ラリー「――何だここは? 宇宙?」
ラリーの視界が瞬時に切り替わり、目には星々の輝きが映っていた。足元には地面がある。
トリオ「随分と遠くに……いや、恐らくは別の世界じゃの、これは。空間特性が違いすぎる」
後部座席のトリオ工場長が観測データを参照すると、どうも空間の特性自体が先ほどの神域とは違っていた。例えば光速が秒速30万kmを遥かに超えているし、地球重力1Gでの加速度も9.8m/秒2ではない。
神域が場所によって特性が違うのなら同一世界という可能性もあるが、ともかく環境が変わったことは留意しておくべきだ。工場長は各種センサーを動員して下界とも神域とも違う、超空間に近い現環境の物理定数のチェックを開始した。
ラリー達の目の前に穏やかな微笑みを湛えた
だがその言葉を額面通りに受け取るならば、ラリー達はそれぞれ上位天使が持つ固有の世界に連れ去られたということだろう。
ラリー「神だか仏だか天使だか知らねえが、でけえ面しやがって!」
ラリーが言うでけえ面、というのは比喩ではない。目の前に出現した
トリオ「こいつは……距離も身長も計測不能じゃと……?」
観測機器が計測上限エラーを起こしていた。物理の基本的な定数から違う所為もあるが、轟雷は宇宙戦闘に対応するため恒星間の距離でも計測可能なのに、これは極めて異常なことだ。
ラリー「行くぜェ!」
ラリーは時空勾配推進で轟雷を前進加速させ、光速の壁の違いから秒速30万kmを簡単に越えた。地球規模の惑星ならとうに大気圏外に離脱しているはずだが、まだ足元には地面があった。
思ったよりも距離が遠いことを察したラリーは、目標を通り過ぎるリスクを懸念しながらも短距離ワープを敢行した。しかし
ラリー「全然距離が詰められねえぞ、どうなってんだこの世界は……?」
一向に振り切れない地面を眺めながらラリーが首を傾げると、トリオ工場長が警告を発した。
トリオ「上じゃ! 来るぞ!」
ラリー「上? ……何だありゃ!?」
警戒範囲内にはまだ何も検出されていないが、トリオの言葉でラリーは頭上を見上げた。確かに警戒距離の中には何もなかった。しかしそれより遥か遠くからとんでもなく巨大なものがとんでもない速度で迫っていた。
上から迫るのは地面とは別の平面。まさか惑星同士の衝突に挟もうというのか。いや、惑星ではない。まだ距離があるために分かったが、それは
次の瞬間に上下の平面が打ち合わされ、間にあった空間が押し潰された。もし遙か彼方から見たならば、それが
つまりラリー達の轟雷は短距離ワープを駆使してもまだ
しかし
ラリー「っぶねえ!」
このハンドサインには仏教的に二通りの解釈があり、
しかし仏教に疎いラリーには全く通じておらず、賄賂でも要求しているのかと首を傾げていた。冠婚葬祭で仏教になじみ深い日本人でも大半は仏像のハンドサインの意味など知らないだろうから当然だ。一方スペースヒロシマと付き合いのあるトリオ工場長は何らかの仏教的な意味のある印であることまでは分かっていたが、そこまでだ。
そう言って微笑む
そしてその数え切れない程の腕の半分程が異空間に突っ込まれた。これではワープ回避しても超空間で別の腕に迎撃されてしまうだろう。まさに腕力の飽和攻撃だ。
トリオ「いやはや、我こそ宇宙と来たか。本物かどうかはともかく、仏の最上位だけあってスケールがでかいのォ」
天使の9位階と同じように仏にも十号というランクがあり、下から数えると
一方ラリーは仏のランクなど知らないが、
ラリー「これで第3位天使とか冗談きついぜオイ」
下級から中級で音速から雷速に上がったので、光速で動くくらいは想定していたが、
実の所、その疑念は的外れではない。
ラリー「そうじゃねえ、……いや、そうかもしれねえ。でもなあ」
ラリーは大きく息を吸うと、拳を握って啖呵を切った。
ラリー「強え奴と戦いたくて来たってのに、相手が自分より強かったら文句を言うほどダサくはねえつもりだぜ!! 相手が強けりゃ強い程ラッキーってもんだろうよ!!」
好奇心でこのマブラヴ世界へと飛び込んできた
話は終わりだとばかりにあらゆる方向から無数の掌底が極超光速でラリー達の轟雷に迫る。ラリーがこれを回避するべく超空間に退避すると、やはりそこにも迎撃の掌が来ており、強引に通常空間に押し戻された。そして戻ると同時に3つ目の掌による攻撃を喰らった。そこからはまともな回避も出来ず、繰り返し繰り返し無数の掌に打ちのめされて轟雷がお手玉のように舞った。ラリーもくじけずインパクトの瞬間に反撃の
トリオ「兄ちゃん、流石にもたんぞ!?」
とうにバリアは突破されており、受ける損傷を修復装置で回復させることでどうにかもたせているが、それもいつまでも続くものではなかった。回復も追いついていないし、内部への衝撃を時空勾配推進システムで相殺したとしても完全ではないので、パイロットの方が先に参ってしまう。
ラリー「ンヌオオオッ……!! く、空間特性だ!」
トリオ「何じゃと!?」
必死に抗戦するラリーの口から零れた言葉を聞き逃さず、トリオ工場長が確認の言葉を返した。
ラリー「あいつが言うには
トリオ「ぶっつけ本番――しかもこいつは嬢ちゃん用に調整したモンで、機関出力も人数も全然足りんぞ!?」
ラリー「分かってる! だがなあ、システム補助なんか無しでやった奴だっているんだろ!? 俺達が勇者だってんなら、あとは勇気で補ってみせようじゃねえか!」
トリオ「ぐ……ええい、やったるわ! 結果は保証出来んぞ!!」
基本的に物理科学が主戦場であるトリオ工場長にとって、勇者算は何ともコメントしがたい概念だ。だがGストーンやGSライドが介在するならば、それは実際に効果があると認めざるを得ない。
出来ないと言うのは簡単だ。だがやらなかったとして他に勝てる手段があるとも思えない。他にパワーアップ手段が無いわけではないが、この状況で使うのは不可能だ。座して死を待つくらいならやるしかないだろう。工場長も腹をくくった。
ラリー「ありがとよ!!」
元からやる気のラリーはそれに歯を見せて応えた。
生きてた時点で既に天上天下唯我独尊かつ自分が宇宙と一つだと認識出来ていたらしい釈迦に信仰補正が加わり、認識次第でどうにでもなる釈迦専用宇宙を生み出してしまったので、シナジー効果でちょっと手が着けられない御無体な強さになっております。