今回も第3の世界の夕呼先生が苦労して人類を引っ張っていくお話です。
この第3の世界の現在は2023年。
バビロン災害により地球の人類文明が半ば壊滅したにもかかわらずこれを達成出来たのは、急速な技術の発展により人類の生産力と軍事力が回復したからだ。
まずBETAの落着ユニットを寄せ付けないSHADOWが何とか維持出来ていたのは幸いだった。これが出来ていないと次から次へとおかわりがやってくるので話にならない。更に第4世代戦術機の完成と数の不足を補うための自律稼働戦術機、そしてクローン衛士の導入により、防衛線の安定化が可能になった。無論クローン衛士は第1の世界の夕呼からもたらされた技術によるものだ。
クローン運用について、この世界の人間には忌避感が薄かった。一度滅びかけた世界で今更生命倫理がどうのこうのと贅沢を言っていられないし、人々の盾となることを志す衛士当人にとっても望む限り戦い続けられるのは好都合でしかなかったからだ。ならば当人のやる気さえあれば言うべきことは無い。そこに地球の救いの女神である夕呼の発案という信用が後押ししたことで、各国のクローン衛士導入は速やかに進められた。
クローン衛士は出撃前にバックアップした記憶を引き継いだ形の復活が可能なので、死なない上に経験を持ち越せるということで、導入以前よりも遙かに状況が好転した。また、当然負傷した衛士も同様に復帰させることが出来ていた。リタイアが無くなったことで、この世界の衛士達の技量は日増しに向上していた。
ただしこの世界のクローン衛士はこの世界で生きている衛士を元に作っているので、イモータルズのように昔に戦死した衛士をわざわざ起用したりはしていない。
第1の世界の夕呼と同様のアカシックレコードを辿るがごとき手法を採用すれば実はバックアップ体制の構築前に死んでしまった衛士を復活させることも可能なのだが、その衛士達を自分の命令で死なせてしまったこちらの夕呼は、
戦力的には生き残っている衛士のバックアップを取って次からクローンで復活させても問題は無いので、夕呼は結局既に戦死している衛士の復活を避けた。
夕呼の自罰的な所は、様々なものを喪ったことで益々悪化していた。しかし夕呼の本質を理解していない周囲の人々は、次々に実績を出しているのに吃驚する程謙虚だと益々尊敬の念を強めていた。
夕呼のメンタルは常人よりは遙かに強い。強いが、傷つかないわけではない。実際アンリミテッドルートの夕呼はオルタネイティヴ4が凍結されたあと飲んだくれて姿を消している。
そのアンリミテッドルートの夕呼と第3、暫定第4の世界の夕呼の様子は大分違うが、これは前者が何の成果も出せないままの研究打ち切りだったのに対し、後者は多大な犠牲と引き換えに成果を出してしまったことに起因する。
特にこの第3の世界の夕呼は親友と理解者を立て続けに喪った引き換えに
それでいて天才の名にふさわしい成果をどんどん出すので、夕呼が壊れていることに誰も気付いていなかった。しかも夕呼の所業を全面的に肯定してしまうイエスマンが増えていた。
この頃、
彼女達は夕呼の性格を熟知していたわけではないが、その鬼気迫る様子を同じ『遺志を受け継ぐ者』としてのものだと理解した。散っていった
地球の女神と
さて、Type-05『黒潮』から始まる第4世代戦術機の最大の特徴は、ムアコック・レヒテ機関の搭載だ。つまりXG-70
夕呼と
ただし第4世代戦術機には運用上の問題が3つほどあった。
1つ目の問題はサイズで、小型化したとは言えムアコック・レヒテ機関はまだまだかさばるので、搭載のためにかなり大型のバックパックが必要になった。そのため重量バランスが悪く、格闘戦には向いていなかった。
バックパックは一応着脱可能だが、バックパックの無い状態では荷電粒子砲もラザフォード
この問題を解決するにはムアコック・レヒテ機関の改善にまだ年単位の時間が掛かるので、夕呼達は多少不便ではあるが使い物にはなるという段階で一旦成果として出すことにしたわけだ。
