【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2024/6/23]16天文単位フィンガーの原理説明に齟齬があったので修正しました。


370. 16天文単位! フィンガァァァァッ!!

 ワープゲートで召集された3機は、まずトピアの与一重轟雷(よひとえごうらい)の頭部内スペースに設けられた格納庫に機体を駐機して機体を降りた。

 外側から2番目のスペースに駐機するのは、万が一十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)から与一重轟雷(よひとえごうらい)が脱出した場合に置いて行かれないようにする為だ。

 ただしスコアの轟雷には固有の問題があった。まず下手に駐機すると機界新種細胞と月光蝶が周囲を食い荒らしてしまうのが致命的問題だった。その上、半端に巨大化している為にハンガーの規格に合わず、迅雷の兵装担架インベントリにも収納出来なかった。そのため、まずワープゲートに入る前にテクスの手で幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)システムを停止し、格納庫に駐機するのではなくトピアの与一重轟雷(よひとえごうらい)のインベントリに収納するという手順になった。

 

 自身の機体を降りた乗組員達は格納庫備え付けのポータルを通って集合した。集合したのはトピアの迅雷の膝の上にある足場だ。転落防止柵に囲まれたその足場は轟雷頭部内面から迅雷の膝の上を通って迅雷の胸部コックピットハッチに繋がっていた。

 そしてその足場の上には横5×縦2=10の操縦席が設置してあった。上位の大魔導鎧を多人数運用する際に使用される拡張操縦席だ。と言うのも、大魔導鎧はセキュリティの観点から基本的にコアマシンである迅雷からの制御しか受け付けないので、3人以上の多人数運用をする際にはこのように迅雷のコックピットを物理的に拡張する必要があるのだ。

 トピアの迅雷は現在コックピットを開放しており、拡張操縦席と合計して12の操縦席がそこに並んでいた。

 ターニャが手早く空いている操縦席に座ろうとすると、それをサティが呼び止めた。

 

サティ「ターニャ、あなたはあっちよ」

 

ターニャ「ふむ?」

 

 サティが親指で示したのは迅雷のコックピット、しかもメインシートであった。メインパイロットをやっていたトピアはわざわざ後ろのサブシートに座り直してハーネス固定を済ませていた。

 

ターニャ「代表、宜しいので?」

 

トピア「デグさんは既に真化の扉を開いているようですし、因縁の相手でしょう? 遠慮無く全力でぶっ飛ばしてやってください。ユーハブコントロール」

 

ターニャ「そういうことなら喜んで。I have control」

 

 ターニャが着座して問いかけると、トピアが何食わぬ顔で操縦権を譲渡したのでターニャも素直に受け取った。

 トピアが真っ先に十二段合体したのは単にこちらの方が多人数運用の設備が整っていたからで、獲物を横取りする気は無いのだ。適性から言っても存在Xと戦うには戦闘能力・戦闘意欲共にターニャが最も適任だ。

 席順は結局以下のようになった。

 

・拡張前列:空席、テクス、ラリー、聖騎士、空席

・拡張後列:テクス、トリオ、マイン、サティ、マキューズ

・メイン:ターニャ

・サブ:トピア

 

トピア「聖騎士さんとトナルさんも宜しくお願いします」

 

聖騎士「任されよ! ウッ!」

 

マキューズ「フフフ、この時を待っていたでありますよ! 世界を超えて再び巡り会えた友を改めて滅ぼそうとする邪神など、絶対に絶対に絶対に許さないでありますよ!! 一欠片も残さずに滅ぼし尽くしてやるであります!!」

 

 そう、いつの間にか聖騎士とマキューズが紛れ込んでいた。

 聖騎士に関しては、彼はモンスタープリズムに収納出来るので、元々生産班が護身用に持ち歩いていたものだ。狭いコックピット内では出せなかったが、シートが余っているのなら魔導衛士でも上位の聖騎士を出さない理由は無い。

