【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2025/11/23]加筆・修正・増量しました。


033. 4万kmの防衛ライン? まるで星を一周でもするかのような……

 サティが必要と考えるポータルの設置数、それは以下のようなものであった。

 

サティ≪防衛ライン構築のために100km間隔で設置するとしてまず最低400台≫

 

スコア「……多いな。今設置しているのを全部併せて18台だぞ。しかも4万kmの防衛ライン? まるで星を一周でもするかのような……まさかするのか?」

 

 4万kmの意味に気づいたスコアが目を見開いてトピアを注視すると、トピアは無言で首肯する。

 

サティ≪今朝出来た衛星監視網によると、この星の裏側はほぼBETAで埋まりつつあるわ。その領域をこれ以上広げないために星一周分の防衛ラインが必要になるの。最終的には防壁と自動迎撃装置を敷き詰めるけど、それまでフリーで放っておくのも不味いでしょう? あと地上の防衛設備が完成してもその下の地中から来られたら逐次迎撃するしか無いわ≫

 

ラリー「オイオイ、BETAってのはどれだけの勢力なんだ?」

 

サティ≪そうね……トピア分かる?≫

 

トピア「そうですねえ、あれだけの範囲に広がっているとなると、億は確実、十億に届いていても不思議は無いですね」

 

 サティはBETAの密度からざっと概算を出そうとしたが、観測出来ていない地下の数の見当が付かず、識者に聞いた方が早いと判断してトピアに振った。話題を振られたトピアは地球での事例を元におおよその数を出した。

 それは明らかに生半可な相手ではないことが分かる数だったのだが、ラリーとスコアの反応は大きく違った。

 

ラリー「ぶはは! すっげえな、何だソレ?」

 

 ラリーはこの数を聞いて爆笑した。現実に戦うとなれば笑い事ではない筈だが、かといってトピアの推定を信じずに笑い飛ばしている様子でもない。むしろその目の輝きからして、これから戦う相手が容易ではないことを単純に喜んでいる様子であった。

 一方のスコアはごく普通に深刻に受け止めていた。

 

スコア「……それは……勝てるのか?」

 

トピア「勝てなければ踏み潰されるだけです。あと連中の巣は地中4km以上まで延びるようですので、最終的にはここも安全とは言えませんよ」

 

スコア「つまりは人類に逃げ場無し、か。……この星の人口はどのくらいなんだ?」

 

 我関せずを貫いたところで結局自分の首を絞めることになるらしい。まあスコアの場合はその前に巨獣を討伐しコアを復旧させて自分の世界に逃げるという手が無くはないのだが、あれだけアプローチしたトピアを放っておいて自分だけ逃げますは流石に無いだろう。

 

トピア「今のところ私達と工場長以外には見つかっていませんね」

 

スコア「なッ……!?」

 

 人間が殆どいないと聞いてスコアは愕然とした。工場長という新たな人物が加わったが、それでもわずか五人で億の敵を相手に一体どうしろというのか。なおラリーは未だに笑っている。

 そこにサティがフォローを入れる。

 

サティ≪数に対する防衛は私と工場長、量産のプロが何とかする方法を検討している所よ。その重要な一手としてポータルが必要なの≫

 

トピア「ポータルは防衛線を補う、いわゆる機動防御戦術に必要ということですね」

 

スコア「そ、そうか、言われてみればポータルを除いた4万kmの防衛ラインの構築には目処が立っているんだったな。取り乱してすまない。それで、どういう防衛設備にするつもりなんだ?」

 

 億単位の相手をどうにか出来る量産のプロと聞いてスコアはひとまず落ち着いた。言われてみれば無策であればトピアやサティがこんなに落ち着いている筈がないし、4万kmの防衛ラインを構築出来る算段が立っているのならその超科学技術と力量は相当な物だろう。

 

サティ≪現状ではレーザータレットを大量に並べるのが最有力候補ね。射程が大分足りないからまだ改良が必要だけれど≫

 

スコア「レーザータレット……なるほど、防衛に適した設備だな。では攻撃は? 最終的には攻め滅ぼさねばならないのだろう?」

 

サティ≪活動開始後間もなくの敵拠点ならトピアが落とした実績があるわよ? 成長した拠点はもっと手強いでしょうし、一人に頼り切りにも出来ないから何か考えなくてはいけないけれど≫

 

 予想外の言葉に、スコアは目の前の少女をまじまじと見た。

 

スコア「……トピアさん、もしかして強い、のか?」

 

トピア「それなりには自信があります!」

 

 トピアが眉をつり上げてガッツポーズしてみせるが、腕は細く、到底強そうには見えない。むしろ可愛らしいだけなので、スコアはその様子を目に焼き付けた。

 

サティ≪そもそも私が地上からバックアップしているのは、閉所探索についていくとトピアの足を引っ張りかねないからなのよ?≫

 

ラリー「そういえばクトゥルフの脳(Brain of Cthulhu)のとりまきを普通に蹴散らしてたよな」

 

トピア「ラリーさんの殲滅力が高いのでそれ以降出番が無かったですけどね」

 

ラリー「まあ敵がまだまだ弱いからな。肉の壁(Wall of Flesh)を倒してからが本番だ」

 

スコア「そうか……」

 

 確かに魔法が関与しているのなら見た目上大した筋肉が付いていなくても強いというのはあり得る。

 スコアはそんな相手のピンチを救って格好つけようとしていた自分の行いが益々黒歴史化していくのを感じた。

 

