[2025/11/30]加筆・修正しました。
3日目朝の会議、トピアの報告が続く。
トピア「それから、これ昨晩に気付いたんですけど、持ち込んだ『熟練工の精錬所』とは別の、普通の『精錬所』が既に作業台から製造可能になってました。実際に作って確認してみたところ、どうも新ワールドに合わせて全く違ったものになっているようでした。両方出してみるとこうです」
トピアがテーブルの後ろの空きスペースに両方の精錬所施設を設置した。
熟練工の精錬所は青い机の上に大きな糸巻きのような筒状の工作機械が載っており、机の横に3つの箱が並んでいる。箱にはそれぞれ剣、宝石、剣の3つのマークが記されている。
一方新しい普通の精錬所はというと、作業台に食い込むように立てた手回しの太めの円盤が設置してあり、その横には2つの箱が並んでいる。箱にはそれぞれ剣と宝石のマークが記されている。また、全体的に作りが粗い。
サティ「大分違うわね?」
スコア「一番違うのは箱の数か?」
台に据え付けられた回転装置は技術レベルが違うもののどちらも研磨機のように見えるので、本質的な違いはその横の箱であるとスコアは察した。
トピア「はい、この箱が従来の熟練工の精錬所では3つ、新しい精錬所では2つになっています。従来は普通の精錬所もボックス3つ仕様だったんですが、無くなったのは武器箱の1つです。つまり」
スコア「これはまさか同じ武器を大量に用意しなくても精錬石だけで精錬強化出来るということ、か?」
スコアの問いに対し、トピアは力強く頷いた。
ラリー「ってことは
スコア「ファントムスパークやルーンソングもだな?」
トピア「そうなります。また、旧来の普通の精錬所では下から2番目の精錬石までしか扱えない仕様になっていて★の数が多い武器を全く強化出来ませんでしたが、新方式のこれは武器を限定せず強化段階が+40止まりというのが制限のようです。つまりどんなに★が多い武器でも40段階、具体的には
スコア「それは素晴らしいな」
ラリー「だな」
武器精錬とエンチャントの差で攻撃力面では大きくトピアに劣らざるを得ない二人は、明らかに期待の目を向けていた。
トピア「ただし、精錬石の区分も変わっているようでして、従来の5段階分類ではなく、武器と同じ★がついた14段階分類の精錬石が必要になっています。また、武器を『精錬分解ベンチ』という新しい装置に投入することで同じ★の精錬石が得られます。要約すると、強化したい武器と同じ品でなくて良いので、同じ数の★がついた武器を沢山持ってくることで強化出来るということですね」
ラリー「その武器の★っていうのはどこで分かるんだ?」
スコア「いや、確かアイテムの★はクラフトピア仕様のチェストに入れると表示されていたな? 武器類を入れたことは無かったが」
トピア「そうですね。お二人に提供していただいたテスト用の武器ではまずラリーさんの 伝説の プラチナの剣が★×2判定で、1段階で
ここでラリーとスコアが違和感に首を傾げた。
ラリー「うん? こっちで把握してる攻撃力より大分数字が大きいな? 5倍くらい強くなってないか?」
スコア「こちらも5倍になっているな。……いや、
二人の疑問にトピアが頷き、これまでに分かったことを説明する。
トピア「こちらでも聞いていたイメージよりも強いなと思ってラリーさんやスコアさんのチェストに入れて確認してみたんですが、スコアさんの理解で恐らく正解です。そもそもクラフトピアのダメージ計算は無意味に複雑で、まず
ラリー「うーん、期待したほどの強化は出来ねえってことか」
スコア「まあ私たちの武器が想定の5倍強かったというのは朗報かもしれないが」
ラリー「……そうだな。強化もまだ199段階のうちの40段階だしな」
トピア「最終段階の改+99まで行くと+697なので1/5しても+139.4になりますね」
ラリー「そこまで行くと結構な強化だな。それで本番の武器の★判定が必要なんだったな?」
トピア「そうですね。クラフトピアチェスト各種の他にもこの精錬所の武器スロットに入れてみることでも分かりますので宜しくお願いします。ちなみにジークフリートやヒルデブラントは★×12判定で、自分で製造出来ないものまで含めて最高★×14です」
ラリーとスコアは顔を見合わせた。つまり★の数が少ないほど強化が簡単だが、自慢の武器の★の数が少ないと、それはそれで価値が低そうに見えてしまう。
ラリー「まずは俺から行くぜ。
強化が困難なほど高くもなく、かと言ってゴミアイテムのように低過ぎもせず、ラリーとしては一安心の結果であった。
なお
スコア「では次は私だな」
スコアは普段気にしていなかったアイテムのレアリティを思い起こす。コア関連アイテムのレアリティは白から始まって緑、青、紫、そして黄色に至る。クラフトピアのエンチャントにおける水色=コモン、緑=アンコモン、青=レア、紫=エピック、黄色=レジェンダリの並びに酷似している。ということはファントムスパークもルーンソングもまさかの最上位判定になるのではないか?
