【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2023/8/22]Mindustry関連電力の桁が1つずれていたため、当該部分の数字と話の流れを修正しました。また、どの程度の範囲を走査すれば油脈が足りる見込みであるかを具体的な数字にし、そのあたりの話の流れを修正しました。
 [2025/12/22]加筆・修正しました。時間経過部分に仕切りを追加しました。


058. 大陸全土を調べるとなるとタワーを1億回くらい建てる計算になってしまうけれど

サティ「インパクトリアクターは瞬発力という意味での発電力でもFICSIT基準では今ひとつなのだけれど、工場長に調べてもらったところ、消費資材効率はもっと酷いのよね。ちょっとこれを見て頂戴」

 

 サティはFICSIT製の石炭発電機に必要な物資とインパクトリアクター発電機に必要な物資の対比を壁面ディスプレイに出した。

 

サティ「まず1回に搬入する物資の量なんだけど、FICSITのコンベアが幅2mに対してネームレス・カンパニーのコンベアは10mもあって、この時点で単純に考えても5×5×5=125倍になりそうよね? 実際にはそれ以上で、インゴット単体で2,212倍、FICSIT側を1ダース分で計算しても184倍になったのよ。つまり1ネームレス・カンパニー物資単位=184fr。ここまではいいわね?」

 

 サティが見回すと全員理解してそうな表情だったので説明を続ける。

 

サティ「それで、FICSITの石炭発電機で使用するのは石炭1fr、リサイクルする水以外石炭だけだから、総物資も1frになるわ。そしてこの石炭1frが4秒使えるから、75MW×4秒=300MJの発電が出来るわけ。つまり発電エネルギー/主燃料=発電エネルギー/総物資=300MJ/frになるわ」

 

マイン「ふむ?」

 

サティ「これに対しネームレス・カンパニーのインパクトリアクターでは主燃料の石炭が184fr、総物資は1,405fr。これで作った爆発性化合物の持続時間が2.33秒だから、燃料一つあたりの発電量が63MW×2.33秒=147MJ。発電エネルギー/主燃料=796kJ/fr、発電エネルギー/総物資=104kJ/frになるわ」

 

スコア「これは酷い」

 

ラリー「わざわざ石炭を加工してこれなのか?」

 

テクス「もはや資源に対する冒涜でござるな」

 

マイン「ぐぬぬ」

 

 散々な言われようにマインが悔しげに表情を歪める。しかし主燃料で377倍、総物資で2,872倍もの資源効率差ともなれば、酷評されるのも仕方ないところである。

 

トピア「あれ、そうなると使う燃料が少ない工場長の石炭発電機の効率はどうなんです?」

 

サティ「いいところに気がついたわね。石炭一つで1.80MW×2.22=4.00MJ、これを使用物資0.01024frで割って、発電エネルギー/主燃料=発電エネルギー/総物資=391MJ/frになるわね」

 

トピア「実は一番高効率だったんですか!?」

 

トリオ「とはいえこれは環境対策が全く無い状態での比較じゃぞ。しっかり対策するとFICSIT製の方が効率は大分上になる見込みじゃ」

 

 トリオ工場長が使う大体の機材はFICSITの技術を取り入れてアップデートした結果、環境対策を施した上で消費電力と動作速度が据え置きとなっている。しかしこれは環境対策による消費電力増と技術力や素材による省電力性能向上が釣り合った結果で、元々FICSIT製より発電効率が高かった発電機関では発電性能も省電力性能もそう簡単に上がるわけもないので、結果として最終的な発電効率が悪化する見込みとなっていた。そしてどうせ電力は共通なのだから無理に自前の発電機を使わずにサティが整備する電力網をそのまま利用すればいいという判断で発電機関の改修は取りやめになっていた。

 

トピア「そう言えばそうでしたね」

 

サティ「参考までに、FICSITの原子力発電機で使用するウラン燃料棒一つを作るのに必要な材料は、主燃料のウランが41.67fr、リサイクルする水以外の総物資は374.83frになるわ。そしてこの燃料棒が5分=300秒使えるから、2,500MW×300秒=750,000MJの発電が出来るわけ。つまり発電エネルギー/主燃料=18.0GJ/fr、発電エネルギー/総物資=2.00GJ/frになるわ」

