【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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368. 起動(ウェイクアップ)十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)

 11の大魔導鎧を召喚したトピアの轟雷は、上から順に重轟雷(じゅうごうらい)三重轟雷(みえごうらい)四重轟雷(よえごうらい)、と次々に合体していって、最終的に轟雷のものを合わせて決戦用大魔導鎧を12枚重ねで着込んだ。

 つまり十二単(フルドレス)というのは合体が承認されている最上位までの合体を一斉に行うキーワードであり、全ての承認が済んでいれば最高で12枚重ねになるということだ。

 空間を水で満たされると面倒というのは、合体の際に中に入り込まれると機械トラブルの元になるということだ。ただの水でも面倒なのに、存在Xが召喚した水となると何が起きるか分かったものではない。当然水をぶっかけられた機体もすぐに焼却処理とエラーチェックを済ませていた。

 

サティ「システムオールグリーン」

 

トピア「起動(ウェイクアップ)十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)

 

 トピアが起動した十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)は、迅雷にマトリョーシカ合体を十二段重ねた頭頂高215億km、重量2400(ごく)tの()()()()()()()()()である。比較対象を持ってくると、同じく恒星系規模段階のゲッターエンペラー120億kmの2倍弱程度だ。つまり()()()()()()()()()。問題は質量の方で、2400(ごく)tというのは()()()()()()()()()()()()()()()()()。宇宙全体の質量が一つの恒星系程度の狭い範囲に集中していると考えると、とんでもない異常事態だ。

 迅雷から十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)までの重量とサイズを一覧にすると以下のようになる。

 

迅雷四型(じんらいよんがた):240t、頭頂高21.5m

・ガンバスター:9,800t、頭頂高200m

・轟雷をアダマンタイトで作った場合:240,000t、頭頂高215m

・インファクトリ級:1.50×107t、全長1.2km

・第一世代型マクロス級:1.80×107t、全長1.2km

轟雷(ごうらい):2.40×1018t、頭頂高215m

・月:7.35×1019t、直径3,476km

・ヘビーインファクトリ級:1.50×1020t、全長1.2km

重轟雷(じゅうごうらい):2.40×1021t、頭頂高2.15km

・地球:5.97×1021t、直径12,714km

三重轟雷(みえごうらい):2.40×1024t、頭頂高21.5km

・太陽:1.99×1027t、直径1,392,000km

四重轟雷(よえごうらい):2.40×1027t、頭頂高215km

五重轟雷(いつえごうらい):2.40×1030t、頭頂高2,150km

六重轟雷(ろくえごうらい):2.40×1033t、頭頂高21,500km

七重轟雷(ななえごうらい):2.40×1036t、頭頂高215,000km

八重轟雷(やえごうらい):2.40×1039t、頭頂高2,150,000km = 7.17光秒

・天の川銀河:2.5×1039t、直径10万光年余り

九重轟雷(ここのえごうらい):2.40×1042t、頭頂高21,500,000km = 1.20光分

十重轟雷(とえごうらい):2.40×1045t、頭頂高215,000,000km = 12.0光分 = 1.44天文単位

与一重轟雷(よひとえごうらい):2.40×1048t、頭頂高2,150,000,000km = 2.00光時間 = 14.4天文単位

・観測可能宇宙:3×1049t、直径930億光年

十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい):2.40×1051t、頭頂高21,500,000,000km = 20.0光時間 = 144天文単位

 

 この常軌を逸したスケール故に、十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)を運用可能にするには4つ程解決しなければならない問題がある。

 

 1つ目は半端にでかい為に普通に合体するととんでもない時間が掛かることだ。何しろ最終段階では頭頂高20光時間なのだから、空間接続ゲートから抜け出すのに光速でも20時間かかってしまう。実際にはこれはベルカ効果で解決している。

 ベルカ砲でベルカ効果倍率が最大10倍に限られるのは30.5cm砲弾の中に仕込めるシステムに限界があるからで、より大規模なシステムと大電力を使えるならばより高い倍率を掛けることが可能だ。

 

 2つ目も同じくサイズに関する問題で、光速に縛られて手足を振り回すのに何時間もかかっていては話にならない。これも通常はベルカ効果をフル活用することで何とかするのだが、都合のいいことに座天使(ソロネ)同様に存在Xも自身の巨大化に合わせて宇宙の法則を書き換えつつある。概ね同スケールで戦う限りは不便を感じることもないだろう。そして重い分だけ十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)側が有利になる。

 

