【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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355. 名前は無いが……そうだな、幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)とでもつけておこうか

 勢いを増し続ける焦熱地獄の中で、スコアの轟雷は炎の双剣と炎の雨のコンボを器用に回避し続けていた。炎の剣は唯一というものでもないらしく、左手からも生やして二本に増えていた。

 それでも躱し反撃し続けるスコア達に智天使(ケルビム)が感心していると、轟雷の色が胴体を起点にして変わっていき、機体表面は黒から()()に、更にその周囲には()()の輝きを纏っていった。ガチャだったらSRかSSRかといった色だが、別にレア度が変動したわけではない。

 

智天使(ケルビム)「ほう、まだ何か奥の手があったのか? それとも虚仮威しか?」

 

 どちらにせよ、やはり追い詰められた人間は面白い。今度は何を見せてくれることか。スコア達が何かやろうとしていることを見て取った智天使(ケルビム)は存在しない口の中で含み笑いを転がした。

 こう見えて智天使(ケルビム)は人間に愛着を持っている。

 火を熾し、文明を興し、社会を作って互いに身を守り、努力と発想を以て前へ進もうとする健気な姿は、愛しい。限られた短い生涯を必死に生きるその姿は、まさに炎のようではないか。

 そもそも炎の神の集合体である智天使(ケルビム)にはゼウスに火を没収された人類を哀れんで再び火を与えたプロメテウスも混ざっているのだから、人類は自分が育てたという自負のようなものすらある。

 そしてその人間達に忘れられてしまうのは、寂しいものだ。

 人間は神々の玩具ではない。だからこそある程度文明が進展したら自助努力に任せるようにしているのだが、そうなると人間は世代交代の末に神を忘れてしまうのだ。そして思い出させるには火の怒りを以て接しなければならぬ。まことに哀しいことである。

 

 久しく見ぬ勇敢なる人間を葬らなければならぬ寂しさに、少々感傷的になってしまったかと智天使(ケルビム)は自省した。

 

智天使(ケルビム)「それが汝らの切り札だというのであれば、汝らの健闘に敬意を表して、この攻撃で終わりとしよう。受けてみよッ!!」

 

 智天使(ケルビム)は両手の炎の剣を一つにまとめ、信仰力を込めてこれまでより更に出力を上げた。智天使(ケルビム)の身の丈を超える炎の大剣だ。それが眩しく輝いていた。その炎の大剣を轟雷に容赦なく振り下ろした。武器が大型化した割に剣速はむしろ増しており、踏み込みも含めて光速に近い。

 轟雷は咄嗟に両手を前に出したが、あまりの剣速の為か回避は出来ていなかった。

 智天使(ケルビム)は防御態勢を取った轟雷に構わず水平斬りを浴びせて反対側に走り抜けた。

 斯くして振り切った炎の大剣は根元から立ち消え、大技を使った智天使(ケルビム)は脱力感に襲われた。そこまでは想定内の動作なのだが、両手を前にかざしたままの轟雷が全くの無傷だというのが想定外だった。

 

 智天使(ケルビム)にはこうなるに至った過程が見えていた。まず炎の大剣を振りかぶった時点で刀身に虹色の輝きが纏わり付いていた。その所為で余計に眩しく輝いており、この時点で既にエネルギーの流出が始まっていた。

 次に、炎の大剣は轟雷の表面に直接届いておらず、何か強力な障壁に阻まれていた。炎の大剣は障壁に接触した時点で全熱エネルギーの注入を開始したが、集中したエネルギーをアースのように障壁表面沿いに散らされていた。

 更に、障壁表面に散ったエネルギーを轟雷の両手のみならず金色の機体表面から急速な勢いで吸収していた。エネルギーが分散したとはいえ、先ほどまでの黒い状態ならばそれでも融かしていた筈だが、全く苦にもしていない様子であった。

 

智天使(ケルビム)「何……!? 何だ、その力は!?」

 

 先ほどまでの黒い轟雷は接触した熱を吸っているだけだったが、今の金色の轟雷は炎の大剣を吸収してなお周囲の広範囲の熱を吸収している。しかも徐々にではあるが、機体の大きさが増している。それに伴い、熱を吸収するペースも範囲もどんどん増加している。

 

スコア「――今度はこちらが答えよう」

 

 返答しつつ、スコアが静かに前進を開始した。

 

スコア「これは、()()()()()()()()だ。名前は無いが……そうだな、幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)とでもつけておこうか」

 

テクス「何故なら今組み合わせて作ったでござるからな!」

 

