晴子「さて、こっちはこっちで仕事しなくちゃね。少しはみんなの助けにならないと」
みちる達と別れたあと、晴子は不知火の頭を下に向けて
晴子「こちらヴァルキリー10、ヴァルキリーズ突入部隊、応答して下さい!」
晴子は先行した突入部隊に対し無線通信を試みるが、帰ってくるのはノイズだけだ。既に全滅したのではという嫌な予感がよぎるが、晴子は頭を振ってそれを振り払った。00ユニットの搬出にかかった時間はそれほど長くない。精鋭九人が全滅するには早すぎる。
ならばと晴子は
晴子「――多分こっち!」
散乱したBETAの死骸の分布から見て恐らく北側だろうと晴子は当たりを付け、
晴子「なんか急に調子が上がってきたね? 覚悟決めたせいで却って覚醒しちゃったかな?」
BETAはハイヴ内では
そうして途中で折り返す形の
まさかの全員無事という希望に胸を膨らませて、晴子は開けた
しかしそこには不可解な光景があった。ほぼ無傷の不知火が9機、無抵抗でBETAに運ばれていたのだ。
晴子「えっ、みんなどうした……あっ、
晴子の疑問に対する回答は実際の効果を以てもたらされた。眠気で急激に意識が低下してきたのだ。なるほど、これでみんな眠らされてしまったらしい。有人機に対しては実に効果的な攻撃手段だ。
晴子「こんなのでやられるのは……悔しい……なぁ……太……一……」
晴子の意識は悔しさを滲ませながら闇に落ちていった。
――が、その代わりに
晴子「ふわぁ、わざわざ起こしてくれてありがとう! これはお礼だよ!」
晴子は即座に魔導演算宝珠Mk.4を取り出して抗睡眠術式を起動すると、蒸着装置で装備を変更し迅雷四式に乗り換えた。そして魔導銃剣を2挺取り出して左右に構え、その場でスピンを開始しながら引き金を引いた。
晴子「北斗有情ローリングバスターライフルッ!! BETAは死ぬ!!」
残念ながら晴子は大分
晴子はその人当たりの良さとノリの軽さで、
なお北斗有情ローリングバスターライフルとは、ゲーム由来のトキの奥義である
その軽いノリと対照的に周囲のBETAは晴子の言葉通り視界に入ったそばから魔導ビームに焼かれて殲滅されていく。何しろ強化術式を使わなくても1500億DPSの攻撃だ。GAMMA水準技術で100倍強化した
晴子は更にその場で分身を2つ生み出し、1つを追撃防止用に、1つを仲間が寝ているこの場の防衛用に残した。そして自身は他の九人が搬入されようとしていた
晴子がBETAをなぎ倒しながら押し通った
標的を認識した晴子が回転を停止し、2挺の魔導銃剣を向けて魔導ビームを集中照射すると、
晴子「頑張るね! じゃあご褒美だ!」
晴子はとりあえず魔法攻撃力を1,024倍に引き上げた。当然の結果として、
重巡洋艦最上に設置された
まず戦場に突如不知火に似た何かが出現し、一太刀振るうたびに大量の強化型BETAをなます斬りにしている。しかもどこから出したのか、蜘蛛型の機動兵器をばらまきながらなまはげのようにBETAを追い回し殲滅し続けている。
00ユニットの脱出護衛を任せた伊隅 みちるも、不知火白銀機、御剣機、00ユニットを伴って無事海上に抜けたのはいいのだがいつの間にかその不明機と同じ機体に乗り換えており、海上に出るまで目につくBETAを悉く殲滅していた。
そして今度は柏木 晴子が反応炉の破壊に成功し、更にヴァルキリーズ突入部隊全員を地上まで連れ帰ったが、やはり同じ機体に乗り換えていた。しかも柏木はまたハイヴに引き返してハイヴの地下から本州に続く地下道のBETAを殲滅しに行ったという。
相次ぐ戦況好転の朗報に湧きながらも、アレは一体何なのだという困惑が司令部に蔓延していた。
とはいえ夕呼には概ね察しがついていた。先ほどからの記憶の混乱と死者の復活、BETAの強化が並行世界からの影響ならば、これも別方向の並行世界からの介入に違いない。
