2001年12月10日。この日、この世界では
この世界では長年の戦争継続という事情から娯楽が発展しておらず、ゲームには当たり前に存在するキャンセルやコンボという概念も当然無かったのだ。
これらの概念を実現した
しかしこの演習には香月 夕呼による裏の目的があった。実戦に全く出ないためにたるみきっていた横浜基地の衛士達の実力確認と引き締めだ。
だとしても、これは荒療治が過ぎた。夕呼は事前にわざわざ捕まえてきていたBETAを演習場に解き放ったのだ。模擬弾と模擬刀を使った演習中なのだから当然どの戦術機もBETAに対する攻撃手段をほぼ持っていないし、使えるとしてもナイフシースに入っている短刀くらいだ。実弾を調達しに行くまでに目を覆うような犠牲が出てしまうのは当然の話だった。この結果を以て「たるんでいるから簡単に死ぬ」と評するのはあまりにも酷だろう。
その惨状に少尉任官したばかりの白銀 武達A207小隊六人は覿面に狼狽えた。その場に居合わせた先任のシャーク1、ルーマニア出身の中尉はまずA207小隊に後方支援を命じたが、反応から精神状態が支援にも不足すると見なし、後催眠と興奮剤を処置した。
これ自体は
結果として武はハンガーから武器を持って来いというシャーク1の命令をその途中で無視して、しかも模擬弾しか持っていないことをすっかり忘れてBETAの集団に単身突撃したのだ。
武の基礎能力自体は高いので、弾切れまでは驚異的回避力を見せた。また、弾切れ直後の背後からの攻撃も未来の記憶で何とか躱した。しかし冥夜が武を落ち着かせるために鎮静剤を注入した瞬間に却って隙が出来、致命的な一撃を貰ってしまった。
そこからは無残なもので、冷静になった武は機能を停止した吹雪の管制ユニットの中でただ怯え、叫びながら救助を待つだけとなった。
この時に武の乗機であった第3世代型戦術機吹雪はBETAにたかられてもはや修理が不可能な状態になり、廃棄処分になった。しかし
武は自らの情けなさに落ち込み、再起不能になった吹雪の前で暫く座り込んでいた。
その後ろに教官の神宮司 まりも軍曹が立ち、話をし始めたところで、武はそれが既に記憶にある話だと気付いた。興奮剤の処置中は錯乱していて全く気付かなかったが、これは未来の記憶だ。
武は元々因果導体で周回の記憶を持っており、予期しないタイミングで何かを思い出すことがあるので、その一つかと思って納得した。しかしそうなると、周回しても自分が全く成長せず殆ど同じ失敗をしていることになるため、自分の成長の無さに武は益々落ち込んだ。
但しまりもの話から記憶を更にたぐってみると、その話を聞き終わった後が全く穏やかではないことに戦慄した。このまま放っておけば、まりもが
武はこんなことをしている場合ではないと慌てて立ち上がり、振り返った。
武「まりもちゃん――!」
だがそれは遅きに失していた。
武の目に飛び込んできた衝撃的な光景、それは――
武「――は??」
まりも「タコがッ! この程度で私のタマを獲れると思ったか! せめて強化型で来い!!」
まりもは強化外骨格などを身につけているわけではない。ただの制服だ。しかしまりもの首元の懐中時計のようなものが輝きを放つと、まりもの左脚が
武はまさか白昼夢でも見ているのかと自分の目を疑ったが、
まりも「フゥゥー……あ、それで何の話の途中だったかしら?」
武「何でもありません、教官殿ッ!!」
この状況で自分に笑顔を向けるまりもに恐怖を感じた武は、反射的に敬礼を返した。予期せずショック療法で立ち直った形だ。
この後、香月 夕呼博士は正座で神宮司 まりも
曰く、
まりも「衛士達の危機感を煽るために実弾を持っていない演習中にBETAをけしかけるなんて効果とリスクが釣り合ってないでしょう。実は夕呼ってアホなの?」
まりも「そもそも衛士達を引き締めるのに何で教官にすら相談しないの? 私は何のためにここに呼ばれてるの?」
といったもので、まあ今回の失敗は、結局の所何でも一人で企んで一人で実行しようとするために人の意見を聞こうとしない夕呼の悪癖が噴出した結果であった。
しかし最後には夕呼が「でもまりもが無事で良かったわ」と言って泣き出したため、まりもは説教を切り上げてその頭を優しく撫ぜた。
原作で夕呼が武の前では何でもないように見せていたのも、何を犠牲にしてでもやり遂げるという覚悟に基づく虚勢でしかないし、まりもを死なせた元凶だと自ら告白しながら武に拳銃を手渡したのも、半分は武の覚悟を確かめるためではあったが、もう半分は自罰目的だ。
元々まりもは夕呼がオルタネイティヴ4の開始時にわざわざ呼び寄せた人員であり、学生時代からの数少ない友人でもあった。原作時空の夕呼がこの演習の不手際でまりもを喪った後、
まりもの説教が終わって涙の跡も証拠隠滅出来た頃に、もう地球上全てのハイヴの攻略が終わったと聞いた夕呼は唖然とした。
これはBETAの襲撃で危機的状況に陥り既に覚醒していた築地
二人にとっても並行世界統合で未来知識を得た他のヴァルキリーズ各員にとっても、まりもが
他のヴァルキリーズ各員は血眼で残存BETAを潰して回り、まりもの周囲にも気を配っていたが、問題の
00ユニットに関しては、まだ本体完成まで1日かかる状態だったので、脳だけ状態の純夏にまりもがオーバーリザレクションをかけることで復活させた。
普段は魔導演算宝珠にオーバーリザレクションは登録されていないのだが、今回任務上必要だったので特別に使用が許されていた。
純夏の身体はこれで万全な状態になったが、あとは心の問題を解決する必要があったので、武に押しつける形になった。押しつけられた武はむしろ純夏に再会出来て喜んだので、一つ良いことをしたとまりもは満足した。
100話くらいまでには終わらせたいと思っていた筈なのに、エンディングまでに必要なものを逐次積み上げていたら300話に到達してしまいました。妙だな……。
あと今ディメンションズの履修にえらい時間が掛かっていてストックが枯渇寸前です。