ある世界ではイモータルズという
この世界の事情はややこしく、少なくとも3つ、もしかすると4つの並行世界が絡んでいるため、順を追って説明する必要がある。
まずイモータルズが生まれた世界。これを第1の世界とすると、ここでは元々BETAが地球に来ていなかったのだが、2001年にBETAが
出現したハイヴは、意外なことに長い間外部へBETAを進出させることがなく、BETAの噴出が始まるのはその9年後の2010年のことであった。
幸いその9年間で米国と日本がハイヴ攻略のための兵器開発を進めていたため、この時点で戦術機という対抗手段を講じることが出来た。
ハイヴ出現直後、米軍はハイヴ攻略に必要な兵器の開発をゼノラルダイナミクス社に発注した。
ゼノラルダイナミクス社は一般的なマブラヴオルタネイティヴ系世界ではF-16ファイティング・ファルコンの開発を担当し、A-12アベンジャーやF-22ラプターの開発にも関わっている。しかしそれは第1世代戦術機のF-4ファントムという確固たる基礎があってこその成果だ。この世界のゼノラルダイナミクス社単独での兵器開発は、なかなか方向が定まらずに難航した。
2004年、米国のハイヴ攻略用兵器の開発は
光菱重工は一般的なマブラヴオルタネイティヴ系世界ではTSF-Type74/F-4J撃震、TSF-Type89/F-15J陽炎、TSA-Type81/A-6J
では何故開発が順調に進んだかと言えば、この世界では光菱に香月 夕呼が所属していたからだ。
ただしこれは単に夕呼が天才だからという話ではない。いや、天才でなければ出来ない所業ではあったが、夕呼が一から戦術機を開発したわけではないのだ。
まずハイヴとBETAの不自然な出現の仕方からして、夕呼はこれが並行世界からの侵略であると仮定した。
当時の夕呼が知るよしもなかったが、それを裏付ける傍証として、イモータルズ出身世界のBETAの中には
つまりこれらのBETAは人類の戦い方を学習して
ならば、地球人類がBETAと戦っている並行世界がある筈だと考えた夕呼は、自らの因果律量子論を応用して発見した特定の並行世界から対BETA兵器である戦術機の情報を引っ張り出したのだ。この戦術機の情報を提供した世界が第3の世界にあたる。
第2の世界と第3の世界は同一ではないのか、という疑問に関しては、後述する差違から恐らく別の世界ではないかと考えられる。
さて、夕呼は第3の世界から戦術機の情報を引き出したが、いざ作ってみても具体的な運用方法が欠けていた。なのでその運用の専門家である衛士の情報も獲得することにした。
しかしどうもそれはそのまま情報としては使えなかったのか、それとも戦力としても期待したからかは定かではないが、並行世界から引っ張り出した衛士の記憶を一旦クローン人間の脳に焼き付けて人格を再現することで、戦闘経験のある衛士を丸ごと製造することになった。
今さらっとクローンが出てきたが、この世界の光菱は再生医療分野で突出した光菱ケミカルというグループ企業を抱えている。
要するに人体の手足や臓器を再生出来るのなら丸ごとだって作れるだろうということで、情報だけからクローンの製造が可能だったのだ。よって、イモータルズに所属している衛士は全員が並行世界から情報を呼び出して製造したクローン衛士である。
人体製造は白陵大学香月研究室が開発した『人工細胞による肉体再生技術』を元にしており、クローンの記憶再現に関してはこれも同研究室による『脳神経細胞電流観測による間接思考制御』で実現している。
香月研究室とある通り、開発者は他でもない香月 夕呼教授である。特に前者の成果は革新的医療技術として世界的に高評価され、夕呼は光菱ケミカル株式会社の技術顧問という地位を得ていた。更に企業内での序列は専務だ。
第3の世界から得られた記憶で製造したクローン衛士全員が小倉にハイヴは無かった筈と主張していることから、第2と第3は別の並行世界だと推定されている。しかし彼女達全員の死後に小倉ハイヴが作られた可能性が無いとは言えない。
また、イモータルズのクローン衛士の中に臼杵 咲良が存在するため、第3の世界はアニメ版オルタネイティヴ世界に近いと考えられる。
イモータルズとは光菱グループ傘下の救命医療チーム『光菱イモータルズ株式会社』のことであり、このイモータルズは成立過程で複数の
