超新星爆発といえばマブラヴ世界では地球に来る途中のBETAの資源マッピング機能を故障させた原因として知られているが、そのエネルギーのスケールは1044Jから1052J程度であると言われる。十二単轟雷はそのエネルギーを至近距離で喰らった為、軽減は精々1桁程度だ。それが10秒程度で放射されたとして、実質秒間に降りかかったエネルギーは1042Wから1050Wといったところだ。ここでは上限の1050Wとしておこう。
これに対し、轟雷の基礎防御力が3.06×1016。より上位の大魔導鎧も装甲やフレームが原子核パスタ構造材であることは変わらないため、スケールアップが1段階進むごとに装甲の厚みが10倍、つまり防御力も10倍になり、十二単轟雷の段階で防御力は3.06×1027になる。これを術式で105万倍強化したとして、3.21×1033。ジュール換算して3.21×1034Jだ。大魔導鎧が1段階スケールアップするたびに攻撃力が1,000倍になるのに対し防御力は10倍にしかならないためにインフレに置いて行かれていると言える。
ただしこの問題は最初から対策が講じられている。機関出力は攻撃力と同じ1,000倍増加ペースになるため、バリアで攻撃を受け止めれば攻撃力のインフレに置いて行かれることはないということだ。
まず轟雷は匠衆製縮退炉Mk.2、緊急出力6.23ZW = 6.23×1027Wを1基搭載している。重轟雷が腕と合わせて縮退炉1,064基搭載で6.63×1030W。そこから先は単純に電力ブロックが1,000倍出力になるため、更に10段階進んだ十二単轟雷の段階で6.63×1060Wとなる。10桁の余裕がある。
また、バリアはレーザーの一点集中の貫通力に対しては受け止める面積の余裕が必要である為にエネルギー効率の問題があったが、超新星爆発の場合は指向性の無い爆発である為にエネルギーが収束されておらず、受け止める側の面積効率上の無駄は殆ど無い。故に、バリアに覆われた部分の防御は全く問題無い。信仰力を込めていなければそれでも突破される可能性はあるが、ターニャは既に真化の扉を開いているので問題無い。
そしてバリアに覆われていない上に至近距離で爆発の影響を受けた左手部分はといえば、幕を下ろす者システムで常温超伝導光電変換膜、機界新種細胞、月光蝶ナノマシンの三重の熱吸収機能が働いている為に殆ど無傷であった。
サティ「損傷軽微、3秒で完全復旧可能よ。センサーの回復にはもう少し掛かるわ」
テクス「幕を下ろす者システムのバランス変動も許容範囲内でござる」
スコア「まさかあんなに派手に爆発するとは思っていなかったが、流石の防御力だな」
トリオ「接触エネルギー量は超新星爆発と同等の1050W……三重轟雷のままじゃったらこっちも消し飛んでおったかもしれんの」
マイン「やはり十二単計画は必要だったということだな」
トラップに掛かってもダメージを受けないのならばそれはトラップを解除出来たのと同じということだ。やはり圧倒的戦力差は大体のことを解決する。
マキューズ「当時はいかがなものかと思ったものでありますが、備えあれば憂い無しでありますなあ」
マキューズは十二単計画を強力に推していたターニャとそれに賛同した匠達に畏敬のまなざしを送った。
ラリー「……そういえばマジンガーZEROはどうなった?」
スコア「あっ」
ラリーは隣にいてほぼ同じ距離で超新星爆発を喰らったマジンガーZEROがどうなったのかを気に掛けた。十二単轟雷に機体ダメージは殆ど無いが、センサー類はその原理上繊細に出来ており、防御が薄いために殆どが焼き付いて外部の情報が入ってきていないのだ。
トピア「まあ溶けて蒸発してしまったなどということはないでしょう」
トピアの台詞はヤマトやトップをねらえの台詞をアレンジしたものだ。元の台詞は蒸発してしまったのではという悲観的な予測から実は無事だったというオチに繋がるものであるが、そもそもマジンガーZEROがこの程度のことでやられる筈がないので悲観的な予測をするだけ白々しいというものだ。
サティ「センサー復旧するわ。……マジンガーZEROの健在を確認。距離2.1光日、相対方位122、仰角12」
甲児≪ああ、無事だぜ。吃驚したけどな≫
聖騎士「流石は鉄の城であるな! ウッ!」
見たところ全くの無傷であった。まあトピアもやられてはいないだろうと思っていたが、流石の頑丈さだ。パイルダーの中の甲児もしっかり護っているあたり守護神ポイントが高い。
サティ「続いて戦果確認、既存の形態での存在Xは見当たらないけれど……」
聖騎士「あの巨悪があっさり滅ぶとは思えぬが……」
ラリー「こっからだろうな」
トリオ「じゃろうな」
単に十二単轟雷が過剰戦力だっただけ、という可能性は勿論あるのだが、油断している者はいない。特に馬鹿げた大きさの座天使と戦ったラリーやトリオは、存在Xが1天文単位程度の大きさで終わるとは思っていない。メインパイロットのターニャも黙って神経を研ぎ澄ませている。
サティ「――二重空間超越レーダーに感あり! 通常空間に出てくるわよ! 大きさは約20光時間!」
マイン「やはりこちらと同等の大きさか!」
マインだけでなく、匠達は存在Xが十二単轟雷と概ね同じスケールまで巨大化すると当たりを付けていた。それは存在Xが再調整した光速が根拠だ。十二単轟雷の10倍程度まで行くと光速が巨体の動作の足を引っ張る程度に調整されていたのだ。
十二単轟雷の足元に前後数百光年にもわたる空間の亀裂が生じた。そしてその亀裂から巨大化した存在Xがゆっくりと浮上した。
存在X「我が儀式の邪魔をするとは、目上に対する礼儀がなっておらぬな」
現代語に翻訳すると、合体や変身を邪魔するとは何事だという意味だろうか。しかし近年の作品では妨害とその対策もエピソードに組み込まれることが多いので、若干感覚が古いと言えよう。
ターニャ「随分と派手なご登場じゃないか。モーセの真似か?」
存在X「それも我が恩寵を与えた存在に過ぎぬ」
ターニャが指摘したように、これは意図して派手に見せたものだ。神の僕たるモーセが海を割るのならば神たる存在Xは宇宙空間を割る。そういう演出であった。
ターニャと存在Xのやりとりを理解したトピアが納得した顔で口を挟んだ。
トピア「ああ、つまり攻撃を受けきれずに超空間回避したのを誤魔化そうとしているわけですね?」
テクス「まあ儀式に演出は必要でござるが……」
マイン「神をやるのも大変だなフハハハハ!」
存在X「汝ら、口は災いの元と知るがいい!」
つまりは図星であった。超空間から出てくるということは、ラリー達がそうしたように存在Xも超空間回避で十六天文単位フィンガーをやり過ごしたということだ。要するに存在Xは十二単轟雷の攻撃を受けきれずに緊急回避せざるを得なかったのを文字通り神懸かった壮大な演出で誤魔化して威厳を保とうとしているのだ。その演出をわざわざ指摘するのは、勿論信仰の回復を阻害する為だ。
ともあれ、空間を割って十二単轟雷の目の前に出現した存在X、その身長はレーダー観測通りの約20光時間、十二単轟雷と同等の背丈になっていた。
額の十字架と背中の翼は三位一体直後からそのまま、装束は相変わらず軽装のトーガであったが、手には15光時間ほどの長さの木の杖を持っていた。そんな大きさの自然木がある筈もなく、スケールを考えると違和感があったが、スケールアップ用の設備をフル活用して十二単轟雷を作った匠衆からすれば今更のことだった。