【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2023/8/22]Mindustry関連電力の桁が1つずれていたため、当該部分の数字と話の流れを修正しました。また、更に省エネ化が進んだことで、地下から水を汲み上げるウォーターポンプに言及するようにしました。
 [2025/12/25]サティの現地改修にしてはブループリントデザイナーEXの性能が高すぎるので、開発部の試作品に変更しました。その他加筆・修正しました。


059. 全体がくまなく加速するように必要最低限の数の加速ドームを配置するのが腕の見せ所だ

ラリー「資源探査は何とかなるとして、火力発電所の設置の方なんだが、原子力発電所ほど複雑じゃねえとは言っても、数が数だ。本当に何とかなるのか?」

 

 サティによると原子力発電所の燃料加工設備を建設する方がより大変であり、放射線の管理を考えると確かにそうなのだろうが、それは相対的な話であって、1,932棟の267並列40GW希釈燃料発電所と7,728箇所の原油採掘所を整備するのはかなり大変な筈だ。今回のBETAとの戦いは時間をかけるほど相手に領土を奪われて厳しくなっていくため、本当に間に合うのかという懸念がどうしてもある。

 

サティ「問題無いわ。そこで活躍するのがブループリントデザイナーEXよ」

 

トピア「あ、EELのライブラリに入ってたやつですね?」

 

スコア「あったなそう言えば」

 

 トピアとスコアは以前採鉱機の改造をする際にEquipment Expansion Libraryにアクセスしたので、その名前を目にしていた。

 

サティ「ええ、FICSIT本来のブループリントデザイナーは32m×32m×32mまでしかデータを登録出来なくて、小規模施設か反復パターンにしか使えなかったけれど、それだと多並列発電所丸ごとの登録が出来ないから、まずブループリントデザイナー同士を結合して使えるように、更にデータ同士を結合して使えるように改修されたものよ。これで従来半日がかりだった267並列希釈燃料発電所も本体部分は数分で設置出来るようになったわ」

 

スコア「おお、それは劇的な効果だな」

 

 サティが模式図を出しながら説明したところによると、従来型のブループリントデザイナーは、32m×32mよりやや大きいベースパネルの上に一辺32mの立方体型の物理的骨組みが乗っかった形になっている。これに対し、EXは32m×32m丁度のベースパネルになっており、これを水平方向に無尽蔵に接続出来る。ベースパネルの上には何も乗っておらず、ベースパネル群の境目から鉛直にホログラムでガイドラインが出るようになっている。また、骨組みによる制限がないので、高さ方向に仕様上の制限は無く、構造と強度の許す限り幾らでも積み上げることが可能だ。

 

テクス「改修型と言っても原型と大分違うでござるな?」

 

サティ「分かる? これは私が作ったんじゃなくて、開発部が作った試作品の設計データを運用試験のために持ってたのよ」

 

 EELは現地で機材を改修する用途にも使えるが、開発部が作った試作品の設計データを登録して現地運用試験をするのにも便利に使われていた。むしろ現地改修などしなくともFICSIT機材は大抵の環境で使える上に殆どの惑星開拓者(パイオニア)には大した設計スキルが無いので、運用試験に使われる方がメインですらある。

 

サティ「運用上は267並列分の資材がインベントリに一度に入らないから何回かに分けなければいけないのがネックだけれど、今はインベントリ拡張アイテムで大分緩和されているわ」

 

 ブループリントデザイナーEXで一度に建設出来る規模が大幅に増したことで、その建設に必要な資材がインベントリに入らないという問題が生じていた。ただしこれにも一応の対策が為されており、手持ちの資材で可能な限り建設を進めて一旦中断し、資材を補充して再開すれば中断したところの続きから建設を進められるようになっていた。補充の手間だけは残っていたが、オクタリンのかばんといったインベントリ拡張アイテムやクラウドストレージなどの外部インベントリによってこの問題が緩和されたことになる。

 

ラリー「とすると、資材が40種類以内なら、拡張インベントリ扱いになる虚空の鞄(Void Bag)で多分一発建造が出来るな」

 

サティ「手に入ったら是非お願いするわ」

 

ラリー「分かったぜ。それにはジャングル(Jungle)の素材が必要だから、おっさん、衛星でここから近いジャングル(Jungle)の特定を頼めるか? ああ、赤道沿いの範囲でな」

 

トリオ「ええぞ」

 

テクス「ちと不思議に思ったのでござるが、そこもとらのインベントリはそんなに制限が厳しいのでござるか? Tech付属のインベントリはTech規格ブロック専用とはいえ枠数の制限なるものは無いのでござるが」

 

トピア「えっ何ですかそれ凄い」

 

 概ね方針が固まったところで差し込まれたテクスの爆弾発言に他全員の注目が集まった。

 

サティ「じゃあ1枠あたりのスタック上限は?」

 

テクス「これがよく分からんのでござるよね」

 

ラリー「どういうことだ?」

 

 テクスが自分のインベントリの仕様を把握していないという事態にラリーは疑義を呈した。ここに呼ばれた(マイスター)の一人ならば、普段から使っているものに関しては熟達していないとおかしい。

 

テクス「最大表示が3桁までで、999を超えると『999+』という表示になるのでござるよ。4文字表示出来て上限が9,999なら普通に9999まで表示すれば良いはずゆえ、もしかしたら1万以上入るのではと思いつつも、実用上そんなに使わぬので測定したことが無いのでござる」