 

トピア「やはりFICSITの科学は世界一ですね!」

 

 しかしトピアに賞賛されたサティの表情は優れなかった。

 

サティ「これがそうでもないのよ。工場長の原子炉の場合、主燃料のウラン-238が0.0164fr、リサイクルする水以外の総物資は0.0266frになるわ。そしてこの燃料棒が200秒使えるから、40MW×200秒=8,000MJの発電が出来るわけ。つまり発電エネルギー/主燃料=488GJ/fr、発電エネルギー/総物資=300GJ/frになるの」

 

テクス「圧倒的でござるな」

 

サティ「ええ、環境対策した程度で総物資効率150倍の差は覆らないわ。物資量を測定してfr単位を制定してから初めて分かったことなんだけどね」

 

ラリー「じゃあ今後はその工場長のおっさんの最強発電機をメインにするのか?」

 

サティ「いえ、工場長は防衛網の研究に忙しいから、工場長に大量の発電施設の建設を任せるわけにはいかないわ。1基あたり40MWだから、2,500MWのFICSIT製原子炉と同じ電力を生み出すには設置する数が62.5倍になるわけだし。ああ、あと最低限の放射線対策も必要ね」

 

スコア「つまりどうするんだ?」

 

トピア「工場長の建設ロボットを貸してもらって代わりに建設するとか?」

 

サティ「運用法を詳しく知らない人が代わりに建てて稼働させて大丈夫だと思う? 仮にも原発なのよ?」

 

トピア「……安全性に問題がありそうですね」

 

 運用法を知りませんでしたで気軽に原発事故が起こっては、BETAと戦うどころではない大惨事である。

 

サティ「というわけで、まずはこの大陸の資源を調査して、油田を見つけ次第片っ端から希釈燃料発電所を建てていくわ」

 

マイン「待て、原油を片っ端から使われるとプラスタニウムの生産に支障が出るのだが?」

 

スコア「それ以前に火力発電だけで足りるのか? 前線だけでも80TW近く必要なんだよな?」

 

サティ「プラスタニウムに必要な分を含めても十分足りる見込みよ。まず前線の電力を補うには77.28TW、267並列40GW希釈燃料発電所が1,932棟必要な計算になるのは既存メンバーには既に述べた通りよ。40GW発電所だと中純度油脈が4つ必要だから、10GW相当の中純度油脈の数で数えると7,728箇所必要。数が多いように聞こえるかもしれないけれど、原子力発電所の複雑な燃料加工設備を放射線対策込みで各所に作るよりは、原油採掘所と火力発電所の比較的単純な設備を大量設置した方がまだ大分楽になる計算よ。ここまでは分かるわね?」

 

 サティが一同を見回すと皆理解した顔で頷いた。

 

サティ「この星の資源密度は正確には分からないけれど、私が既に扱っていた資源の範囲で、ここに似た資源傾向の惑星では油脈は中純度基準で3.67箇所/km2存在していたの。つまり同程度の密度と仮定した場合、油脈を7,728箇所見つけるには2,108km2探せばいいことになるわ。そしてこの大陸だけでも大雑把に見て5000万km2前後あるから、油脈密度が想定より4桁以上少なくない限り余るはずよ。ただ油脈は殆どの場合偏ってるから、集中してる地帯を探さないといけないのだけれど……」

 

ラリー「なるほどな。しかしそんな広範囲の原油をどうやって探すんだ? 資源スキャナーだけで探すのは無理だろ?」

 

サティ「そうね、流石に効率が悪いから、代わりにレーダー・タワーを設置すれば原油だけでなく半径500m以内の資源全てを走査してくれるわ。これを走査範囲の隙間が無いように敷き詰めていくと1基あたり0.5km2をカバー出来るから、4,215基で目標の2,108km2をくまなく資源走査できる形になるわね。まあ同じ手段で大陸全土を調べるとなるとタワーを1億回くらい建てる計算になってしまうけれど」

 

トピア「4千はまだしも1億となると流石にごり押ししかねる数ですねえ」

 

スコア「まあ足りるならすぐに大陸全土を調べる必要は無いのかもしれないが、頑張って4千基タワーを建てても原油が少ないハズレ地帯だったら目も当てられないな」

 

