今回以降のお話は今後ディメンションズの第伍章以降が解放されると真っ向から矛盾するかもしれません。
ところでこの世界では武が因果導体から解放された後の筈なのにまだ絡まっているのか、という点については、実は因果導体の解放から因果の絡まりの解消までにはかなりタイムラグがある。
例えば原作オルタネイティヴでは武が2001年12月29日の横浜基地防衛戦の前に00純夏と結ばれて無意識に因果導体特性が解消されているが、武がエクストラ世界に帰ってエクストラ世界を再構成したのは、2002年1月2日に
エクストラ世界の再構成、つまり隣の世界と因果が絡まった状態からの解放は、武が因果導体から解放されてなおかつエクストラ世界に帰ることが条件とされており、この暫定第4の世界の武がエクストラ世界に帰還しないまま戦死してしまったということは、絡まった世界が完全にほどけるまでの途中で止まってしまった不安定な状態と言える。
また、ハイヴとBETAが第1の世界に出現したのが2001年なので、時期的には世界の絡まりがほどけるより前の筈だ。これが因果が絡まった状態を維持しているとも考えられる。
第1の世界が再構成前のエクストラ世界であるならば、まりもショックで逃げてきた武を送り返す際に第1の世界の武と夕呼には白陵大学への不法侵入からの原子炉占拠で前科がついているはずだが、そこからどうやって夕呼が光菱ケミカルの専務になれたのかが気になる所だ。可能性としては、
1.前科を研究実績で打ち消した
2.武に関わる因果の流出が続いて証拠が揃わなかった
3.絡まったまま半端に世界が再構成された
4.そもそも第1の世界の夕呼は再生医療関係の研究発表をした時点で白陵大学付属柊学園の物理教師ではなく教授として白陵大学に研究室を持っていたので、不法侵入扱いにならなかった
5.因果導体の武が第1の世界に来ていない、つまり第1の世界は暫定第4の世界に対するエクストラ世界ではない
などが考えられるが、当人に聞いてみたところ4であった。ただし、3が起きていたとしても認識出来ないので何とも言えない。
ともあれ、第1の世界の夕呼専務は2001年の時点で並行世界と因果導体について実体験で知っていたことになる。なるほど、最初から隣の世界の絶望的な事情を知っていたならば、BETA対策を誰よりも真面目に取り組むのも分かる。
話は変わるが、イモータルズの夕呼のサポートをしている
実はこれ自体が以前に第1の世界が因果導体と関わった証拠のようなもので、話題として出すのも憚られるので夕呼専務にも確認していないが、2001年に死の因果が流入して死んでしまったからに他ならない。
にもかかわらず夕呼専務は暫定第4の世界の難民を第1の世界に連れて行っても因果の流入は起きないと主張しているわけだが、これは2001年の時点で因果どころかハイヴとBETAが物理的に流入しており、それで却って因果の流入が止まっているからだ。
そう考えると、この並行世界群におけるBETAの並行世界進出は、因果導体による因果の流出・流入に便乗していると推定出来る。
……便乗? 果たして本当にそうだろうか?
一通りの情報が揃ったアイリスディーナの中で何かが引っかかった。
難民の受け入れに伴う因果の流入については問題無いと主張する夕呼専務に対し、夕呼司令が
普通に考えるととんでもない言いがかりであり、真白も愚痴を言いながら思いだしてまた腹を立てていたのだが、BETAの流入によって因果の流入が止まったという
アイリスディーナ「なるほど、そちらの世界にBETAを流入させたのは香月教授ですか?」
夕呼司令「は?」
真白「……オイ、何を言い出すんだよ」
管理官「流石に
管理官自身がつい先日中根大隊長に言われた言葉なので夕呼専務や真白に代わって抗議を試みたのだが、それを止めたのは他ならぬ夕呼専務の言葉であった。
夕呼専務≪あんたたちはちょっと黙ってて。……ベルンハルト……エーベルバッハ中将、どうしてそう思うのかしら?≫
アイリスディーナ「はい、難民による因果の流入が大丈夫というのは、
夕呼専務≪へえ、面白い考察ね。……そっちの私より先にあなたが
夕呼司令「ハァ!? あんた何してくれてんの!?」
夕呼専務がこの疑惑に対して肯定の言葉を吐いたことでイモータルズと横浜基地双方が困惑した。
管理官もまさかあのときの中根大隊長の苦し紛れの言いがかりが真理を突いていたとは夢にも思っておらず、絶句した。
死の因果をBETAに置換するなどというのは、もはや死そのものよりもBETAを忌み嫌っているオルタネイティヴ系世界の人間にも無い発想だ。
だがアイリスディーナ達の評価は全く違った。
アイリスディーナ「いや、流石は香月教授です。盲点を突いた画期的解決法だと感心するほかありませんね」
グレーテル「ああ、まさかこんな解決法があるとはな」
管理官「それは一体どういう……?」
アイリスディーナ「だってそうでしょう?
