【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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379. 太陽は万物のために(ソール・ルーケト・オムニブス)

 神域の残り全てを吸収した存在Xは更に巨大化し、頭頂高1500億光年に達していた。超天元突破グレンラガンと同格のサイズで、もはや宇宙全体よりも大きい。まあその宇宙は因果を操作して全部吸収してしまったので、並べて比較することは出来ないのだが。当然次元力も増して青い後光を纏っていた。眩しい。

 存在Xとしてもこの因果操作攻撃はなるべくなら使いたくなかった。何しろ盤面をひっくり返して相手の存在自体を無かったことにするのだから、勝負していた事実も無くなってしまうのだ。これでは見せしめにならず、失った信仰力の回復にどれだけ掛かるか分かったものではない。

 しかし既に敗北が無くなったことに関しては疑っていなかった。存在Xの神域においてその管理者権限をフル活用した因果操作攻撃、いかに神に近づいたとて、もはや人の身で凌げる筈もない。まだ抵抗はしているようだが時間の問題であろう、と存在Xは高をくくっていた。()()()()()()が彼方から響いているのが忌々しいが、因果が消滅すればやがて自分達が何をやっているかも理解出来なくなるであろう。

 存在Xが今頭を悩ませているのは戦後処理をどうするかだ。急場だったので神域のリソースをそのまま使ってしまったが、雛形も残さずに全部吸収してしまったからには神域の修復も大変だ。一つか二つ、管理下の世界を()()()補填する必要があるかもしれぬ。

 

 そう考えて半ば不良在庫となっていた世界――統一歴世界に手を伸ばそうとしたところで、因果の濁流から腕を組んだ人影が浮上してきた。

 それは存在Xと同じ1500億光年の身の丈を持ち、空色の騎士鎧を纏い、羽根飾り付きの兜を被り、青と緑のオーラを纏っていた。今まで相手をしていた轟雷やマジンガーZEROとは姿形が大分違う。何よりシルエットが女性的なバランスになっている。

 正体を掴みかねた存在Xは、一体何者かと誰何しようとした。同じサイズに達しているだけでも只者ではあるまい。

 

存在X「汝は――」

 

騎士「その薄汚い手をどけよ、下郎」

 

存在X「何? ――今、下郎と申したか?」

 

 仮にも創造主をあからさまに下に見る言葉に、存在Xは耳を疑った。

 

騎士「然様」

 

 騎士が頷くと、銀糸の髪が兜の下から腰まで伸びた。次にその髪が鎧とともに金色に染まって虹色のオーラを放ち、純白の翼が生え、そして兜のマスクが左右に開いて素顔が露わになった。目を閉じてはいるが、それは存在Xがよく知る顔であった。

 

騎士「太陽は万物のために(ソール・ルーケト・オムニブス)そして(エト)王の愛は民のために(カリタ・レーグ・ビーヴト・ポピュラス)。己の為に民を踏みにじる者など神にあらず。愚かなる者よ、邪なる者よ、真なる神の輝きを知るが良い」

 

 原語はラテン語であるが、太陽は万物のために輝く(ソール・ルーケト・オムニブス)というのは古代ローマ時代の文筆家ガイウス・ペトロニウスの著作『サテュリコン』に登場する言葉だ。これは太陽や月などの自然が創造したものは万人の為のものであるという意味合いで使用されている。いわゆる平等という概念を謳ったものだ。

 しかしその後に続く語句も含めれば、スーパーロボット軍団、中でもZ-BLUE(ズィー・ブルー)にとって、これはもっと特別な意味を持つ。

 

 

 

クロウ「ユーサー……?」

 

マルグリット「陛下……?」

 

 久しぶりにその言葉を聞いたクロウとマルグリットは、担当している仕事の途中で手を止めて顔を見合わせた。クロウ・ブルーストは借金王にして揺れる天秤のスフィア・リアクター、マルグリット・ピステールは元聖インサラウム王国王宮警護騎士(アークセイバー)No.7にしてユーサー・インサラウム第一皇子の元婚約者だ。

 ユーサーをよく知る彼等が何度見ても鎧も顔も声も似てはいないが、ペトロニウスの言葉のあとにそして(エト)王の愛は民のために(カリタ・レーグ・ビーヴト・ポピュラス)愚者の道を歩みし者よ(ノス・ストルチ・クイアンブラトビア)浄福の光を以って汝を救わん(ルクエス・セ・ビアテドゥ・アドバロス)と続くのは、かつて第2次スパロボZ再世篇でプレイヤー部隊と敵対した聖インサラウム王国の聖王、ユーサー・インサラウムの言葉だ。より詳しく言うと、その乗機である聖王機ジ・インサーで最大必殺技『ジ・インサリアス・アークライナス』を行使する際に唱える真言である。

