【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

51 / 387
 本日2話目です。読み飛ばしにご注意下さい。

 [2025/12/17]加筆・修正しました。時間経過部分に仕切りを追加しました。


051. それがしはGSOの探鉱者(プロスペクター)、テクス・ペテラロードでござる

 西海岸に転移して仮拠点設営後に一直線に東へと向かったラリー。その行く手に目的の場所が見え始めた。ブロック構造の兵器を使っている西軍の陣地だ。

 陣地は東側にタワー型のミサイルタレットを複数配置してそれより西側に幾つかの工場やタワー型太陽光発電所を置いてある形だった。

 その発電所に横付けしている戦闘指揮車らしきものにラリーは丸腰で接近する。まずは不利に陥っている西軍に話をもちかけてみるつもりで、最初から敵対行動をされては面倒だからだ。

 ところがその西軍は最初からラリーに砲門を向けた。

 

ラリー「おーい西の司令官さんよ、こっちは丸腰だぜ? そんなに警戒しなくてもいいだろう?」

 

 重ねて敵意の無さを示すため、ラリーは一応両手を挙げた。しかし返ってきた言葉は辛辣であった。

 

西軍司令官≪怪しい奴め! 死にたくなければ早々に立ち去るでござる!≫

 

 時代がかった口調だがスピーカー越しの声は高く、女か子供のようであった。

 警戒中だからか、姿を見せる気は無いようだ。

 

ラリー「ハッハー、心外だな! 俺のどこが怪しいって言うんだサムライ?」

 

西軍司令官≪何を当たり前のことを。そんな目玉の化け物を引き連れた奴が怪しくなかったら一体誰を疑えというのでござるか!?≫

 

 原因は出しっぱなしの浮いて光る目玉触手、怪しげな目玉(Suspicious Looking Eye)であった。慣れすぎて誰も言及しなくなっていたが、ペットにクトゥルフを連れているような奴は怪しいとしか言いようが無いし、そもそも名前にすら「怪しげな(Suspicious Looking)」と入っているのだから反論の余地が無い。

 なるほどと頷いて相手の主張の正当性を認めたラリーは光源ペットをそっと妖精のプリンセス(Fairy Princess)に入れ替えた。こちらは怪しげな目玉(Suspicious Looking Eye)と同じ明るさではあるものの鉱石探知能力が無いので普段使っていないが、その名の通り可愛い妖精さんなので見た目に問題は無い。また、耳を羽ばたかせて飛ぶ通常ペット枠のフェネックギツネ(Fennec Fox)の方も若干怪しいが、怪しげな目玉に比べれば大した問題ではない。

 

ラリー「よし、これで問題は無いな!」

 

西軍司令官≪今更無かったことにできるかァ!?≫

 

 残念ながら当然の反応である。

 

ラリー「オイオイ注文が多いぜサムライ。それより今東の方と武力衝突して困ってんだろ? これでも仲裁に来たんだぜ?」

 

西軍司令官≪仲裁? もしや東の騎士かぶれと面識でも?≫

 

 西が古風な武士かぶれだと思ったら東は騎士かぶれらしい。なるほど相性が悪そうだ。

 

ラリー「いや無いが」

 

西軍司令官≪はあー……全く話にならんでござるよ。怪しい化け物を連れているとはいえ、生身の人間一人に一体何が出来るのでござる? それがしが誇るTech軍団でも大苦戦中なのでござるぞ?≫

 

ラリー「いやいや、やってみねえと分からん物だぜ? とりあえず俺らとしてもお前さんに退場されると困る……お前さんじゃ呼びにくいな。俺は大地の冒険者(テラリアン)のラリー・テアリジックだ。そっちは?」

 

西軍司令官≪テラリアン? よく分からんでござるが、それがしはGSOの探鉱者(プロスペクター)、テクス・ペテラロードでござる≫

 

ラリー「おう、ありがとうなテクス。んでそのGSOってのは企業か何かか?」

 

西軍司令官→テクス≪は? まさかGSOを知らんのでござるか? 銀河調査機関(Galactic Survey Organization)略してGSOでござるよ?≫

 

ラリー「すまんが全く知らねえ。そんで相手側の正体も知らんだろ?」

 

テクス≪……そういえば名のありそうな軍勢なのにあんなの見たことがないでござるな。一体どこから出てきたでござるか、あのTech規格の10倍ほどでかいブロックは≫

 

 ラリーの指摘にテクスも納得するところがあったようで、状況について考え込む様子を見せた。つまりまともな対話が可能だと判断したラリーは、すかさず質問を投げかけた。

 

ラリー「んで、喧嘩の原因は何なんだ?」

 

テクス≪軌道降下中に貰い事故をしたでござるよ。それで文句を言ったら問答無用で撃たれたでござる≫

 

ラリー「お前もかよ」

 

 明らかに聞き覚えのあるアクシデントに、ラリーは反射的にツッコミを入れた。

 

テクス≪もしや、そこもとも経験が?≫

 

ラリー「いや、俺の仲間の一人が丁度ここに降下中にな。って話し込んでる場合じゃなかったな。こっから東に通話できねえか?」

 

テクス≪無理でござるな。通信ではうんともすんとも反応がないでござる。外部音声には砲弾や光線が返ってきたゆえ、一応聞こえてはいる筈でござる≫

 

ラリー「そんじゃしゃーねえ、直接行ってくるぜ」

 

 やはり接近する必要があると判断したラリーは、高度を上げつつ東の陣地を見据えた。

 

テクス≪止めはせぬが、状況を悪化させるのだけは勘弁するでござるよ?≫

 

ラリー「最悪でも援軍が来るまでの時間は稼ぐぜ。()()来ると思うから宜しくな」

 

テクス≪援軍?≫

 

