【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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363. ただの再利用(リサイクル)だよ。資源は有効に使うべきだろう?

 次元力。スパロボZ世界の超時空物理学に由来する用語であり、『源理の力(オリジン・ロー)』、『霊子力』、『大いなる力』などとも呼ばれる。これらの内で正式名称はオリジン・ローだが、作中殆どの場面で次元力と呼ばれているので、ここでも『次元力』と表記することにする。

 次元力は意志を以て霊子に干渉し因果・事象を制御する力であり、極めれば文字通り()()()()()()として振る舞う。

 この霊子とは何かと言えば、世界のあらゆるもの、無生物や微粒子を含む万物に宿る意志の力と説明されており、どうにもファンタジー寄りの概念である。しかしスーパーロボット軍団がマブラヴ世界でも真化融合を使えていたことを考慮に入れると、マブラヴ世界にも霊子と同様のものがあるのだろう。ならばマブラヴ世界よりもファンタジー寄りのこの神域に無い筈がない。

 

 しかしこの次元力、神の領域の力だけあって普通の人間の身で扱うのはかなり難しい。太極の欠片であるスフィアを用いるなどすれば多少は引き出すことは出来るものの、その限界は高次生命体に対抗できるほどではない。そこで、『獣の血』『水の交わり』『風の行き先』『火の文明』を経て『太陽の輝き』に至る、つまり()()して高次生命体となるのが次元力を運用する為の正規ルートとなっている。

 これらのプロセスにおいて、『獣の血』とは闘争による進化、『水の交わり』とは融和による進化、『風の行き先』とは開拓による進化、『火の文明』は読んでそのまま文明による進化を指す。総じて()()()()()()()()()()()()()()()というのが肝になっているわけだ。

 

 残念なことにターニャ・フォン・デグレチャフは()()()()のような女である。だがそれは判断基準の決定的な違いによって本人ですら気付いていない誤解にまみれているということであり、意図的に騙しているのではない。

 その一方で、今現在のターニャは上司には組織の中核の一員と認められ、部下には母のように慕われ、民衆からも戦乙女(ヴァルキリー)のように英雄視されている。加えて、ターニャ自身もサラリーマン時代はともかく統一暦以降では戦友という仲間を信じることが出来るようになった。

 そこには信頼関係というものが確かに存在していた。互いに戦争狂(ウォーモンガー)だと思っているなど、数々の誤解が相互理解を妨げているのは間違いないが、むしろ勝手な好意的解釈もあいまって、ターニャ本人が認識しているレベルを遥かに超えた絆に成長していた。

 つまり総合的に判断すれば真化の前提は満たしていることになる。まあ考えてみれば小悪党のジェイソン・ベックでも合格したのだから、それほど厳しい条件ではないのだ。本人が望んだ形ではないとは言え、多くの者の尊敬を集めるターニャにクリア出来ないわけがない。

 

 そしてスーパーロボット軍団の中でもZ-BLUE(ズィー・ブルー)の面々が会得している『真化融合』というのは、自らの乗機に付喪神のように人格を仮定し信頼すべき()()と認識することでその絆を真化のとっかかりとするものである。段階的には正規ルートの真化の第一歩、入口とも言えるものだ。

 入口とは言うが、それでも至高神Z打倒に至ったのは、相手が正規ルートで真化していなかったことと、歴戦の勇士が集まったZ-BLUE(ズィー・ブルー)の地力、そしてどんな苦境でも諦めない強い心が原因だろう。

 だがターニャが迅雷や轟雷を乗り回しているのはここ1年くらいのことで、戦友扱いするにはやや絆が薄い。これについてはZ-BLUE(ズィー・ブルー)にもロボットを乗り回し始めて1年経っていない面子がいたのでやってやれないことはなさそうだが、ターニャの長い戦歴の中で1年未満の付き合いというのは大分短い方なのだ。

 しかし案ずることはない。ターニャには文字通りの信頼すべき戦友が山程いる。しかも彼等は英霊として目の前に呼び出せるのだ。人間同士の絆で条件を通すならば、むしろZ-BLUE(ズィー・ブルー)の方式よりも本来の真化に近いと言える。

 つまりターニャは英霊型の攻性デコイを引っ込めてからは、彼等に手伝ってもらって真化の入口を模索していた。そしてこれは存外簡単に見つかった。元々ターニャは超常の力である術式のエキスパートであり、より自由な魔法の使い方はステークやアウシアント人達に習っているし、エレニウム95式を扱った経験から信仰力=次元力の使い方をある程度自力で習得していた。熟練のスフィア・リアクターに近い段階に至っていると言っていいだろう。