 そしてマキューズはトナル・マキューズ大使の複製体だ。心の友(イバーク・ルイエ)は生物でもモンスターでもないのでモンスタープリズムには入らないが、生物ではないので却ってインベントリにそのまま入ってしまったのだ。彼女は存在Xの横暴ぶりに怒り心頭であり、その言葉は心の友(イバーク・ルイエ)達の心情を代弁するものだった。

 

 12の操縦席群の正面には壁沿いに大型の情報スクリーンが並んでおり、その一部には神域に水が降り注ぎ続ける模様が映し出されていた。降り注ぐ水は欠けた月を中心とした巨大な水球となっており、存在Xはその欠けた月と一体化し、球体防壁が水球表面を覆っていた。その防壁の直径はそろそろ1天文単位を超えていた。

 この防壁は観測によると基本的に光以外を通さない筈だが、どうも周囲の物を吸収することで間接的に通しているようだった。

 

 なおターニャ達と共闘していたマジンガーZEROはといえば、十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)に対抗して同等の大きさに巨大化していた。

 

トピア「12段合体にあっさりついてくるとは、噂に違わぬ魔神ぶりですねZEROさん」

 

ZERO≪魔神ブリ……フム、ナカナカ良イ褒メ言葉ダ≫

 

 そのフレーズが気に入ったようで、マジンガーZEROは目を細めた。マジンガーZEROには口の他に瞼もあるので、表情というものがあるのだ。その喜びを表現した表情ですらどうにも邪悪にしか見えないのが難点だが。

 

マイン「よし、配置についたな。こちらの準備が出来た以上、奴がパワーアップするのを待つ必要は無い。やってしまえ!」

 

ターニャ「了解!」

 

 ターニャが十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の左腕を動かして水球を指先で摘まんだ。全高144天文単位に達する十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の手のサイズは16天文単位を超えており、直径1天文単位の水球も指先程度でしかないのだ。ベルカエフェクターも正常に稼働しており、四肢の動きに違和感はない。

 ターニャは守護のGパワーでバリアを中和しながら、中指と親指で存在Xを握り潰そうとした。殴り飛ばすとどこに行ったか分からなくなりかねないからだ。しかし簡単に潰れるようなものではないらしく、力を込めるうちにサティが状況の変化を訴えた。

 

サティ「指先からエネルギー漏れ……いえ、これは吸収されているわね。侵食も始まっているわ」

 

トリオ「直接握っておる以上通常バリアは効果を発揮しておらんし、守護のGパワーも相手の防壁中和を試みておるせいで手薄になっておるようじゃの」

 

 なおこのGパワーは操縦席に座った全員分の勇気がGSライドに注ぎ込まれて生み出されたものだ。そういう点において、現行版の十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)は下手に複数出すよりも1機を多人数で運用した方が強いのだ。GSライドは対象がAIでも問題無く勇気を抽出するので、戦意が限界突破したマキューズの力も大きく寄与している。

 

スコア「まあ十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の握力に耐える時点で既に驚異的だが……アレの出番だな?」

 

テクス「幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)システム起動! まずは指に集中するでござる! マキューズ殿はサポートをお願いするでござるよ!」

 

マキューズ「了解であります!」

 

 テクスが幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)システムを起動すると、十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の指を覆う空色のナノマシン誘電体多層膜が黒い常温超伝導光電変換膜へと変化し、更にその表面を金色の機界新種細胞が覆っていった。その金色の表面からは虹色の月光蝶ナノマシンが噴き出している。

 十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)は何しろ巨大なので、不安定化した部分の修正を人力で対処するにも広範囲すぎると処理が追いつかなくなる為、まずは存在Xに接触する指先からという判断になったのだ。

 

サティ「侵食とエネルギー吸収の流れが完全に逆転したわ! ……ちょっと待って、光電変換膜はまだしも、機界新種細胞と月光蝶を使ってるの!?」

 

甲児≪は!?≫

 

 幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)システムは常温超伝導光電変換膜、機界新種細胞、月光蝶ナノマシンの3つのバランスが重要である為、システム全体を見るオペレーターには必然的にその情報が渡される。そのためサティには何をどうやって侵食と吸収に対抗しているのかが伝わってしまい、その物騒さに目を見開いた。そしてサティから聞き逃せないワードを耳にした甲児も素っ頓狂な声を上げた。しかしサティより先にその情報に触れたマキューズは何を使ってでも存在Xを滅ぼす覚悟が決まっているので全く気にしていない。

 

テクス「ついさっき戦った炎の智天使(ケルビム)が、それくらいしないと倒せない相手だったのでござるよ!」

 

スコア「だがその分、侵食と熱吸収にかけては折り紙付きだぞ!」

 

マキューズ「しかしこのシステム、処理の負荷がとんでもないでありますね! 最適化作業を始めても!?」

 

テクス「ではAIオートデバッガーのアクセス権を渡すでござる!」

 

 実のところ、テクスは先の智天使(ケルビム)戦でシステムを開発した段階から『AIオートデバッガー』による補助を受けている。これは最新の量子演算素子を使ってアップデートした新型で、小型軽量なので持ち運びも可能だ。大変便利なものであるが、AIリミッターのせいで気分屋であるところは治っていない。量子演算素子と同等の思考速度とそれ以上の演算処理能力を持つ心の友(イバーク・ルイエ)がその運用を担ってくれるのならば大分助かるというものだ。

 なお幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)システムの不安定性に関してはプログラムの問題以前に機界新種細胞と月光蝶の研究が最低限しか進んでいないせいでもあるので、プログラム最適化による完全な解決は不可能であろうが、今よりも少しでも稼働効率が良くなれば助かるのは間違いない。

 

マイン「戦乙女(ヴァルキリー)よ、サポートは任せてこのまま握り潰せ!」

 

 破滅の予言者(カッサンドラ)は縁起が悪く、かといって十二騎士(トゥエルヴナイト)では自分と被るので、階級以外ではマインはターニャを戦乙女(ヴァルキリー)と呼んでいる。マインには珍しくこれは善意によるものだ。

 実際のところそもそも女としての自覚が薄いターニャはそれを不満に思っているのだが、そんなことより今は存在Xを仕留めるのが先決だ。

 

ターニャ「了解――16天文単位! フィンガァァァァッ!!」

 

 16天文単位フィンガー。十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の攻撃手段の一つで、本来は右なら手全体が破壊のGパワーを纏って攻撃力倍率を更に高め、左なら守護のGパワーを纏ってバリアを中和するのだが、今回は幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)システムをメインとして、共食いしようとするシステムの仲裁に守護のGパワーを使っている。

 ところでこのネーミングは九十九によるものなのだが、実際には十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の手首から指先までの長さは17天文単位以上ある。しかし16天文単位以上あることは確かなので、16文キックにあやかってこのような名前になっていた。

 さて、ブロウクンスマッシャーもそうだったが、元々そういうキャラではないターニャがわざわざ技名を叫ぶのは、それが有効だからだ。単に気合が入るという以上に、勇気によってGSライドの出力が増し、Gパワーが攻防力を高める効果が侮れないのだ。それは獅子王 凱のあの絶叫ぶりを見れば分かるだろう。いや彼は単に元々そういうキャラだからという気もするが、そうだったとしても勇者適性は抜群ということなのだ。

 ターニャの叫びに応えてGSライドの出力が上昇し、それに伴って幕を下ろす者(デウス・エクス・マキナ)システムの安定性が高まった。その結果、十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の指先から手首までが金色に染まり、その力は存在Xの球体防壁に罅を入れ、そして押し潰した。

 言わば成虫になる前の繭や蛹をぷちっと潰した状態だが、どうも内包するエネルギー量が相当多かったのか、水球は押し潰されると同時に超新星爆発(スーパーノヴァ)クラスの大爆発を起こした。

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