あらゆる方向に振り回されながらトリオ工場長が轟雷のシステム設定を調整し、無効化していた試作のシステムを起動していく。
するとGストーンとGSライドが起動してラリー達の勇気を抽出し始め、これをGパワーに変換、前へと進む力として試作螺旋力変換炉へ投入。そこで膨大な魔力と渦を巻いて練り合わされ、意志を介して反応することで爆発的な螺旋エネルギーを形成する。練り上げられた螺旋力の余波は轟雷の外へ緑色の光として溢れ出した。
トリオ「螺旋エネルギー10万、100万、1000万……システムはもたせる! 遠慮せずもっと気張れぃ!」
システム解放と共にUIに表示されていた螺旋ゲージが既にオーバーフローしているが、今回の目的にはまだ桁が足りない。
参考までに、超銀河グレンラガンの起動に要した螺旋エネルギーが100万だ。ラリー達が何をやろうとしているかは、もう言わなくても分かるだろう。
ラリー「オオオオオッ!! 信仰力ももってけェッ!!」
工場長に制御を任せ、ラリーが益々気炎を上げていく。それでも足りないと信仰力を不可逆の燃料としてつぎ込んだことで更に桁が上がった。
トリオ「よし……縮退炉、リミッター解除!!」
それに合わせて工場長は縮退炉のリミッターを解除してSecondモード6.23ZWの更に先へと進めた。制御を僅かでも間違えれば1秒ももたずに爆発もしくは停止するということだ。無論制御を間違えなくても炉心への負担は大きい。
工場長はこの精密制御の為に時間感覚調整術式を習得していた。
座天使「む、この力は……? いけませんねぇッ!」
攻撃に使った掌に僅かながら傷を負ったことに気付いた座天使が、いよいよ仕留めるべく両手を全力で打ち合わせ、更に力を込めた。このまま圧殺するつもりだ。だが、潰れない。
その二つの掌の間ではラリーの轟雷が両手両足で地面と天井の隙間を保持し、ボロボロの状態で緑色の光を纏っていた。その状態でラリー達は啖呵を切った。
ラリー「うぎぎぎ……! いいかよく聞けェ! お前は宇宙で宇宙はお前だって言うがなァ! お前は俺じゃねえし、俺はお前じゃねえ!! ……俺達を!!」
トリオ「儂らを!!」
ラリー&トリオ「誰だと思っていやがるァッ!!!!」
その瞬間、座天使の2つの副腕が爆発してその隙間から螺旋力の炎を吹き上げる巨大な鎧武者が出現した。天元突破轟雷だ。その身の丈は50億光年に達しており、座天使にほぼ並んでいた。元の215mから比べると2200垓倍ほど大きくなっている。なるほど、サイズ差が2200垓倍もあれば戦いが成立する筈もない。人間と細菌で100万倍、人間とウィルスでも1000万倍程度の差しかないのだから。
ラリー「どォだ!! 同じ土俵に立ってやったぜ!!」
気合を入れすぎて大分疲労している様子のラリーが、息を整えながら言い放った。
スケールの参考として、天の川銀河の直径が10万光年、現代の観測可能な宇宙の直径が930億光年になる。宇宙は天元突破轟雷の18倍以上大きいことになるが、この座天使の宇宙は我々の宇宙程は大きくはないようだ。
この座天使が釈迦本人だとするならば、自分の宇宙を作ってからあまり年月が経っていないせいかもしれない。或いは昔の人なので宇宙のスケールをあまり正確に把握出来ていなかった可能性もある。
なお天元突破グレンラガンの大きさには10万光年と52.8億光年の二通りの説がある。前者はオーディオコメンタリー情報、後者が超天元突破から逆算した数字で、超天元突破グレンラガンの大きさは1500億光年となる。流石は本家本元、でかすぎる。
トピア達理想郷の建設者は実際どのくらいのサイズなのかシモンに聞いてみたが、どうやら本人も把握していないようだった。なのでどうせなら超天元突破と互換性のある仕様が良いだろうと、天元突破で頭頂高50億光年になるようにシステムを設計していた。