 

 しかし4人のスフィア・リアクターを揃えたZ-BLUE(ズィー・ブルー)でも、真化融合を初めて発動するにはもう一つキーが必要だった。それが『Zクリスタル』だ。

 

 Zクリスタルとは、人の意志と想いが形となったエネルギーコインである『Zチップ』を精錬・凝集・融合して作り上げた結晶体だ。第3次スパロボZではこのあたりがインターミッションのゲームシステムとしても稼働しつつ、シナリオにも密接に関わっている。

 ちなみにスフィア・リアクターとはスフィアの所持者かつ使用者であり、スフィアとは次元力を効率的に引き出す機関だ。人間にとって未知の遺物であるスフィアは実際のところ人造神である至高神ソルの砕けた心の12の断片なので、全く同じものは作れないという設定があるが、それはここでは関係ないので置いておこう。

 

 問題はターニャ達が真化融合の初回発動に必要なZクリスタルをどう補ったのかという話になるわけだが、その前に次元力が発動する際に現れる光の色は、発動条件によって変化する。

 

・スフィア:緑

・人造スフィア:赤

・Zクリスタル:青

・ネガティブな次元力:黒

 

 今轟雷が発している光の色は青だ。つまりZクリスタルに相当する何かが既に存在することになる。そんなものを一体どこで入手したのか。

 まずZ-BLUE(ズィー・ブルー)のソーラリアンに搭載されていたZクリスタルはスパロボZ世界の次元修復に使われていて、殆ど残っていない。幾らか残っていたとしてもそんな貴重かつ重要なものを貰ってくるわけにもいかない。

 だがちょっと考えてみてほしい。Zクリスタルが人の想いの結晶ならば、それは信仰力を濃縮したものとも言える。そして()()()()()ならばこの神域に掃いて捨てる程転がっていたではないか。

 

 ターニャが再び英霊型の攻性デコイを召喚すると、轟雷同様に青く輝くそれらは猛然と主天使(ドミニオン)軍団を押し返し始めた。

 

存在X「貴様、その力はまさか」

 

ターニャ「ただの再利用(リサイクル)だよ。()()は有効に使うべきだろう? 孫子もそう言っていたぞ」

 

 孫子曰く、敵の一鍾を食むは吾が二十鍾に当たる。平たく言うと、敵地の資源を奪って流用出来るならば、輸送コストも考慮すると一石二鳥どころか倍以上の価値があるということだ。

 

マイン「見事な仕事だと感心はするがどこもおかしくはない」

 

存在X「神をも恐れぬ愚か者どもめ……!」

 

 ターニャ達が口角を上げて満面の笑顔で返したことで、存在Xは大いに眉をしかめた。

 まあ要するに、ターニャ達は仕留めた天使達のパワーをどうにかして流用しているということなのだ。信仰力がものを言う戦場で、信仰力が無ければ存在出来ない信仰力の塊である敵そのものを再利用(リサイクル)出来るのならば、それは強力な一手になり得る。最初に中堅以下の天使を全部片付けたのは、存在Xの戦力を減らす以上に補給の為という意味が強かった。

 

 真化の結果攻撃が通りやすくなったことで、青く輝く英霊達が主天使(ドミニオン)を撃墜する速度は主天使(ドミニオン)軍団が補充されるペースを上回り、しまいには主天使(ドミニオン)発生即殺(リスキル)するようになった。そのついでに存在Xを同一射線上に収めて攻撃する余裕まであった。だがそれでも存在Xにダメージが入った様子は無い。

 まあ主天使(ドミニオン)の殲滅ペースが上がれば存在Xの耐久ゲージを兼ねる信仰力を削るペースも上がるので悪い話ではない。そう考えて英霊軍団には無謀な突撃を禁止してあるという事情もある。

 

存在X「――光あれ」

 

 存在Xが右手をかざすと、英霊達の頭上から無数の光条が降り注いだ。先ほどまでの轟雷型攻性デコイなら一撃で消し炭にされる攻撃で、しかも先ほどまでとは違って、着弾後も暫く追尾するという殺意高めの仕様になっていた。英霊軍団はすぐさま回避行動に移ったが、回避スペースが足りないせいで3割程が被弾した。幸い被弾した英霊も防御が適切だった為に撃墜は免れた。

 撃墜は免れたもののダメージは大きく、回復には少しばかりの時間が掛かる。まだまだ力の差は大きいと言える。しかし、一撃耐えられるというのは戦術の幅を大きく広げることになる。

 ターニャは英霊軍団の一部を敵将攻撃配置、また一部を防御配置にすると、次の手札を切った。

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