【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

334 / 387
 [2024/5/19]司馬 宙(しば ひろし)がサイボーグになった経緯の説明に齟齬があったため修正しました。


334. 逃がさないよ。――聖域(テンペルム)!

 スターガオガイガーとガオファイガーが最寄りの母艦に着艦し、空気が充填された格納庫で手を開いた。すると、スターガオガイガーの手の中からは機界新種核が、ガオファイガーの手の中からは護が姿を現した。結局それぞれの配置は消去法で間違っていなかったようだが、万が一があると護が死んでしまうので、ここに至るまで合っているかどうか確信が持てないという所が問題だったのだ。

 

凱「(みこと)!」

 

 凱がスターガオガイガーから飛び出すと、機界新種核は即座にモーフィング変形して人型のゾヌーダになり、スターガオガイガーのマニピュレータを土塊に変え始めた。

 

 ゾヌーダは冷静に思考した。大丈夫だ、まだ詰んでいない。卯都木 命(うつぎ みこと)の命を盾に出来るのだから、まだここから逃げおおせれば再起が叶う。やや離れたガオファイガーの手元では工作班と医療班が開封と搬送準備を始めているが、幸いラティオはまだ封じた箱から解放されていない。

 

 そうしてゾヌーダが逃げ出す算段を立てていると、その真上から赤い光が差した。ゾヌーダは何事かと顔を上げた。

 

幾巳「逃がさないよ。――聖域(テンペルム)!」

 

 頭の上に天使の輪を浮かべて赤く光り輝くこの少年は、戒道 幾巳(かいどう いくみ)。またの名を、赤の星の対原種用生体兵器アルマという。しかしアルマはソルダートと同じく製品名もしくは種族名なので、やはり個体名は幾巳でよいだろう。

 

 ゾヌーダは内心驚愕すると共に、疑問に思った。アルマは木星決戦でキングジェイダーとともに死んだ筈ではなかったか。実際今回の戦いではキングジェイダーも出撃していなかった筈だ。

 そうしてゾヌーダがセミ・エヴォリュダー(みこと)の記憶を探ると、死んだ筈の幾巳が実は生きていたという記憶にあっさり辿り着いた。つまりは作戦立案前の単なる調査不足だった。木星決戦直後の(みこと)の記憶がベースとなっているゾヌーダとしては、幾巳はもう死んだ人間だという先入観で脅威対象から除外していたので、改めて(みこと)の記憶を探ってまで警戒していなかったのだ。

 

 実際のところ幾巳が生きていたのはザ・パワーによるもので、原作『FINAL』でも木星決戦で死んだ筈の幾巳が突然姿を現したので当事者達も驚いたものだ。

 

 今回の作戦を立案したのは仮面のゼロことルルーシュだが、数時間前までガオガイガー勢と面識がなかったルルーシュは、緊急事態に及んで作戦を立てるために必要な情報を一気に頭に叩き込んだ。勝利の鍵は間違いなく浄解だ。しかしそこで、ゾヌーダが護だけやたら警戒していて同じ浄解能力を持つ幾巳に全く注意を払っていないことに気付いた。そして経緯と状況からこれが先入観によるものであると看破した。そこで気付いてないならば教えてやることもないと、浄解が可能な状況になるまで隠すことにしたのだ。

 キングジェイダーにもコア摘出能力があるのに出撃させなかったのも、幾巳がゾヌーダの認識から外れたままの状態を維持するためだ。沈んだはずのキングジェイダーが目の前に現れたら、それに伴って当然幾巳についての記憶も探り始めるだろう。

 実は巨大ゾヌーダロボが全高400mサイズまで育ったあとならばスターガオガイガーのヘル・アンド・ヘブンとキングジェイダーのJクォースによる同時摘出も不可能ではなかったが、その頃にはトモロ-0117のステルスガオーIIIへの移植が終わっていたし、摘出のタイミングを合わせるのはガオガイガー同士の方がやりやすいという事情もあった。ヘル・アンド・ヘブンと違ってJクォースは途中で止まれないので、タイミング合わせがシビアになるのだ。

