【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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364. 重轟雷(じゅうごうらい)、起動

 ターニャは英霊軍団の一部を敵将攻撃配置、また一部を防御配置にすると、次の手札を切った。

 

ターニャ「千却万雷(コール・グレーター・サンダー)ッ!!」

 

存在X「む?」

 

 存在Xは疑問の声を上げた。千却万雷(コール・グレーター・サンダー)が合体のキーワードなのは知っているが、ターニャは既に轟雷への合体を済ませている。一体どういうつもりかと存在Xが英霊達の相手をしながら眺めていると、ターニャの足元に直径2().()4()k()m()の空間接続ゲートが開いた。

 そしてその中から、轟雷とデザインが同じでサイズが10倍になる武者鎧が腕組み仁王立ちでせり上がってきた。決戦用大魔導鎧()()重轟(かさねとどろき)だ。

 重轟(かさねとどろき)は頭頂高2.15kmに達する大型機械だ。何故そんなものがインベントリに入ったのかと言えば、これは別段新しい技術によるものではない。単に轟雷の兵装担架が物理的に迅雷四型の兵装担架の10倍大きいのが原因だ。箱が大きいほど容量が大きくなるのは当然である。それほど巨大なインベントリボックスを作ることが通常無いだけなのだ。

 

 次に重轟(かさねとどろき)の頭頂部が開いてガイドビーコンが伸び、轟雷の跳躍ユニットに繋がると、轟雷が引き寄せられるように降りていく。

 頭部の中に用意されている専用座席にターニャ達の轟雷が着座、跳躍ユニットをソケットに挿入し、ロックを掛けて完全に固定すると同時に展開していた頭部が閉じられた。

 轟雷は大魔導()()()なので、必然的に跳躍ユニットが装備されている。そしてそれは迅雷四型同様に合体(ドッキング)用の接続端子を兼ねているのだ。いや、轟雷では時空勾配推進機での機動が主体になっている為、名前に反してこちらの合体(ドッキング)用途の方がメインと言える。

 

 跳躍ユニットを固定すると接続認証プロセスが始まり、進捗バーが瞬時に伸びきってそのバーの下のメッセージが『未認証:不明なユニットが接続されました』から『認証済:決戦用大魔導鎧弐號・重轟(かさねとどろき)』に切り替わる。

 続けて接続したユニットのステータス診断が走る。それも完了して、進捗バーの下に大きく『起動準備完了』のメッセージが出た。

 

ターニャ「重轟雷(じゅうごうらい)、起動」

 

 合体(ドッキング)プロセスを完了してターニャが起動を宣言すると轟雷の跳躍ユニットを経由して重轟雷との阿頼耶識改接続が有効になり、その瞳に光が灯った。これと同時にターニャの視界も轟雷視点から重轟雷視点に切り替わり、機体ステータス表示も轟雷のステータスが畳まれて重轟雷のステータスに切り替わった。

 こうして起動したのが頭頂高2.15km、重量2.40×1021tの決戦用大魔導戦術機、重轟雷(じゅうごうらい)である。なお重の意味はインファクトリと同じヘビーではなく、重ね着の方だ。

 

ターニャ「随分と余裕じゃないか。見ていて良かったのか?」

 

存在X「そのような玩具、恐れるに値せぬ。我の1/10程度しかないではないか」

 

 まあ確かにサイズ差は100倍が10倍に縮まったに過ぎない。小人が巨人に立ち向かっているようにしか見えないだろう。だが戦力評価はどうか。

 

マイン「ではその玩具の力、受けてみるがいい!」

 

 マインの宣言に合わせてターニャ機は両腕を腰に引き付け、拳にナックルガードを装着すると、前腕を高速回転させた。それに合わせて英霊軍団が中央の射線を空けた。

 

ターニャ「ブロウクン!」

 

マイン「プロテクト!」

 

ターニャ&マイン「スマッシャーッ!!」

 

 重轟雷が双掌打のモーションで両腕を突き出すと同時に前腕が射出され、時空勾配推進機とベルカモーターでみるみる加速していく。

 普通の人間には全く見ることが出来ないほどのわずかな時間で存在Xに肉薄した重轟雷の両腕は、しかし存在Xの右腕の一振りで弾かれ、彼方へと飛んで行った。

 ターニャ達の攻撃はそれだけでは終わらない。スマッシャーを迎撃されることを見越して本体も加速しており、波状攻撃のドロップキックを仕掛けていた。

 しかしその攻撃も左の掌であっさり受け止められた。

 存在Xはそのまま重轟雷を握りこもうとする。

 

