【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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346. 大分らしくなってきたじゃあないか存在X?

 本日でトピアが使命を受けて373日目、匠衆(マイスターズ)を結成してから369日目、存在Xの実在が判明してから365日目になる。その頃から存在Xの脅威を警戒しているのに、(マイスター)達が拉致された場合の対処を何も考えていない筈があろうか?

 匠衆(マイスターズ)は1年掛けて珪素生命体(シリコニアン)本拠地までの銀河制覇を進める傍らで、様々な状況を想定した存在X一派対策プランの数々を用意していた。今回の状況はその中でも大分楽な部類のプラン3に近い。世界をまたぐ通信に対する妨害が特に無いという条件が大きかった。

 となれば、存在X一派が邪悪かつ横暴なのは分かっていたので、あとはちょっと会話するだけでぼろが出るのは必然だ。ツッコミの言葉がすらすら出てきたのも、存在X一派のどこがおかしいかを匠衆(マイスターズ)幹部で予め共有していた為だ。それを撮影して生で垂れ流すことで連中の力の源である信仰力を激減させてやるのだ。

 無論そういった意図を読まれないように最初から読心妨害術式を発動してある。

 

 その準備があった上でではあるが、世界崩壊を防ぐ為の力が足りないというこのタイミングで拉致されるのは実は()()()()()()()()()()。何故なら人々に純夏達を応援してもらおうにも緊急事態ですら古来の宗教を信仰している人々を改宗させるのは困難なので、存在X一派自ら醜態を晒して()()()()()()()()()()()()()()()()のはナイスアシストとしか言いようがなかった。笑いが止まらないとはこのことだ。

 先ほどの通信会議ではそのような言葉は出なかったが、純夏達のパワーが足りていないと聞いた時点でトピアはこの機会に存在X一派から()()()()()()()()一石二鳥作戦を考え始めていた。そして念話でマインやターニャと詳細を詰めた上で、七圏守護神(ハーロ・イーン)の力が低下して拉致抵抗が弱まったかのような擬態を同じく念話でアヌビス神に頼んでいた。

 この擬態は単に拉致抵抗を弱めるだけでなく、弱めた分の力を分断抵抗に回すことで実情以上に弱まったように見せかけながら一人一人別々の所に隔離されるのを防いでいた。物理的に繋がっているわけではないが、ターニャやトピアを中心とする拉致されそうな面子を最低二人ずつ繋いでおいたのだ。全員一繋ぎにしなかったのは、そうすると余計な人員まで拉致されてしまい、本部に残る人員がいなくなってしまうからだ。

 そこまでしてわざわざ拉致される形にしたのは、その方が存在X達が慢心してべらべら喋ってくれそうだからだ。

 存在X一派に拉致されないという所に魅力を感じてクラエル神の加護を受けたターニャは当初この敢えて拉致されるように隙を見せる作戦案に難色を示したが、術式で時間感覚を引き延ばして再検討した結果、既に用意していたプランであらゆる状況に対応可能という結論に至ったので、ここで存在X一派を打倒して後顧の憂いが無くなる方にメリットを見出して最終的には合意した。上から頭ごなしの命令ではなく、ターニャが納得するレベルまで安全マージンを確保出来なければ下界側に誘い込む別案を検討するとされていたのも最終的にそういった判断に至った理由だ。

 

 斯くして拉致された(マイスター)達の側でも、残された者達の側でも、対策プランは事前の取り決め通りに滞りなく実行された。再度言おう。無計画では(マイスター)など名乗れぬのだ。これは計画通りの必然の結果であった。

 

サティ「まあこれでもなお反論の必要無しと言うのなら好きにすればいいと思うけど。別に私達が損をするわけじゃないしね」

 

智天使(ケルビム)「……人間は愚かだ。正しい言葉を聞いても理解出来ぬ故、生の言葉を掛けては不味いこともある」

 

ラリー「いや確かにオブラートに包んで伝えた方が相手にとっていい結果になる場合もあるけどよ、そもそもあんたらは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだからそういうレベルの話じゃねえよな?」

 

 より良い結果を生み出す為に、ただ正直に伝えるのとは別の方法をとることもある。しかしそれが許されるのは相手にとって良い結果を導くという前提があってこそなので、積極的に人間を不幸にするべく動いている存在X一派がそれを言い訳に使うのは無理がある。

