【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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381. 滅せよ偽神。雷鳴連撃(デンプシー・ローリング・サンダー)ッ!!

 さて、亜神になると何が良いのかと言えば、最大の利点は人々の信仰を集めることで幾らでも信仰力、次元力を補給することが出来るということだ。今まで限りある次元力しか運用出来なかったのとは雲泥の差で、電池が発電機に変わったようなものだ。しかも半分人間なので次元力が枯渇しても消滅しない。

 しかしそれ故に、亜神になった際に発揮出来る力には個人差がある。つまりどれだけの人間に信用されているかという差だ。トピアも匠衆(マイスターズ)の代表としてかなりの知名度を持っているが、自ら前線に出て戦う様子をあまり見せていなかったので、ターニャ程には信仰を集めていなかった。しかもターニャは不本意ながら戦乙女(ヴァルキリー)という既存の神話にある亜神になぞらえられている為、その意味でも適性が高かった。ククルカンの見立てによれば信仰の収集効率がトピアに比べてざっと3倍くらいは有利という話だった。

 そして今回はククルカンのサポートで一時的に亜神に押し上げるプランなので、一度に亜神に出来るのは一人だけだった。なのでターニャが選ばれた訳だが、問題が無いわけではなかった。それは本人の自覚と周囲の評価があまりにもかけ離れていることだ。

 既に述べたように、ターニャ・フォン・デグレチャフは誤解の塊のような女だ。周囲、特に民間人はターニャを好意的に解釈して勇者達を導く戦乙女(ヴァルキリー)などともてはやしているが、当人としてはまず女の自覚すら薄いのだ。

 ではこの状態で亜神化するとどうなるのかと言えば、人格が周囲の信仰に引っ張られてしまうことになる。これは存在X一派にも信仰イメージの影響が色々と出ているのと同じ原理だ。その結果、今回の十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)というほぼ別人のような人格が生まれてしまったわけである。

 

 これはターニャにとっては前世の統一歴世界でエレニウム95式魔導演算宝珠の呪いで無理矢理存在Xを讃えさせられたのと同じようなもので、非常に気が進まなかった。厳しい戦いほどエレニウム95式を使わざるを得なかったが、あの精神汚染は二度と味わいたくないものだ。

 まあ今回は存在Xを讃える必要が無いのでまだマシか、と思い切ってやってみたところ、穢れ無き聖女のような鳥肌が立つ挙動にはなるものの、ターニャに信仰を捧げる人々もそのように考えている為か、案外ストレートに存在Xを罵ってくれるので多少は気が楽になった。また、挙動や口調は自由にならないもののエレニウム95式と違ってトランス状態でも意識ははっきりしていた。となれば、あとはきちんと元に戻れば、皆が望むように振る舞っていたというだけで済む話だ。無論、戻らなかった場合は保険としてオーバーリザレクションをかけてもらう約束をしている。

 まあ実際のところ、そのように振る舞ったことでよりイメージしやすくなってしまい、益々ターニャ本人とはかけ離れたイメージの信仰が強化されてしまうわけだが。

 

 十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)はGパワーを込めた左右のスマッシャーを高速回転させて存在Xを繰り返し殴りつけ、存在Xの存在に必要な次元力を肉体ごと削り取っていった。

 十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)の頭頂高は1500億光年。天元突破十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)の30倍で、炉の最大出力は302.5 = 4930倍、2.35×1095W = 2350(じょ)無量大数(むりょうたいすう)Wとなる。

 ブロウクンスマッシャー基準で攻撃力を表すと、魔導衛士一人乗りの十二単轟雷(じゅうにひとえごうらい)で3×1077= 30億無量大数(むりょうたいすう)Jだったので、3×1077×(2兆2千億×30)2.5×105万 = 1.11×10118J = 111(ごく)無量大数(むりょうたいすう)Jになる。ここに更に人数分のGパワー、次元力補正がかかる。

 実際にはスマッシャーを飛ばさずに回転させて殴るだけでも存在Xの鉄壁の信仰防壁をぶち抜けており、これは圧倒的な次元力の差という存在X最大のアドバンテージがなくなったことが大きいだろう。

 亜神である十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)の次元力が自称主神である存在Xと同等以上まで伸びたのは、やはり歌の影響が大きい。サウンドエナジー自体もターニャ達を奮い立たせる力となっているが、それ以上に歌を通じて戦乙女(ヴァルキリー)の勝利を願う想いが大量に流入しているのが大きい。現在発揮している次元力は、ククルカンが予想したトピアの3倍どころではなかった。

 

 さて、戦闘の様子としては攻撃を受け続けた存在Xも多少は反応するようになっていたが、その手際は良くない。そもそも存在Xがいつもやっているのは一方的な断罪、つまりは弱い者いじめでしかないので、対等やそれ以上の相手と戦った経験など今までに無い。必然的に絶大な権能の一撃でねじ伏せるスタイルになっていたため、接近戦など考慮していないのだ。

 存在Xは十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)に雷撃が通用しないと判断して、熱や電圧から破壊という結果をもたらす攻撃ではなく、消滅という結果を直接導き出す因果攻撃を何度か行っていた。その殆どは通常のバリアに加えて機界新種バリアまで重ねがけしている十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)に大したダメージを与えられなかったが、まあ本体にダメージが与えられなくても保有次元力を減らすという意味では有効だったので、存在Xは全面的にこちらに切り替えることにした。ここまで来たらやるべきことはエネルギーの削り合いなのだ。それに範囲攻撃ではバリアで受け止められてしまうが、貫通力を高めた収束攻撃であれば本体にも通りそうだった。

