【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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369. では招集をかけますので

 重轟雷開発チームはそれが可能だからという理由であっという間に四重轟雷(よえごうらい)まで建造してしまった。ただ五重轟雷(いつえごうらい)以降は前述したようにシュヴァルツシルト半径の問題があるので、一旦ここで踏みとどまって幹部会議の意向を再確認することになった。

 

 轟雷の強化型である重轟雷の開発を頼んだらいつの間にかその二段上まで実物が出来ていることに幹部会の面々は困惑した。

 ただし重轟雷開発チームはトリオ工場長の管轄下であり、工場長の承認が為されている為に独断とも言い難かった。工場長自身もこの開発プロジェクトに参加していた為、いつものように碌に確認せずにサインしたわけでもない。

 重轟雷開発計画の要求仕様を完全に無視しているのは問題だが、工場長の仕事が事前の予定を上回ってしまうのは匠衆(マイスターズ)設立以来いつものことであるし、この時点で大マゼラン攻略作戦より大分前だったので敵戦力の具体的なスケールが分からず、戦力に余裕があるのは有難かった。加えて建造コストと量産コストの問題が解決出来ているのも素晴らしい。

 また、重轟雷開発計画の仕様の段階で、大魔導鎧のそれぞれの段階ごとに使用許可が無いと兵装担架から取り出すことも出来ない段階承認システムの導入が決定されており、これが正常に実装されていた為、管理の問題もひとまず問題無さそうであった。

 

 とりあえず既に実物が出来ている四重轟雷(よえごうらい)までは完成度を高める研究の続行とそれが完了次第の量産が決定された。珪素生命体(シリコニアン)の戦力が分からない以上、備えておいて損はない。

 問題は五重轟雷(いつえごうらい)以降だ。

 まずシュヴァルツシルト半径の問題を抱える五重轟雷(いつえごうらい)については、技術開発の方をメインとして、潮汐力キャンセラーの安定性強化とセットで銀河間無人宙域での試作機建造が許可された。六重轟雷(ろくえごうらい)以降の必要性があるかどうかは疑わしい所だが、五重轟雷(いつえごうらい)をブラッシュアップして完全な物にしてしまえばいざというときにそれより上位もすぐに用意することが出来るという考えだ。

 

 ところがここでターニャ・フォン・デグレチャフ参謀長が六重(ろくえ)以降も順次開発を進めるべきと主張した。サイズを拡大する程にシュヴァルツシルト半径の他にも合体時間の問題や手足の動作速度が光速の壁にぶちあたる問題もあるため、すぐと言っても即日用意出来る物ではない、という主張だった。その要求は第12段階までだ。幹部会でも流石にそれは過剰ではないかという意見が出始めた。

 ターニャは轟雷シリーズを珪素生命体(シリコニアン)と戦う為の戦力としても当然考えていたが、それとは別に物理攻撃が通じない存在Xをぶん殴る為の有力な戦力としても見ていたため、存在Xを殴る為の力は可能な限り高めておくべきと考えていたのだ。12段階目までとしたのも、そこで宇宙質量を超える為、たとえ存在Xが宇宙を丸ごと消すような存在だったとしても抵抗が可能だろうと考えた為だ。

 だが当のターニャが迅雷でも存在Xの使徒をぶちのめせていた為、その意見は微妙に説得力が薄かった。使徒と本体では大分脅威度が違うというのは分かるのだが、どの程度強いのかはやはり分からないのだ。ターニャに言わせるならどの程度なのか分かっているなら必要十分を用意すれば良いが、分からないこそ最大限万全にするべきだということなのだが。

 これが戦力を充実させるほど経済に深刻なダメージが入るのであればターニャも無理は言わないが、タバサが提案した十倍法のお陰でその問題はクリアされているのだ。ならばやらない理由は無い。

 

