフ≪HQ(ヘッドクォーター)よりα1! α3は()()()()、司令部は現在対策を協議中――!≫

 

祷子≪く――っ!?≫

 

 ある程度は予想通りであったが、その返答にα1部隊の空気が沈んだ。だが、考えていたほど最悪ではない。

 

美冴≪状況不明!? ……詳しく!!≫

 

ピアティフ≪α2、α3ともに()()()()()! α3はその直前にBETAの襲撃を受けていた模様!≫

 

茜「お姉ちゃん……!」

 

 α3は涼宮 茜の姉である涼宮 遙が志願して反応炉停止作業に向かった部隊だ。茜はその決意を後押しすらしている。それがBETAに襲撃されて交信途絶とはどういうことなのか。絶望的な予感が茜の胸中を満たす。

 だが、返答は()()()()()全滅ではなく交信途絶中にとどまっている。遙がこの謎の記憶を活かして上手く立ち回った可能性がまだある。

 そして、その記憶によると、ここでショックを受けて動きを停めてしまい、要撃(グラップラー)級の攻撃を許して戦闘不能になるというのが茜の本来の行動の筈だ。実際に目の前に要撃(グラップラー)級が詰めてきて直撃コースで振りかぶった。事前の覚悟である程度の冷静さがあった茜は、バックステップでそれを躱した。しかし要撃(グラップラー)級はそれを見越していたのか、別個体が回り込んでその硬い拳でバックステップの進路を塞いだ。

 茜は驚愕した。まさかB()E()T()A()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とでもいうのか。

 

茜「なッ!?」

 

千鶴≪茜!?≫

 

 これはまずい。茜の脳裏に走馬灯がよぎり……そして()()()()()

 

 茜はインベントリから蒸着装置Mk.2を取り出して、その機能を発動し、即座に装備変更と迅雷四型への乗り換えを完了した。

 いちいち降りて乗り換えるのは手間が掛かるという問題を解決するため、最新版の蒸着装置Mk.2ならば、乗り物に一人乗り状態という制限はあるが、それを装備の一部と見なして別の乗り物に装備変更することが可能なのだ。桜花作戦の世界で千鶴達が即座に武御雷(たけみかづち)から轟雷に乗り換えられたのもこれのお陰だ。

 茜は阿頼耶識改を通じて人機一体接続し、流れるように各種強化術式を発動。

 

茜「どっせぇぇい!」

 

 戦闘態勢に入った茜の迅雷は回り込んだ要撃(グラップラー)級の腕を難なく掴むと一本背負いでもう一体に叩き付け、その衝撃で両方を爆発四散させた。

 

千鶴≪あ、茜!? 茜が急に成長した……?≫

 

 つい先ほどとは違う種類の驚愕の声が千鶴から上がった。

 目の前で危機に陥った茜機が突然()()したかと思えば流れるような動きでBETAを返り討ちにしたのだ。いや、人間的に成長して大きく見えているのではなく、やはり本当に大きくなったように見えるのだが……?

 

慧≪……絶対に気のせいじゃない。なんかレーザー出てる≫

 

 慧がツッコミを入れたように、茜機は肩や脚から多数の曲射レーザーを発射してBETAを駆逐しており、明らかに不知火とは一線を画した殲滅力を発揮している。

 そういった会話をしながらも千鶴や慧はそれぞれBETAを迎撃しているが、茜だけ殲滅のペースが段違いだ。凄乃皇(すさのお)弐型に取り付いた戦車(タンク)級もみるみるうちに数を減らしていっている。

 

水月≪ふふん、どうやら私が助けるまでもなかったようね≫

 

茜「あっ、速瀬()()! お姉……α3は無事ですか!?」

 

水月≪()()()()()()のよ? やられるわけがないじゃない。通信中継器が壊れただけで、随伴兵も全員無事よ≫

 

茜「良かったぁ……」

 

 その言葉と共に茜の迅雷が胸をなで下ろす動作をした。戦術機では通常あり得ない深い同調をしていることが窺えた。

 