 3つ目は基幹艦隊旗艦を作るかどうかのところで一度触れたが、あまりに重い為に途中でシュヴァルツシルト半径を割っている。

 具体的には四重轟雷(よえごうらい)では頭頂高215km、シュヴァルツシルト半径3.56km = 直径7.12kmでセーフだが、次の五重轟雷(いつえごうらい)で頭頂高2,150km、シュヴァルツシルト半径3,560km = 直径7,120kmになってしまう。この質量がこのサイズで存在するとブラックホール化してしまうということだ。

 ではどうやってその遥か先の十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)まで存在出来ているのかと言えば、単純に潮汐力キャンセラーを常時稼働することでこれを解決している。潮汐力というのは要するに他の天体に及ぼす重力作用であり、ブラックホールから光が脱出出来ないのも同じ重力作用が原因だ。つまり機体質量由来重力の影響を0にしてしまえばブラックホールにはならない。

 まあ何らかの原因で潮汐力キャンセラーが稼働停止するとブラックホール化待ったなしなので、普通ならこんな宇宙レベルの危険物は通常の轟雷以上に使用許可が下りない。

 

 最後の4つ目は、そもそもこんな宇宙質量を超えるようなものをどうやって建造するのかという問題になる。匠衆(マイスターズ)はおよそ無尽蔵の生産力を以てイスカンダル作戦(オペレーション・イスカンダル)の大マゼラン攻略戦に1500万tのインファクトリ級を216億個基幹艦隊10(けい)8千兆隻投入したが、これでも合計1.62×1024tにすぎない。この程度の物量では三重轟雷(みえごうらい)1機すら建造不能だ。

 だからこそ存在Xも三重轟雷(みえごうらい)が存在する可能性を当初考えておらず、その想定ならば自身の巨大化も22kmで十分と考えるのもまあ妥当である。

 実際の所、轟雷に合体用端子が存在するのを見れば分かる通り、匠衆(マイスターズ)でも重轟雷までの拡張は最初から考えられていたが、三重轟雷(みえごうらい)以降は生産力の問題で建造する予定は無かった。当初は。

 重轟雷の最終的な生産方式として超時空倉庫を利用したバイバイン法を採用するとしても、まず1機目を完成させなければならない。しかし重轟雷の頭頂高2.15kmはヘビーインファクトリ級の全長1.2kmを超えている為、まず建造ドックの設計から始めなければならないという話になった。匠衆(マイスターズ)研究開発部の重轟雷開発チームはこれに頭を悩ませた。不可能ではないが、扱う素材が原子核パスタという超重量物かつ常に保持装置か構造強化が必要なものであるため、建造ドックの設計がいい加減だとあとで大変なことになるのだ。

 しかしそこで魔法開発課から参加していた札束魔導士ことタバサ・ドヴォルザーツが不思議そうに首を傾げた。バイバイン法がアリなら、超時空倉庫と新型兵装担架インベントリと『同一の装備を大量に投入することでスケールアップ出来る設備』を組み合わせれば建造ドックなんて要らないじゃないかと。これが後に『十倍法』と命名されるプランであった。

 実際の工程としては、まずスケールアップ設備で1,000機の魔導鎧・轟を合成することで丁度10倍スケールの大魔導鎧になる。これでもう外装が完成だ。重轟雷以降も轟雷から外装デザインが基本的に変化していないのはこれが原因だ。10倍で区切っているのは、新型兵装担架インベントリに入る物の上限サイズがその兵装担架を装備している機体本体のおよそ10倍までだからだ。

 そこから後はスケールに合わせた炉の入れ替えや細かい調整が必要だ。縮退炉を1,000倍の大きさにしても出力が上がらない為だ。そのため無意味に大型化してしまった炉を一旦外して、1,000個の縮退炉に入れ替える必要がある。

 縮退炉は燃料供給機構や余剰電力質量化機構も合わせて一つのTech電力ブロックにまとめてあるので、この入れ替えはTechビルドモードで簡単に実行出来る。しかし1,000個の縮退炉ならともかくこれが100万個、10億個、1兆個と増えていくと非常に面倒なので、次のスケールに進む前に縦10個×横10個×高さ10個=1,000個の縮退炉ブロックをまとめて新たなTech電力ブロックとして定義し、次のスケールではその縮退炉1,000個入り電力ブロックを更に1,000個並べて新たな電力ブロックとしてまとめるという方式で作業を効率化している。

 タバサの提案で開発チームに衝撃が走った。何より画期的だったのは、タバサが提案する『十倍法』ならば重轟雷のその上、三重轟雷(みえごうらい)以上の量産でさえ可能だということだ。行く所まで行ってしまうと宇宙のバランスが崩れそうなスケールになってしまうが、開発チームは燦然と輝くその可能性から目を逸らすことが出来なかった。

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