 その問いを置き去りにして、ラリーはセレスチャルスターボード(Celestial Starboard)の全速力で東の方へ飛んでいった。

 

テクス≪面妖な。いや、ともあれそれがしも準備を整えねば≫

 

 

◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■

 

 

 東に向かったラリーは東軍の前1kmほどから減速し、700mほどを切ったところで東軍最大サイズのタレットが自身の方を向き始めたのでそこで空中停止した。

 

ラリー「警戒距離はこんくらいか」

 

 ラリーは息を吸い込み、そこから東軍に向かって大声で呼びかけた。

 

ラリー「俺は大地の冒険者(テラリアン)のラリー・テアリジック! この諍いの仲裁に来た! 東の司令官に返答を求む!」

 

 距離があるので声が届くまで待つこと数秒。反応はあった。

 

東軍司令官≪……退去せよ。生身の人間をいたぶる趣味は無い≫

 

 東軍司令官は話を聞くつもりが無さそうな高圧的な態度だが、声からしてこちらも成人男性ではなさそうだ。

 

ラリー「こっちは話を聞けと言ってるだけなんだがな?」

 

 そう応答してからものの2秒。東軍最大サイズの長辺40m級タレットが見るからに剣呑な光を湛えてエネルギーチャージを始めた。

 

東軍司令官≪我が騎士道を阻む者に傾ける耳など無い≫

 

 言い終わるとともにタレットが発砲した。膨大な量の光芒がラリーに迫る。しかし予備動作が見え見えだったので、ラリーは射線を読んでセレスチャルスターボード(Celestial Starboard)の水平最大加速でもって発砲前にこれを回避した。

 

ラリー「なるほどこれが問答無用って奴か。面白え、やぁってやるぜ!」

 

 ラリーは角錐状の透明結晶を取り出し、前に掲げた。それはラリーの手から離れて浮遊し、頂点を前に向けて回転し始めた。

 

ラリー「ラストプリズム(Last Prism)照射ァ!」

 

 角錐結晶から6本の細い光線が生じると、それが収束して正面へと照射する太い純白の光線を形成する。

 ラストプリズム(Last Prism)とはゼニス(Zenith)には及ばないがDPSで約20,000というかなりの威力を誇る魔法武器で、しかも射程が非常に長くあらゆる()を無限に貫通していく特性がある。ラリーの世界ではそこまで遠くに敵が出現することが無かったので最大射程は不明だったのだが、地獄探索の余り時間でトピアと一緒に実験してみると、どうやら光がまっすぐ届きにくい地獄の環境ですら軽く1マイルほどは届くようであった。

 ただしラストプリズム(Last Prism)には発動から終了まで継続的にマナが減っていく上に燃費が異様に悪いという問題がある。特に収束状態では消費速度が何故か拡散状態の6倍になって1秒につき72マナも消費するため光線が収束した直後にもうマナが切れてしまうのだが、これはマナクローク(Mana Cloak)と小さなマナポーションで解決している。

 マナクローク(Mana Cloak)はその素材となったマナフラワー(Mana Flower)同様にマナ消費を8%削減する上にマナの減少に応じてインベントリに入っているマナポーション類を自動的に使用する効果があるアクセサリで、ラストプリズム(Last Prism)を本格的に使おうとするならば半ば必須の装備である。

 そして通常はマナポーションを使うたびにマナ酔い(Mana Sickness)デバフが積み重なって最悪威力が半減してしまうのだが、これを解決しているのがデバフがつかないクラフトピア産の小さなマナポーションである。マナクローク(Mana Cloak)装備のラストプリズム(Last Prism)のマナ消費が秒間72×0.92=66.24に対し小さなマナポーションは1つにつき80マナ回復でかつクールダウンが1秒なのでこの消費を継続的に補うことが出来る。しかもこれがラリーのインベントリには1枠9,999個も入る。1本につき80/66.24=1.21秒、1枠9,999本で12,076秒=3.35時間もの間撃ち続けることが出来るのだ。今回の持ち込みは昨晩からの8時間で製造出来た9,600本だが、やはり照射可能時間は軽く3時間を超えている。

 何故ハイマナポーションでないのかと言えば、1枠に10倍保持出来て1本当たりの効果がハイマナポーションの1/4.375にとどまる小さなマナポーションの方がインベントリ1枠のマナ容量としては2.285倍優れており、しかも1本当たりに要求される材料がハイマナポーションの1/20で済むためマナ回復量/材料でも4.57倍優れるのだ。なのでラストプリズム(Last Prism)マナクローク(Mana Cloak)と小さなマナポーションの恐るべきシナジー効果を理解したトピアによって小さなマナポーション生産ラインが昨晩急遽追加建造されることになったわけである。

 この組み合わせにより、ラリーは敵の射程外から途切れることの無い魔導ビームを好きなだけぶっ放している。レーザーとしては白色光は位相が揃っていなくて威力が出なさそうであるが、魔導ビームなので細かいことは考えるだけ無駄だ。

 

 都合のいいことに、東軍で最大の射程を誇ると目される大型タレットでもその射程は700m程度でしかない。それより離れると一切撃ってくる様子が無いのだ。東軍は西軍が後退するたびに次のタレットを相手の近くに新しく設置するという行動をここまで繰り返していたことも併せて、ブラフでもなさそうだ。

 射程で勝り、相手が動かず、幾らでも撃ち続けられる、とここまで条件が揃えば一方的に撃滅出来そうに感じるが、実際の所そうは問屋が卸さなかった。




 東西両司令官の母国語はゲームのデフォルトに準じた英語なのですが、最初にラリーが日本語で呼びかけたためにつられて日本語(ゲームにおける選択可能言語)で話しています。

 以降当面13時01分に投稿予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。