トピア≪えー、まあC.C.さんのフルエンチャントピザ食べ放題はC.C.さん個人に対する労働報酬の一部ですので、気にしなくていいです。ルルーシュさんはまた別に検討しておいて下さい≫
C.C.「おい、あいつら滅茶苦茶気前がいいぞ。悪いことは言わん、話に乗っておけ」
ゼロ「貴様は黙っていろ、魔女」
トピア≪というわけで、次はこちらの治療用魔道具のお話なのですが≫
C.C.とルルーシュのボケツッコミにひとしきり笑った後、一旦勧誘の話を脇に置いて仕切り直しとなった。そこで出てきたのが、ハイリザレクションやオーバーリザレクションを使える魔道具のZ-BLUEへの貸し出しという提案だ。これはルルーシュの協力が得られるかどうかにかかわらず貸し出しは可能だという。名目上は命達の治療のためだ。
ルルーシュは仮面の下で目を見開いた。この治療魔法は勿論エヴォリュダーやサイボーグ、強化人間などを普通の人間に戻すのにも使えるが、ルルーシュの最愛の妹であるナナリーの脚を治療するのにも使える。ナナリーは精神的にはもう自立しているが、自力で歩けないということが未だに彼女の身体的自立を妨げている。何よりもナナリーの幸せを願うルルーシュとしては何としても治療の機会を与えてやりたいのだが、ルルーシュからそれを言い出せば弱点がここにありますと自白するようなものなので自分からは言い出せずにいたのだ。
ルルーシュ(どうやってナナリーの所在を知られないように治療させようかと考えていた所でまたもや自ら差し出してくるとはな。やはり脅迫にしては随分遠回し……いや、この場合は気遣いか? 交渉の条件に出さないのも、ナナリーの名前を出さないのも、治療師の訪問という形にしないのも、『お前の弱点を知っているぞ』という脅迫に聞こえかねんからか)
ルルーシュはシスコンである。他ならぬナナリーの幸福の為に今現在ではナナリーの自立を認めているが、わざわざ自分の所為で危険に晒したいとは考えていないし、ナナリーが自力で対処出来ない危機に陥ったならばすぐさま駆けつけるつもりでいる。そのためナナリーが関わることとなれば未だもって非常に慎重だ。
とはいえ、現状ルルーシュは匠衆のことをZ-BLUEほどは信用していないが、そこまで疑ってもいない。匠衆はこれだけの勢力を持ちながら支配欲というものを全く見せないし、暴虐を働いたという話も殆ど無く、あったとしても逆恨みだったからだ。まあ先ほどのような茶目っ気はあるようだが、あれは簡単に買収されたC.C.も悪い。
ルルーシュ(……待てよ? 確かにピザの為なら多少の無茶はする奴だが、幾らピザが美味かったからと言って、奴がそう簡単に買収されるか? 普段はどうしようもない怠け者だが、少なくともこれまで俺を裏切ったことはなかったぞ? しかもこれは奴の身の安全にも関わることだ)
どうも不自然に感じる。とすると、まさかとは思うが、気遣いだったりするのだろうか。
実際のところ、ルルーシュはZ-BLUEに対する仲間意識がそれなり以上にある。だが、それ故に甘えすぎてはいけないとも思っている。
ルルーシュはゼロレクイエムの際に悪逆皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして敢えて素顔を出しているため、Z-BLUEでどこまで匿えるかははっきり言って怪しい。というより、いつまでも匿われていてはいけない。世界の憎しみを一手に引き受けたルルーシュの生存が発覚すると、それを匿っていた者にもかなり致命的な社会的ダメージが入ってしまうからだ。ルルーシュとしてもZ-BLUEにそのようなリスクを今後ずっと抱え続けさせるわけにはいかない。だから元の世界に帰った後はすっぱり別れるつもりだったのだ。
つまりC.C.は、美味いピザを食べ放題だからではなく、ルルーシュのためを思って、後悔しないようにここに腰を落ち着けろと背中を押してくれているのではなかろうか。
そこまで考えたルルーシュは、もう一度C.C.の顔を見てみた。
目尻が下がりやや潤んだ目元。
紅潮し緩んだ頬。
休まず咀嚼を続ける口元。
……どう見てもピザに夢中のご様子だ。
ルルーシュ(それこそまさかの話だったか)
自らの無駄な深読みに呆れたルルーシュは、深くため息をついて首を振った。
そして色々と割り切れた。もうC.C.の思惑がどうかなど知ったことではない。そして抵抗して逆張りをする意味も無い。とりあえず今後の身の振り方として悪くない選択肢であることは確かだし、即座に永久就職しろと言われているわけでもないのだ。
ゼロ「……分かりました。まずは外部顧問という形で務めさせていただきましょう。本当にこちらの業務を優先して構わないのですね?」
ここで言うこちらの業務というのは、ゼロが元々所属しているZ-BLUEのことだ。流石に他の世界を助けに行って現地で勧誘されてさようならというわけにはいかない。Z-BLUEに貸与される魔道具でナナリーの治療を頼むのなら尚更だ。そういうわけでゼロはZ-BLUEを元の世界に帰してナナリーを治療するまではZ-BLUEと行動を共にする必要があるので、匠衆の外部顧問としては直通の通信機で作戦立案に関するあれこれをやりとりすることになる。
逆に匠衆に完全に所属してしまってそちらの権限で治療を頼むという選択肢もあるが、まだナナリーのことを任せられる程信用出来ていない。Z-BLUEが元の世界に帰るまでに更に見極める必要がある。
ルルーシュ(ギアスについては既に対策されていると見るべきだな。連中の鷹揚さは強大な力に裏付けられたものだ。分かっている危険に対して対策を怠ることはあるまい)
ルルーシュは対象一人につき一度だけあらゆる命令を強制出来る『王のギアス』というかなり危険な能力を持っているが、このギアスは直接対面して視線を合わせないと発動しない。通信での相談役に徹するというのはギアスを使うつもりが無いという意思表示と、万が一匠衆内部で犯人捜しをするような事件が起きたときに真っ先に疑われるのを避けるためだ。実際純夏と知性の眼鏡の件ではそのような事態になっている。
まあ匠衆の場合は身の潔白はESPと念話で簡単に判別出来るので、実際は近くにいた方が疑いを晴らすのは楽なのだが。
ギアスについてはルルーシュ自身がもう使わないと誓っており、Z-BLUEがそれを信用しているのだから、匠衆としても今更疑う必要は無いと見なしている。無用な邪推で全てを台無しにする扇のような真似はまっぴら御免だ。
まあそれはそれとして、ルルーシュが推察したように、匠衆では元々術式で精神デバフの対策は出来ていた。
トピア≪ええ、勿論です。匠衆は貴方を歓迎します≫
トピアは笑顔で答えながら机の下で拳を握ってガッツポーズした。やはりシスコンは妹で釣るに限る。
無論トピア達はナナリーを人質に取ることなど考えてはいないし、何か深い考えがあるわけでもない。ただルルーシュの最優先の目的であるナナリーの幸せに助力するのが一番好感度を上げやすいだろうと思っただけだ。それをどう伝えれば誤解されずに済むかという所が一番悩んだポイントだ。ピザの件はE&Eの他に、警戒心をほぐす意味もあった。
ところで、ゼロの二つ名には『魔神』というものがあり、繋げると魔神ゼロとなってしまう。類似品を許さないマジンガーZEROに目を付けられるかどうかのボーダーライン上にいたのではないかと思うと、これも結構なヒヤリハット案件であった。