美冴≪中佐? 茜の奴はやはり錯乱……ああいや、そうか。()()()()()()

 

祷子≪私達も出遅れてしまいましたわね≫

 

 美冴と祷子もインベントリから蒸着装置Mk.2を取り出してその機能を発動し、即座に装備変更と迅雷四型への乗り換えを完了した。

 

水月≪じゃあ揃った所で()()を始めるわよ!≫

 

美琴≪増えた上にまさかのスルー!?≫

 

壬姫≪そ、それはいいとしても、反応炉の停止はどうなったんですか!?≫

 

水月≪ああ、あれなら――≫

 

武≪……中尉! やっと追いついた! いいんですかアレ、反応炉勝手に壊しちまって!≫

 

 水月が返答する前に、階下から上昇してきた白銀機が戦列に加わりながら水月に疑問をぶつけたことで、壬姫の疑問は解消された。が、その代わりに別の疑問が増えた。

 

千鶴≪白銀!?≫

 

美琴≪こ、壊したって言った!?≫

 

ピアティフ≪HQ(ヘッドクォーター)よりα2! 今反応炉を破壊したと聞こえましたが!?≫

 

 記憶通りなら結果的に反応炉を破壊する必要はあるのだが、無事停止出来るのならその方が良いので、一応は停止が失敗した後の善後策となっていたのだ。問題は一切の確認を挟まなかったという部分だ。

 

水月≪α2よりHQ(ヘッドクォーター)。制御室から緊急停止を発したら()()()()()()()B()E()T()A()()()()()()()()から、即座に破壊したわ。ごめんなさいね?≫

 

美冴≪まあその方が早いよね≫

 

祷子≪停止出来ないならそうするしかありませんわね≫

 

茜「まあそうなりますよね」

 

 独断で反応炉を破壊したと平然と言い放った水月に対し、α1部隊の殆どは驚愕していたが、茜達の反応は平坦なものだった。

 

ピアティフ≪HQ(ヘッドクォーター)よりα2! 反応炉の破壊はいいとして、その強化型BETAはどうしましたか!?≫

 

水月≪α2よりHQ(ヘッドクォーター)。当然全部片付けてきたわよ?≫

 

武≪ちょっと目を疑う殲滅力でしたね。反応炉も一刀両断でしたし。その武器何なんです?≫

 

 遙が制御室から反応炉を停止させようとした際、それに抵抗した反応炉がよりによって強化型BETAを生産し始めた。

 しかしそれに武が動揺している間に水月は光を纏った銃剣で反応炉を一刀両断し、銃口から迸る謎の白色光線で生産された強化型戦車(タンク)級、要撃(グラップラー)級、突撃(デストロイヤー)級、光線(レーザー)級を薙ぎ払って一掃したのだ。

 今も水月達の迅雷は兵装担架からやや銃身が長い銃を取り出し、白色の光線を発射、見る間にBETAを殲滅していた。

 

真那≪一薙ぎでBETAを殲滅しただと……!?≫

 

祷子≪今更普通のBETAなど案山子同然ですわよ?≫

 

千鶴≪か、案山子……?≫

 

 祷子の迅雷が姿勢を低くして膝射で薙ぎ払った魔導光線は、押し寄せるBETAを種類の区別なく殲滅した。勿論突撃(デストロイヤー)級や要塞(フォート)級も含めてだ。

 

 一方、凄乃皇(すさのお)に取り付いた戦車(タンク)級の掃除も順調に進んではいたが。

 

美琴≪ちょ、何で凄乃皇(すさのお)ごと撃ってるんですか!? 駄目ですよ!?≫

 

美冴≪大丈夫大丈夫、これ敵味方識別機能付きだから≫

 

美琴≪ええー……本当に傷一つついてない……?≫

 

 凄乃皇(すさのお)ごと雑に戦車(タンク)級を掃射する美冴に、他の者達は困惑していた。凄乃皇(すさのお)に効いていないだけならまだ分かるのだが、見た目では凄乃皇(すさのお)の向こう側まで光線が貫通しているのだ。

