[2025/12/17]加筆・修正しました。
東軍と開戦して数分。ラリーは異常事態に直面していた。
ラリー「全然効いてねえ……いや、高速で修復してるのか?」
問題の大型タレットめがけて
テクス≪あれはリペアフィールドでござるよ≫
ラリー「おう、見に来てたのか」
ラリーが声の方に振り向くと、そこには西軍司令官のテクスが乗っていると思われる車両が来ていた。
その車両は階段状に4連装砲塔を20基ほど並べて物々しく武装した、いかにも急造で前面火力だけを追求しましたと言わんばかりの代物であり、その表面は複数の緑の球体フィールドや青の多面体フィールドに覆われていた。
テクス≪多分あの緑色に光ってる施設がリペアフィールドの発生器でござるな。そこもとが斯様なアウトレンジ武器を持っていたのは驚きでござるが、あの長射程且つ異様に頑丈なタレットをあの速度で修復されてはそれがしにも如何ともしがたいでござる≫
そう言うからにはテクスの車両の緑のフィールドもリペアフィールドなのだろう。テクスが言う東側のリペアフィールドを確認しようとラリーがまた前を向くと、今度は東軍司令官が動かしていると見られる航空機が防壁あたりまで出てきていた。明らかに魔導ビームが届く距離まで出てくるとは、こちらの攻撃力を脅威と見ていないのか、或いはあれには乗っていないのか。多分両方だろう。
東軍司令官≪どうした矮小なる者よ、白旗でも振りに来たのか? 我が前に跪く準備が出来たか? まあ許さんがな!≫
テクス≪ええー、降伏も許さないとかちょっと人としてどうかと思うでござるよ?≫
どうやら両者とも白旗は降伏の意志表示として通じるようだった。まあ降伏自体を認めないというのであれば意味は無いのだが。
東軍司令官≪フン、終焉の雨は間もなくだ。貴様らに出来るのはもはやさえずるだけと知るがいい≫
ラリー「いやまあ、そうでもねえんだが」
ラリーが言い放つと同時に、問題の巨大タレットが動作を停止した。停電である。
東軍司令官≪は!?≫
ラリー「いや前線の防備は堅いんだがその後ろの電力網は案外無防備で冗長性も無さそうだったんでな」
折角敵を貫通するのだから複数の敵を狙わないわけがない。大型タレットそのものに攻撃が通用しそうにないと考えたラリーは大型タレットにプリズムを向けながら同時にその向こうの電力供給ラインを攻撃していたのだ。科学の設備は電源喪失に弱い。これはトリオ工場長が作ろうとしている防衛ラインの概要を聞いた際に学んだことだ。
この機会を活かしてラリーは防衛ラインを超えていこうとする。しかし250mほどまで接近したところで今度は実弾の雨がラリーに襲い掛かった。
ラリー「電源無しでも動くのかよ!」
東軍司令官≪フハハ馬鹿め侮ったな! 冗長性だと? 当然確保してあるわ!≫
見れば40m級の次に大きい30m級のタレットがラリーに大量の砲弾を打ち上げていた。射程の有利を取るために最低限の数だけ設置されている40m級と違い、こちらは10機単位で設置してあり、数が多い。
実弾だからレーザー砲やプラズマ砲のような大電力が要らないのはともかく、電源無しでどうやって砲塔が動いているのかは不明である。太陽光発電か何かだろうか?
