原作での最終決戦と違い、初撃から凱の攻撃が通るという展開になったが、それでも巨大ゾヌーダロボは強く、戦いは膠着状態に陥った。
真化融合を使える面子が多いこともあり序盤は景気よく攻撃が通ったのだが、巨大ゾヌーダロボはそれを耐えきって多くの相手をリタイアさせた。人質を案じて末端部しか攻撃されないことと、物質昇華からの自己修復効率が上がっていることで、回復速度がダメージを上回ってしまったのだ。また、攻撃手段が増えたことも厄介だった。
原作ゾヌーダロボの攻撃手段は格闘、ロケットパンチ、掌からの衝撃波、頭部からのビームという程度だった。それらに加え、巨大ゾヌーダロボはロケットパンチ同様に物質昇華機能を持つ球体状の端末を全身から無数に飛ばした。また、従来伝達物質が無い環境では効果が無かったはずの衝撃波が真空中でも作用するようになっており、それに伴い従来普通の攻撃であった頭部ビームにすら物質昇華の効果が付与されていた。
甚だ理不尽にも思えるが、機界新種の行動目的は物質昇華なのだから、物質昇華の作業効率を上げるこれらの変化はむしろ機界新種の正統進化、もしくは完成体に近づいた形とも言えた。ゾンダーロボが完成体になると機界昇華のために大量のゾンダー胞子を飛ばす習性と同じだ。
巨大ゾヌーダロボの攻撃を耐えてまともに戦闘継続出来たのは、スーパーロボット軍団の中でもごく一部にとどまった。巨大ゾヌーダロボが目の前のスーパーロボット軍団を攻撃するのではなく地球に球体状攻撃端末を落下させようとしたため、それをどうにか阻止しようとした多数の機体が物質昇華でリタイヤしたという事情もあった。特に防御の要であるエヴァンゲリオンが全機リタイアさせられたのが痛かった。広範囲を庇ったアークグレンラガンも侵食を無視出来なくなり、一旦後退することになった。
これにより、同様の損害を避けるために一層本体よりも攻撃端末の迎撃に戦力を割かざるを得なくなった。その攻撃端末ですらエネルギー系の攻撃を吸収され、実弾でも生半可なものは物質昇華されるのが実に厄介であった。
残りのスーパーロボットの中では、巨大ゾヌーダロボと体格が同格であるガンバスターと轟雷が交代で前衛を担っていた。ガンバスターが前衛を張りながら持ちこたえているのは単に体格が原因ではない。2つの縮退炉が生み出す莫大なエネルギーの大半をイナーシャルキャンセラーに注ぎ込んで直接接触を防ぎ、
ノリコ「使える武器が、無いッ……!」
バスタートマホーク、バスターヨーヨーなどの格闘武器は既に物質昇華されてしまい、インジケータが使用不能を示している。
巨大ゾヌーダロボの頭部ビームに物質昇華作用があったために、光学迎撃反射武器であるバスターホームランやバスターシールドまで使用不能になっていた。
光子魚雷であるバスターミサイルは攻撃範囲が過大で本体相手には使えず、そもそも攻撃端末迎撃で全弾射耗した。
ホーミングレーザーやバスターコレダーは吸収される。
必殺のスーパーイナズマキックは威力が大きすぎて人質を殺してしまう。
そうなるとイナーシャルキャンセラーを纏った格闘で少しずつダメージを与えることしか出来ず、吸収されたエネルギーですぐに修復されてしまう。しかもその吸収と修復コストの差し引きが大幅に黒字なのか、巨大ゾヌーダロボは更に巨大になりつつある。今は全高400mほどになっているだろうか。
これまで様々な強敵と戦ってきたガンバスターからしても、ここまで攻撃が何もかも通じない強敵は
ガンバスターのメインパイロットであるタカヤ・ノリコは悔しさに唇を噛んだ。せめて人質がいなければ何とかなるのに――。
ノリコ(――ッ!?)