 

千鶴≪というか、ちょっと待って下さい。反応炉を破壊した割にBETAが退却しないんですが……?≫

 

 千鶴の記憶でも、反応炉を破壊すればBETAは撤退を開始した筈だ。だが現状はそうなっていない。

 

水月≪どうせ大半の個体の補給が間に合わないから、戦術目標がこの基地の破壊に変更されたんでしょうね≫

 

美琴≪ええっ、大変じゃ……いや、そうでもない……?≫

 

慧≪意外と何とかなりそう……?≫

 

 従来の常識では大変なことであるにもかかわらず水月達四人の殲滅力が高すぎて全く大変なことに思えなくなってきた美琴達だが、その感覚は正しい。

 

水月≪じゃ、私達はB()E()T()A()()()()()()()()から。茜、一緒に来なさい。祷子と美冴は一匹も討ち漏らさないようにお願い≫

 

 水月と茜の迅雷は90番格納庫(ハンガー)の入口に飛び込み、そこから上昇しつつ魔導ビームで基地に侵入したBETAを殲滅していった。大半をビームで薙ぎ払えばあとはレーザーが取りこぼしを処理してくれるので簡単なものだった。

 

茜「そういえば()()の方はどうなりました?」

 

水月≪ああ、そっちは遙達に任せたわ≫

 

茜「なら安心ですね!」

 

夕呼≪あー、こちらHQ(ヘッドクォーター)。そこの不審なIFFの速瀬……中佐? ちょっと話を聞かせてくれるかしら? ……貴女たちもしかして並行世界から来た?≫

 

 水月達がBETAを軽く殲滅しつつ地上へ出ると、そこに夕呼からの通信が入った。

 不審なIFFというのは、Meisters名義になっていることだろう。

 

水月≪おお、流石は香月博士! お察しの通り、並行世界から救援に来ました。総勢七名です≫

 

夕呼≪まだ他に三人いるのね……次の質問だけど、貴女たちが乗ってるのって()()よね? もしかしてその七人だけでハイヴを攻略出来る?≫

 

 先ほど00ユニットから正気を疑うような各種高度技術情報がもたらされたが、同時に00ユニットからBETAへの情報流出も判明しており、強化型BETAの問題もあって、人類にはその高度技術を活かすだけの猶予がなくなっていた。

 一体どうしたものかという状況でまた突然出てきたのが水月達だ。00ユニットからもたらされた情報によると熟練の魔導衛士ならば迅雷1機でもハイヴの攻略は容易となっているが、そのハイヴでは今は性能が格段に上昇した強化型BETAの生産が開始されている。

 だから七機いればどうにか程度のつもりで夕呼は問うた。

 

水月≪ハハハご冗談を≫

 

夕呼≪そう、流石に無理――≫

 

水月≪我らは銀河に名を轟かせる地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊の魔導衛士です。ハイヴを潰すくらい一人でも余裕ですよ。でも時間が勿体ないので二人で手分けして行ってきますね? 防衛は祷子と美冴がいれば十分ですので≫

 

夕呼≪――は?≫

 

 この宣言の後、水月と茜は衛星軌道上に上昇し、更に巨大な武者鎧に合体してあっという間に全てのハイヴを焼き払った。

 二人は更に手際よく七つの楔の塔を設置していき、楔の塔が発した光が星を覆って数秒後には100隻の巨大戦艦が地球に降下してきて蜘蛛型機動兵器を大量にばらまき、日本とユーラシアに残った大量のBETAを片付け始めた。

 七人でハイヴ1つを攻略出来るかというつもりで問うた夕呼は、救援名目の過剰戦力介入に頭を抱える羽目になった。

 

 あと半端な浄化措置しかされていなかった00純夏は、ロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)で基地内の最短距離を進んだ遙達によって00ユニット保護用アタッチメントを装着され、事なきを得た。

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