【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 第3章開始です。とはいえお互い何が出来るのか分からないと計画の立てようが無いため、暫く情報共有のための会議が続きます。この話のタイトルからしてどれだけ常識が断絶しているかという。

 [2023/8/19]投稿前の最終修正で投稿間際まであれこれこねくり回していたら既に予約していた投稿時間を超過しました。13時2分以降で実弾運用に関する技術解説の内容が変わっています。
 [2025/12/22]タイトルを変更しました。加筆・修正しました。


第3章:匠 VS 常識の壁
056. Techに残弾の概念は無いでござるよ


 匠衆(マイスターズ)の結成とトピアの代表就任がなされ、次は例によって新人二人に対する利用資源調査である。

 【資源名/量産性/この星で発見済みかどうか/用途と特徴】の書式にテクスとマインが記入したものを回収し、壁面ディスプレイに映す。

 テクスの記入内容は以下のようになっていた。

 

・木材/自然物/発見済/普通の木材。フィブロンの塊に加工して繊維として利用する

・ゴム樹脂/自然物/発見済/樹木を伐採した際に副次的に採取出来る。ゴム煉瓦に加工して利用する

・ルクサイト/散在/発見済/光る

・メタリウム/散在/発見済/金属ブロックの基礎原料

・チタナイト/散在/発見済/非常に高密度の高硬度金属。耐摩耗素材

・カーバイト/鉱脈/未発見/爆発物の原料

・ローダイト/鉱脈/未発見/強酸性、電気関連に利用

・オレイト樹脂/鉱脈/未発見/樹脂時点では燃料に、煉瓦としては軽量ブロックに利用

・イグナイト/鉱脈/未発見/高温で高周波の熱エネルギーを放出。エネルギー兵器に利用。合金は耐熱素材

・エルダイト/鉱脈/発見済/強力な感覚エネルギーを放出。強力なセンサー、AIブロックに利用

・セレスタイト/鉱脈/未発見/強力な物理エネルギーを放出。反重力システムやエネルギー耐性素材、軽量合金に利用

 

トリオ「木材とゴム以外は見事に聞き覚えの無い素材ばかりじゃの」

 

サティ「地球出身文明なのよね?」

 

テクス「地球に無い資源だからこそ付加価値が高いのでござるよ?」

 

サティ「まあそうかもしれないけど、私の世界ではそもそも地球以外にも無かったわね」

 

スコア「このチタナイトというのはチタニウムとは違うのか?」

 

テクス「チタンの同()体にあたる上位素材でござるね」

 

 聞き覚えの無い単語に(マイスター)達が疑問符を浮かべ、サティが代表してそれを尋ねる。

 

サティ「その同元体というのは? 同素体や同位体とは違うのよね?」

 

テクス「従来の元素表で言うと間違いなくチタンの位置にあって中性子と陽子の数も一致しているのに何故か違う特性を示す元素のことでござるよ。殆どの場合結合力が強いので元の元素の上位として扱われるでござる。そもそも新元素と言っても元素表にもう隙間なんか無いでござる」

 

トピア「そういうのがあるんですねー。もしかしてラリーさんの所のアダマンタイト並に強いチタニウムもその一種なんでしょうか?」

 

ラリー「かもしれねえな」

 

トリオ「このメタリウムというのは何じゃ? 何らかの金属のようじゃが」

 

テクス「それは鉄の同元体でござるね」

 

 同元体という概念が出てきたことで、何かが繋がった気がしたトピアが思いついたことを口にする。

 

トピア「もしかしてなんですけど、()()()()()()もあります?」

 

テクス「あるにはあったはずでござるね。確か用途は特に見つかってないでござるが、一部では()()と呼ばれていたような?」

 

トピア「……見事な一致を見ましたね」

 

 この符合にトピアとサティ、トリオは顔を見合わせた。

 

サティ「ということは他の同元体もエクセリオンが作用したもの、ということ?」

 

トリオ「かもしれんの」

 

テクス「エクセリオン? 何でござるか?」

 

 今度は逆にテクスが聞き覚えの無い言葉に首を傾げる番になった。

 

サティ「酸素と結合してマナを構成している素粒子のことよ。ともかく、あとで特性を調べてみたいから各素材少量ずつのサンプルが欲しいのだけれど」

 