サティ≪それはともかく、お互いに協力することには問題は無いかしら? レーザータレットを改良して2千万台量産したり、その稼働電力77.28TWを確保したりするのに比べれば大分負担は軽いと思うけれど≫

 

スコア「ふむ……」

 

 スコアは瞑目して暫し沈黙した後、サティとほぼ視界を共有しているトピアの目を見て答えを返した。

 

スコア「条件がある」

 

サティ≪何かしら? 可能な範囲なら聞くけれど≫

 

スコア「ポータルはこちらで全て管理させてくれ。使い勝手が悪いからと渋ったが、実際の所あれは悪用されると酷いことになる。量産するとなれば、知り合いの家に一つ設置するのとは訳が違うんだ」

 

サティ≪勿論いいわよ。むしろ一元管理してくれるなら大助かりなくらい。何しろ惑星規模の大戦争をやろうって言うんだから、移動の要のポータルが外敵に奪われたりしたら戦略がご破算よ≫

 

スコア「大戦争……そうか、そいつは責任重大だな……分かった。協力を約束しよう」

 

トピア「交渉成立、ですね!」

 

ラリー「おう、俺にも戦わせてくれよ?」

 

サティ≪勿論働いてもらうわよ。戦闘要員も貴重なんだから≫

 

 スコアが差し出した手をトピアが握り、そこにラリーも手を重ねた。こうしてトピア達はスコアとラリーの協力を取り付け、ポータルの戦略的活用とその管理担当が決定されたのだった。

 

ラリー「となればアレだな」

 

スコア「おいまさか」

 

トピア「アレとは?」

 

ラリー「DPS測定しようぜ!」

 

トピア「DPS!」

 

サティ≪つまり攻撃力がどのくらいあるのかを互いに知っておこうということ?≫

 

 サティはファンタジーな連中がまたぞろおかしなことを言い始めたぞと困惑しつつも、そこに一定の見解を見出した。

 ただし困惑しているのはサティだけではなく、スコアも頭を抱えていた。

 

ラリー「そういうことだ。で、これがDPS測定器(DPS Meter)の機能を組み込んだシェルフォン(Shellphone)と、ターゲットダミー(Target Dummy)だ」

 

 ラリーはおもむろに手に収まるほどの携帯端末と、上半身だけのマネキンのようなものを取り出し、そのマネキンのようなものを地面に設置した。

 

トピア「これは……携帯電話みたいですね? 貝殻のようなオシャレっぽさがありますが」

 

ラリー「便利系の機能を全部詰め込んだらこの形になったんだ。ポータルに比べるとかなり限定的だが、転移機能も付いてるんだぜ」

 

トピア「それは便利ですね!」

 

ラリー「だろぉ?」

 

スコア「私はあんまりやりたくないのだが……」

 

 スコアだけが顔をしかめており、あからさまにやる気が無さそうだ。

 

トピア「何でです?」

 

スコア「私は既にラリーに大差で負けているからな」

 

ラリー「それはそれとしてお前、トピアがどのくらい強いのか気になるだろ?」

 

スコア「……まあ、それはそうだが」

 

 これから戦争をやろうというのだから、味方の戦力把握は絶対に必要だ。

 

トピア「ちょっと気になったんですけど、皆さん初期ライフはどのくらいでした? 私は100でしたが」

 

ラリー「ん? 最初は100だったな」

 

スコア「私も確か100だった」

 

トピア「なるほど問題無さそうですね。ありがとうございます」

 

 みんな初期ライフは同じと知ってトピアは納得したが、サティは首を傾げた。

 

サティ≪トピア、今の質問って何の意味があるの?≫

 

スコア「いや分かったぞ。初期ライフが同じくらいなら恐らく同じスケールでダメージを計測出来るという話だな?」

 

トピア「その通りです」

 

ラリー「なるほど、普通の人間のライフが俺らの1/10の10程度だと、ダメージの測定値も普段と1桁ずれそうだもんな」

 

サティ≪そういうこと……魔法文明世界にも色々あるのね≫

 

 ただしどちらかと言うと魔法よりもゲームシステムに近いものではないかとサティは訝しんだ。

 

トピア「まあうちにも威力測定用の訓練カカシはありますけど、DPS測定までは出来ないんですよね。なので両方揃ってるならラリーさんの設備でまとめて計測するのが良さそうですね」

 

 理想郷の建設者(クラフトピアン)の使う訓練カカシとは、一旦それぞれの攻撃のダメージ表示が出たあと、一定秒数攻撃しないでいると自動回復して回復量で総ダメージを計上してくれるものである。連続攻撃なら時間を区切って秒数で割ればいいので簡単だが、大威力の代わりに間が空く攻撃や多重ボールライトニングのように規定時間きっかりで停止出来ない攻撃のDPSは計測しづらいという難点があった。

 

ラリー「そうだな。ってなわけで測定に問題は無さそうだぜ。誰から行く? 俺でもいいが」

 

スコア「やるなら私からやる。シェルフォンを貸してくれ」

 

ラリー「おう、頑張れよ」

 

スコア「とっとと終わらせるぞ」

 

ラリー「10秒計測な。合図とDPSの監視は俺がやる」

 

 ラリーの呼びかけにより、戦闘要員をやれそうな三人の力比べが唐突に始まったのであった。

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