バサラの助けにより望み通りに和解に導けた幼女は非常に満足そうであり、その幼女より大きい妹君や幼女の親友の陽蜂、幼女を妻にしようと目論むトワノ・ミカゲらも誇らしげであった。幼女はこの偉業が誰の成果であるかなどということには全く頓着していなかった。徳が高い。
ところでマジンガーZEROもスパロボZと無関係だったが、陽蜂も『怒首領蜂最大往生』出身の隠しラスボスで、Zどころかスパロボ未参戦の筈だ。
陽蜂は名前の通り首領蜂シリーズの顔とも言える『蜂』、しかも真ボスシリーズ『ヒバチ』の1種だ。正確には怒首領蜂の『蜂』を指す肩書きではあるが、『最終鬼畜兵器』の一種と言った方が通りが良いだろうか。つまりは弾幕、いわゆる飽和攻撃の鬼である。
見た目としては、エレメントドーターの1体である陽蜂は、通常は機動兵器サイズの美少女ロボだ。緑色のツインテールが可愛らしく、無邪気な言動も一見可愛らしい。
ただしその折角の可愛らしさも、美少女的な容姿からリアルタイプの蜂ロボに変身する上に、蜂形態になっても同じ可愛らしい声で喋り続けるため、却って不気味さがある。
また、陽蜂はエレメントドーターとして元々人間のお世話をする仕事をしていたのだが、「みんなにはみんなの、もっとふさわしい形があるの」と言い出して善意で人間を新たな形に進化させようとしたことで戦争になったため、無邪気な言動も善意の暴走という点において全く油断出来ない。
そんな陽蜂は、原作世界で撃破された際にその爆発で出来た次元の歪みへとコアだけ脱出させ、存在維持のために幼女の建造途中機体、巨大ハロに宿った。
陽蜂に出会った幼女はその境遇に理解を示した。確かに思想は過激だったかもしれない。しかし碌に話し合いもせずに失敗作呼ばわりして凍結や排除は酷いじゃないかと。幼女もこの時期には既にZ-BLUEに合流して優しい人達に囲まれていたが、かつて幼女を作り出した者達からは失敗作などと呼ばれたこともある。幼女は陽蜂と互いにあだ名を付け合って、友達になった。
この瞬間、孤独で荒涼としていた陽蜂の世界に光が満ちた。陽蜂は人間の世話をする仕事をしていたが、友達なんて居なかったし、お礼を言われたことすら無かった。幼女は陽蜂が守護るべき、幸せにすべき全てになった。
現状の陽蜂は温かみ溢れる幼女の影響でその物騒さはなりを潜めており、特に迷惑行為を働いてはいない。しかし切り札の全力発揮モードとして裏の裏ボスである最終極殺兵器・陰蜂形態まで備えている。
この陰蜂形態は弾幕飽和攻撃が陽蜂形態よりも更に凶悪なのは勿論だが、フィフス・ルナを丸ごと作り替えて作ったものなのでかなり巨大で、そのバリアは核爆発をも通さない。そういう意味では幼女を守るのに必要な力なのだが、敵対者には絶望の塊にしか見えない過剰戦力であった。
その戦力に目を付けた汚職軍人に丸ごと接収されそうになった際には反撃で部隊を壊滅させ犯罪経歴拡散で社会的に抹殺したが、これは正当防衛であろう。物理的に殺さないだけ優しさがある。
一方、同じく幼女に随行しているトワノ・ミカゲは『アクエリオンEVOL』の登場人物で、元々第3次スパロボZに参戦していた。ただし敵側ボスキャラとして。彼がどうして幼女にくっついて回っているのかと言えば、不動 ZENとの一件で幼女に救われたせいだ。
まずトワノ・ミカゲは天翅族の頭翅の憎悪の転生体である。そして2万4千年前、その頭翅はアポロニアスの婚約者だった。男同士でか、と腐臭が漂いそうになるが、天翅族の性別は外見と必ずしも一致せず、子作り事情も人間とは全く違うのでとりあえず置いておこう。