 会議はなかなか結論が出ずに数日にわたり、必要性が疑わしい重武装を要求するターニャの姿勢は銀河一の戦争狂(ウォーモンガー)という不本意な評価に繋がった。

 しかし第666抽出中隊をはじめとした部下達は、「閣下は政治的配慮よりも兵の生還と確実な勝利を優先しておられる」などと勝手に好意的に解釈していたため、部下からの信頼は逆に上がった。

 

 色々と揉めはしたが、実のところターニャのこの主張は最初から七人の(マイスター)には反対されておらず、議論を尽くした所で問題無く可決された。これはただシンプルに、可能な戦力増強をしないのは慢心でしかないという考えだった。少人数で戦力の開発から始めて惑星一つを奪還した面子は面構えが違う。長引いたのは反対意見も一通り聞いてリスクを洗い出しておくべきというだけに過ぎない。

 周囲の雰囲気に流されずに勝利の為に万全を尽くす匠衆(マイスターズ)のぶれなさと勝ち馬ぶりにターニャは安堵した。

 実のところターニャの思惑とは別に、このアホみたいなインフレ自体が実にE&E(エンジョイ&エキサイティング)であったためにトピアや九十九は最初から止める気が無く、彼女達が真面目であったかと言えば微妙なのだが、まあ結果的には問題無いだろう。

 

 六重轟雷(ろくえごうらい)以降に関しては、五重轟雷(いつえごうらい)が十分な完成度に至ってから開発開始することと、その後も1段階ずつ十分な完成度に煮詰めることを条件として開発のゴーサインが出た。

 その最終目標が宇宙質量を超える12段目とされたため、迅雷が12の大魔導鎧を重ね着するイメージから重轟雷開発計画は『十二単(じゅうにひとえ)計画』と名を改められた。命名はトピアだ。

 なお最終段階である十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の他にその前段階の与一重轟雷(よひとえごうらい)もやや変則的な名前となっているが、これは十一男(=10余り1)であることからそう名付けられた那須 与一(なすの よいち)にあやかっている。ゲンジバンザイ。

 

 そうして出来上がった十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の攻撃力はというと、ライトニングスマッシャーパンチ(後のブロウクンスマッシャー)基準で考えるなら重轟雷では前腕に縮退炉を搭載して轟雷の10万倍になるが、三重轟雷(みえごうらい)以降は搭載縮退炉の数と同時に展開重力場体積も1,000倍になるため加速度は上がらない。つまり質量増加分だけの1,000倍刻みになる。

 現行版重轟雷のブロウクンスマッシャー3000(さい) = 3×1047Jを基準に1,000倍刻みで計算すると、十重轟雷(とえごうらい)の3×1071= 3000無量大数(むりょうたいすう)Jの時点で命数法の限界にぶちあたる。それ以降を敢えて表記するなら十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)で3×1077= 30億無量大数(むりょうたいすう)Jになる。インフレしすぎて新しい桁を導入することになったどこぞのスーパーインフレソーシャルゲームみたいなことになっている。

 十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)完成当時はまだGSライドが無かったのでライトニングスマッシャーパンチ名義で威力がもう少し控えめであったが、それでもその性能は過大としか言いようがないものであった。

 

 その後、実際にイスカンダル作戦(オペレーション・イスカンダル)の大マゼラン攻略戦が始まってみると、珪素生命体(シリコニアン)の軍勢は妥当と思われた戦力予想よりは大分上であったが、それでも轟雷でオーバーキル出来ていたので重轟雷以降の出番が無かった。まあ轟雷の時点でガンバスターに負けていない性能なのだからそれはそうだろう。

 インファクトリ級に比べると轟雷のワープ性能が劣る問題もインファクトリ級をSFS(サブフライトシステム)として利用するシップデサント戦術で解決出来ていたし、それでも不満なら重轟雷に艦載用ワープエンジンを搭載出来ていた為に、どう考えても三重轟雷(みえごうらい)の出番は無かった。