 なおその因果攻撃の見た目は神聖さとは大分遠い黒い雷だ。雷の形式を取っているのは現状の環境設定では光速より雷速の方が速いからで、黒いのは電撃だけでなく光も吸収されてしまうからだ。他にも、宇宙の背景に紛れて視認しづらいという利点もあった。

 

 しかし十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)に対する有効な攻撃方法が分かったとしても一方的に殴られていては意味が無い。問題は動きの速さで絶望的に劣っていることだ。これは唯一神に機敏なイメージが無いせいで、存在Xも信仰防壁と転移能力であらゆる状況への対応が可能なのでこれまで素早さに関する能力開発は全くしていなかった。しかし現状ではその防壁も破られ、転移もAWF(アンチワープフィールド)で封じられているのが問題だ。

 そこで存在Xは新しい回避方法に切り替えた。()()()()()()()()で距離を取ったのだ。

 AWF(アンチワープフィールド)範囲内で転移を実行した存在Xに対し、魔導衛士達は警戒を露わにした。

 

スコア「……AWF(アンチワープフィールド)を破られたのか?」

 

 AWF(アンチワープフィールド)を張っていても、出力差を以て力技で破るのは不可能ではない。つまり存在Xにはまだまだ出力の余裕があるのかという確認だった。

 

サティ「いえ、破られてないわ。観測した限りでは、量子存在確率を操作したようね」

 

 つまり先ほど真っ二つ状態から一度霧散して復帰したのと同様に、量子存在確率を一旦霧散させて別の場所に存在確率を再定義したのだ。これも因果操作の一形態であろう。イメージ的にはダブルオーの量子化に近い。これは超空間を経由しないのでAWF(アンチワープフィールド)に阻害されないのだ。

 

テクス「あまり遠くには転移出来ぬのでござるかな?」

 

 遠距離攻撃がメインの存在Xは距離を取る程有利になる筈なのだが、まだ目視出来る程度の距離にとどまっている。いや、双方身長が1500億光年もあるので体感では100m弱程度にしか見えないが、実際は8兆光年くらいの距離があるのだ。これで短距離しか転移出来ないと言われても困るだろう。

 その8兆光年が果たして転移距離の限界なのか射程限界なのかは不明だが、どちらにしろ体感マッハ440の雷速ならば瞬時に詰められる距離でしかない。

 問題の存在Xは傷を修復しながら肩で息をしているように見える。ここだけ見るとおじいちゃんをいじめているように見えるのが良くないが、奴は邪神なので手心を加えてはいけない。そもそもここに空気は無いのだが、存在Xは一体何を呼吸しているのだろうか。

 

マイン「ならば対処は簡単だな」

 

 マインの言葉に頷いた十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)は、雷速で一直線に存在Xへと殴りかかった。存在Xはそれを量子転移で回避したが、それを見て転移先に即座に殴りかかったら普通にヒットした。

 まあ要するに量子転移のインターバルを考慮に入れると量子転移による移動速度よりも雷速機動の方が速いので、転移を見てから昇竜余裕でしたというわけだ。

 但し存在Xが殴られながら放った黒い雷が曲がって戻り、十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)の背中に直撃した。あまりにも当たらないので追尾性を持たせたようだ。

 存在Xはどうだと言わんばかりの顔を見せたが、十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)は前転でそれを回避していた。見た目は明らかに当たっているのだが、何しろ回避アクション中は無敵なのだ。わざわざ地面を作ったのに使わないわけがない。そして前転であるからして、これは距離を詰める動きを兼ねていた。

 存在Xは接近を牽制する為に黒い雷を纏った杖を突き出すが、これに対し十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)はピーカブースタイルで構えて杖を回避しながら上体を左右に振り始めた。

 

 もしやこの動きは、と匠衆(マイスターズ)本拠地世界の人々が拳を握って沸き立った。

 

 何か不味いぞと察した存在Xは即座に量子転移で距離を取ろうとしたが、量子転移に失敗した。因果操作が阻害されているのだ。

 次元力で同等以上になったとはいえ、存在Xの管理下にある神域全体の因果を一方的に支配するのは十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)でも流石に無理だ。しかしバリアで因果攻撃を防げるように、近距離の相手の精密因果操作を阻害するくらいは可能なのだ。

 

十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)「滅せよ偽神。雷鳴連撃(デンプシー・ローリング・サンダー)ッ!!」

 

存在X「ウボアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 次元力と魔力で雷速に加速した拳が、存在Xの頬を、脇腹を、幾度となく容赦なく打ち据えた。

 雷鳴連撃(デンプシー・ローリング・サンダー)は、瞬間的な移動速度だけでなく挙動全てを雷速にする技だ。これは十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)が少しばかりの雷神の権能とターニャの術式の知識を活用して即興で雷速機動を改造したものだ。その連打スピードは秒間2万発にものぼり、千手如来掌の秒間1万6千発をも超えていた。十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)の勝利を確信した盛大な幕之内コールが更に威力を高め、存在Xは65,535箇所骨折した!

 地獄の連打で存在Xをグロッキーにしたところで、十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)は腰の剣を抜き放った。何やら微妙に禍々しいデザインの黒い剣であり、エッジ部分が妖しく輝きながらモーター音のようなものを奏でていた。しかもいつの間にか十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)の肌が褐色に、髪が銀色になっており、よく見れば顔も違うことに気付いただろう。

 十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)は抜き放った黒い剣を大上段から振り下ろした。

 

十二騎士戦乙女轟雷(ナイトヴァルキリー・サンダーボルト)「――グラットンスウィフト」

 

 神はバラバラになった。

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