BETAとの戦争は、迅雷や轟雷ほど性能で圧倒しているならば話は別だが、第3世代までの戦術機ではそこまで圧倒出来ず、最終的に数の勝負になる。そして数が必要とは言え、碌に訓練していない素人は頭数に数えられない。この世界では戦術機の自律モードという技術がある程度確立しているため、素人を引っ張り出すくらいなら無人機の方が余程マシなのだ。
そういう意味では死んでも出撃前までの経験を引き継いで復活出来るクローン衛士というのは解決法の一つだ。そのように述べると人倫的に問題があるように聞こえるが、クローンの運用もクローン当人の就労意欲を確認した上でやっているため、
それは本当に本人の意志なのか、そう考えるように都合良く作られただけではないのか、という所まで気にするともう哲学の分野になってしまうので、デカルトでも読んどけという回答になる。
そのイモータルズを実質的に率いているのが、またしても香月 夕呼専務だ。イモータルズはクローン運用の倫理問題から世間の評判はあまり良くないのだが、かくいう夕呼だってある意味仕方なく組織運営をやっている。本当は政府の軍事組織に任せたいのだが、これが吃驚する程頼りにならないからだ。
この世界の日本にも一応の軍備はあり、日本国防隊という専守防衛の軍隊なのだが、その日本国防隊は戦術機は採用したものの、衛士のクローン化は採用していない。光菱ケミカルの方から技術提供を申し出ているためやろうと思えばいつでも出来るのだが、政府が民意が得られないというのを理由にしてそれを拒否しているのだ。
しかも自らはクローン運用を拒否した上で軍人の立場と復活不能という事情を盾にして事実上の死を強いるような危険な役目はイモータルズに押しつけ、その上で逐一駄々をこねながらおんぶにだっこで守られて進軍してハイヴ攻略の功績までイモータルズから横取りしようとするという、冗談だろうと思うくらいに全くいい所のない組織である。
実際小倉ハイヴの攻略戦では国防隊を助けるために
国防隊の横暴は主に上からの要求を実現するためのものであるらしく、国防隊第19大隊の中根大隊長はその要求を可能な限り叶えつつ敢えて自分にヘイトを集めようとしていた……ということになっているが、それと無関係な国防隊の連中にも結構クローンを蔑視している者がいるので、上だけが駄目という言い訳も苦しい。また、国防隊にはそれ以前の致命的な問題がある。
何しろ偉そうにしている国防隊の練度はどの程度かと言えば、トータル・イクリプスの前日譚で出てきた山百合女子衛士訓練学校の学生未満と言われる始末だ。それもその筈、小倉ハイヴ攻略に参加した国防隊衛士達の戦術機実機訓練時間は平均で何と驚きの
更に、衛士個人の技量が拙いだけでなく、BETAとの戦い方のセオリーすら碌に知らないという状態であった。
イモータルズに所属している山百合女子衛士訓練学校出身者には誰でも最初から上手く出来る筈ないさなどとフォローされていたが、ここで大変残念なお知らせがある。この世界の現在は2023年、つまりBETAとの開戦は13年も前である。日本にハイヴが出現して22年、BETAが外に出て日本を東西に分断して13年、国防隊は何一つ学ばずに暢気に遊んでいたのだろうかと首を傾げざるを得ない。
BETAに国を分断されて人材に余裕がないからなどという言い訳も甚だ苦しい。この世界の日本人はまだ7000万人残っている。これはマブラヴオルタネイティヴの2001年10月22日時点での7400万人と殆ど変わらない数字だ。だがオルタネイティヴ世界では沙霧がやらかすまでは精鋭がかなりの数存在していたし、一般衛士の技量ももっと上だったことは間違いない。つまりこの世界は全体的に危機感とやる気が無いだけなのだ。
国防隊は専守防衛を謳っているという意味では帝国軍より自衛隊に近い組織なのだが、自衛隊のような真面目さをどこかに置き忘れてきた似て非なる組織であった。
しかも小倉ハイヴを制圧したイモータルズが空母打撃群旗艦デウカリオンに戻った所で、そのデウカリオンにG弾が投下された。
流石の夕呼も日本政府と国防隊がそこまで愚かだとは想定していなかったらしく、「そこまでやる……」と呆れながら艦隊ごと
シルヴィア「香月教授とイモータルズがいなければとうに滅んでいた可能性が高いのに、恩を仇で返すことだけは一人前なのね」
現地に派遣されたシルヴィア・クリューガー准将は現地民の所業を鼻で笑った。ここの連中は地球に香月 夕呼がいることのありがたみを何も分かっていない。豚に真珠もいい所だ。
オルタネイティヴ人類統合体時代の覚悟が決まってる地球人類のあとにディメンションズの第1の世界の地球人類を持ってくると、落差が激しすぎて水力発電でも出来そうな気になってきますね。