ラリーは知らないが、実はトリオ工場長の実弾ガンタレットも電源無しで動く。やはり動作原理は不明である。
ラリー「ふーむ、まあいっか」
ラリーは落ち着いて射程外に逃れてから、本拠地らしき施設を狙い撃つことにした。高度を上げて迂回することも考えたが、既にここからなら十分届くのだ。
東軍司令官≪ばっ、やめろォ! 貴様ズタズタにされたいか!?≫
東軍司令官が操縦しているらしき航空機が猛スピードで前に出て誘導弾を発射するが、ラリーはそれを機敏に回避しながら本拠地施設への攻撃を続け、ついでに時折その司令官機を射線に巻き込んでみる。戦闘用ではないのか、他の設備よりはダメージが入る感触があった。しかし機体を前に出してまで本拠地施設を守ろうとするあたり、やはりあれに本人が乗っていない可能性が高まった。
暫くそうしていると、機体ダメージが積み重なって多少冷静になったのか、司令官機が陣地へと引き上げていった。そして追撃しようとするラリーを遮るように、防壁の向こうからとんでもないものが出てきた。
東軍の防壁には敢えて1箇所だけ隙間が空けられている。タレットの配置からして敵を誘い込んで撃滅するための殺し間の類いかと思っていたが、それ以外にも理由があったようだ。
ラリー「オイオイ何だこりゃあ……」
テクス≪正気でござるか……?≫
東軍司令官≪畏れよ! 跪け! これこそが我が
防壁の隙間から出てきたそれは、タレットや防壁のサイズを大幅に超える巨大な人型機動兵器である。全幅およそ60m、全高は150mほどもある。防壁の隙間と言うが、実際には防壁の高さは膝以下で、防壁が途切れた部分にはその人型機動兵器が歩いて通るための足の踏み場があるという状態であった。
前線に足を踏み入れた陸戦最終兵器レイン1号機は、ラリーに接近しつつ激しい火線を浴びせた。秒間3.33発の発射数を誇る大口径実弾速射砲、それが片腕につき一門の合計二門装備されていたのだ。加えて2号機以下のレインが現在生産中なのでまだ増える見込みだ。
ラリー「弾速はやっ! 迂闊に近寄れねえな! しかも回復してねえのに攻撃が効いてねえ! どういうことなんだテクス!?」
テクス≪あれは多分単純に凄まじく頑丈なだけでござるよ! だが射程があの程度で回復もしないのならば!≫
テクスが指揮官機に満載したクアッドレールガン×20を怒濤の勢いで連射し始めた。ノーロックならば400m届く上に1発あたりの攻撃力もDPSも高いかなり強力な武器だ。が、それでもまだ攻撃力が足りていないのか、発射した砲弾が尽く弾かれ碌なダメージが入っていない。僅かに装甲が傷ついたように見えるが、それだけだ。
テクス≪これで効かないってどういうことでござるか!?≫
東軍司令官≪フハハハ、メイン盾たる
テクス≪盾なのか鎧なのかどっちでござる!?≫
そしてレインは固定砲台ではないので追いかけてくる。巨体なので動きが鈍く見えるが、実際計測してみると94.32km/hで歩き回るレインから二人は逃げ回る羽目になった。この隙に東軍司令官は電力を復旧し、本拠地施設の隣に修復施設を建設して対策を万全にしてしまった。正直ふりだしに戻ったよりも状況が良くない。ラリーはまだしも、テクスが急ごしらえで用意してきたらしき火力特化機体の機動性があまり良くないのも問題だ。
そう言えばそこそこの時間戦っているが、ポータルの横に起動時間を待たなくて良い
・まず
・次にコアベースに
・更に転移装置として
つまり普通にポータルを設置しただけと見なして起動までの20分を待っている可能性が高いのだ。ついでに言うと他の面子の移動速度は
ラリー「これはやっちまったかァ?」
東軍司令官≪有頂天に達した我が怒りは暫く収まることを知らぬと言う! つまり貴様らは深い悲しみに包まれることになる≫
東軍司令官が陶酔気味に訳の分からないことを言っているが、すぐに援軍が見込めないのならばせめて機動戦力を引き付けておくか、それとも一度撤退するべきか、とラリーが検討し始めたところで、状況に変化が生じた。西の彼方から迸った橙色の光条がレインを穿ち、その耐久が目に見えて減り始めたのだ。
西の方を振り返れば地平線から迫り来る若干気持ち悪い八本脚のシルエット。そしてその上に仁王立ちする金髪碧眼の少女。
トピア「ドーモ、ブロンティスト=サン。トピア・ポケクラフです。想像を絶する悲しみに包まれるのはオヌシの方だ!」
ラリー「思ったよりは早かったな。助かるぜ」
トピアが合掌してそう宣言する間にもスパイダートロンが前進しながら17連装レーザーの全力斉射を続ける。それが1km以上離れたレインに突き刺さり、勢いよく耐久を削り続けている。何しろ以前の15m圏内と同じ威力ならば252,144DPSになる攻撃で、一点集中ならば数秒で
トリオ「がはは、新型レーザーはしっかり機能しておるようじゃの!」
このスパイダートロンはただのスパイダートロンではない。スパイダートロン
