[2025/12/14]加筆・修正しました。時間経過部分に仕切りを追加しました。
会議を終えたトピアは、スコアとラリーに同行してまずはポータルで
仮拠点は石造りの部屋であったが、既に何か臭う。そして扉を開けた途端にその臭いは勢いを増してトピア達の嗅覚を襲った。
トピア「臭ッ!? 何ですかこれ!?」
スコア「これは何だ、肉の腐った臭い……!?」
ラリー「ああ、
そこは血の匂いが濃い
トピア「ラリーさんどうして平気そうなんですか!?」
ラリー「慣れた」
とは言うものの、ラリーの表情をよく見ると、嫌な臭いに慣れただけで、嫌な臭いを感じないわけではないようだった。
いや待て
トピア「一旦戻りましょう!」
ラリー「ん? まあいいけどよ」
スコア「何か考えがあるんだな?」
トピア達はコアベース経由でユグドラシルに戻った。
そして数分で戻ってきた。
トピア「これで対策は万全です!」
簡易拠点の扉を開け放ち、両手を高々と上げたトピアの顔には円盤状のフィルターが備えられたマスク、つまりガスマスクが装着されていた。
スコア「なるほどこれは快適だ。よく思いついたなトピアさん」
ラリー「科学ってのもなかなか侮れねえ」
当然他の二人も装着していた。FICSITが誇る防毒マスクなので、ガスフィルターの在庫が続く限りは臭いもシャットアウトしてくれる優れものだ。
トピアはサティの安全服に備えられたオプションのガスマスクを知っていたので、装備品作業場を借りてそれを追加で三人分作ってきたのだ。
トピア「これで落ち着いてお仕事出来ますね。それでラリーさん、パワー・スラッグはどちらに?」
ラリー「おう、あっちの方だな」
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ラリーの案内でトピア達は無事パワー・スラッグを捕獲した。
結論から言ってパワー・スラッグはモンスタープリズムでの捕獲が可能だったので、養殖の実現がほぼ確実になった。
ただし捕獲の準備としてパワー・スラッグの耐久力を死なない程度に減らさなくてはならないため、最も
トピア「よもや日光でダメージを受けるとは」
スコア「地底生物は普段日光を浴びないからな」
コア周辺のモンスターを交配所Sに乗せるところまでは成功したのだが、それらが日光でみるみるダメージを受けて死んでしまうため回復が間に合わず交配出来ないという問題が発覚したのだ。
トピア「空や床で反射した拡散光くらいなら大丈夫のようなので、ある程度密閉した部屋なら行けそうですが、こうなるといっそ畜産関係まとめて地下に引っ越すという選択肢が有力になってきますね。今のところ本稼働してるのはワニだけですし」
スコア「コアベースの深度ならラリーの地元関係の多種多様な襲撃が来ないらしいからな。ブラッドムーンで凶暴化する以外は」
まあそのブラッドムーンのせいで従来の牧場が機能しなくなったのだが。
というわけで、二人は実験場を地下に移し、更地にした千本鳥居型牧場の跡地に住居区画外壁の水堀から水を引いて、同様の交配実験場を建設することにした。
問題はクラフトピア式ドロップ回収設備が地面から天井までに収まらないことなのだが、トピアもスコアも天井を掘削するのは苦手であるし、これだけのためにラリーを呼ぶのも憚られる。いやアゼオスビームを使えば上にまっすぐ穴を空けることが可能なのだが、コアベースの敷地内に地上直通の穴を空けてしまうのは防犯上の問題がありすぎるし、そもそもそこから日光が入ってきてしまう。
そこでスコアは地面に穴を掘ることで高さを確保した。コア由来のスコップは、どういう原理かは不明だが飛び降りるのが危険なほどのかなり深い穴を掘ることが出来るのだ。そこに浅めに水を張って、ジェットパックで上下移動が自由に出来るトピアが飛び降りて交配実験場設備を設置したわけだ。
トピア「やっぱり水にも弱いようですね」
スコア「ここまで水に弱かったとはな。水辺では突き落とすのもアリだな」
コア周辺のモンスターは水にも弱く、クラフトピア由来のMOB同様に耐久が割合減少して溺死するようだった。畜産的には都合の良い特性だ。