スコア「……ファントムスパークもルーンソングも★×10だな。背景が黄色だがこれはレジェンダリ……なのか?」
スコアの予想に反して★は10だが扱いはレジェンダリのようであった。
トピア「おめでとうございます、どうやら強化出来そうですね。こっちの基準だとアイテムの★とレアリティ評価が全く無関係で、レジェンダリアイテムでも★×8とか平気で存在するので気にしなくていいです」
スコア「そういうものなのか」
ラリー「
トピア「それで、★×10や11のアイテムを大量に集める手段ですが……正直なところ★×10は同一のボスを狩り続けるだけで大量に手に入りますが、★×11って滅多に無いんですよね。強いて言えば大空のグリフォンや金風を駆けるグリフォンから5%くらいドロップしますが、★×10ならこれが30%に上がります」
ラリー「何……だとォ……!?」
スコア「ご愁傷様」
スコアに哀れみの目を向けられたラリーはショックを受けたが、諦めるには早い。
ラリー「いやいや待てよ、一旦モディファイアを外して★×10評価にして、精錬強化してから
トピア「はい、そしてそんなお困りの際にはこちら! 『悲願の罪の薬』が大活躍です!」
トピアがテーブルの上に出したのはピンクに近い赤紫の液体が入ったフラスコで、中にはよく分からない文字列が光っていた。
サティ「またトピアがヤバそうな薬を出してきたわ」
スコア「どんな効能があるんだ?」
トピア「はい、これを使ってから63秒間、何とドロップ率が10倍になるめっちゃヤバイ薬です!」
スコア「素晴らしいな……!」
ラリー「神か……?」
その絶大な効果を聞いたスコアとラリーは掛け値無しに絶賛した。それも仕方の無いことだ。レアドロップを求めて延々周回する手間を僅か1/10に出来るなど、素晴らしいとしか言いようがないだろう。
トリオ「本人ですらヤバイ薬と白状しておるがええんかの?」
サティ「……まあ、使う人が納得してるならいいんじゃないかしら」
一方、トリオはトピア達のノリに困惑しているが、同様に明らかにヤバそうな効果がある小さなスタミナポーションも副作用は別段無さそうだったので、使用者本人が納得するならサティとしては止める気は無い。
トピア「ちなみにこの薬は、地獄のダークアヌビス神が1Lvあたり1つドロップする『願望の罪の薬』を125個濃縮して作ります。まさに神の恩寵です」
トリオ「入手ルートも大概じゃのう」
サティ「そういえば言ってたわね、速攻で倒せる程度に罪業カウントを重ねて相手のレベルを上げた方がむしろ捗るとか」
スコア「それほど素晴らしいアイテムを提供してくださるアヌビス神はまさに神の鑑だな!」
ラリー「ああ、きっと神の試練を超えた褒美って奴だろうな!」
トピア「ええ、アヌビス神のありがたさが身に染みますね!」
それぞれアヌビス神を称えてはいるが、強力なアイテムを手に入れるための強引な自己正当化は三人とも似たり寄ったりであった。
トピア「……と、そのグリフォン狩りはレベリングを兼ねてそのうちやるとしてですね」
トピアが自分で煽った話題を強引に打ち切ったが、このままでは話が進まなくなるところだったのでサティは大人の対応でスルーした。
トピア「同一の武器を捧げずに精錬を+199まで進めるには恐らく新型の『熟練工の精錬所』が必要になるわけで、これがワールドLv6からの登場なので、ラリーさん地下世界の件は宜しくお願いします」
ラリー「おう、任せとけ!」
ワールドLv6のありがたみを具体的に理解したラリーは、やる気が格段に増しているようだった。
トピア「それで、精錬所の変化からもしかしてと思って『エンチャントテーブル』も新しいのを作ってみたところ、見た目は変わってないのですが説明文に違いがありました」
サティ「どんな違い?」
トピア「従来品のエンチャントテーブルには『エンチャントスクロールを触媒とし、武器に対してエンチャントを付与することができるテーブル。まだまだ研究途中の技術のため将来的に機能が拡張される…かもしれないようだ。』と書いてありました。これが新しいのになると『スクロールを触媒とし、アイテムにエンチャントを付与することが出来るテーブル。かつては武器しか付与できない時代もあったようだが、実験を終えすべてのアイテムをコントロールできるようになった。ただしその性能は時代に依存する。』と変わっています」
ラリー「つまり全身の装備を4エンチャント分強化可能になったのか!」
スコア「しかし時代依存とはどういうことだ?」
トピア「実際にエンチャントメニューを開いてみるとエンチャントコストという表記があって、これが今の時代、つまりワールドLv5で14です。上から2番目のエピックでも1つ当たりのコストが4なので、14だとフルエピックにも出来ないくらいですね。時代が進むとこの限界値が上がると考えられます」
スコア「なるほど……そのエンチャントは、一旦仮のものをつけておいて後で上書きは可能か?」
トピア「可能です」
ラリー「今すぐやろうぜ!」
スコア「今すぐやるべきだな」
興奮したラリーとスコアがトピアに詰め寄った。その目は期待に満ちていた。
トピア「いや待って、気持ちは分かりますが少し待ってください。フルエンチャントはまずどういう方針でステータスを調整するかというオーダーメイド設計が必要なので、そこの方針決定から始める必要があります。また、そもそもオクタリンの弓などにはエンチャントが成功しましたが、武器以外に付与した場合に装備時効果がきちんと発揮されるかを実験で確認しないといけません。弓や杖と同時に盾を装備すると盾のエンチャントが反映されないみたいな条件が実際あるんですよ。なのでまずはエンチャントをつけたい装備と同じ装備カテゴリの実験用素材の提出をお願いします」
ラリー「色々準備がいるんだな」
スコア「すまない、焦りが出てしまったようだな」
トピアが早口で説明すると、二人は若干ションボリして離れていった。
トピア「というわけで、今日の予定はまず採鉱機の設置に同行しての護衛、それから住居の建設と家具の設置と私室の引っ越し、モンスタープリズムでコア周辺のMOBを捕獲出来るようだったら畜産施設の建設。それでまだ時間があったら地下世界の探索になりますね」
サティ「そうね。建設の前には打ち合わせが必要になると思うけど」
トピア「私からは以上です。やるべきことが増えてきましたね!」
前線組の個人戦力強化のためにやるべきことが大分明確になってきたため、トピアは満足げであった。
というわけでシームレスワールド仕様=サンがアップを始めました。