まず全体が黒く、その表面が星のように輝いている。すなわちガラクサイトの装甲である。内部フレームもガラクサイトであり、頑強さと移動速度が大幅に向上した。
更に射程1kmを超える新型レーザー。昨晩トピアがワールドLv6に達したことで製造可能になったダイヤモンドのインゴットから削り出したダイヤモンドレンズ、そして焦点制御システムを搭載しているのだ。
まだまだ改良すべき点はあるが、スパイダートロンは既にこれだけの戦力として仕上がっていた。
東軍司令官≪ちっ、レイン1号機! 一旦退いて回復に努めよ! ポリ各機は支援を!≫
ラリー「させるかよ!」
東軍司令官がレイン1号機に後退指示を出すと、そのレインに小型支援航空機らしきポリが寄ってくる。どうやら修理を施すつもりと見たラリーは、妨害のために貫通魔導ビームで複数のポリを同時攻撃し始めた。やはりこちらの方にはかなりダメージが入る手応えがある。
そうしている間にトピアはスパイダートロンを飛び降り、防壁へと走り始める。確かに防壁には一箇所だけ隙間が空いており、一見そこから出入り出来るように見える。だが大小全てのタレットは復旧済であり、最大の火力がそこに集中するようになっている。
東軍司令官≪何だ、自殺志願者か?≫
そして想定通りに無慈悲な砲撃が射程内に入ったトピアに降り注ぐ。
東軍司令官≪やはりただのザコだったか。哀れな≫
テクス≪何しに来たんでござるか本当……に?≫
いや、砲撃が終わらない。終わらないということは攻撃対象が健在ということだ。砲撃で巻き上げられた粉塵の合間からトピアが
東軍司令官≪どういうことだ、さてはただの立体映像か?≫
生身の人間であれば直接命中していなくても余波だけで粉々になるほどの攻撃だったはずだ。
東軍司令官が戸惑っている間にトピアは施設の隙間に転がり込み、居合で目の前の施設をぶった切った。修復施設だ。
つまりトピアには
東軍司令官≪全軍迎撃! 奴を仕留めろ! レイン2号機も出ろ!≫
トピアの前後左右から弾丸やレーザーが迫る。当たらない。
トピアの眼前から大口径砲弾が迫る。これも当たらない。
レインがトピアを踏みつける。だがこれさえもぬるりと抜けてしまう。
トピア「Wasshoi!」
何もかもが障害にならず、トピアは一直線に突き進んで簡単に本部施設に突入。屋内の警備用設備など今更全く相手にもならず、東軍司令官と直接対面した。
それは銀色のストレートロングヘアに浅黒い肌、長い耳、そして豊満な胸。いわゆるダークエルフの女であるように見えた。頭に制帽を乗せて白基調の軍服のような装いに身を包んだ東軍司令官は覿面に狼狽えていた。
東軍司令官「何だ? 何なんだ貴様は!? まさか伝説に聞くニンジャなのか!?」
トピア「そうだと言ったら?」
東軍司令官「汚い! さすがニンジャ汚い! あまりにも卑怯すぎるでしょう!?」
トピア「
東軍司令官「あーいや待て! そうだ我が一騎討ちで勝負してやろう! 光栄に思え、本来
東軍司令官こと七人目の
なおニンジャであることを否定しなかったトピアの発言は全くの嘘でもない。礼儀作法が忍殺的なそれであることだけでなく、今回の決め手となったのはその名も『忍道』Lv.6(Max)だったのだ。
回避アクションを実行すると普通はスタミナが減るので連続した回避アクションの回数には限りがあるはずだが、忍道の無敵時間中に追加で小さなスタミナポーションを飲むことで、その在庫が続く限り無敵時間が続くというシンプルな理不尽をトピアは相手に押しつけていた。そして今回トピアが持ってきた小さなスタミナポーションは、当然今回の戦闘中に使い切ってしまえるような量ではない。
東軍側には防壁があり、その一部に殺し間としての隙間が空けてあったのだが、むしろ自身の攻撃や敵の攻撃を利用して扉や壁をぶち破るという動作を挟まずに前転したまま通行出来るので好都合ですらあった。つまり跳躍しなければ乗り越えられない程度の頑丈な壁で陣地を囲うだけで今回のトピアは止められたわけだが、そんなもの知らなければ分かるはずもないし、FICSITのビルドガンに比べ東軍の建設速度は大分遅いので、最初の防壁を突破した後に建設が間に合ったかも微妙である。
要するにトピア自身も反則的と評した通り、正々堂々という形ではないので卑怯と言えば卑怯かもしれないが、だからどうしたという話だ。相手が卑怯だから負けましたではBETAなんかと戦っていけないのだ。
レインの「アーマー14」はエネルギー基準で桁を合わせるとクラフトピア、テラリア、コアキーパー、テラテック基準で1ヒットにつき14,000ダメージ減らすという御無体な数値です。メイン盾が伊達じゃなさすぎる。
なおFactorioのレーザーには原作から物理防御力無効化性能がありますが、だからと言って装甲を完全に無視するのは科学側の描写的にどうかと思うので、「一点集中連続攻撃で熱量を蓄積する→蓄積熱量をまとめて一撃と見なせるので時間をかければ装甲を突破出来る」と解釈しました。