テクス「ああ、そう言えばそんな説もあったでござるな……在庫は十分にあるゆえ、サンプルの提供は構わんでござるよ」

 

サティ「助かるわ」

 

 サティが頷き、話が一段落したとみたラリーからの質問が飛ぶ。

 

ラリー「ルクサイトって言うのはルミナイト(Luminite)とは違うんだよな? 光るだけで素材として強くはないのか?」

 

テクス「ルクサイトには主材として使えるような強度は無いでござるね。発光部品の他、メタリウムやチタナイトとの合金にして構造材に使うことはあるでござるが」

 

ラリー「そっか」

 

 もしルミナイト(Luminite)が気軽に採掘出来るのなら儲けものであったが、そうは問屋が卸さなかったようだ。

 

トピア「セレスタイトが反重力に使えると書いてありますが、もしかして反重力エンジンが実用化されてるんですか?」

 

テクス「一応実用化はされてるのでござるが、一度回転モーメントがかかると止まらなくなるという欠点があって制御が非常に困難故、あまりお勧め出来ないでござるよ」

 

トピア「うーん、残念!」

 

サティ「高度な技術ではあるんでしょうけどねえ」

 

 高度な科学技術も必ずしも使い勝手が良いとは限らないようだ。

 

スコア「イグナイトやエルダイトの利用でレーザー砲の改良が進みそうな気配だが、逆にこんな未知の素材まで活用しているのに何でテクスの所はあんなに射程が微妙で弾速が遅いんだ?」

 

テクス「その理由には目的上の側面と原理的な側面があるでござるな。前者はそもそもが探鉱者(プロスペクター)用の採掘機械であるTechに自衛用の武器がついているだけで本格的な戦闘用のものではないことと、同業者で争うにしても本来採掘に集中すべき探鉱者(プロスペクター)が資源やエネルギー、それから人命を無駄にするのも不毛ゆえ、武装のインフレが抑制されているのでござるよ。ロックオン距離が短いのもこちらが理由でござるな。作業中に狙撃などされてはおちおち仕事も出来ぬ故」

 

トピア「レーザーが遅いのもですか?」

 

 トピアが言うように、Techのレーザーは光速どころかそこらの実弾よりも弾速が遅いのだ。実現する意味がまるで無さそうに見えるが、技術的にはすごい。

 

テクス「然り。弾速を抑えると代わりに殆ど電力を食わなくなるので便利でござるよ」

 

トリオ「まあ身内の殴り合いに使うならその方がええかもしれんの。今回はBETAに効かんようでは意味が無いんじゃが」

 

テクス「とはいえ強大な外敵と戦う為の軍事兵器も技術的根幹は同じと聞くでござるよ」

 

トリオ「つまり技術だけ吸収出来ればプラス方向にも使えるということかの?」

 

テクス「然様でござるな。ああ、ミサイルやロケットランチャーは今使ってるものが改造ベースに使えると思うでござるよ。あとはクアッドレールガンもお勧めでござるね」

 

ラリー「そういえばあれ、かなりの勢いで連射してたがどうなってるんだ? 弾丸はインベントリから補給してるのか?」

 

テクス「Techに残弾の概念は無いでござるよ」

 

トピア「は?」

 

 トピアが素っ頓狂な声を上げて固まったが、トピアだけでなくテクス以外の殆どの(マイスター)は困惑していた。

 

サティ「さらっととんでもない技術が出てきたわね。どういう仕組みなの?」

 

テクス「あれは制限時間付きで質量物質として振る舞う仮想実体でござるよ」

 

サティ「仮想実体?」

 

テクス「知っての通り質量物質の創造には通常膨大なエネルギーを食うのでござるが、存在時間に制限のある仮想実体の創造にはそこまでのエネルギーを食わぬし、消失時に還元されるエネルギーをリサイクルすることによって実質ほぼ0コストで運用出来るのでござる」

 

スコア「再現性のある技術なのだろうが、まるで魔法のようだな」

 

トピア「うーん、リバースコンバートと同等と考えればまだ超科学の範疇ですかね」

 

サティ「何それ、また何かのSF?」

 

トピア「はい、15m級人型戦闘ロボットであるバーチャロイドをデータから実体に変換する技術ですね。一説にはこれにより実弾を無限に撃てたとも言われています」

 

