【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2025/12/16]加筆・修正しました。


048. 古代の光と闇の精霊が解き放たれた? 何ですか、最強に見える的な?

 地下集合住宅への引っ越しも完了し、夕食後にトピアとラリーは地下世界(The Underworld)に向かって穴を掘っていた。ラリーがウルトラブライトヘルメット(Ultrabright Helmet)鉱夫のシャツ(Mining Shirt)鉱夫のパンツ(Mining Pants)の3点セット鉱夫装備に身を包んで全速力で掘り進む傍ら、円環魔導士の装(フォーム・サーキュラー・ソーサラー)Mk.2装備のトピアがその護衛をする形である。二人の装備にはスコアが朝の会議後に作ったオーブランタンとオクタリンのかばんが追加されているため、明るさに不足は無い。

 二人で役割を分担して作業を進めた結果、30分もかからずに地下世界(The Underworld)へと到達していた。なお掘削開始点はコアベース周辺の地割れの底で、そこそこの深さがあったのでこれも時間の短縮に寄与していた。

 

トピア「ここが地下世界……なるほどこの一面の溶岩地獄は期待出来そうですね! ……どうしましたラリーさん?」

 

 遂に念願の地獄らしきバイオームを目にしたトピアはテンションを上げていたが、その傍らでラリーは舌を出して顔をしかめていた。

 

ラリー「か・ら・す・ぎ・る! このヘルレジストポーションとかいう奴、辛さで発汗してたら耐熱効果の意味ねえぞ!」

 

 二人は地下世界(The Underworld)に入る前にヘルレジストポーションを飲んだのだが、予想外の辛さにラリーは苦言を呈した。そもそも大地の冒険者(テラリアン)地下世界(The Underworld)の灼熱環境でも溶岩に入らない限りダメージを受けない上にテラスパークブーツ(Terraspark Boots)で溶岩の上を歩くことすら出来るのだが、それはそれとして暑さと汗のべたつきは不快なのでヘルレジストポーションを試してみたのだ。結果として発汗が逆に増えてしまったのでご不満というわけである。

 

トピア「はて、赤のハーブの保護効果が効いていれば何ともないはずなんですが、もしかしてよく振らずに飲みました? ハイライフポーション飲みます?」

 

ラリー「くれ!」

 

 ラリーがハイライフポーションをひったくるように受け取って飲み干すと、数秒で地獄の辛さが落ち着いてきたようだった。単純な回復効果もあるが、ハイライフポーションも原料は赤のハーブであり、20倍濃縮のためヘルレジストポーションに含まれている成分以上の粘膜保護効果があるのだ。

 ちなみにこのアイテムの説明には最上級の辛さによって熱血気分になり暑さを忘れるといったおよそ精神論的なことが書いてあり、本来の用法としては辛いまま飲むようである。このため敢えて振らずに飲む激辛愛好者や熱血愛好者もいるのだが、到底常人が許容出来るレベルの辛さではないのでトピアは一度で懲りた。

 最初にトピアがこのヘルレジストポーションを飲んだ時、師匠はのたうちまわるトピアを見て笑っていたのだが、その後師匠に安全な飲み方を教えてもらったことでトピアの記憶はしっかり尊敬方向に上書きされている。

 

ラリー「ひでえ目に遭った。……だがこのライフポーションはよく効くな」

 

トピア「そうですね。まあライフ回復は大体ヒールや料理で済ませてしまうので、こういう副次的な使い方が案外多かったりしますが」

 

ラリー「贅沢な話だぜ」

 

 それはともかくとして、地下世界(The Underworld)の探索である。ラリーによると大陸の端に近いほど樹木が多いようなので、海岸線を目指すなら衛星観測からして北方向が近い。しかしそれでも1,500kmほど距離があるので、まずは南に向かうことにした。南側のすぐ近くにはこの星最大の湖があるので、土壌の水分が条件であるのなら湖でも良いのではないかという発想による。言い換えると、ドーナツの内側の穴も端ではあるだろうということだ。

 

ラリー「ああそうだ、あの空を飛んでるデーモン(Demon)の亜種にブードゥーデーモン(Voodoo Demon)ってのがいてな。そいつのドロップアイテムを溶岩に落とすと面倒なことになるから気をつけろよ」

 

 魔女の箒(Witch's Broom)にまたがって空中を進むラリーがデーモン(Demon)を指さしながらトピアを振り返って注意点を説明する。トピアは溶岩のやや上空に床を一直線に敷きながらその後を追いかけている。ラリーの方は床の高さに合うように地形を掘削するという分担だ。

 

トピア「どうやって見分ければいいですか?」

 

ラリー「ブードゥーデーモン(Voodoo Demon)は足で人形を掴んで吊してるからすぐに分かる」

 

トピア「……今デーモンのついでに流れ弾が当たったのがそれでは?」

 

ラリー「うん? ……あっ」

 

 ラリーが再び前方を注視すると、地形の影から低空飛行で出てきたブードゥーデーモン(Voodoo Demon)ゼニス(Zenith)が直撃して八つ裂きになり、足に抱えられていた人形が今まさに溶岩に落下していくところであった。

