[2023/8/13]バフ無しでのDPSを改めて計算し直したら大分数字が違ったのでゼニスのDPSを修正しました。
[2025/11/24]加筆・修正・増量しました。
ラリーからシェルフォンを受け取ったスコアは、ターゲットダミーに向かって金色の弓、ファントムスパークを構えた。
ラリー「よーい……ドン!」
スコア「ふっ!」
ファントムスパークから矢継ぎ早に矢が飛んでいき、1発につき400から1,700ほどのダメージが刻まれていく。射撃ペースは1秒に1.4発と申告していたのに比べ若干早いように見えた。
ラリー「そこまで! 1,800DPS!」
スコア「……まあそんなものか」
終了とともにラリーが数字を発表し、スコアはファントムスパークを肩にかけてスペースを空けた。このDPS測定機能はリアルタイムでDPSが表示されてしまうため、攻撃の最中に数字を逐一見なければならないのが難点だ。その辺りはトピアが思っていたのとちょっと違った。
ラリー「じゃあ次は俺がやるぜ。合図と計測はトピアに頼めるか?」
トピア「任されました! 準備が出来たら言ってください」
ラリー「おう……いいぜ!」
ラリーはゼニスを構え、ターゲットに密着して背を向けるという奇抜なスタイルを取った。この方が数字が出やすいらしい。
トピア「よーい、どん!」
ラリー「オラアッ!」
ラリーの咆哮とともに投擲されたゼニスとそれを追う数々の刃が、複数のジャグリング軌道を描きながらラリーの背後で合流して凄まじい速度でターゲットに傷を刻んでいく。1発あたりクリティカルでおよそ1,000弱のダメージが多く、ヒット間隔が狭すぎて何発当たっているのか数えることも出来ない。
トピア「そこまで! 37,000DPS!」
ラリー「ヨシッ!」
1割弱はクリティカルを外していたため、秒間40発以上も当たっている計算になる。1発あたりのクリティカルダメージはスコアよりも低いのに、あまりの攻撃速度故にDPSにすると20倍以上勝るという結果が出た。これほどの差が出ては、スコアがやりたくないというのも分かる。
サティ≪これは酷い≫
スコア「どうだい、やる気がそがれると思わないか」
トピア「次は私の番ですね! スコアさん合図と計測をお願いします!」
スコア「? いや、まあいいが」
トピア「では蒸着……
やる気が全く衰えないトピアに怪訝な視線を送るスコアの言葉を軽く流し、トピアはいつもの右掌を上に突き出すポーズで
スコア「……双剣?」
ラリー「お、なんだそれかっけーな!」
トピア「ドーモー! ちょっと準備運動しますね」
サティ≪あ、これ本気を出す時の奴ね≫
試練の狐面を斜め上にずらして快活に返事を返したトピアは、準備運動と銘打ってターゲットダミーに適当に連撃を刻んでいく。右胴、左胴、回転連撃からの交差斬り。クリティカルは出ず、どれも5,000程度のダメージだ。この時点でDPSが10,000を超えており、自身のDPSを軽く超えられたスコアの顔が引きつった。ラリーにはまだその身のこなしを誉める余裕が見える。
この準備運動にはデモンストレーション以外の意味がある。戦闘スキルTier3『アンストッパブル』Lv6(Max)のパッシブ効果により、ダメージを受けずに6連続ヒットさせたことで攻撃威力が27%上がるバフをかけたのだ。
トピアは準備運動を終えると、そこから更に『武具研磨』×5、『バトルヒム』Lv6(Max)、『マナサイフォン』Lv6(Max)、『背水の陣』Lv6(Max)、『バーサーク』Lv6(Max)を積んでいく。バフアイテムはラリーとスコアが使わなかったのでトピアも使わないことにした。
トピア「準備出来ました!」
左のジークフリートを右腰に構え、碧眼を爛々と輝かせた……実際に緑に発光しているようにも見えるトピアの報告を受けて、スコアは気圧されながらも開始の合図を下した。
スコア「よーい、始め!」
トピア「一文字流斬岩剣ッ!」
ジークフリートが目に見える程度の速度でターゲットダミーを斬りつけ、ダメージが1と出る。
あれだけ準備して技名まで宣言しておいて失敗なのか? とラリーとスコアの眉根が寄る。
しかしトピアはそれが当然のようにゆっくりと納刀。鞘も無いのにどこから出ているのか分からない鍔鳴りの音とともにターゲットダミーに深い傷が刻まれ、その上に
ラリー「ホワッ!?」
失敗と見せかけてからの予想外の数字に意表を突かれたラリーが素っ頓狂な声を上げる。スコアは目を剥きながらもダメージカウントを注視して何度も桁を数え直しており、それどころではない。
トピア「……二の太刀ィ!」
更にもう一撃。今度の納刀では336万と出た。
トピアはここでターゲットダミーに一礼、終了となる。居合斬りのクールダウンは最短まで圧縮して10.1秒かかるので、2並列クールダウンでも次の一撃は無い。
トピア「またつまらぬものを斬ってしまいました」
スコア「そこまで。82万DPSだな。間違いようが無い」
サティ≪あの化け物を一刀両断する威力を数字にするとこうなるのねえ≫
そしてあっさり記録を抜かれたラリーはと言うと、何やら小刻みに震えており。
ラリー「すっ……げえな! どうなってんだそれ!?」
どうやら感動している模様であった。
トピア「ふふふ、すごいですか、そうですかー? まあ師匠直伝の一撃特化アセンですからねー。でもラリーさんそれ多分マナ消費が無い通常攻撃ですよね? 通常攻撃でバフもかけずにその威力って結構すごいですよ?」
ラリー「そうか? フフン、まあ仮にも
トピア「ん?」
サティ≪んん?≫
ラリー「どした?」
突如トピアとサティが疑問符を浮かべ始めたため、何を不思議に思っているのかとラリーが問うた。これに対してトピアが疑問を言語化する。
トピア「ラリーさん、その武器もしかして
ラリー「エンチャント?