 ゴルディオンハンマーも1つしかないのでタイミング同期優先でプランから外されたが、こちらも結果的には巨大ゾヌーダロボの最終サイズからしてコアの深さに対して釘の長さが足りなかった。

 

 ところで本編ではないのであまり知られていないが、実は原作の戒道 幾巳には(みこと)とは別個体の機界新種を浄解した経験がある。『赤き流星の天使(アルマ)』という外伝エピソードで、舞台はオーストラリア、機界新種の素体は腕原種の素体でもあったアームストロング氏だった。あのハルク・ホーガンによく似た髭のマッチョマンだ。

 

 ともかく、実際に幾巳がここに居るのだから死んだ筈だなどという疑問は無意味だ。ゾヌーダにとっての問題はこのアルマシリーズが天海 護こと緑の星のラティオと同等の浄解能力を持っているということだ。こうしている間にも浄解の呪文はどんどん進んでいく。ゾヌーダが咄嗟に逃げようとすると、その起こりを読んでエヴォリュダー凱が抱きしめるようにしがみついてきた。もう逃げられない。

 

幾巳「秩序正しき宇宙の(ムンドゥース)……無窮へ(インフィニ)……直ちに(トゥーム)……帰れ(レディーレ)!!」

 

 呪文詠唱と共に浄解の波動が一層強まり、凱が抱きしめて拘束していたゾヌーダは見る間に(みこと)の姿に戻った。

 服を着ていない(みこと)に凱がそっと上着を掛けて、再び抱きしめた。上着は予め医療班が持ってきていた。

 

凱「お帰り、(みこと)

 

(みこと)「凱……また迷惑を掛けてごめんなさい」

 

凱「いいんだ、(みこと)。君がこうして無事に帰ってきてくれるだけで俺は嬉しい。――みんなもありがとう!」

 

(みこと)「ええ、ありがとう!」

 

甲児≪へへっ、いいってことよ! 物語はやっぱりハッピーエンドじゃなくっちゃな!≫

 

ノリコ≪そうですよ!≫

 

 凱と(みこと)が皆に感謝の言葉を告げると、やはり仲間からの祝福の言葉が返ってきた。ルネはそっぽを向いていたが、表情は笑顔だった。

 そこにいつの間にか同じ母艦に入り込んでいたトピアが割り込んだ。

 

トピア「おめでとうございますご両人。空気ぶち壊して申し訳ないんですが、ちょっと宜しいですか?」

 

凱「いえ、あなた達匠衆(マイスターズ)にも大変世話になりました。俺達にご用ですか?」

 

トピア「ええ、どうも機界新種が予防浄解をセミ・エヴォリュダーの神経になりきってやり過ごしていたようですので、()()()()()()()()()()()()()()()が心配になりまして、()()()()の提案をですね」

 

 その指摘に対し、凱と(みこと)が表情を硬くして幾巳に判断を求めると、幾巳は言いづらそうな表情で見解を述べた。

 

幾巳「……その可能性が全く無いとは言えない」

 

凱「……(みこと)をどうするつもりだ?」

 

 凱はトピアに対して警戒心を露わにし、(みこと)を背に庇った。トピアの背後ではルネも警戒態勢に入った。視線が直接通らない物陰にも同様の気配がある。

 機界新種が予防浄解をやり過ごす程本物の神経になりきれるのならば、検査で区別する方法は無いに等しい。ならば再発防止の方法とは、まさに()()()()ということではないのか、と危機感を覚えたのだ。

 しかしトピアは何で警戒されているのか分からないという顔で首を傾げた。

 

トピア「……はて?」

 

 互いに予想外の反応に、どうも何か誤解がありそうだぞという空気が流れた。

 結局トピアは凱達が何を警戒しているのかを素直に聞いてみて、全く心外だと抗議した。

 