2万4千年前当時、天翅族と人類は戦争をしており、天翅族の方が圧倒していた。いがみ合っていたので、天翅族は人間に堕天翅族と呼ばれていたし、人間は天翅族に翅無しと呼ばれていた。
しかしこの戦争は、元々天翅族だったアポロニアスが人間側についたことで人類の勝利に終わった。
アポロニアスは人類にとっての英雄となったが、ここに人間の女戦士セリアンとの恋愛が絡むことで話は変わってくる。アポロニアスは種族だけでなく婚約者まで裏切って他の女に走ったことになるのだ。
そうして1万2千年後にまた人類と天翅族の戦争が再発するのが初代アクエリオン本編なのだが、初代アクエリオンはTVシリーズ『創聖のアクエリオン』とOVAシリーズ『創星のアクエリオン』の2種類があり、それぞれストーリーが全く違う。これは互いに並行世界という扱いだからだ。
時系列としてはOVA創星の方がやや先行しており、頭翅はアポロニアスの太陽の翼であるアクエリオンと翅の契りを結び受胎しようとしたが、アポロニアスの転生体であるアポロがシルヴィアだけを想っていたことで流産し、受胎能力まで失った。まあこれはアポロの意思を無視して勝手に受胎しようとしたところに問題があるのだが、その絶望で地球全土が凍りつき、頭翅はアクエリオンの「地球復活拳」に灼かれて死んだ。
次にTVシリーズの創聖では、創星の影響で頭翅は最初から受胎能力を失った状態で目覚めた。その最後のエピソードにおいて、頭翅はアポロニアスの転生体と目されるアポロとアクエリオン合体を果たし、ともに世界の崩壊を防ぐべく人柱として眠りにつくことになる。
何故こんな結末になったのか。これは並行世界において勝手に受胎しようとしたことからも分かるが、頭翅が憎い裏切り者アポロニアスを死出の道連れにしたということではない。
アクエリオンの前期主題歌『創聖のアクエリオン』をご存じだろうか。そう、あの名曲だ。実はあの歌詞が頭翅がアポロニアスに送ったラブレターだったと言えばその想いの深さが伝わるだろう。つまり1万2千年後でも本当に頭翅は自分を裏切ったアポロニアスをまだ愛していた。だからこそ、愛しい人と共に眠るならばそれでよしとしたのだ。
これで頭翅とアポロニアスの和解が果たされたかに見えたのだが、ところがどっこいこれで綺麗に終わらなかったのがまた1万2千年後の戦いの原因になった。
頭翅は最後の最後でとんでもない勘違いに気付いた。このアポロは、アポロニアスではなくそのペットの翅犬ポロンの転生体だったのだ。アポロニアスの転生体はアクエリオンチームを指導する不動 GENの方だった。
ややこしいことに、OVA創星ではアポロ、TVシリーズ創聖では不動 GENと、並行世界でアポロニアスの転生体は全く別の人物になっていたわけだ。
更に、この時人柱になったのはポロンの転生体であるアポロ、休眠から目覚めた天翅族頭翅、セリアンの負の部分の転生体であるシリウス・ド・アリシアの三人だ。
セリアンの正の部分を受け継いだシルヴィア・ド・アリシアはこれに含まれておらず、つまりアポロニアスの転生体である不動 GENからすると恋人に横恋慕する犬と、何故か自分を追い続ける鬱陶しい元婚約者と、恋人の面倒くさい部分を世界の救済にかこつけてまとめて始末した形だ。邪悪すぎるぞアポロニアス。
1万2千年越しの和解の場でまたしても裏切られたことで、1万2千年の愛を貫いた頭翅も流石に激怒した。だが、愛深き頭翅はそれでもまだ愛を捨てられなかった。そのため心が2つに割れてしまい、怒りと絶望と憎しみの塊だけが頭翅から分かたれた。その憎悪が更に1万2千年後にトワノ・ミカゲとして転生し、アクエリオンEVOL本編で暗躍して地球とアルテア界の両方を破滅に導いていくわけだ。