トピア「ええ、例えばこれ、 昂り爆ぜる 灰燼に帰す 炎の悪魔の ファーヴニルの ジークフリート改+99なんですが」
ラリー「は? 4つだと? それに改+99っていうのは何だ?」
スコア「待て、何の話をしているんだ? 装備の強化の話か? 修理台での補強とは違うのか?」
サティ≪ああ、これってそういうことなのかしら……?≫
三人の見解がそれぞれ違って混乱し始めたことで、サティは何となく察した。どうやらそれぞれの世界に装備への付与や強化が存在するが、
トピア「改+99は、熟練の精錬所で200本のジークフリートと199個の精錬石をつぎ込んで199段階強化した結果です。これにより
ラリー「おいおい効果もすげーがそいつは随分手間をかけてんな」
トピア「エンチャントは武器だけでなく全身8装備に4つずつで合計32のフルエンチャントです」
ラリー「モディファイアも4倍かよ。そりゃあんな威力にもなるはずだぜ」
トピア「バフの差もあるとは言え、威力に大きな差が出た理由が判明しましたね。というのも、エンチャントの組み方によっては実は武器のベース攻撃力や個人のレベルと攻撃力はそんなに重要ではないんですよ」
スコア「そうなのか? というかレベルと攻撃力? そちらにはそんなものがあるのか?」
トピア「え、無いんですか?」
スコア「無いぞ。熟練度で威力が最大50%増えたりはするが」
ラリー「俺も無いな」
サティ≪似ているように見えて大分仕様が違うのね?≫
まとめると、装備への付与、強化だけでなく、基本ステータスの仕様にも大きな違いがあるようだった。単に互換性が無いで済ませるのは簡単だが、折角それぞれ違った強みを持つ
スコア「物は相談なんだが……その強化、私たちの装備にも適用できないか?」
ラリー「ん? ……出来るのか?」
トピア「正直分かりませんが、可能性はあると思います。逆に私はそちらの方式の強化が追加可能か気になってるので、最悪壊れてもいいようなもので試してみるべきだと思いますが」
スコア「何にせよやってみる価値はありそうだな」
とりあえずエンチャントテーブルとエンチャントスクロールによる武器へのエンチャントはすぐに試せるものだ。武器以外は基本的にエンチャントのかかった素材からクラフトピア施設で作る物なので、余所の装備を作るにはどうするかという段階から考える必要がある。単純にエンチャントテーブルが武器以外にも使えるようになればそれが一番簡単なのだが……、いや、そうだとしてもエンチャントポイントをどう補給するかという問題があった。現在二人が使っている装備の効果によっては武器や照明、鞄以外クラフトピア産の装備に切り替えるという選択肢もあり得る。
トピア「あと個人レベルが無い人はアヌビス神にお願いすれば多分追加してくれますよ」
ラリー「そいつはご機嫌な話だな?」
サティ≪私と工場長は今朝レベルを設定してもらった所よ。今Lv.22≫
スコア「なるほど、それなら新たに協力者となる私達もその恩恵にあずかれる可能性は高いな。……しかしそのアヌビス神というのはエジプトのアヌビス神で合っているのか? だとするとエジプトの神様がどうして協力してくれるんだ?」
既に個人レベルの追加が行われた例があると聞いて実現性については納得したスコアだが、エジプト由来のアヌビス神が何故協力してくれるのかについては理解が及んでいなかった。
トピア「アヌビス様は私と同じ上司の元で働いてる神様ですので、同じ職務に励む人にはサポートくらいしてくれますよ。まあ何故エジプトの神様があの上司の部下になっているのかは正直私にも分からないんですが……」
既に馴染んでしまって深く考えていなかったが、どうしてアヌビス神がクラフトピア世界にいるのかというのはトピアにもよく分からないのである。
なおサティは、クラフトピア世界の世界観が大雑把だから特に深い理由も無く適当に配置されたのではないかと推定していた。
トピア「あ、そうだ、ラリーさんは多分
ラリー「そうなのか? まあ貰えるもんは貰うが、内容は?」
トピア「多分レベル上限解放+1か任意の高純度鉱脈設置権1回分の二択です」
ラリー「どっちも良さそうだな、迷うぜ」
トピア「これどういう状態で報酬の対象者になるのかまだ分かってないんですけど、サティ姐さん達は貰えますかね?」
サティ≪あとで条件を尋ねてみるのがいいわね≫
トピア「ところで、『バトルヒム』は範囲バフなので多分お二人にも効果があると思うんですけど試してみます?」
ラリー「効果は?」
トピア「
ラリー&スコア「やる!」
魔法文明系三人の戦闘能力がある程度把握出来、今後更に強化出来そうな余地が見えてきたが、本当に可能かどうかは未だ分からぬ所であった。