【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 前回に続いてプラス評価をいただきました。ありがとうございます! 執筆意欲に大変効きます。


317. フフッ、前回のお返しよ

夕呼専務≪まあ究極的には白銀が世界の再構成に成功するか、或いはループでもしてくれればリセット出来たんだけど、それまで毎日人がばたばた死んでいくのを見過ごすのもどうかと思ってね。ハイヴを呼び込んだとしても数年は活動開始出来ないと見込んでいたし、実際時間稼ぎにはなったでしょう? その稼いだ時間で戦術機とイモータルズを用意して時間切れにも備えておいたわ。……それで実際に時間切れになっても音沙汰が無いからどうしたのかと思えば、よりによって白銀がループを抜けた後に戦死してたとはねぇ≫

 

 夕呼専務は少し遠い目をした。時間稼ぎの策を講じた夕呼にとっては最悪のパターンに入った形だ。

 

夕呼専務≪そうなるとこれって結構な博打なのよね。何もしなければ50億人死ぬけれど、BETAへの対処に失敗すれば絶滅するのよ? それに実際の死者数も思った程は軽減出来てないわ≫

 

 実際、ハイヴ実体化から活動開始まで9年もあったため、対処には余裕があった筈なのだが、日本国防隊などは夕呼専務がどれだけ危機を訴えても全く真面目に対処しようとしないので、夕呼は絶滅という最悪の結末が見えて焦っていた。あまりに理不尽な流れに、置換しきれなかった因果があの国防隊の怠慢に現れたのではないかと何度も疑った程だ。

 

グレーテル「香月教授、言葉が足りませんね。原因不明で50億人が死んだとしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と予測したのではないですか?」

 

千鶴「……あっ!」

 

 夕呼は何もしなければ50億人の被害で済むと言ったが、政治方面の嗅覚が鋭いグレーテルはそれだけで済むはずがないと真っ先に気付いた。

 そう言われて、政治の素養がある千鶴にも恐らくそれが正しいと理解出来た。

 わざわざ自分に批難が集中するように露悪的な物言いをするのは、夕呼の悪い癖だ。天才故に何でも出来てしまうからか、責任感がありすぎるのだ。

 

アイリスディーナ「なるほど、どっちにしろ滅ぶなら、人類同士で憎みあって滅ぶよりも外敵相手に戦った方が遙かにマシと言えますね。準備期間を考えればBETAに勝てる可能性は十分あったことですし」

 

夕呼専務≪……やりづらいわ。どうしてそこまであたしを信用してるのよ?≫

 

 言われたことは合っているのだが、アイリスディーナ達の意味不明な信頼に夕呼専務は困惑した。

 

アイリスディーナ「それはもう、香月 夕呼と言えば、その実績が近隣の銀河まで轟くほどの偉大な頭脳ですから」

 

グレーテル「地球出身の偉人として、デグレチャフ元帥と並んで1番か2番に名を挙げられる程です」

 

夕呼専務≪ええ……何よそれ≫

 

 自分の知らない所で銀河に名が轟いていると聞いて夕呼専務が益々困惑した所で、話が一段落したと見た夕呼司令が口を挟んだ。

 

夕呼司令「ハァ……何が実験室レベルの試行よ? 実験の主体はBETAじゃなくてあんたじゃないの。道理で信用出来ない筈だわ、この女狐」

 

夕呼専務≪まあ()()()そうね。情報が無い段階で違和感に気付いたのは流石あたしと褒めておこうかしら。でもBETAの流入元がこの世界なら、この世界ではむしろBETAが減った筈よ? BETAも因果の流れに乗じて川下りのように送ることしか出来なかったから、他の世界への影響はほぼ無かったようだし≫

 

 つまり陰ながらBETA流入元の世界の人類の延命にも寄与していたということになる。また、こちらの並行世界群では因果導体が乱した因果の流れに乗じてBETAが並行世界を行き来しているので、この範囲内ではBETAの並行世界進出に00ユニットの鹵獲はそもそも関係なかったという結論が導かれる。

 

夕呼司令「褒められてこんなに腹が立つのは初めてよ」

 

夕呼専務≪フフッ、()()のお返しよ≫

 

 オルタネイティヴ世界からエクストラ世界へ武が数式を貰いに行った際には逆にオルタネイティヴ世界の夕呼がエクストラ世界の夕呼を騙していたので、これで一勝一敗といった所だろう。結局今回のこの二つの世界でも夕呼(めぎつね)同士が化かし合いをしていたのであった。

 

 一方アイリスディーナは、並行世界統合で因果の流入が起きた場合の有力な対策が見つかってその収穫に満足していたが、まだ確認すべきことが一つあった。

 

アイリスディーナ「香月教授、確認なのですが、そちらの世界の白銀 武と鑑 純夏、本人の方は()()()()()()()()()?」

 

 つまりは因果導体に関わったあとのエクストラ世界がそのまま続いているのならば、因果の流入のせいでまりもを死なせて周囲の多くの人間に忘れられた武と、同じく因果の流入で意識不明の重体になった純夏がその後どうなったのかということだ。

 三千世界作戦(オペレーション・オーバー・ザ・ワールド)の段取りには純夏の保護も含まれる。ついでに武も救助出来るならしておいた方がいいだろう。

 これに対し、夕呼専務は表情を露骨に曇らせながら返答した。

 

夕呼専務≪白銀は横浜でずっと鑑の看病をしていたけれど、ハイヴが活性化して以降は行方不明よ。運が良ければ……()()()()かしら? 横浜ハイヴに()()()()いるかもしれないわね≫

 

アイリスディーナ「……ありがとうございます。グレーテル、もし見つけたら()()()()()してやれ」

 