自分が今何を考えたのかを自覚して、ノリコは自らの両頬を張った。メインパイロットのノリコと動きが同期しているガンバスターも同時に両頬を張ることになった。
カズミ≪――ノリコ?≫
ガンバスターの索敵と火器管制を担当しているオオタ・カズミ、旧姓アマノ・カズミが訝しげな表情でノリコの名を呼んだ。エネルギー配分を綿密に調整してガンバスターをどうにかもたせているのは彼女の功績だ。
α世界ではそもそもノリコと別行動してウラシマ効果でそれぞれの経過時間が大きくかけ離れるようなことが無く、Z世界では
そのカズミの問いに、ノリコは首を振った。
ノリコ(違う。弱いのはガンバスターじゃない。あたしの心だ! あの子達は足手まといなんかじゃない。今まで一緒に戦ってきた大切な仲間なんだ。それに、ここで諦めたら折角助けに来た地球の人達も見捨てることになる。絶対に――絶対に諦めるわけにはいかない!!)
ノリコの双眸に改めて決意が宿り、落ち着いた声でその決意を表明した。
ノリコ「お姉様、絶対に助けるわ」
カズミ≪勿論よ。あの人が作ったガンバスターは、あの人に鍛えてもらった私達は、人類の希望なのよ。――来るわ!≫
巨大ゾヌーダロボの三角頭にスパークが走り、攻撃の予兆を見せた。あの強烈なビーム攻撃だ。
これに対してノリコはガンバスターにエメリウム光線Bタイプの構えを取らせた。厳密に言うと左右逆ではあるが。
ノリコ「させない! バスタァァァ! ビィィィィィムッ!!」
ガンバスターの額の地球帝国軍エンブレムに光が収束すると、桃色の強烈な光線が発射されて巨大ゾヌーダロボのビームと衝突、相殺した。いや、相殺しながら進み続けてバリアに衝突した。
光線技は吸収されるのでこれまでは丁度相殺するように使っていたのだが、気合が入りすぎたようだ。
気合が入ると気力分だけ威力が上がってしまうのはスパロボの仕様だ。瞬間的な情動によってダメージが倍になる場合もある。こちらは精神コマンド『熱血』だ。従来これはゲームシステム上の話でしかなかったのだが、第3次スパロボZ天獄篇ではこれらの現象が世界観と結びつけられて『真化融合』の入口であると明らかにされた。
ノリコとカズミは調整ミスにしまったという顔をしたが、しかしバスタービームは巨大ゾヌーダロボのバリアを貫いて右側の翼を
甲児≪ビームが通った!?≫
甲児の驚きの声を聞き流しながら、ノリコとカズミは改めてバスタービームの仕様を思い起こした。忘れがちだが、バスタービームは設定上
ガンバスターの出身であるトップ世界は、そのスーパーロボット的な見た目に反してほぼ全てのことに科学的裏付けがある世界なのだが、バスタービームの温度はどう考えても物理的におかしいので完全に浮いており、標的に命中すると
つまりは絶対零度 = 摂氏マイナス273.15度を遙かに下回ることで
原理的にどうなっているのかはともかく、加害範囲も広すぎないし命中精度も高いので、現状においては大変有用だ。
カズミ≪あの人には助けられてばかりね――このまま押し切るわよノリコ!≫
ノリコ「ええ!」
やるべき事が明確になった二人の心が交わった。
やっぱりコーチが作ったガンバスターは、二人の心が炎となったガンバスターは、無敵だ。
ZERO≪……ソウイウコトカ≫
マジンガーZEROは控えとして待機しながら第6の魔神パワー『因果律兵器』で巨大ゾヌーダロボの弱点を探っていたのだが、スーパーロボット軍団が介入したこの世界は並行世界分岐をしなくなっているので他の並行世界に巨大ゾヌーダロボがおらず、十分な情報を集められないでいた。しかし目の前で見せられたなら話は別だ。
何が起きてバリアを突破出来たのかを理解して一つ頷くと、第5の魔神パワー『変態』で左右の耳の突起部分に新たな武装を作り出した。
ZERO≪コレヲツカエ≫
甲児「こいつは――分かったぜ! 冷凍ビームを喰らえッ!」
甲児が新たな武装、冷凍ビームを発射すると、マジンガーZEROの耳の突起の両端から伸びた水色の光線がやはり巨大ゾヌーダロボのバリアを貫通して本体に到達、左の翼を
マジンガーZ本来の冷凍ビームは摂氏マイナス180度の冷凍光線なのだが、クソコテレベルの負けず嫌いであるマジンガーZEROがそれで満足する筈がない。ガンバスターへの対抗心で同様に物理の限界をぶち抜き、マイナス1億2千度の冷凍光線として仕上げていた。そのため、バスタービーム同様に物理挙動がバグって溶断という結果が現れているのだ。