夕呼「――と、あたしは考えてるんだけど、実際のところどうなの、伊隅?」
みちる「は、お察しの通りであります」
武「え、マジで!? 並行世界の伊隅大尉!?」
覿面に驚愕する武に向けて首を振って否定の意を示し、みちるは言葉を続けた。
みちる「残念ながら今は
武「し、失礼しました!」
みちるがウィンクしながら自分の階級章を摘まんで見せつけるが、その階級章は帝国軍のものでも国連軍のものでもないので武にはよく分からない。ただ、並行世界の同一人物というのが否定されていないことは理解した。
これは並行世界への移動は因果導体の専売特許だと思っていた武にとっては新鮮な驚きであった。
みちる「構わん、こちらの世界では君の方が上司だしな」
武「嘘ォ!?」
大佐より上と言うのならば間違いなく将官だ。一体どういう状況ならそうなるのか全く想像がつかず、武は泡を食うばかりであったが、みちるはその様子を微笑ましく見守っていた。
みちる「香月博士、つきましては、00ユニットにこちらの保護用アタッチメントを装着することを認めていただきたいのですが」
夕呼はみちるが取り出したヘッドフォン状の装置をひったくると、しげしげと細部を眺めた。
夕呼「……これ、
みちる「分かるものですか?」
夕呼「あたしが急ぐ場合はここを端折るだろうっていう癖があるのよ。外見上だけでもね。効果はそうね……ODLの浄化って所かしら?」
みちる「それと、並行世界への接続を遮断する効果があります。これ自体が演算リソースを持つため、遮断しても
夕呼「至れり尽くせりねぇ……なるほど、
夕呼がそう言い放ったことにみちるは少し驚いた様子を見せ、肯定の言葉を吐いた。
みちる「その通りです。流石は香月博士」
夕呼「やめてよ、
みちる「いえ、こちらもループを繰り返した結果、年代はまだ2002年10月29日です。地球の文明発展とは別に、この確率時空の外からの救援がありまして」
夕呼「そう……まあ保護装置の装着は許可するわ」
夕呼は並行世界の自分が何かトラップを仕掛けていないだろうかと警戒はしたものの、今ある記憶だけでも00ユニットの浄化処理のために横浜基地の反応炉に直結して情報流出をやらかす未来が見えていた。それも含めて二重の意味で00ユニットからの情報流出を防ぐための装置であるならば確かにあちらにも利益があるし、破壊工作が目的でないのならばまず現状より悪くはならないだろうという判断でひとまず提案に乗っておくことにした。
そもそも拒否しても止められるかどうかが怪しい所なのだ。
夕呼「それで、00ユニットを保護すれば任務は終わりなの?」
みちる「ご協力感謝いたします。残る任務としては、この後地球の全てのハイヴを壊滅させ、現在BETAの都合で行われている並行世界統合制御を人類の手に奪取します」
武「えっ?」
話が複雑になりすぎてそろそろついていけなくなっていた武であったが、さらっと地球上の全てのハイヴを壊滅させるという言葉が出てきたことに耳を疑った。
夕呼「……三人以外にも来てるの? それで何日かかりそう?」
みちる「三人だけです。長くても2時間もあれば終わるでしょう」
夕呼「そう……そう………………なら、お願いするわ」
みちる「お任せ下さい」
拒否しようにも、わずか三人で地球上のハイヴを2時間で攻略出来るような面子を止めるような手段など何をどう考えても存在しない。夕呼はこの事態を自分が主導で解決することに関しては諦めの境地に至っていた。まあ元々00ユニットのリスクは未来の自分に解決させる予定だったのだ。現状はそのプランと大して変わらないだろう。
なおみちるが申告したのは楔の塔の建設や各戦線への助力も含めた時間だったので、ハイヴの殲滅自体は1時間も掛からなかった。