サティ「というわけで、新しく入ってきた科学側のお二人さん、もっといい方法があったら教えてくれないかしら? 勿論割のいい発電手段も大歓迎よ?」

 

 (マイスター)達の視線がテクスとマインに集中する。マインの方が自信ありげに勿体ぶっているので、仕方なくテクスが先に口を開いた。

 

テクス「いやあ、Techの資源探査機能はかなり貧弱ゆえ、正直そちらの資源スキャナーやタワーよりも頼りにならんと思うでござるよ。発電もエコに向いていて小規模ゆえ、こちらも役に立てるかは微妙でござる」

 

トリオ「駄目じゃったか」

 

サティ「マインの方は?」

 

マイン「フフフハハハ、ザコめ、ザコどもめ! 貴様らの資源探査能力は我が中隊(カンパニー)の足元にも及ばぬようだな!」

 

テクス「うわー、わざわざ勿体ぶった上に2回も言ったでござるよ?」

 

トピア「余程大事なことなんですかね?」

 

 内容からして到底重要とは思えないので、単に自慢と罵倒が好きなだけであろう。

 

マイン「まず我が中隊(カンパニー)の技術力を以てすれば、星の外からの観測だけでも存在する資源の種類くらいは把握出来る」

 

トリオ「おお、頼りになりそうじゃの」

 

マイン「まあ詳細な情報を得るには流石に現地に行く必要があるがな。ここからが本題だが、コアやコアユニットには距離は限られるが更に詳細な探査機能が付いている」

 

トピア「何やら名前が被りましたね?」

 

 トピアがマインとスコアを交互に見比べる。

 

スコア「……コアというのはそちらの本拠地施設か? コアユニットというのは?」

 

マイン「貴様らが言うところの指揮官機だ。現在設置しているコアは3段階目のコア:ニュークリアスだから、付随するコアユニットはガンマだな」

 

トリオ「探査範囲はどんな感じじゃ?」

 

マイン「コアで半径1,000km、コアユニットで半径10kmといったところだな。半径1,000km程度では星全体はカバー出来んから通常は隣のエリアに新しくコアを飛ばして拠点にするものだが、コアを飛ばすにも資源が必要だ。そうなるとこの星の資源密度が低くて資源集めに手間取るのが問題だな」

 

 マインがこれまで転戦してきた惑星は、密集した鉱脈地帯を大型ドリルでまとめて掘るような環境が多かったのだ。それに比べればこの星は資源密度が低いと言える。

 

サティ「コア一つで半径1,000km? それだけで314万km2になるわね。これはすごいわよ。今コアが走査できてる範囲が半分海で採掘不能だとしても目標面積を遥かに超えてるわ」

 

トリオ「30~40回飛ばせば大陸全域もカバー出来るの。タワーよりは大分現実的な数字じゃ」

 

テクス「まさかコア自体に強力な走査性能があったとは予想外でござるな」

 

サティ「ユニットの方でもタワーに比べるとかなり広いんだけど。それどのくらいの速度で移動出来るの?」

 

マイン「最大で943.2km/hだな。流石に最高速で飛び回りながらの探査では多少の粗が出るかもしれんが」

 

トピア「なんか突然ぶっちぎりナンバーワンのスピードマシンが出てきましたね?」

 

 これまでの最速がセレスチャルスターボード(Celestial Starboard)の133.576km/hだったのに対し、その7倍以上のスピードマシンが突然出てきた計算になる。

 

スコア「……まあ航空機だからな」

 

テクス「航空機だとしても侮れん速さでござるな」

 

 実際のところ、Techで作った航空機ならばセレスチャルスターボード(Celestial Starboard)の133.576km/hくらいは軽く越えられるのだが、既にコアユニットに負けているのでテクスは敢えて主張しないことにした。

 

ラリー「弾丸みてーな速さだとは思ってたが、思った以上だったな」

 

サティ「まあ時間の方が重要だから多少の取りこぼしは許容範囲よ。でも計算するとこれでも24時間稼働で110日かかる計算ね」

 

スコア「となるとコアを増やす方か」

 

トリオ「コアを新しく飛ばすにはどのくらい時間がかかる?」

 