因果が流入して50億人の死という
そして
まあそれはBETAを難なく倒せるから出てくる評価なのだが。
夕呼専務≪まあそうね。つまりイモータルズの仕事というのは、
夕呼専務が裏事情を白状し始めた。なるほど、一見マッチポンプに見えなくもないが、こう説明すれば大多数の人々の死の回避という大目的にかなってはいる。
祷子「そう言えばハイヴが出現する直前に、小さな国なら滅びかねない勢いで不審死事件が相次いでいたとありましたわ。ハイヴ出現の前兆扱いされておりましたが、あれはそういうことだったのですね」
クローン衛士達の中でも楽器を嗜む文化人である
夕呼からするとその所為で
そのハイヴ信仰はオカルト方面ではBETAの活動開始後ですら続いているのがオカルト誌『月刊ネオ・ウルトラ・アトランティス 2021年9月号』などに見られる。もしかするとこの信仰も国防隊がいつまでたっても真面目にBETAに対処しようとしない一因かもしれない。
美冴「流石祷子、よく勉強してるな」
管理官「それならそれで納得して仕事しますが、専務、何故今まで説明が無かったのですか?」
夕呼専務≪知ってたら
管理官「それは……まあ……」
確かに中根大隊長に
夕呼専務≪それに外向けに正直に説明するのはもっと困難よ。自らBETAを呼び込んだけどそれは並行世界から流入する死の因果を回避するためだ、なんて言ってどれだけの人間が納得すると思う?≫
真白「まあ殆どいねえわな。BETAの方だけ持ち出して糾弾されるのがオチだ。だったら言わずに対処だけしとくのが上策ってこった。あたしはそれで構わねえぜ」
いまだにハイヴを信仰している連中は
明かされた事実に対し、イモータルズの面々はそれぞれ納得を得たようだった。
並行世界からの因果流入によって大量に人が死ぬ、なんて説明しても事が起きる前では胡散臭く思われるだけで、実際に大量に死んでからでないと最低限の納得すら得られないだろう。それですら予言を成就させるために何らかの手段で殺したと言われかねない。夕呼が死の因果を実感しているのは自らが因果律量子論の権威である上に親友のまりもが隣の世界と同じような凄惨な死を迎えたからに過ぎない。だから黙って対処するしかないのだ。
それは結局の所、世界の理解が得られずとも人々を守るために戦い続けてきたこれまでのイモータルズの姿と大して変わらないのであった。
前回と同じく、第1の世界がエクストラ世界ポジションだとしたら夕呼先生達の原子炉占拠前科はどうなったのか、について独自の回答を出しました。
因果流入による50億の死を回避するために本当に夕呼先生がBETAを呼んでた、というのも独自解釈です。BETAが出現した原因がわかる所まで公式シナリオは進んでません。
『月刊ネオ・ウルトラ・アトランティス 2021年9月号』というのはディメンションズ第参章章末のエドワーズ・レポートに読者投稿の文面が掲載されているオカルト雑誌です。その読者投稿の内容をまとめると「BETAを敵と見なして抵抗する政府の対応は間違っている。BETAは上位次元の存在に違いないから抵抗の意思が無いことを示して許しを乞うべきだ」などと恭順派レベルのことを宣っています。これが絶望じゃなくて極限の平和ボケから出てきた言葉だっていうのがヤバい。