 テクスが言うように、幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)とは複数の()()()()()()()()を組み合わせたものだ。

 

 その1つは()()()。ターンXやターンエー、G-ルシファーに搭載されている、エネルギーを吸収分解し、文明を塵に還す禁断のナノマシン兵器だ。恐ろしいことに、本当に一度地球の文明を丸ごと滅ぼした実績がある。

 どこでこんなものを仕入れたのかと言えば、一度目はGジェネレーション軍団が最後の手段として強化型BETAに使おうとしたのをギリギリで止めたとき、二度目はスーパーロボット軍団が巨大ゾヌーダロボとエネルギー吸収合戦をしていたときだ。その際に散布された月光蝶ナノマシンを、時間停止型インベントリに収納して持ち帰っておいたのだ。

 

 無事持ち帰ったのはいいのだが、これを研究解析するのは少々大変だった。何しろ分解命令が発動された状態の月光蝶ナノマシンなのだ。普通の容器では即分解されてしまい、場合によっては研究所丸ごと砂にされかねない。

 これをどうしたものかと検討した結果、まず水中に出して、魔法で絶対零度まで瞬間冷凍してから解析することになった。元素構成の都合上、水は灰に出来ないし、凍らせてしまえば周囲からのエネルギー吸収も殆ど出来ないというわけだ。

 そうして匠衆(マイスターズ)製汎用ナノマシンで月光蝶の機能をコピーすることには無事成功したのだが、それで終わりとはならなかった。同時期に別の似たような機能のサンプルを入手していたからだ。

 

 それがもう一つの文明埋葬システム()()()()、そしてその基本能力である()()()()である。スーパーロボット軍団と共同で討伐した奴だ。こちらにも周囲のエネルギーを吸収し金属を土塊に還す機能がある。

 機界新種はゾンダーから派生した新種であり、ゾンダーは暴走したZマスタープログラムが生み出したものだ。そのZマスタープログラムは元々三重連太陽系の紫の星で作られたストレス除去システムだったので、間接的にはこれも人間が生み出したものと言える。ゾンダーが万が一の為の生存戦略として生み出した筈の機界新種がゾンダーをも滅ぼしかねない脅威になったのは何とも皮肉な話である。

 こちらは前段階のゾンダーが三重連太陽系を滅ぼした実績がある。いや、そんな実績で張り合われても困るが。

 匠衆(マイスターズ)は対機界新種人質奪還作戦に協力するついでに、ちゃっかり巨大ゾヌーダロボの破片を入手していた。巨大ゾヌーダロボにしがみついた際に、むしり取った破片を時間停止型のインベントリに放り込んでおいたのだ。

 

 研究開発部に持ち込まれたゾヌーダロボの破片を月光蝶ナノマシン同様に慎重な扱いで解析してみたところ、こちらは月光蝶ナノマシンと違って機能は停止していたが、物質昇華に関わる構造を解析することは出来た。そしてその物質昇華機能モジュールは細胞のように細かい単位で組織を成しており、然るべきラインに動力を投入すれば起動可能であることが判明した。

 ゾンダー由来の新種なので投入すべき動力は単純な電圧ではなかったが、この問題はマナによって解決した。むしろ魔力補正が乗るようになって便利ですらあった。ついでと言っては何だが、この物質昇華機能モジュールにはあの超高効率バリアの機能も付随していた。轟雷の縮退炉はゾヌーダロボとは大元の出力が違うので、このバリアもオリジナルより遥かに強化することが可能だった。それらの機能が統合された細胞単位のモジュールは、『機界新種細胞』と命名された。

 そしてこの機界新種細胞の機能が、類似システムである月光蝶の研究解析からナノマシンによる再現が可能になっていた。

 

 つまり幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)とは常温超伝導光電変換膜を含めた3種のエネルギー吸収機構を組み合わせたものである。

 まず下地に接触距離用の常温超伝導光電変換膜。これが黒だ。

 その上から汎用ナノマシンで機能を再現した機界新種細胞が覆っており、これがゾヌーダロボと同じ金色に輝いている。元々非接触でエネルギーを吸収出来るため中距離で使用出来、更に強力なバリア展開能力を持つ。

 更に外側には同じく汎用ナノマシンで機能を再現した月光蝶が猛烈な勢いで散布され、これが虹色に輝いている。月光蝶はエネルギー吸収機能があるとは言えナノマシンそのものを散布しているために耐熱性が比較的低く、過熱でやがて蒸発してしまうが、蒸発するまでにエネルギーを分解して物質化しているので、絶え間なく供給していけば結果的に周囲の温度は下がる。

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