なお元々海に生息している触手や蟹は例外だが、そもそも畜産のラインナップに入っていない。
トピア「ブルートは無理っぽいですけど、どうします?」
トピアの言う通り、ケイヴリングブルートは交配所に乗せても暴れて設備を壊そうとするのでこちらの方式での畜産も無理のようだった。
スコア「まあ目的の『古代の宝石』と『機械の部品』はブルートからしか取れないわけじゃないから大丈夫だ。他にもマイナーは壁を壊そうとするし、スカラーは他のモンスターを回復しようとするし、コアセントリーはそもそも窒息しないから、台の上では大人しく水の中でも火の魔法を使えないシャーマンを養殖するのが一番安定しそうだな」
マイナーとは旧称ケイヴリング(ノーマル)のことだ。最初に出会ったケイヴリングだからケイヴリングと呼んでいたものの、ケイヴリングの種類が増えてきたために総称との区別をつける目的で改めてケイヴリングマイナーという名前がつけられたのだ。
最近は粘土の洞窟で発見されたケイヴリングスピアマンやケイヴリングスカーミッシャー、始まりの砂漠で発見されたケイヴリングアサシンを加えて、元々7種類いたケイヴリングが10種類まで増えているのだ。なおこれらの新種は目的のアイテムをドロップしないので牧場のラインナップに入っていない。
サティ「二人ともこんな所にいたのね。結局畜産は地下でやることにしたの?」
トピア「あ、サティ姐さん。そうですね、そういうことになりそうです」
スコア「そちらの仕事は終わったのか?」
サティ「まあね。夕方までにはフェーズ3の納品が出来そうよ。……それで、パワー・スラッグはどうなったかしら?」
トピア「ええ、交配自体は成功しました。現在予備を含め24体までは増やしてあります」
サティ「自体は、ということは何か問題が?」
トピアの言い回しに引っかかる物を感じたサティは首を傾げて疑問を呈した。これに回答したのはスコアだ。
スコア「パワー・スラッグが生物だからそのままチェストに入らなくてな。モンスタープリズムに入れるのがどうしても手作業になるんだ」
トピア「なので一旦切り上げて他の家畜の実験をしてました」
サティ「そういうことなら心配ないわ」
トピア「と言いますと?」
逆に疑問符を浮かべることになったトピアにサティが大丈夫な理由を述べる。
サティ「うちの設備にならパワー・スラッグがそのままで入るから。場所が決まってるなら設置するわよ?」
トピア「なるほどそういう……場所はこちらです」
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トピアが案内した先にはお馴染みの交配施設があった。違いは落着点にプールや大鍋が無いことだ。
サティ「これ1つの交配所が1体増やすサイクルはどのくらい?」
トピア「15秒ですね」
サティ「じゃあ1分に4体、4台で16体で、パワー・シャードへの加工が20秒、1分に3体分だから、加工も6並列にした方がいいわね」
必要な数字をはじき出したサティはコンベア・ベルト、合流機、分岐機、製作機、産業用貯蔵庫を組み合わせて即座に6並列ラインを形成した。なお秒単位で個体が増える怪現象に関しては、ワニ鉱山で既に慣れていた。
サティの点検後にトピアが交配所Sに8体のパワー・スラッグ紫を乗せると交配が始まり、生み出されたパワー・スラッグがコンベアと製作機を通って5倍の数のパワー・シャードに姿を変えて産業用貯蔵庫に収納された。種スラッグ回復用の緑モノは既に上層の交配所Sの上でLV.1羊と一緒にくるくると回っていた。
こうして80個/分、4,800個/時間ものパワー・シャードを生産する装置が完成した。
サティ「よし、ばっちりね!」
トピア「やりましたね!」
スコア「これで採掘事情は安泰だな」
サティ「じゃあ早速新しい採掘所を整備しに行きましょうか!」
スコア「了解した、こっちだ」
畜産関係の検証が終わりパワー・シャードの量産体制が整ったため、三人は当初の予定通りに地下鉱脈巡りに出かけることにした。