サティ「トピアそういうの好きねえ」

 

トピア「それはもう」

 

 なおバーチャロイドの一種であるベルグドルはゲームシステム上では無限に弾を撃てるのだが、実際にリバースコンバートした量産型バーチャロイドのベルグドルは普通に弾切れしていたらしく、転倒のしやすさと合わせて非常に評価が低かったという。

 しかしバーチャロイドには一般量産機とは別に騎士団採用で型番がVRから始まる高級機というものが存在し、これが隔絶した高性能を誇るので、もしかしたら弾を無限に撃てるベルグドルも存在していた可能性がある。そのあたり公式設定ではどちらとも言われていないので、つまりはシュレーディンガーのベルグドルである。

 

テクス「話を戻すでござるよ? この仮想実体は存在時間が短いほどローコストなのでござるが、つまりコストを削減すると射程が短くなるのでござる。これが先ほど言った原理的側面でござるな。軍事用になるともっと長射程で運用しているようでござるが、Tech用はどうせロック距離が短いので短距離で消えるようにして時間当たりの発射数を稼ぐ方向になっているのでござる」

 

トリオ「実弾がそれだけ使い回せるなら、応用して誘導魚雷を作れば海峡の防衛にも威力を発揮しそうじゃの」

 

トピア「ああ、水中はレーザーで止めようがないのでどうしようかと考えてた部分ですね?」

 

サティ「あれは頭の痛い部分だったものね」

 

トピア「というか、威力と並べる量によっては水中だけと言わず地上でも飽和攻撃で接近阻止出来そうじゃないですか?」

 

トリオ「一考の余地はあるが、まず現在の仕様で量産性はどんな感じなんじゃ?」

 

テクス「ふむ? ブロックは()()()()()各企業のオンライン通販端末で買うものでござるね」

 

トピア「もしかしてその通販端末は今オフラインなのでは?」

 

テクス「ご明察でござる」

 

マイン「使えんではないか!」

 

 マインがストレートに批難の声を上げたが、他の(マイスター)達も少なからず期待外れ感を醸し出していた。

 だがテクスは全く動じていなかった。

 

テクス「いやいや、落胆するのは早いでござるよ? それがし、自前で設計した万能ブロック製造工場も持っておる故に」

 

サティ「その工場は一体どこに?」

 

テクス「ライブラリに登録してある故、Techとしていつでも再構築できるでござるよ。いやはや、ブロックなんぞエルダイトを売ってその金で買った方が早いと言われて早数年、意外なところで役に立つものでござるなあ」

 

 確かにこれまで全てのブロックがオンライン通販端末で購入出来ていたが、実際にはブロックそのものを買わず材料を購入して組み立てるとおよそ半額、更に材料は購入価格の1/3でしか売れないため、採掘した材料を売らずに取っておけば最終的に1/6近くまでコストダウン出来るので、言うほど無駄というわけではない。そのためにいつ同業者に襲撃されるかも分からない環境で何日もの手間をかけて万能ブロック製造工場を設計するかと言われれば否と答える者が大半であるが、生憎普通ではないから(マイスター)なのだ。

 

サティ「やるじゃないの」

 

トリオ「となると、実際作る場合の材料はどんなもんじゃ?」

 

テクス「Hawkeye 巡航ミサイルの構成材料がチタナイト合金1、燃料噴射機2、イオンパルス単電池1、サーモジェット1、シードAI 2でござるから、全部インゴット単位まで展開すると……ルクサイト1、チタナイト5、カーバイト2、ローダイト8、オレイト8、イグナイト1、エルダイト5,セレスタイト4で総資源量34でござるな」

 

サティ「そのインゴットのサイズは?」

 

テクス「多面体ゆえインゴットそのものの体積はよくわからんのでござるが、確か最大圧縮すると0.91125m3でござる」

 

サティ「0.360fr相当のようね。総資源量は12.24fr」

 

テクス「エフアール?」

 

サティ「FICSITのインゴット束を基準にした物資単位よ」

 

テクス「あー、なるほどそうやって合わせているのでござるか」

 

 既に物資単位のすり合わせが進んでいることにテクスは感心して深く頷いた。

 