マイン「従来のセルプロ型ならば1~2時間と言ったところだが、ここでは資源集めに1日くらいかかるかもしれんな。それで2つに増えたら2つ目の所でも採掘を始めればペースは倍に上がるぞ。必要な資源は銅、鉛、トリウム、シリコンだ」

 

サティ「トリウム……まあいいわ、2の5乗で32だから、つまり最短で5日くらいね」

 

 放射性物質であるトリウムの扱いがサティはやや気になったが、探査エリア拡大のペースが劇的なので一旦流すことにした。

 

トピア「あの、つかぬ事を伺いますけど低軌道ってどのくらいの高さでしたっけ?」

 

 そろそろ話が決まりそうなところでトピアが挙手して質問を始めた。

 

サティ「低軌道? 200kmから1,000kmくらいだけれど……あ、そういうこと?」

 

トリオ「なるほど、半径1,000kmを探査出来るコアの強力なスキャナーを搭載した低軌道衛星を打ち上げた方が早いかもしれんっちゅう話じゃな?」

 

テクス「探査装置は人工衛星に載るくらいのサイズなのでござるか?」

 

マイン「我もそこまでは知らん。大した容積は取っていなかったはずだが、コアユニットに載るサイズではないはずだ」

 

トピア「いえ、そもそもコアを隣のエリア、1,000km以上先まで飛ばす打ち上げ機能があるんですよね? そのまま低軌道に乗せられませんか?」

 

 その発想は無かった。会議室が暫し沈黙に満たされた。

 

サティ「無茶な発想だけれど……いえ、実現性はどうなのかしら? コアってどのくらい飛ばせるものなの?」

 

マイン「……惑星間加速器を使えば、重力圏を離脱させることは可能だが、衛星軌道に乗せるなどという話は聞いたことが無いぞ? そもそも惑星間加速器の建設コストはコアよりも重い上にコアのコストも別途必要だ」

 

トリオ「やり方次第でどうにかなりそうな気がせんでもないの。人工衛星として最低限の機能は持たせんといかんが、いっそ宇宙ステーションにでもしてみるか?」

 

テクス「しかし光線(レーザー)属種の射程が最低200kmなんでござるよね? 撃たれたらどうするのでござるか?」

 

トピア「まあまだいないと思いますし、本格的に開戦するまでは出現しないでしょう。開戦後に撃たれる様な場合は……」

 

サティ「場合は?」

 

 サティが先を促すと、トピアは満面の笑顔でプランを開陳した。

 

トピア「もう資源調査は終わってるでしょうから、思い切って使い捨てにしましょう! ついでにBETA領域をスキャンしてハイヴの構造まで分かれば安いものです!」

 

ラリー「あー、どうせ無人だからそういう使い方も出来るのか」

 

マイン「貴様ら、人の物だと思って無茶苦茶なことを言うんじゃない!」

 

 マインのツッコミをトピアは笑って受け流した。

 

 

◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■

 

 

 結局トピアの案はそのまま採用はされず、まずはユグドラシルのある大陸中にコアを配備して、それから可能ならばBETA領域の本格探査用に1基軌道上に打ち上げることが決まった。

 そのついでに大陸名がユグドラシル大陸に決定した。

 そしてコアの配置案を地図上に記入してみたわけだが、いざ記入してみるとそこには隠しようもない類似性が見え始めていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

トピア「しかしこう……惑星に拠点を降下させて一定間隔で拠点を増やしながら大陸を制圧していくプロセスを地図で見ると、BETAに似てますね?」

 

マイン「なッ!?」

 

サティ「まあ、侵略者には侵略者をってことで呼んできたなら、勢力拡大が似た形態になるのも分からなくはないわね」

 

トリオ「同じ目的で効率を追求すると似たような形に収束する。収斂進化という奴じゃの」

 

 やはり侵略者同士は似るようであった。




 地球規模と設定したワールドがあまりに広く、レーダー・タワー建設ではいつまで経っても資源調査が終わらないので、これを何とかするべく、

 Mindustryでは戦術マップに入った瞬間に周囲の資源が全部分かる→つまりコアが惑星マップの1エリア範囲全域の資源を探査出来る

 という解釈になりました。折角でかいんだからそのくらい出来てほしい(願望)。
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