グレーテル「承知した」

 

 最大限の治療というのは、オーバーリザレクションを使ってでもということだ。BETAの捕虜になっているとするならばオルタネイティヴ世界の純夏やアンリミテッドルートの武と同様に脳髄シリンダー状態であることが予想されるのだから。

 

 

 

 さて、この暫定第4の世界で制圧したハイヴで実施したこれまでの時空観測結果によると、反応炉が起動した状態ではそれぞれが並行世界に繋がる経路を確立していたが、全ての反応炉を休眠させてもまだ他の並行世界へ繋がる経路が完全には塞がっていなかった。ということは、逆にこちらへ繋がる力が働いている可能性がある。

 アイリスディーナ達のクローン衛士としての記憶から紐付けられる世界座標と照らし合わせた結果、この暫定第4の世界のハイヴから繋がる世界については、恐らく第1の世界であろうことが分かっている。これで第1の世界での観測結果でもこの暫定第4の世界()()に繋がっているのならば、第2の世界 = 暫定第4の世界という等式が確定する。

 ともあれ、やはり因果の絡まりなどを利用してこの並行世界群全体が1つの防壁を構成しているようで、その全てのハイヴを排除しないと防壁のロックを完全には解除出来ないのだろう。

 

 

 アイリスディーナは部隊を3つに分け、それぞれの世界でハイヴの攻略と楔の塔の建設、住民の保護を進めることになった。

 

■第1の世界:

 元はBETAの侵略を受けていなかった世界で、2001年に因果導体がもたらした死の因果を回避するために夕呼が並行世界のハイヴを呼び込んだ。

 光菱ケミカルを母体としたイモータルズが発足した世界で、既存の定義に当てはまらないおかしなハイヴが存在する。

 暫定第4の世界と因果が絡まっている。

 

・グレーテル・イェッケルン准将

・シルヴィア・クリューガー准将

・ウルスラ・シュトラハヴィッツ准将

 

■第2の世界(=暫定第4の世界?):

 第1の世界へBETAが並行世界侵略を開始した世界。様々な特徴の一致から、イモータルズが飛ばされた暫定第4の世界と同一ではないかと推定される。

 ともあれ第1の世界と繋がっていることは間違いないため、第1の世界のハイヴを確保して詳細測定することで座標が確定する。

 

■第3の世界:

 第1の世界の夕呼専務が戦術機や衛士の情報を引き出した世界。伊隅戦乙女中隊(いすみヴァルキリーズ)に臼杵 咲良が存在するなど、アニメ版オルタネイティヴ世界に近い。

 桜花作戦(オペレーション・チェリーブロッサム)参加者に作戦成功の記憶が無いので失敗したのではないかと推定されているが、かといって失敗の記憶がある者もいないので結果は不明。

 衛士達が記憶している限りで小倉ハイヴが無いというのも理由に挙げられるが、それ以外にも佐渡島と横浜の頭脳(ブレイン)級が原作同様に破壊済みであるため、第2の世界と同一という可能性は薄い。

 

范 氏 蘭(ファム・ティ・ラン)少将

・イングヒルト・シュトラウス准将

・アネット・ホーゼンフェルト准将

 

■暫定第4の世界(=第2の世界?):

 黒の宣告(シュヴァルツェスマーケン)抽出中隊が憑依(ポゼッション)で突入した世界。イモータルズもG弾でこの世界に跳ばされてきた。

 小倉ハイヴが存在する他、甲21号作戦で佐渡島ハイヴの反応炉を一旦は制圧に成功している。しかしその後00ユニットが再起動しなくなり、横浜基地の防衛には成功したが喀什(カシュガル)ハイヴを攻めることが不可能になったのでまずは手近な鉄原(チョルウォン)ハイヴに挑んで失敗、その後人類は敗北の道を辿った。

 第1の世界と因果が絡まっている。

 

・アイリスディーナ・エーベルバッハ中将

・テオドール・エーベルバッハ准将

・リィズ・ホーエンシュタイン少佐

 

 最初に憑依(ポゼッション)で入ってきた暫定第4の世界に仮設司令部を置き、第1の世界、第3の世界に三名ずつ振り分ける形だ。もし第2の世界が第4と別に存在する場合は第4の世界に残った三名がそちらに赴くことになるだろう。

 これまでの状況から分かる通り、この並行世界群の内部移動には制限がかかっていないので、万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)転移(トランジション)モードで移動することになる。先に触れたように、第1と第3の世界の座標はイモータルズに所属していたアイリスディーナ達の記憶から紐付けられる。

 

 

 

 そうして第1の世界で活動開始した結果、政府と折衝する価値なしという判断になったのが先のグレーテル達三人であった。

 第1の世界でもハイヴをグレートブラスターで溶かすのはやめておいて、迅雷で速やかに制圧、TOM(トム)で反応炉室を確保して、各ハイヴに観測機器を設置して時空観測を行う形になった。

 そういう事情もあって、占拠したハイヴを寄越せという政府の要望に対しては寝ぼけたことを抜かすなという端的な返答になったわけだ。ハイヴの確保は利益云々ではなく三千世界作戦(オペレーション・オーバー・ザ・ワールド)の遂行に必要なのだ。現地の政治的利害などに構ってはいられない。

 良かったことと言えば、祉乃に巡り会えたことと、横浜ハイヴに囚われていた二人を救出して無事治療出来た事くらいだ。

 純夏と武には非常に――特に武には純夏を完全に治療したことを大袈裟なくらいに感謝されたが、グレーテル達としてはこの世界の日本があまりにも信用出来ないので、その後の扱いを危惧して二人をイモータルズに預けることにした。

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