 ユーサー・インサラウム()()は何よりも民の為を思う心優しい人物であったが、その優しさは外敵の侵攻を防ぐ役には立たず、更に奸臣の専横を招き並行世界への侵略行為を許してしまう結果にもなった。その後、次々に大切な臣下を失ったことでこのままではいけないと立ち上がり、即位した彼は聖王として全ての罪を引き受けてプレイヤー部隊と戦い命を落とした。つまりはゼロレクイエムのようなことをしたわけだ。

 スパロボ史上でも最も成長したオリジナル敵キャラとも言えるユーサーの生き様は、あの戦争に関わったZ-BLUE(ズィー・ブルー)の面々に今も深く刻まれている。特に際立っているのが、最終的に奸臣をも無二の忠臣にしてしまったことだ。その器の大きさとカリスマは計り知れない。

 

 当初の気の弱さや優柔不断さはともかく、ユーサーの優しさは「王は愛を以て太陽のように遍く民を照らさねばならぬ」という信念に昇華され、彼は覚悟を以て国難に立ち向かった。存在Xの目の前に立っている彼女が語るのは、王ですらその覚悟を持っているのにその上に立つべき神が民を鞭打って信仰を搾り取ろうとするなど恥を知れということだ。

 つまり今彼女が発している言葉は、恐らくユーサーを知る者達の想いが歌を通じて伝わった結果なのだろう。

 

クロウ「ああそうだ、あいつはもっとでけえ奴だった。ガタイがでかけりゃ偉いってもんじゃねえんだ。偉そうなだけの奴なんかぶっ飛ばしてやろうぜ!」

 

 ユーサーの想いをも背負って立つ騎士の姿に、クロウ達は拳を握ってエールを送った。今すぐに駆けつけられないのが残念でならないが、その分は甲児とマジンガーZEROに託すしかない。

 

 

 

存在X「フン、勇者といえど口が過ぎるぞ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 存在Xは騎士の言葉の内容に対する反論を避け、立場でマウントを取ろうとした。

 存在Xの目の前の騎士の顔は、どう見てもターニャのものだ。それは画面越しに見ているターニャを知る者達にとってもそうだった。

 しかし顔を露わにした騎士はその指摘を否定する。

 

騎士「さにあらず」

 

存在X「――何だと?」

 

騎士「我は死せる勇者を導く者。我は真なる神の威光を示す者。我は汝に鉄槌を下す者。我が名は――十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)

 

 十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)が名乗りを上げて瞼を開くと、()()()()()()()()()

 戦乙女(ヴァルキリー)の勝利を願って彼方より届く歌は、シェリル・ノームとランカ・リーがメインで歌う『サヨナラノツバサ ~ the end of triangle』であった。

 

 

 

 シェリルやランカ達が歌っているのはどこかというと、マブラヴ確率時空世界の神域だ。ここで歌うのがあらゆる並行世界に歌を届けるのに最も適しているのだ。

 歌う目的は、この困難に際して世界の人々の心を一つにすることである。言葉での説得が困難でも、歌詞の意味が分からなくても、歌の情熱は届くのだ。

 匠衆(マイスターズ)神事部の要請で開催された神域コンサートは見事に成功し、マブラヴ確率時空世界の時空震安定化と存在Xの信仰の低下に大きく寄与した。参加しているのは二人だけではない。Fire Bomberやリン・ミンメイ、ラクス・クラインなども参加している。バサラだけは存在Xの神域に突撃しようとしていたが、そこに行ける手段が無いので諦めざるを得なかった。

 また、歌が世界を超えて届くようにDr.千葉が提供する背負い型の歌エネルギー変換ユニットを歌手や演奏者全員が装着しており、それぞれ歌エネルギーのオーラで輝いていた。

 この装置の稼働に必要な歌エネルギーは1,000チバソング。一流歌手の上澄みがそのくらいとされており、光っている全員がそのハードルを越えていることになる。特に歌わずにドラムで歌エネルギーを発生させているFire Bomberドラマー、ビヒーダ・フィーズの異様さが光る。まあ歌エネルギーにはサウンドエナジーという別名もあるので、定義上歌に限ったものではないのだが。

 Fire Bomberは4人のうち3人までが1,000チバソングどころか10万チバソングを超えるという伝説的ロックバンドだ。リーダーのレイ・ラブロックだけ超えていないのが逆に目立ってしまうが、彼はパイロットからの転向でみんなの親代わりみたいなものなので仕方ない。調整役の彼までもが演奏に全てを捧げてしまっては、Fire Bomberは存続出来ないのだ。今回も「まあ待て、ここから別の世界に歌を届けるのも挑戦のしがいがあると思わないか」という一言でバサラを引き留めた功労者がレイである。彼の最大の長所は人間性であった。