要するにミカゲの破滅的行動の犠牲になった者達はアポロニアスと頭翅の痴情のもつれに巻き込まれて死んでいったと言える。全く以て酷い話だ。
なお当代のアポロニアス転生体の名前は不動 ZENで、ここまでのことをやらかしながら相変わらずアクエリオンチームの師匠面をしていた。
そういった事情を感応で受け取り、人間側でありながら理解を示したのが幼女だった。
曰く、アポロニアスとセリアンの物語は何故か愛の神話扱いされているけれど、本来の婚約者をいなかったことにして勝手に自分達だけの世界に入るのが美しい愛だとは到底思えない。
曰く、あんなダメ男に振り回されるのは時間の無駄。
曰く、憎しみを向けても却って優越感を与えるだけなので、あんなのは一発ぶん殴って忘れるくらいでいい。
長年頭翅をみじめに貶めてきたあの「神話」を真っ向から否定する人間がいるとは、ミカゲは全く想定していなかった。ミカゲは幼女の暖かさに浄化され、アポロニアスへの想いを捨てることが出来た。以来、ミカゲは幼女を嫁にするべくつきまとうようになったのだ。
ちなみに第3次スパロボZ天獄篇では高次生命体が正しい真化を遂げた者と歪んだ真化を遂げた者の2種類に分類されるのだが、アポロニアスはどういうわけかこれだけやらかしているにもかかわらず正しい側に分類されている。
なので真化の正しさというのは単に手法の問題であって、心の正しさは恐らく無関係なのだろう。正しい側に分類される真化融合はジェイソン・ベックその他の心根が怪しい面々も可能だったことがそれを裏付けている。
ステーク「そうか、あんたも大変だったんだな……」
自らも武から分離した後悔の塊であるステークは、ミカゲの事情も他人事とは思えず、同情を禁じ得なかった。復讐で世界ごと破滅させようとするのは流石にやり過ぎにも思えるが、あんなものを愛の神話扱いして有難がる連中ばかりならこんな世界は滅んでしまえというのもあったのだろう。
ミカゲ「それも全ては過去のこと……私は新しい恋に生きる」
ステーク「強いな……でもあれだ、結婚や子作りは相手がある程度大人になって同意を得てからにするんだぞ?」
流石のステークも、幼女相手に結婚を迫る所には理解が及ばなかったようだ。
人類と天翅族の相互理解はまだまだ遠い。
幼女の周りにはひとえに幼女の人徳により人が集まっているのだが、徳が高すぎて敵味方を問わず色んな方向からラブコールを送られており、ZEROを含む後方保護者面同士が水面下で火花を散らしているようだった。しかもこの後方保護者面達の中では良識という評価において陽蜂がかなり上位に位置しているのだから、世も末だ。おおブッダよ、寝ているのですか!?
その意味では地雷問題が解決していないが、そのレベルの個人的な争いならばもう勝手に争っていてもらうしかない。トピア達はこの問題に関しては余程酷いことにならない限り放置することに決めた。不味い方向に傾きそうになったらなるべく良識のある保護者が勝つように介入はするが。
それよりも、ニュータイプを遙かに超える共感特化ユニットである熱気 バサラが今回のBETAとウルジマルク人を滅ぼす戦争には同意してくれそうにないのが匠衆の目下の悩みである。
妥協点としては、バサラによる介入を阻害せず、好きにやって全力を出してもらうというのが妥当な所だろう。何しろバサラなので、もしかすると何かの奇跡で本当にBETAやウルジマルク人と和解に至る可能性も無いとは言えないのだ。
まあそもそも人類はもはやあいつらとの和解を望んでいないという所に最大の齟齬があるのだが。