 

トリオ「やはり救済の定義が食い違っておるのが致命的問題じゃの」

 

マイン「未だに価値観が古代のままではな。古代人の相手だけしておればよいものを」

 

存在X「……仕方あるまい」

 

 存在Xはため息をついて、まなじりを釣り上げると極めて威圧的な気配を発し始めた。

 

存在X「かくなる上は汝らをむごたらしく処刑して我らに逆らう無意味さを知らしめるほかない」

 

ターニャ「大分()()()なってきたじゃあないか存在X? どうせ最後には恥も外聞も無く暴力を振りかざすなら、最初からおかしな屁理屈を並べなければいいのだ。まあやってみればいいのではないか? ()()()()()()()な」

 

 かつてサラリーマンだった頃のターニャが最初に存在Xに遭遇したとき、輪廻転生の輪に戻すという処分を聞いたターニャはそのまま平然と受け入れて存在Xを苛立たせたが、その時よりも格段に処分が厳しくなっているにもかかわらず、やはりターニャの態度は余裕綽々だ。

 全く怯まないターニャ達の態度を見て取った存在Xの蟀谷に青筋が浮いた。

 

 そもそもターニャが存在Xに初めて遭遇したあの時点で全く価値観が食い違っていた。あのときの存在Xの台詞は確か、「輪廻に戻し転生させるまでだ。今更悔やんでも……」というものだった。つまり人間は転生して辛い現世に戻るのは嫌だと思っているに違いない、という古代の価値観がアップデートされていなかったのだ。その頃に比べれば転生させるより抹消してやる方が嫌がるだろうという程度には人間の理解は進んだようだが、まあそれだけだ。

 思い返してみれば、あのときの存在Xの主張だけでもアブラハム系唯一神教の十戒と仏教の輪廻転生論が混ざっていた。そんな別々の宗教の世界観を混ぜられても整合性がとれるのか甚だ怪しく、矛盾しないのならば宗教戦争などは起きない。結局何でもかんでも存在Xの意向一つで有罪になりかねないということだ。全く以て馬鹿馬鹿しい。

 

存在X「愚かな。その態度は()()()()()()()()()()()()の加護を恃みにしたものであろう。だがそれはここに招いた時点で()()()()であるぞ?」

 

 ここは存在Xの神域だ。つまりここではかつてアヴェニュー神が自身の世界でそうしたように、簡単に相手の加護を没収することが出来るのだ。そして加護が無ければ魔法由来のインベントリから装備や機動兵器を取り出すことは出来ない。神域と下界とのやりとりにわざわざ制限をかけていなかったのも、加護さえ封じれば帰る手段も無いだろうと考えた為だ。ターニャを含む(マイスター)達はここに拉致されてきた瞬間に手枷が嵌められていたのだから、同時に加護が没収されていたとしてもおかしくない。

 だが、存在Xがそのように告げてもターニャを含む(マイスター)達の顔色は全く変わらなかった。それどころか。

 

ターニャ「そうでもないようだが?」

 

 ターニャは存在Xの目の前で手枷を引きちぎってみせた。明らかに普通の人間の出せる力ではない。というか、僅かながらとはいえ、神の力を使って封じていたはずなのだが?

 いつの間にかトピア、ラリー、スコア、マインも自力で手枷を引きちぎっており、残ったメンバーの手枷を代わりに外しているところだった。

 

サティ「ありがと。……全くもう、この忙しいときに心底くだらない用事で呼びつけてくれたわね?」

 

テクス「やれやれでござるな」

 

大天使(アークエンジェル)「馬鹿な、主の力に抗っただと!?」

 

大天使(アークエンジェル)「一体何が起きた!?」

 

存在X「まだなにがしかの加護があったか……ならばもう一度だ。むゥんッ!」

 

 存在Xが左手をかざし、大きく筋肉を隆起させて空間を引っ張ると、目に見えて()()()()()()()()が引き剥がされた。

 にもかかわらず、加護を剥がされた筈のターニャが黙って天井に人差し指を向けると、そのたおやかな指から放たれた光の術式で屋外まで貫通する大穴が空いた。この理解不能の状況に、立ち並ぶ天使達はただ唖然とした。

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