[2025/10/30]SAVE THE DAYプログラムの段階的手順の意味について追記しました。
お互いの素性が概ね判明した二人は、次に拠点用地を話し合うことにした。
トピア「とりあえず拠点の用地はどうしましょうか? MOB対策は結界の旗でいいとして、私としてはあちらのワニが住み着いた湖畔から湖上にかけてがお勧めです」
サティ「豊富な水源は魅力的だけれど、それってワニに襲われない?」
サティの常識からしても工業には大量の水が必要になるので、水平線が見えるほどの巨大湖は非常に魅力的ではある。問題はそこに住み着いたワニの方だ。
トピア「ワニは有益な資源ですよ?」
サティ「うん?」
またしてもトピアの反応がおかしい。何やらワニ自体を有益と見なしているように聞こえる。また常識が食い違って空転している気配があるが、ワニ革や肉でも有効活用するのだろうか? サティは首を傾げたが、ひとまず納得する事にしてトピアの後に付いていった。だが忘れてはいけない。この世界はドラゴンがダイヤモンドやプラチナをドロップするのだ。ではワニは?
トピア「……と、こんな感じのドロップアイテムが出ます」
サティ「肉と革と牙と、これは……鉄鉱石?」
トピアが平然とワニに近づいてボールライトニングを発動すると、一撃で全ての耐久力を剥ぎ取られたワニは瞬く間にドロップアイテムに変化した。肉などのワニの体由来のものもあるが、どういうわけかそれより鉄鉱石の方が量が多い。
トピア「はい、この世界のワニは無限に湧いては鉄鉱石をドロップしてくれるので、通称ワニ鉱山と呼ばれるほどのポピュラーな資源なのです」
サティ「……なるほど、解体して素材にするんじゃなくてドロップアイテムが突然出てくるなら何が出ても不思議は無い訳ね。ちょっと意味が分からないけどそういうものだと思う事にするわ。ファンタジーというか、大分ゲーム寄りの世界なのね」
相変わらず常識の断絶は激しいが、互いの常識を知らない前提での説明能力はトピアにもあるようで、サティはトピアの説明が問題無く理解出来ることに一安心した。
トピア「よく言われますね。ともあれ、本格的に設備を整えるとワニ鉱山は産出量もさることながら確率で――」
サティ「ああ、鉱脈から半永久的に採掘するだけならうちの採鉱機でも出来るわよ?」
トピア「えっなにそれすごい」
サティ「そうかしら?」
褒められるほどのことなのかとサティが疑問を呈すると、トピアは何やら興奮した様子で首を縦に振り、続いて疑問を投げかけた。
トピア「ときにその半永久的採掘は一体どういう原理で?」
サティ「そうね、私も詳しくはないけど、確か鉱脈に一定以上の量で存在する元素を呼び水にしてリンデンベルガー量子置換で鉱脈を成長させて、更にクルニコワ・トニエスキー平衡で鉱脈と周囲の地盤の圧力を均一化し続けることで同じポイントから掘り続ける事が出来るらしいわね」
トピア「量子置換! 流石の超科学ですね」
サティ「実際には元素を変換してるというよりも周囲に散らばった同一元素の位置を量子置換して一箇所に集めてるらしいんだけどね」
クラフトピアシステムにも枯渇した鉱脈に人工岩盤を設置して隆起剤をぶっかける事で特定の鉱物をかき集めて新たな鉱脈を作るという手法があり、これも実は何度でも使える謎のオーバーテクノロジーなのだが、それを科学で実現して自動化したようなものであろうか、とトピアは当たりをつけた。
サティ「まあ一番遅いMk.1の標準速度採掘でも5MW必要で、燃費はあんまり良くないんだけどね」
一般家庭の消費電力が0.5kW前後なので、5MWといえばその1万倍。いくら産業用途であってもあんまり良くないどころか大層な燃費の悪さであった。
トピア「メガワット。あーそうか、科学だから電力要りますよね」
サティ「……その口ぶりだと、もしかしてそっちは電力無しで動いたりするのかしら?」
トピア「はい。うちの自動生産設備はどれもこれも電源無しで半永久的に動き続けます。暗所でも動くところを見るに太陽光発電でもないので多分マナ駆動ですかね?」
サティ「そっちの方がよっぽど意味が分からないわよ?」
トピア「正直私もそう思います。あ、でも沢山密集配置するとマナが足りないのか動きが鈍ったりはするので多分極度の大量生産には向いてないですよ」
サティ「欠点が無いわけではないのね」
科学と魔法の相互理解はまだまだ遠そうであった。魔法を使っている側が自分でも原理を理解していないのだから仕方の無いところである。
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拠点の予定地が決定していざ建設に取りかかろうとした二人だが、現時点では必要な建材をまだ作れないため、それを解決する為の作業に入った。
そして二人はブループリント以外にも意外な共通点があることに気づいた。
トピア「ふーむ、案外似た様なシステムが採用されてるものですね」
サティ「そうね。こういうのって初回は分かりやすいんだけど、2回目以降は面倒よね。それにしても……」
トピアはクラフトピアワールドシステムの時代設定が世界ごとに1から始まるので、必要なものを納品して時代を進めないと原始的な物しか製造できない。
サティはFICSIT社が提唱するSAVE THE DAYプログラムのプロジェクト・アセンブリにより順番に納品を進めていかないとやはり基礎的な物しか製造できない。