 そもそも大マゼラン攻略戦で難しいのは広大な大マゼラン雲から珪素生命体(シリコニアン)を逃がさず制圧することだったので、過剰な質よりも十分な数を求められており、重轟雷以上に合体しても数少ない魔導衛士の頭数が増えない以上はあまり意味が無かったのだ。

 大マゼラン攻略戦において、亜光速制御を失敗した轟雷の被撃墜数が2、合体前の隙を狙われた迅雷の被撃墜数が18であったことを考えると、重轟雷を出していたら合体の隙が増えて撃墜された数が増えた可能性すらある。

 

 こうした実情から、イスカンダル作戦(オペレーション・イスカンダル)三千世界作戦(オペレーション・オーバー・ザ・ワールド)が終結に向かうにつれて、流石に十二単(じゅうにひとえ)は過剰だったかという声が幾らか聞こえるようになっていた。

 とはいえ、これも別に無駄を批判していたわけではなく、取り越し苦労を笑い話にしていただけだ。開発にも生産にも財政を傾けるような予算など使っていないので、これらを使う必要がある強敵が出現しないのはむしろ喜ぶべき事だった。敵に対抗する力が足りないよりは余っていた方が遥かにマシなのだ。

 

 その評価を一変させたのがゲッターロボの実在確認だ。ゲッターエンペラーと同格のサイズ、宇宙を上回る質量()()がなくてはラ=グースや時天空といった上位存在と戦うことは出来ないだろう。それまで十二単(じゅうにひとえ)計画が取り越し苦労の過剰戦力だと考えていた者達も、ターニャをはじめとする計画推進者達の先見の明を讃えるようになった。

 なおこうして会議で話題に上っているのに存在Xが三重轟雷(みえごうらい)の存在に気付いていなかったのは、一つは匠衆(マイスターズ)諜報部が魔法も含めた防諜を施していたこと、もう一つは存在X一派の諜報力がメアリー・スーにうっかり三重恩寵を与えてしまう程度にはザルだからだ。

 

 それ以降も事故防止の為に決戦用大魔導鎧の段階承認制は変わっておらず、匠衆(マイスターズ)幹部でも普段から使用許可が出ているのはブラックホール化の危険が無い四重轟雷(よえごうらい)までとなっていた。

 代表のトピアが五重轟雷(いつえごうらい)以降を使う場合も自分+幹部最低もう一人で承認するプロセスが必要なのだが、これは熾天使(セラフィム)に見せびらかしたときに既にトピアとサティによる承認が済んでいた。合体したままの状態で戻ってこなかったのは、あまりにでかすぎるので熾天使(セラフィム)の力で転移させるのにかなりのパワーを使ってしまうことと、下手をすると味方を踏み潰す危険があったからだ。

 

 ともあれ、実際に戦ってみると思ったよりも存在X一派上位陣が強かったので十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の必要性は大いに増しており、ゲッター世界の上位存在にぶつかる前に存在Xを相手に披露する運びとなった。備えあれば憂い無しである。

 当然今回のものはGSライドと螺旋力変換炉を組み込んだ改修版なので、完成直後よりも更に戦力が増している。

 運用上のリスクに関しては、何しろ宇宙丸ごと敵の支配領域で人間が住んでいないのだから、たとえ何かの間違いで巨大ブラックホール化したとしても味方の脱出さえ間に合えば知ったことではない。繰り返しになるが、わざわざ敵の本拠地で戦争をさせてくれるなんて有難い限りであった。

 

 そのスーパーインフレの権化のような十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)を起動したトピアは、続いて人員の招集を宣言した。

 

トピア「では招集をかけますので、皆さん準備が出来次第同意をお願いします」

 

 その呼びかけに応じたラリー機、スコア機、ターニャ機が、目の前に開かれたワープゲートを通って順次戦場から姿を消した。




 どう決着を付けるかはプロットで決まっているのですが、そこにどう繋げるかをあれこれ悩んで書き直していたら遂にストックが切れました。
 毎日更新1周年目前でレッドゾーン突入ですぞ……!
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