トリオ「うちのレーザータレットに必要な総資源量が1.79frくらいじゃけえ、6.8倍くらいか。少々重いが、電力を食わずに無限に撃ち続けられるなら有りじゃな。素材の入手しやすさはどうじゃ?」

 

テクス「この中ではまとまった鉱脈が無いルクサイトとチタナイトの調達が一番苦労するでござるな。故にあまり大量には作れんでござるよ」

 

サティ「うーん、そう上手くはいかないってことね」

 

トリオ「フィブロンは木材量産で、ゴムは原油からの加工でどうにでもなるんじゃが、素材を研究するにもこの2つはどうするかの。他にもメタリウムも鉱脈が無いようじゃが」

 

トピア「あ、そうだ」

 

 新たな問題に頭を悩ませていたところでまたぞろ何か閃いた様子のトピアに(マイスター)達の視線が集まる。

 

サティ「何か思いついたのトピア?」

 

トピア「はい。アヌビス様ー、ミッション達成報酬でルクサイトやチタナイト、メタリウムの鉱脈って作れます?」

 

アヌビス神「XX(無論可能だ)」

 

トピア「ですってよ?」

 

サティ「なるほどその手があったわね」

 

トリオ「ほお、元々鉱脈が無い鉱石の鉱脈も作れるんじゃのう。便利じゃが益々使い道に悩んでしまうの。ダイヤの鉱脈なんかも出来れば欲しいところじゃが」

 

スコア「とするとその無限ミサイルランチャーの大量生産も視野に入ってくるな」

 

サティ「レーザーの一部を代替出来るだけでも必要電力が減って助かるわね」

 

テクス「その前にあの犬頭の御仁は何者でござる? どう見ても只者では無い雰囲気でござるが」

 

 今まで置物のように鎮座しており、誰も話しかけないのでスルーしていたのだが、話に加わってくるのならば正体不明のままでは困る。

 

トピア「うちの上司の下で中間管理職ですかね? をやってるアヌビス神です。ミッション達成報酬をくれたりレベルシステムを適用してくれたりと色々ありがたい神様なので是非覚えていって下さいね」

 

アヌビス神「XX, XX(うむ、我を頼るが良いぞ)」

 

テクス「ほほー、ありがたい神様なのでござるなあ」

 

マイン「ふん、精々役に立てよ」

 

サティ「ほらまたマインはまたそういう態度を取る」

 

ラリー「……なあ、もしかしてルミナイト(Luminite)も鉱脈を作れるのか?」

 

 マインがまたその態度で問題を起こしかけているところであるが、それはそれとして先ほど断念したルミナイト(Luminite)の量産が叶うのではと思いついたラリーの質問に対し、アヌビス神がしっかりと頷いた。

 

アヌビス神「XXX(現物があれば可能だ)」

 

ラリー「おおー、アヌビス神すげー!」

 

 ラリーはテンションを急上昇させて喜び、アヌビス神も神の威光を示せる美味しい出番に得意満面。WIN-WINとはこのことだ。

 

トピア「でもルミナイトの現物ってどうするんです? ピラーの出現位置の関係でムーンロードの討伐は現状出来るか不明なんですよね?」

 

ラリー「鉱脈で増やせるなら俺のソーラーフレアアーマー(Solar Flare Armor)きらめき(Shimmer)で一旦分解して、増やしてから作り直せばいいだろ?」

 

 ラリーは自分の鎧を指さして説明した。

 

トピア「なるほどその手がありましたか!」

 

 こういったとんちを効かせた解決法が大好きなトピアも大いに納得した。

 

テクス「ところで折角鉱脈を用意してもすぐに枯渇してしまう故、大して足しにはならんのでござらんか?」

 

マイン「ハッ、これだからザコは。無限ドリルも持っておらんとはな」

 

 その一言で注目を集めたマインがどや顔を披露する。だが残念ながら半永久採掘機械は名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の専売特許ではない。

 

トピア「意外とあるものなんですね半永久採鉱機?」

 

サティ「性能と消費電力が気になるところね」

 

 注目を集めつつマインの使用素材発表へと続くのであった。




 Techが何故実弾を無限に撃てるか、何故射程が短いのか、何故弾速が遅いのかなどの事情は100%でっち上げです。
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