基礎技術は全く異なるが、どちらも技術的に低レベルなものから順番に作って技術レベルを上げていくという似たようなシステムが採用されていたのだった。
FICSIT社のSAVE THE DAYプログラムの場合、基礎的な物から順に作っていくことには明確な意味がある。これは周囲に工業設備が何も無い状態から開始してもきちんと軌道エレベーターを完成させられるように組まれた手順なのだ。そういうわけで、面倒でも一から納品をこなしていく必要がある。
一方クラフトピア世界で祭壇に対する納品がどう作用して技術レベルが上がるのかについては、因果関係が不明だ。何しろファンタジーな魔法文明圏なので仕方ない。
似たようなプロセスとなっている両者だが、初期状態では碌な床材も製造できないというのも同じだった。一応クラフトピアの時代Lv1では原始的な木の床程度は製造できるが、隙間の空いた木の床の上に大重量のHUBやら何やらを載せるのは流石に不安である。Lv1の時代名も石器時代なのでその時代の産物を信用するのは難しい。普段の世界なら大丈夫なのだろうが、この世界は外敵のせいで不安定なのだ。
FICSITの建築システムならば建材を直接差し替える事も出来るので暫定部材による施工も出来るだろうが、クラフトピアの建築システムにはそういう機能が無いので、最初からある程度頑丈な建材で揃えておく必要がある。最低でもLv5の産業の時代までは進めたいところだ。
もう少し厳密なことを言うと、クラフトピアのシステムではシンプルに時代レベルが1から8まであり、以前のワールドで実装されていたのは7までである。
それぞれの時代の名前は
・Lv1:石器時代
・Lv2:農耕の時代
・Lv3:開拓の時代
・Lv4:ルネッサンス
・Lv5:産業の時代
・Lv6:火の革新時代
・Lv7:科学研究の時代
・Lv8:神々の時代(未実装)
となっている。
FICSITのシステムではもう少し細かく、
・技術解放のTier(等級)が0から8まである。0はチュートリアルなのでスキップで一気に完了できる
・それぞれのTierには複数のマイルストーンが存在し、マイルストーンで要求された納品の達成によりそれぞれのテーマに沿った幾つかの製造品目が解放される。製造品目以外の何らかのボーナスがある場合もある
・Tier0以外は達成するマイルストーンの順番を任意に選べる。ただし達成に必要な納品品目が他のマイルストーンの達成を前提としている場合がある
・軌道エレベーターの解放がTier0の最後にある
・Tier1と2はTier0のチュートリアルを完了することで解放される
・Tier3と4は軌道エレベーターの納品フェーズ1『配送プラットフォーム』を終わらせることで解放される
・Tier5と6は軌道エレベーターの納品フェーズ2『建設用ドック』を終わらせることで解放される
・Tier7と8は軌道エレベーターの納品フェーズ3『本体』を終わらせることで解放される
・軌道エレベーターの納品フェーズ4『推進装置』を終わらせることでプロジェクト完遂
という区分に分かれている。つまり製造品目の解放は基本的に各Tierに存在するマイルストーンの達成で行うが、Tier2つごとにハードルとして軌道エレベーターへの納品が挟まる形だ。そしてこの納品によって軌道エレベーターが頂上まで完成して他の惑星との物流が開通することで
これらのうち納品フェーズ4が桁違いに大変で、真面目に工場施設を作ると実作業だけで1ヶ月前後はかかってしまう為、サティは最初の任地で完成させた自動生産工場のフェーズ4納品用余剰物資を次回以降の任地に持ち込んで大幅に省力化していた。今回も同様にインベントリの持ち込み90枠のうち40枠を熱推進型ロケット×1,000と原子核パスタ×1,000が占めている。他に組み立て指揮システム×4,000と磁界発生装置×4,000も納品に必要だが、それぞれ80枠も必要でインベントリに入りきらないので、フェーズ4の製造設備を4品目のうち2品目分減らす為に納品要求数が少ない前者が選択された形である。
ともあれ効率的に仕事を進める為、二人は互いに得意分野を活かして素材や労働力を融通し合う方針を決めたのだった。
サティは拠点建設予定地の湖のほとりに再度HUBを設置。トピアはその隣に時代の祭壇を設置した。石柱の上に正面を向いた恐らく銅と思われる金属円盤が乗っており、一見ただのモニュメントに見えるが、この時代の祭壇こそがクラフトピアワールドシステムの根幹である。
……などと言うと神秘的に聞こえるが、原料はそこらで拾った石と原木である。そうでなくては原始時代の加工技術では製造できなくて詰むので仕方ないし、金属の円盤がどこから来たのかは気にしても仕方が無い。理解不能な謎が多いという意味では神秘的かもしれない。
サティ「用途が同じような物でもやっぱりファンタジーなのね」
トピア「神的な存在に供物を捧げる祭壇ですからね」
到底HUBと軌道エレベーターの機能を兼ねるような設備には見えないのだが、ファンタジーなのだから仕方ないと言ってしまえばそれまでだ。そう、神秘である。
普通に考えると採掘期間が長くてゲームやってる間くらいは枯渇しないだけのような気もしますが、FICSITの技術力はそんなリアリティを軽く超えるに違いないという信頼感から勝手に半永久採掘設定を盛りました。