トピア「ええー……折角の大団円(ハッピーエンド)なのに怖いこと言わないでくださいよ。セミ・エヴォリュダーの生機融合神経だから全く見分けがつかないので、()()()()()()()()()()()()()()()()()()というだけのお話です」

 

 トピアはジェネシック・ガオガイガーは最高にカッコイイと思っているが、『勇者王ガオガイガーFINAL』の終わり方に関しては全く納得していない。『勇者王ガオガイガー』でほぼ完璧なハッピーエンドだったのにそこからの続きがGGG(ガッツィー・ギャラクシー・ガード)ほぼ全滅エンドではあんまりではないか。実際には『覇界王 ~ガオガイガー対ベターマン~』まで進むとまた話は変わってくるのだが、覇界王は映像化されていないのでトピアはその辺りには詳しくない。また、『勇者王ガオガイガー』の結末ではキングジェイダー組は死んだことになっているのでそこだけが問題だ。実際は生きていたというのもFINALでの後付けで、そこだけは状況が改善されている。

 ともかく、トピアは個人的な拘りでガオガイガーを絶対にバッドエンドにさせたくないので、どんな力業でも強引にハッピーエンドにするつもりだった。

 

凱「それはすまない……いや、待ってくれ、そんなことが本当に出来るのか!?」

 

 サイボーグ甲児のようにiPS細胞を使って生身の体に戻すとしても、中枢神経だけはそのままの移植になるので何の解決にもならない筈だ。

 

トピア「出来ますよ? 具体的にはイモータルズの技術で一旦記憶のバックアップを取ってからオーバーリザレクションの応用で中枢神経ごとゾンダー遭遇前まで巻き戻し、そこにまた記憶を差し戻すという手順になりますね。この手法は勿論凱さんやルネさん、Jさん、甲児さん、(ひろし)さん、ブレラさんあたりにもご希望であれば適用可能です」

 

 トピアは当たり前のようにさらっと述べたが、凱と(みこと)は既に普通の人間の体に戻ることは諦めており、結婚後は顕性が甚だしいエヴォリュダー遺伝子の拡散を危惧して子供を作らず孤児を引き取って育てる家族計画を立てていたので、その説明に目を見開いて驚愕した。サイボーグボディの過剰発熱に悩まされていたルネも内心では覿面に食いついた。

 

 ちなみに(ひろし)というのはここで初登場の名前だが、本名司馬 宙(しば ひろし)。不死身の(ひろし)でお馴染みの鋼鉄ジーグのことだ。彼は本人の同意無く知らない間に父親にサイボーグにされていたのだ。

 とはいえこれは一部資料によると本編開始前に大怪我をした際にサイボーグに改造されたとあるので、同意を取っていては間に合わない救命行為であったとも考えられる。まあ勝手に体内に銅鐸を仕込むなよとは思うが、改造されてからも生活には全く不便を覚えておらず、他人に言われるまで自分がサイボーグだと気付かなかったくらいにサイボーグボディの完成度が高いので、生身に戻る必要があるかどうかは本人次第だ。

 

 ブレラ・スターンはマクロスFの登場人物で、機装強化兵(サイバーグラント)、いわゆるサイボーグ兵士だ。ヒロインの一人であるランカ・リーの兄でもある。彼は外部から洗脳されやすいという致命的欠陥を抱えていた。

 

 ともあれ、(みこと)以外は生身に戻すと戦力が大幅に低下するので即決は出来なかったが、それでも体内の機界新種がいつ目覚めるかという恐怖に晒され続ける(みこと)を救えるという話は何にも代えがたいものであった。

 

 ついでに言うとその戦力低下問題も加護による強化と阿頼耶識改による無線精神接続で概ね解決出来るというのもトピアは合わせて説明しておいた。轟雷を駆る魔導衛士達が皆生身であることから、これは納得しやすかった。まあサイボーグからジーグヘッドに変形する機能をそのまま代替するのは流石に無理そうだが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。