 引き留められたバサラは最初はあまり乗り気ではなかったが、コンサートに参加した皆が真心を届ける為に全力を尽くしているのを見てバサラ自身も本格的に乗ってきたようで、その気まぐれぶりにミレーヌが呆れていた。

 

 ともかく、これはみんなの心を一つにするために開催されたコンサートであり、歌エネルギーの更なる増幅の為に固定設置型のサウンドブースターが設置されているのは勿論、ZEROさん(かみさま)の巫女である幼女ことミユ・アスカもこれに協力していた。彼女の極めて高いニュータイプ能力は人の心を繋ぐことに特化しており、その能力で歌と心をより遠くに届けることが出来たのだ。それは単なる距離にとどまらず、世界の壁を越える場合にも適用される。

 ただし強い力を使うほどに精神力を消耗してしまうため、匠衆(マイスターズ)から回復用のポーションが大量に供与されていた。ミユが乗り込んでいるのは神の権能を持つマジンガーZEROだが、傍らにはいつものように陽蜂(ひばち)の端末であるハロ・ビーが付き添っており、疲労を読み取って適宜ポーションを使用していた。

 ミユは歌を届けた相手の反応も概ね捉えており、ただ時空災害を何とかしたいと純夏達に願うだけでなく、邪神と戦う勇者達を応援したいという意志が浸透してきたことを理解していた。そのため、ミユのリクエストで今はシェリルやランカ達が戦乙女(ヴァルキリー)ことターニャを応援する為にヴァルキュリアをテーマとした『サヨナラノツバサ』を熱唱しているところであった。

 

 そういった模様をバトル7のブリッジで見ていたDr.千葉が、安心した表情で呟いた。

 

Dr.千葉「あの次元力の輝き、どうやら彼女達の歌はしっかり届いていますね」

 

マックス「直接戦えないのは残念だが、少しでも助力出来るのならばそれに越したことはない」

 

大河「頼むぞ、勇者達!」

 

 もしスーパーロボット軍団が雪崩れ込んで全員で天元突破したならば、超天元突破存在Xもボコボコに出来るかもしれない。

 中でもキーとなるのが天元突破の元祖であるグレンラガンで、別宇宙への転移を可能とする超銀河ダイグレンの存在も重要だ。しかし超銀河ダイグレンは時空震災害の最初の段階で難民を大量に乗せてしまったので、途中で放り出すわけにもいかず、難民達をどこかに送り届けるまで参戦出来なくなってしまったのだ。

 シモンは以前避難民を満載した状態のアークグレンと合体してアークグレンラガンで戦ったこともあるが、あれはアークグレンが既に敵に包囲された状態だったので、むしろ合体して戦えるようにした方が安全だったのだ。

 現在は多数の方舟仕様インファクトリ級へと難民達を移乗させている最中だ。これは単に押しつけているというだけではなく、重力制御で時空震を相殺出来るインファクトリ級の方が居住性が高いのだ。

 また、マジンガーZEROの侵入以降に世界を隔てる防壁が更に強化されているので、これをどうにかしなければならないという問題もあった。

 

 彼等が見つめるもう一つの画面の中では、十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)が次元力で青く輝く瞳を見せ、純白の翼を大きく羽ばたかせた。

 すると、因果の混乱を逆用する形で足元に地面が発生し、その地面の上に左右におよそ50ずつの死せる英雄(エインヘリヤル)達が並んだ。しかしその全員が超天元突破スケールであるにもかかわらず、彼等は戦う様子を見せていない。彼等は十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)の正面に二列に並んで列同士で向かい合い、向かい合った相手と一旦武器を交差させたあとに地面に突き立てて、十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)を送り出す花道を作っていた。つまり彼等は()()()()()()()()であった。何と贅沢な。

 十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)がその花道を存在Xに向かってゆっくりと歩き始めた。一歩一歩を踏みしめるようなそれはまるでカウントダウン。お前の罪を数えろとでも言わんばかりのものであった。




 楽曲が『バルキリーで誘って』じゃなくてよかった案件。
 名前がVF-17・VF-1・VF-11で構成されてるのは、サヨナラノツバサで謳われるヴァルキュリアが半分バルキリーをイメージしているせいです。

 『幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話』の作者、アキ山様に許可をいただいたので今回から幼女の名前が出ております。ありがとうございます!
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