存在X「ええい鬱陶しい」
左右スマッシャーの反復攻撃を5度、6度と防ぐ内に存在Xは苛立っていた。直線的な攻撃であればカウンターで消滅させることも難しくないのだが、叩き落とそうとすればバーティカルターンで回避されるので迎撃が難しい。しかも最初は人間基準で言うとボールが高速でぶつかった程度のダメージだったのだが、どんどん威力を増しているのがタチが悪い。
全周囲攻撃で迎撃することも不可能ではないがエネルギー効率が非常に悪い。やはり本体を先に叩くべきか、とターニャの重轟雷に目を向けた所で存在Xは目を見開き、咄嗟に能力を発動した。
存在X「静寂よ、来たれ!」
静寂とは程遠い語調ではあったが、この一言で神域全体が一斉に静まった。アニメ版幼女戦記で存在Xが登場するたびに気軽に使っていた時間停止能力だ。クラエル神も同様の能力を使っていたが、あちらは世界の色が無くなるので停止しているのが分かりやすい。
時間が停止しているならば光も停まっている筈なので、色以前にどうやって視覚認識しているのかという問題が出てくるのだが、超常現象にそれを言っても仕方がないので置いておこう。
ともあれ、存在Xが管理者権限とも言えるこの能力を行使した結果、神域世界に内包されるあらゆるものが停止した。ブロウクンスマッシャーも、プロテクトスマッシャーも、英霊軍団も、重轟雷とその下の
存在X「よもやまだ上があったとはな。……一方的すぎる故、この手はあまり使いたくはなかったが、流石にこれ以上大きくなられては
轟雷と見た目が変わっていない重轟雷にも、やはり轟雷や迅雷四型と同様に跳躍ユニットがついている。このままサイズが10倍の大魔導鎧を召喚し続ければ、マトリョーシカのように原理上は何段階でも合体が成立するのだ。
ただし重轟雷の時点で重量がヘビーインファクトリ級を軽く超えて地球質量と同じ桁に達している為、建造の為にその更に1,000倍の資源が必要と見込まれる大魔導鎧参號が存在するとは存在Xも想定していなかったわけだが。
・轟雷:2.40×1018t、頭頂高215m
・月:7.35×1019t、直径3,476km
・ヘビーインファクトリ級:1.50×1020t、全長1.2km
・重轟雷:2.40×1021t、頭頂高2.15km
・地球:5.97×1021t、直径12,714km
・重轟雷の次(仮):2.40×1024t、頭頂高21.5km
・太陽:1.99×1027t、直径1,392,000km
もし更にもう一段階上があるのなら、次は太陽の質量を超えることになる。
静寂に満ちた世界の中で、存在Xの言葉に反応する者があった。ターニャだ。
ターニャ≪……時間停止能力か≫
これは存在Xの想定内の現象だ。存在Xはやろうと思えば全て停止させた上で特定の相手と会話だけ出来るように調節出来る。そのため、ターニャは身体や機体は動かせないが会話だけ出来るという奇妙な状態になっていた。
ただし
存在X「然様。もはや勝敗は決した。汝との因縁も長くなった故、末期の言葉くらいは聞いてやろう」
ターニャ≪ハハッ、命乞いが聞きたいだけだろう? ――存在Xに災いあれ!≫
存在X「つまらん」
ターニャが指摘した通り、これは神に逆らう者の悲惨な末路を印象づけるための
人々の祈りの力だけあり、その輝きはやはり青かった。しかしターニャからすれば神聖さや暖かさを感じるよりも、人々の切実な祈りの力をその願いに反した碌でもないことに使われている嫌悪感の方が遥かに大きい。
いや、連中は頭の中の上下関係を絶対視しているから、人間相手に何をやっても許されると思っているのだろう。
やはり遵守すべき市場原理を蔑ろにするから
そんなターニャの思考を余所に、最終的に重轟雷を一撃で仕留めるであろうほどの強力な信仰力を込めると、存在Xはその指をゆっくりと振り下ろしていった。
存在X「滅せよ――」
だがその瞬間。
若い男の声≪そうはさせねえ!!≫
何者かの声とともに神域の宇宙空間がガラスのように叩き割られ、そこから宇宙の欠片が飛び散った。
存在X「何者!?」
時間停止中の神域に対する侵入者という異常事態。存在Xは侵入者の脅威度をターニャ達より上と見なし、そちらへ振り向いた。
神域宇宙の砕け散った部分からは世界の狭間が見えており、そこで眩しく何かが輝いている。
誰何に対する返事は無く、その代わりに空中に光の文字が提示された。
光の文字≪何ダト思ウ?≫
若い男の声≪全てを切り裂け、
そして飛来する弓型の巨大な刃。いや、よく見ればその刃は前腕から生えたものだ。下界では腕を飛ばすのが流行っているのだろうかと存在Xは訝しんだ。
存在X「やむを得ん!」
優先順位を切り替えた存在Xは、先ほど指先にチャージした奇跡の力をその迎撃に使うことにした。狙った対象を灰にする神の雷だ。
膨大な信仰力と出鱈目な高電圧を纏った神の雷とアイアンカッターが空中で衝突し、アイアンカッターの刃を折ってはじき返した。言い換えれば迎撃には成功したが、重轟雷を消滅させるつもりのエネルギーですら腕一つの完全破壊がかなわなかったのだ。
はじき返された
しかしてその姿は。黒光りする太くたくましい手足。胸に輝く赤い放熱プレート。悪魔や死神のような凶悪な顔つき。そして円形になった赤いスクランダー。いや、円というよりは『0』と読める。存在Xはその正体に見当がついた。
存在X「ゼロ……? そうか、汝が、いや、汝らがそうか」
若い男の声→甲児≪そうさ! てめえがたとえ神だとしても、みんなが生きる世界を好きにはさせねえ! この兜 甲児と、神にも悪魔にもなれる無敵のスーパーロボット、マジンガーZEROが相手だ!!≫
光の文字→ZERO≪最終ニシテ原初ノ魔神ノ力、今コソ見セテクレヨウ≫
元祖スーパーロボットパイロット、兜 甲児はマジンガーZEROの右人差し指で存在Xを指さし、挑戦状を叩き付けた。
駆けつけたマジンガーZEROは公然と正義の鉄槌を下せる機会を得ていつも以上に戦意に満ちており、その機体には膨大な光子力と次元力の輝きが満ちていた。
ZEROの光文字の台詞なんですけど、実は時期によってカナ部分が平仮名になったり片仮名になったりするんですよね……。原作の最終決戦では混在すらしています。
本作では片仮名に統一しております。