存在Xの目の前に取り残されたターニャとマイン。こちらは集団戦の様相を呈していた。
ターニャ側は200m級の轟雷型攻性デコイが約100体。存在X側は同じく200m級の
ターニャは当初200mサイズにした英霊型の攻性デコイを出していたのだが、これはすぐに引っ込めることになった。撃墜された個体の魂を
戦意旺盛な英霊達はこの一大事にその程度のリスクで躊躇などしないと継戦を主張しており、ターニャはその
ともあれ、今現在は両者の使役する軍勢が空中戦を繰り広げて、互いに数を削り合っていた。しかしお互いに撃破されるたびに補充される為、全く決着がつかずにいる。
性能はターニャ側の方が高く、指揮能力の差も加わってキルレシオが10:1程度になっているため一見互角の勝負をしているように見える。
しかし実際のところこんなものは前座の茶番だ。問題は敵方の軍勢ではなく、存在X単体の脅威度なのだ。
何しろ信仰力を込めようと、攻撃を一点集中しようと、デコイで攪乱や一斉攻撃をしようと、敵方大将である存在Xにはあらゆる攻撃がダメージにならないのだ。光線はあっさり吸収するし、恒星をも砕く必殺のブロウクンスマッシャーやバリアを中和するプロテクトスマッシャーですら通じない。しかも存在Xの攻撃は容易に轟雷のバリアを突破し、原子核パスタ構造材を損壊せしめる。これでは勝負が成立しない。
現状の存在Xの大きさは22kmほど。頭頂高215mの轟雷とのサイズ差は100倍程度で、3桁離れていたマジンガーZ対最強ゴードンヘルほどのサイズ差は無いが、それでも戦力としては十分な差があった。様々な世界でアブラハム系宗教の信仰力を徴収して蓄えてきただけのことはある。
エレニウム95式魔導演算宝珠を使えばかすり傷程度はつけられるというのは存在X自らの発言だが、あれはあくまで戦闘態勢に入っていない油断した状態での話に過ぎないのだろう。或いは下界に出張顕現していて出せる力が限られた状態の話かもしれない。三重恩寵のメアリー・スーを容易に処分出来なかった話からすれば恐らく後者か。それが通常の1万倍以上、轟雷の100倍でかい戦闘モードに適用されないのはまあ妥当な所だ。たとえ防壁を突破したとしてもかすり傷の大きさが1/100になってしまえば表皮が多少削れるだけで傷とも呼べないのだから。
ターニャ達にもラリー達が実行したようなパワーアップ手段はあるのだが、単独で使うには隙が大きいものや成功率に疑問がつくものが多く、それをサポートする専門のエンジニアもいない。他の面子が戻ってくるまでもたせる方が確実性が高いので、準備こそすれ実行には踏み切れずにいた。
存在X「おお勇者よ、逃げ惑うばかりとは情けない」
マイン「ちっ、無駄にでかい顔をしおって!」
いつでも仕留めてやれるぞと言わんばかりに悠然と構えて嘲笑する存在Xの顔に一撃ぶちかましてやりたい所だが、挑発には乗らない。
実のところ、現状維持がかなうならばそれほど悪くはないのだ。存在Xに損害こそ与えられていないが、ターニャ側も人員・機体ともに損耗していないからだ。まあ実力が拮抗しているわけではないので、遊ばれているだけとも言えるが。
また、ターニャ側の攻撃に全く意味が無いわけではない。この軍勢の削り合いで多少は存在Xの信仰力を削れてはいる筈だ。しかし元々貯め込んでいた量が多いのか、アブラハム系宗教の信仰が根強いのか、今のところ全く総量が減っているようには見えない。
存在X「……しかしなかなか戻ってこぬな。先に我が予言を成就させてからと思ったのだが、そう簡単にはいかんようだな。仕方ない、我も動くとしよう」
ターニャ「予言だと? ……ああ、何もかも失うだろうなどというあの戯言か。そうか、貴様あの予言が外れたからと今度は力尽くで成就させるためにわざわざ遊んでいたのか。お笑いだな」
ターニャは前世を思い起こした。あれはターニャがモスコー襲撃から帰って休んでいたときのことだ。突然寝室に存在Xが押しかけてきて、エレニウム95式を返却するか、より強い力を持つ使徒として従順に働くかの二択を迫ったのだ。
今思い起こしても少女の寝室に肌を露出した老人が押しかける絵面は何とも言いがたいものであったが、まあそれは置いておこう。
その二択をどちらも断った場合どうなるかとターニャが問えば、存在Xは答えた。ターニャが統一歴で積み上げてきた全て、地位も人脈も自慢の大隊も、上官も同輩も居場所も全て失い、みじめに野良犬のように追い回され、神よと叫び死ぬだろうと。
実際フランソワ共和国にダンケルクを許してしまってからというもの
ならば結局予言でも何でもないただの脅しでしかないとターニャは切って捨てた。そして信仰稼ぎの為にマッチポンプで戦争を起こす存在Xに抗い、自らの平穏な老後の為に自分の手で火種を燃やし尽くすと啖呵を切ったのだ。
つまりは前回その予言が外れてしまったから、今回は力尽くで予言を成就させて威信を保とうというのだ。神や創造主を自称する癖に、まったく器が小さいことだとターニャは嗤った。
ターニャ「だが残念だったな、うちの連中はしぶといぞ?
存在X「すぐに終わらせる」
ともあれ、そろそろ待ちくたびれたらしい存在Xが決着に向けての行動を開始した。
ここまで自陣営の損害が修復可能な範囲に収まっているのは存在Xが積極的に戦闘に参加しなかったからに過ぎない。ここからは厳しいことになるだろう。だがそれに対してターニャ達は無策というわけではない。
マイン「元帥、準備はどうだ?」
ターニャ「は、いつでも」
後部座席のマインがターニャに問えば、瞑想していたターニャが目を見開いて返事をした。
実のところ、ブロウクンスマッシャーすら通じないと判明して以降の指揮と最低限の操縦はマインが担当していた。それはターニャを
しかし仕事に対して誰よりも真面目なターニャが存在Xと雑談を交わす程余裕があるのならば、既に準備は終わっているだろうとマインは判断したわけだ。
マイン「ならば今がその時だ!」
ターニャ「了解。――行くぞ
マインがターニャに操縦権を戻すと、轟雷の内側から
マインとターニャのペアを書いているとたまに混ざってマーニャになります。