 

トピア「……まさにそのドロップアイテムが溶岩に落ちましたけど、一体何が起きるんです?」

 

ラリー「肉の壁(Wall of Flesh)が出てくる。さてどっちから出てくるか」

 

 ラリーが前後を交互に確認していると、果たして肉の壁(Wall of Flesh)は前方南側の溶岩の中から現れた。

 その姿はまさに肉の壁。行く手を阻むべく上下左右に大きく広がった板状の生肉の中央に牙のある口、その上下に大きな目玉がついていた。問題はそのサイズで、地下世界(The Underworld)の溶岩から天井までを塞いだそれが結構な速度で迫ってくるため、そのぶちかましを回避するのは困難であり、追いかけられながら迎撃するのが定石だろう。

 

ラリー「こっちかオラァ!」

 

 だがすかさずラリーが中央の口めがけてゼニス(Zenith)を全力投擲すると、肉の壁(Wall of Flesh)は怒濤の連続攻撃に耐えられず攻撃を開始する前に砕け散り、肉片を散乱させた。記録は1秒未満である。そのあっさりした終わり方にトピアは拍子抜けした。

 

トピア「見た目の割に思ったほど強くはないんですね?」

 

ラリー「まあ所詮前半戦最後の敵だ。ゼニス(Zenith)の敵じゃねえ」

 

トピア「とすると、何を警戒……いや、確かウォールオブフレッシュを撃破すると侵食が進むとか……?」

 

 その時、トピアの目の前に通知ウィンドウが開いた。

 

外敵駆除

肉の壁(Wall of Flesh)を1体倒す

Clear

Get!

EXP +2,000

レベル上限解放 +1

 

古代の光と闇の精霊が解き放たれた。

 

トピア「古代の光と闇の精霊が解き放たれた? 何ですか、最強に見える的な?」

 

 いつものミッション達成通知の最後によく分からない文言が追加されていた。その文言からトピアの脳裏に浮かんだのは有名な浅黒いエルヴァーンの騎士であった。

 

ラリー「後半戦突入ってことだな。侵食が一気に広がるから、出来ればタイミングは明日の朝にしようと思ってたんだがな」

 

トピア「あー、その隔離や浄化を今から作業開始するのは時間的に問題がありますもんね」

 

ラリー「そういうこった。んで肉の壁(Wall of Flesh)が南から来たってことはやっぱり南の湖が大陸の端判定されてそうだが、このまま行ってみるか?」

 

 肉の壁(Wall of Flesh)は基本的に召喚者に近い側の大陸の端方向から出てくる。つまり普通に考えれば北方向だが、南側から来た以上は湖岸が大陸の端と判定されたということだ。

 

トピア「近いなら是非行ってみたいですね! 宜しくお願いします!」

 

 

 肉の壁(Wall of Flesh)のドロップ品を回収してから引き続き足場を敷き詰めつつ急ぎ足で南に向かったところ、期待通りに二人は木が生えている地帯を発見した。それは残念ながらラリーの世界由来のアッシュツリー(Ash Trees)であったが、更に進むと下り坂で段々地面が低くなることで相対的に天井が高くなっていき、トピアにとって見覚えのあるものが見えてきた。巨大な鎖だ。その鎖は遙か南東に向かって伸びていた。

 

ラリー「何だァこのばかでけえ鎖は?」

 

トピア「見間違いでなければ、恐らくダークアヌビス神殿を地面につなぎ止める鎖です。この鎖の向かう先にあるはずです」

 

 トピアが指さす方向をラリーが仰ぎ見るが、遠すぎて霞んでしまい、行く先が見えない。

 

ラリー「話に聞く超ありがてえ薬を()()してくれる神殿か。行くのか?」

 

トピア「その方向には向かいますが、周囲にいるはずのラヴァゴーレムを3つのポイントで討伐しないと封印が解けません。まずは『獄炎木』と『熱を帯びた鉱物』を探して、そのついでに見つけ次第ラヴァゴーレムも討伐します。ラヴァゴーレムの出現ポイントには溶岩柱が上がるので比較的目立つはずです」

 

ラリー「OK分かった」

 

 ダークアヌビス神についての認識がちょっとどうかと思う感じではあるが、二人は揃ってアヌビス神殿を目指した。そうすると出現するMOBが変化して地獄特有のヘルチキンなどが出現するようになり、更に足元から定期的に溶岩が噴き出してくるようになったため、トピアはここがクラフトピア由来の地獄バイオームであるという確信を深めた。

 ヘルチキンとは攻撃的なでかい茶色のニワトリである。固有ドロップは美味しくないが、ヘルチキンに限らず地獄に生息するMOBは固有ドロップと別に確率で『熱を帯びた鉱石』をドロップするため、トピアは手の届く範囲のMOBを極力倒しながら突き進んだ。ただしヘルチキン自体に素材としての使い道があるのでトピアはヘルチキンを1羽だけ捕獲した。

 

 二人が暫く進みながら捜索を進めると、アッシュツリー(Ash Trees)に混じって生えている三日月型の木、獄炎木を遂に発見した。

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