ラリーの
トピア「来た! 獄炎木来たァ! これで勝
トピアは即座に獄炎木を切り倒し始めた。獄炎木相手に木こりの目利きスキルを使っても普通の原木がドロップするだけなので久々に全力で斧を振りかぶっており、
一方ラリーは周辺の土壌採掘を始めており、灰色の地面の中から
ラリー「なあ、これってトピアが探してた奴だよな?」
トピア「おお、熱を帯びた鉱石、地中にも埋まってましたか。いやここ自体既に地中ではありますが。私の採掘技能ではここの地面を崩さずに掘削するのは難しいので、ありがたいことです」
トピアは両手を合わせてラリーを拝んだ。
ラリー「んで幾つ要るんだ?」
トピア「20個です。時代進化以外の用途は無いので、後はサティ姐さんの研究用を含めても合計30個~60個と言ったところですね。丁度そこに赤モノがいるので、ここに仮拠点を設営してポータルが起動するまでの間素材を収集するとしましょう」
赤モノとはその名の通り、赤い色のモノである。普通のモノとの違いは死亡時に爆発することだ。
トピアは床、天井、壁、扉、階段、ポータルだけのシンプルな拠点を手早く設営し、次に取り出したのはスプリンクラーであった。
ラリー「スプリンクラー? それをどう使うんだ?」
トピア「はい、モノは水をかけると増えるので、これを赤モノの近くに設置します」
トピアが赤モノの発生ポイントと思わしき所に複数のスプリンクラーを設置するやいなや、赤モノが急激に増殖してあっという間に20体を超えた。既に
ラリー「なるほどそりゃあ手っ取り早いな」
トピア「でしょう?」
二人の
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そういうわけで獄炎木と熱を帯びた鉱物の両方を目標数収集して意気揚々とコアベースに戻ってきたトピアであったが、サティやトリオは自室にいなかった。そこでどこにいるのだろうかと一旦階段に戻ったところで上の階にサティを見つけ、三段ジャンプで2階に降り立った。
トピア「サティ姐さん、只今戻りましたー!」
サティ「あっ、トピアお帰りなさい。身体に異常は無い? ラリーも一緒?」
サティの方から駆け寄ってきて、しきりに心配する様子はどうも普通ではなかった。
トピア「ええ、一緒に無事に帰ってきてますけど? ……何かありました?」
サティ「それがね、この先の通路でガイドのアンドリューが突然焼死したのよ」
見ればそこではトリオとスコアが現場検証をしていた。床には人型の黒い消し炭がある。
トピア「こんなところで突然世を儚んだんですか?」
サティ「いえ、見る限り何の前兆も無く突然炎上していたわ。何かの呪いかもしれないから心配してたのよ」
トピア「ああ、それで……はて、呪いの……?」
トピアの中で何かが引っかかり、一体何だったかと首を傾げた。そこへラリーがやってきた。
ラリー「よっす、ただいま。……うんうん、
サティ「え? 後任ガイドのジャンが来てるけど、焼死体に吃驚して今は……確保ォ!!」
トピア「アラホラサッサー!」
ラリーだけが一切動じていない上に事情に妙に詳しいことに気付いたサティは、こいつが犯人に違いないと確信してラリーを指差し、トピアに確保を命じた。考えてみれば、建築の際に耐火素材を指定したのもラリーなのだ。
ラリー「なっ何をするだァー!?」
サティの命令で即座に確保に動いたトピアに綺麗にアームロックを決められたラリー。簡単には抜け出せないだろう。
この騒ぎを聞きつけたトリオとスコアもすぐに寄って来た。
トリオ「おう、どうした姉ちゃん?」
スコア「ラリーが何かしたのか?」
サティ「事件の犯人を確保したわ。さあ、キリキリ吐いてもらいましょうか」
ラリー「いやいや、俺事前に説明したよな?
トピア「んん、確かにウォールオブフレッシュは倒してましたけど、ガイドさんの協力……? 呪いの……ブードゥーデーモン……人形を溶岩に……あっ!」
ラリーが何を言っているのか分からず
スコア「トピアさん、今ので分かったのか?」
トピア「はい、ウォールオブフレッシュは事故で召喚してしまったんですが、そのきっかけはブードゥーデーモンが溶岩の海に落とした呪いの人形でした。あの人形、今思い返してみればガイドさんによく似てました」
ガイドによく似た呪いの人形。その言葉の意味を理解したスコア達は一斉に顔を引きつらせ、当たってほしくないとは思いつつもスコアがラリーに確認した。
スコア「まさか、ウォールオブフレッシュを倒すための
ラリー「最初からそう言っているが?」
サティ「分かるかァ!」
ラリー「おっふ!」
サティの怒りの鉄拳が動けないラリーの顔面に炸裂した。
ラリーにとっては予定通りのことでも、事前に碌に知らされていないサティ達にとっては廊下を歩いていた住民が突然焼死するのは怪奇事件でしかなかったのだ。
ラリーが大分命を軽く見ているように見えるが、そもそもラリーが住民の名前を覚えず職業名で呼ぶのは、後任も含めて一人と認識しているからだ。何しろ名前以外何一つ違わないのだから。いや、たまにドロップアイテムくらいは違ったかもしれない。
サティ「そもそもあなたたち! トピアも含めてよ!?
トピア「アッハイスミマセン」
トピアは深く反省した。確かに
トピアは早速行動に移した。
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そして翌朝。トピアを起こしに来たサティは困惑していた。
サティ「ねえトピア、なんか住民が増えてるんだけど?」
単に数が増えただけではない。見れば同じ顔の住民が複数歩き回っている。
トピア「はい、
トピアは褒めてと言わんばかりに胸を張って答えた。サティは自分の言葉がトピアにどう伝わったのかを理解して頭を抱えた。
お説教によってトピアが理解した反省点は、命の冗長性が足りないので気軽に消費出来ないというところである。言われてみればこの不完全なシームレスワールドβでは復活出来ないという事態もあり得ないことではない。つまり解決策は当然その在庫を増やすことであった。モンスターだろうが人間だろうが関係なくクローニングしてしまう交配所Sが大活躍したわけである。
反省する方向性は完全に間違っていたが、理屈的には合っているのが面倒なところだ。
そもそも「限られた住民の命」の「限られた」は「命」ではなく「住民」の方にかかる修飾語であり、たとえ復活するとしても毎日顔を合わせるような連中を気軽に消費するなという意味だったのだが、今更言っても仕方が無い。サティはトピアに説教することを諦め、紛らわしいので同じ顔の住民は一人ずつにして後は予備として仕舞っておくように命じた。
なおアヌビス神もこの騒動で増やされたことでトピアのインベントリに常駐しなくてよい余剰の分体が誕生し、その分体はトピアに献上されたアヌビス神殿出張所こと地下集合住宅1階の自室で自由を謳歌していた。
勝者、アヌビス神ッ!
投稿時間が2巡したので次回は明日00時01分投稿予定です。