存在X「効かぬと言ったであろう」

 

マイン「フ、一瞬の油断が命取り」

 

存在X「何をぱらッ!?」

 

 念話で自動通訳している筈なのに何を言っているのか要領を得ないマインの言葉に存在Xが内心首を傾げた瞬間、その左脇腹に強烈な衝撃が入り、22kmの巨体が見事に吹き飛ばされた。

 それを成したのは、弾かれた後にバーティカルターンで折り返してきた左右スマッシャーだ。実のところ、その威力は轟雷の同じ技の10万倍を超えている。

 

 まず重轟雷は単純に重量が轟雷の1,000倍ある。同じ速度で着弾すればこれだけでも威力が1,000倍だ。

 

 次に決戦用大魔導鎧・重轟(かさねとどろき)には縮退炉が1,000基搭載されている。縮退炉のサイズを大きくしても出力が上がらず、出力上昇の為にブラックホール消失までの時間を短縮すると制御が難しくなるので、容積に合わせて単純に数を増やしたのだ。数が増えただけ事故が起きる確率は上がっているが、縮退炉Mk.2では炉心が原子核パスタ構造材になっているため、多少の爆発事故を起こしても隣の縮退炉に対する影響は殆ど無い。

 ただしこの縮退炉の出力は飛ばした前腕にダイレクトに反映されるわけではない。しかし重轟雷は前腕片方につき32基の縮退炉を搭載している。轟雷ではスペースの都合上搭載出来なかったものだ。このため瞬間的に使える電力も増大しているし、電力枯渇による加速限界も存在しない。

 まずベルカ砲の30.5cm砲弾に内蔵された使い捨て核融合炉での発電量は5秒で100TJ = 20TWだ。これに対し重轟雷では縮退炉Mk.2の緊急出力6.23Z(ゼタ)W×32基 = 199Z(ゼタ)W。100億倍ほどの差がある。

 ただし時空勾配推進は重量に関わらず同じ加速力を与えるが、重力場を形成するべき体積によって消費電力が変わる。重轟雷の前腕の直径は200mほどあり、30.5cm砲弾と比較して体積は2億5千万倍ほどの差になる。

 総じてベルカ砲の√40倍の加速が期待出来る。当然速度には光速×ベルカ効果倍率の壁があるが、速度が上がらなくても運動エネルギー自体は蓄積されるので問題は無い。

 ちなみに轟雷のブロウクンスマッシャーには縮退炉を搭載出来なかったので、必要エネルギー分の使い捨て核融合炉をカートリッジにして毎回入れ替えるという運用をしていたが、実はそれでも加速度はベルカ砲に劣っていた。砲弾と違って腕の機構が必要であるため、スペースを満足に取れなかったせいだ。雲耀(うんよう)の太刀と同等と見なせるのは、あくまで破壊のGパワーによる倍率強化を加えた場合だ。そうなると轟雷と重轟雷における加速度の差は√40倍ではなく、√100倍を超える。

 

 つまり質量1,000倍×計算上の速度(√100)2倍以上 = 10万倍オーバーということになるわけだ。威力は概ね3000(さい) = 3×1047Jくらいになる。

 

 更に、重轟雷の前腕の時空勾配推進機は本体用のフルスペック仕様になっている為にバーティカルターンが可能になっており、減速せずに折り返すことが出来るので、これと縮退炉搭載で電力枯渇が無いという特性が合わさって、射出から時間が経過する程に威力が増すという凶悪な仕様になっていた。トピアの連続長槍突撃(スピアチャージ)と同じ原理だ。

 存在Xを吹っ飛ばした左右スマッシャーは、バーティカルターンでまた存在Xを殴る軌道に入っていた。

 繰り返し攻撃を認識した存在Xは体勢を立て直して3回目、4回目を弾いたが、折り返しだけでなく襲撃軌道自体もバーティカルターンを活用して不規則に変化する為、徐々に迎撃が辛くなっているように見えた。

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