なおマイナス1億2千度というアクエリオンのような数字はマイナス1億2千
ところで今回は出撃していないが
双発縮退炉ではなく人間の超・能力でしかないトップレス能力で動くのに何故かガンバスターの1万倍以上の数字を叩き出しているのは物理を無視するエキゾチックマニューバの真骨頂なのだろうが、そのキャトフヴァンディスが今回何故出撃していないのかと言えば、バスタースマッシュは攻撃範囲が広すぎて人質を殺しかねないからだ。そして他の攻撃はバスターラケットで殴るだけしかない。一点特化にも程がある。
そういう使い勝手も加味すると、実はZERO製冷凍ビームのすごい所はその温度ではない。大体大雑把な攻撃範囲になるZEROの武装には珍しく、精密一点集中攻撃が出来るようになっていたのだ。
甲児「こいつはすごいぜZERO! 光子力ビーム並の攻撃精度だ!」
甲児は和解したばかりのZEROを信用して思い切って使ってみたのだが、その性能は期待以上だった。まあ予想に反して溶けるのには吃驚したが、同時に何故バスタービームが通ったのかを理解した。
甲児は期待に応えてくれたZEROを素直に褒めた。
ZERO≪フフフ、ソレホドデモナイ≫
褒められたZEROは大変上機嫌で謙遜した。ZEROはかっこよさを極めるために色々と情報収集を始めており、いつの間にか謙遜という文化を学んでいた。学んだ対象が間違っているのではなかろうか。
甲児がZEROの成長の方向性に若干面食らっていると、ガンバスターと同じ体格のロボ、轟雷の1機がゾヌーダロボの背後からしがみつくのが見えた。
トピア「だーれだっ? ――オーバーリザレクション!!」
バリアのほころびから強引に侵入し、巨大ゾヌーダロボの背後から目隠しをするように轟雷をしがみつかせたトピアは、密着距離でオーバーリザレクションを唱えた。
実は巨大ゾヌーダロボと戦闘開始してからオーバーリザレクション自体はこっそり何度も試している。オーバーリザレクションによる巻き戻しで
しかしバリアの外からでは効果が無いので、密着の機会を窺っていたわけだ。
ゾヌーダ≪――ハァ?≫
一体何のつもりだ、と首を傾げるような声がゾヌーダから漏れた。いやゾヌーダの語彙は元々「ゾヌーダー……」と「ハァー」の2つしかないのだが、今のは何となく疑問や嘲りのニュアンスがあったのだ。
トピア「んー、これでも効果無しですか」
期待に反して、密着してもオーバーリザレクションの効果は出なかった。巨大ゾヌーダロボの人質収容区画はGパワー以外にもスキャンなど色々遮断しているようで、やはり魔法も通りにくいようなのだ。
魔法が効けばすぐに解決出来たのに面倒なことだ、とトピアはため息をつきながら一層拘束を強めた。
完全に密着しているので当然物質昇華の効果が轟雷を蝕むのだが、しかしその進捗は意外な程に遅い。何故なら轟雷の構造材は原子核パスタで構成されており、これは★×12アダマンタイトの10兆倍の密度がある。それだけ構成する中性子や陽子の数が多いということだ。額面通り10兆倍とはいかないが、かなりの時間を稼ぐことが出来る。それに加えて修復装置が機体の時間を巻き戻す形で元に戻してしまうため、轟雷には実質的にエネルギー吸収以外の効果を及ぼしていなかった。
これが轟雷各機が前衛を務めながらも物質昇華されずに全機健在である理由だ。相性的には機界新種の天敵のようなものであり、申し訳ないがガンバスターよりは大分楽をさせてもらっていた。
トピア「まあいいでしょう。凱さん、あとは宜しく」
笑顔で勝利を確信したようなトピアの台詞に、センサーアイを覆われたままのゾヌーダロボが前方に注意を向けると。
凱≪うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!≫
巨大ゾヌーダロボの目の前には、物質昇華で大分ボロボロになったジェネシック・ガオガイガーの両拳が迫っていた。
冷凍光線扱いのバスタービームでどうして溶けるのかは実際不明なのですが、本作では物理現象がバグったという解釈になりました。
開発者のオオタコーチが生きていれば「タカヤ、バスタービームを使え!」と檄が飛ぶ所ですが、残念ながらどちらの世界でも病没しております。
バスタースマッシュは超能力の産物なので凍るイメージがそのまま通ったのでは。或いは何回もアンダーフローを繰り返して最終的に丁度氷点下で止まったとか。