2つ目の問題はラザフォード
コストの問題は1機の有人機に複数の無人機をつけることでどうにか現実的な水準に収まった。また、いざというときに無人機を盾に出来るので衛士と00ユニットの損耗も抑えられた。そうなると次は00ユニットをどうやって量産するかだ。
00ユニットの素体にはやはりより良い運命を引き寄せる力が強い
そして00ユニットに不可欠なODLをどうするかという問題が実は最も解決に時間が掛かった。2002年初めの
これについては、幸いにしてこの世界の夕呼の研究内容と新たに仕入れた高度医療技術を合わせることでODLの代替素材が製造可能になった。むしろ研究が進む程にBETA由来のODLよりも劣化しにくいものが製造出来るようになっていた。
3つ目の問題は稼働のために必要になるG元素をどこから調達するかだ。これは最終的には、人類の生存地域から離れた所のハイヴを敢えて残して物資打ち上げ直前の時期を見計らってG元素を強奪し、反応炉を制圧せずに帰ってくることで何とかした。つまりは養蜂のようなものだ。
しかしこれは最初の1回が問題だった。横浜基地が蓄えていたG11は全て
そしてG元素無しの黒潮や第3世代までの戦術機でアトリエ攻略をさせるのは
そう、不可能に近いが全くの不可能ではなかった。
エース級の衛士1個大隊に
斯衛としては
そしてバックパック無しの黒潮は第3世代戦術機と
G元素の初回回収作戦に挑むエース級の衛士には
夕呼は以前より更に他人を信用しなくなっていたが、まりもの教え子であり自分と同じ覚悟を持っている
この再編成時の隊長は宗像 美冴大尉であるが、伊隅隊長時代からの生き残りの総意により初代隊長である伊隅 みちるの名前をそのまま継いでいくことが決まった。
伊隅 みちるの妹であり帝国陸軍で衛士をやっていた伊隅 あきらは、この
このG元素回収作戦は、エース部隊の半数以上の犠牲を前提としているのだから、普通に考えるとかなり無茶な作戦だ。犠牲を抑えることを重視するならば、先行量産型黒潮を元々G元素を持っている米国に供与して突入攻略を任せるという選択肢もあり得るが、その米国も
つまり夕呼がクローン技術による衛士の復活体制構築を推し進めたのは、この犠牲を前提とした最初のG元素回収作戦の遂行を見込んだものだった。
結果として、夕呼が送り出した選抜大隊は見事に任務を達成した。生き残ったのは2割に過ぎなかった。
しかしこの作戦に参加させた衛士達を夕呼がしっかり全員復活させた上で最も困難な作戦を成功させた英雄として公表したことで衛士達の社会的地位は大きく向上し、わだかまりは殆ど残らなかった。むしろ命懸けの作戦の功績が大々的に評価されたことで衛士達は気を良くしたくらいだ。そこまで含めて夕呼の想定通りだ。
そして次回以降は簡単だ。獲得したG元素で第4世代戦術機を稼働させ、アトリエ攻略任務を与えれば、ラザフォード
まるでダンジョンに冒険者が突入して素材を持ち帰るかのごとく当たり前にG元素が手に入るようになったことで、余剰のG元素は民間向けの発電にも利用されるようになり、人類社会は大きく潤った。ほぼ壊滅状態だった娯楽にすらリソースを割く余裕が出てきたくらいだ。取り残された棄民のごとき存在だった地球人達が、僅か数年で繁栄の時代を迎えたのだ。
夕呼に対する信頼は益々盤石となり、「香月 夕呼と
そう、ここでもクローン衛士達はイモータルズと呼ばれていたのだ。しかし人々が危機を正しく認識しているかどうかでその扱いは雲泥の差であった。第1の世界のイモータルズのクローン衛士も殆どが善良なので、自分達が讃えられるために世界を苦境に追い込みたいとは思っていないのが何とも難しい所だ。
なおイモータルズ所属衛士で善良かどうか疑わしい例としてはサンダークやベアトリクス、リィズがいる。
正史で判明している第4世代戦術機はXF-2000aテュフォーンやMe101Pフェンリルですが、夕呼先生は凄乃皇のように案外日本名を付けたがるので、こちらでは陽炎型駆逐艦の3番艦から黒潮になりました。