座天使「よもや悟りも開かずにこの地平に立つ人間がいるとは……」
ラリー「知らねえようだな? これが出来る連中は結構いるぜ!!」
座天使「冗談でしょう……!?」
予想外の情報に、今度は座天使の方が眉根を寄せて驚きを露わにした。微笑み以外の表情が出たのは初めてではなかろうか。
しかし残念ながらこれは冗談でも何でもない。何しろスーパーロボット軍団には螺旋力も螺旋力変換炉も魔力も無いのに天元突破を成し遂げた吃驚人間が何十人という集団で存在するのだ。あの連中に比べれば、ラリー達は不完全とはいえ機関とシステムの裏付けがあるだけまだまだ現実的というものだ。
なお超銀河グレンラガンは『超絶螺旋機関』で稼働するのだが、その実態は螺旋族から螺旋力を抽出する機関であり、超銀河グレンラガン自体に螺旋力を生み出す力は無い。つまりシモン達大グレン団も言わば人力で天元突破したことになり、あれはあれでおかしい。
トリオ「ええい、長くはもたん! やるなら早うせんか!!」
ラリー「おうよッ!!」
ラリーは天元突破轟雷の両手に掴んだ二つの天元突破ゼニス2Mを、目の前の座天使ではなく上へ放り投げ、ジャグリング軌道上に出現した多数の剣――ゼニス、ミャウメアー、スターラース、インフラックスウェーバー、テラブレード、シードラー、ホースマンズブレード、真・エクスカリバー、エクスカリバー、真・ナイトエッジ、ナイトエッジ、ボルケーノ、グラスブレード、ビーキーパー、エンチャントソード、スターフューリー、血の肉切り包丁、テラグリム、ムラマサ、ライツベイン、銅の短剣、21種×2=42本を全て同時に掴んだ。分身の応用で出現させた宙に浮く腕だ。鎧武者のような轟雷が今は阿修羅のような姿になっていた。
これらの剣はほぼ全てがゼニスの材料となったものであり、これ自体がラリーの冒険の集大成のようなものだが、実は材料とは全く無関係なテラグリムがしれっと紛れ込んでいる。
ラリー「ゼニス四十二刀流! 受けてみろッ!!」
ラリーは座天使に肉薄すると、多数の剣でほぼ同時に多方向から斬りつけた。
当然その剣速は通常の光速を遥かに超えているが、この座天使宇宙の光速は越えていない。光速が異様に速いのは、恐らく座天使のサイズでも動きやすいようにするための調整だろう。
これに対抗して、座天使はそれぞれの手に金色……どちらかと言えば真鍮色の、棘付きガントレットを装備した。
座天使「仏道空手、六道輪廻掌!」
座天使の腕が円を描くように動き、ラリーの剣戟をさばいていく。大量にある副腕同士が互いにぶつからないようにするだけでも大変なのに、その動きには確かなワザマエが見えた。
銀河よりもはるかに広い範囲で剣とガントレットが同時多発的にぶつかり、一合ごとに超新星爆発を遥かに超える爆発が瞬いた。
ラリー「んぬぬぬ……そもそもアンタなあ、気に入らねんだよ!」
座天使「何がですか!?」
宇宙規模で剣と掌底の応酬をしながら、ラリーの言葉に座天使が受け答えした。
ラリー「煩悩を捨てて悟りを開けって言われてもな、そりゃあ今で言う所の『期待すると裏切られるかもしれねえから最初から期待するな』ってのを徹底してるだけだろ!? そんな後ろ向きで何もかもどうでもいい生き方をして面白ぇ筈がねえだろうが! 俺達は前に進ませてもらうぜ!!」
座天使「ぬうッ、面白いだの面白くないだの、勝手なことをッ! 人間は強くならなければいけないのですよッ!! そうでなくては――」
そうでなくては、世界の不条理にも神の理不尽にも耐えることは出来ない。座天使はそれを言葉にせずに口を引き結んだ。