 

トピア「1,000個以上のブロックをいっぺんに使うことは無いんですか?」

 

テクス「実際3並列ブロック工場の部材には1,000を超えるコンベアが必要ゆえ、4桁表示出来ないと在庫が足りてるのかどうかも分からなくて困るのでござるよ」

 

トリオ「凄いのか抜けとるのか良く分からんシステムじゃの」

 

テクス「TechのOSは、実は結構全般的に不安定でござるよ。出したつもりの無いブロックが出ていたり、一覧スクロールの位置情報が別タブと無駄に同期されていたり、大規模工場を使用中に戦闘が発生して更に新しい同業者を発見すると処理がオーバーフローして突然シャットダウンされたり、大きな工場の端っこが正常に動作しなかったり、大規模なTechを作ろうとするとビルドシステムが大量の接点判定で露骨に処理落ちしたり、ビルド時に視点より後ろのブロックに勝手にくっついてどこにくっついたのかわからなくなったり、コンベアの進行方向ロック機能が無くてうっかりで機能不全を起こしたり、遠方の生産拠点が停止するのはともかくエラーを吐いて再起動しなかったり、組み方によってはTechの前進方向とレーダーの前方向が一致しないのが後から修正出来なかったり、データの記録と読み出しすら不安定だったりするのでござる」

 

トピア「いやいやいや、幾ら何でも問題ありすぎでは??」

 

 不具合を有効活用することに定評のある理想郷の建設者(クラフトピアン)もこれには面食らった。なんぼ何でも多すぎる。

 

テクス「Techの仕様を作った大元のGSO本部が倒産して統一的開発体制が瓦解した弊害でござるな。残った各社が好き勝手に仕様を継ぎ足した結果こうなってしまったでござるよ」

 

サティ「むしろ良くそんな不安定なシステムで業務をこなしてたわね?」

 

マイン「フッ、突然のシャットダウン程度は即座にリカバリー出来るのが優秀な騎士(ナイト)というものだ」

 

ラリー「いやお前の所も不安定なのかよ」

 

 どうやら名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)のシステムも見た目ほど盤石ではないようであった。

 

トリオ「ともかく、Tech用インベントリシステムの容量自体は優秀そうじゃから、あとでサンプルを提供してくれるかの? んで中身を見て応用出来そうならブロック以外も入るようにして全員で使えるようにするんじゃ」

 

サティ「それはもし実現出来れば益々業務が捗るわね」

 

 あくまで科学によって作られた装置ならば、流用が効くはずだ。現状ではコントロールユニットが最低1m×1m×1mのサイズになるのがネックではあるが、人が乗り込むスペースとインベントリと関係ない機能も詰め込まれているので、そこは今後の研究次第だろう。場合によってはそのまま乗り物として使う手もある。

 

テクス「しからば、コントロールユニット……中に入ることを考えるとGeoCorp製のものが良いでござるな。一番大きい『ダイオウ』を提供するでござるよ。出来ればTechのOS自体を安定化させたいでござるが、開発のために公開されたソースコードを軽く見てもまず間違いなくスパゲッティコードになっておる故、短期間では無理でござろうなあ」

 

サティ「そっちはシャットダウンを抑止出来れば御の字と言ったところね。マインの方も見てみる?」

 

トリオ「最終的にはカンパニーとFICSITとTechの建設システムの統合もしくは並列搭載も考えておるぞ。これに建設ロボットも載せてTechのインベントリシステムを併せれば大部分のボトルネックが解消出来るじゃろ」

 

マイン「ふむ、悪くない提案だな……いいだろう。建設のメインを担うコアユニットは複数の予備がある。1つくらいは研究用に提供してやろう」

 

トリオ「うむ、助かる」

 

 マインも珍しく乗り気であった。既に発電力で後れを取っていることから、他の(マイスター)が持ち寄った設備との併用が必要不可欠と理解していたのだ。こうした判断を見るに、やはり単に駄々をこねるだけの無能ではない。

 

サティ「じゃあそろそろ発電の方に話を戻すわよ。希釈燃料発電所も石炭発電所も、燃料を加工して発電機に投入する本体部分とは別に採掘機械と揚水ポンプを環境に合わせて設置する必要があって、こっちの方が手間なのよね。採掘機械は設置する数が少ないからそうでもないんだけれど、揚水ポンプの方がなかなかかさばって、例えば石炭発電では中純度石炭鉱脈に2.5倍速駆動の採鉱機Mk.3を設置して600fr/分産出されるのを石炭発電機1基で15fr/分消費するから、75MW×40並列で3GWね。これと別に1,800m3/分の水を得るために揚水ポンプが15基必要。希釈燃料発電所では中純度油脈1つに2.5倍速駆動の原油抽出機を設置して、毎分300m3産出される原油を400m3の廃重油と200frの合成樹脂に、この400m3の廃重油と800m3の水を合わせて800m3の希釈燃料を作るわけ。燃料式発電機が燃料を12m3/分消費するから、150MW×66.7並列で10GWの発電。揚水ポンプは6.67基必要。どちらにしても採掘機械の何倍もの揚水ポンプを設置することになるわね」

 

マイン「何だ、貴様の所は1,800m3/分程度の揚水にポンプが15基も必要なのか? 設備が貧弱すぎではないか?」

 

 またマインが話の腰を折ってケチを付けてきたぞとラリー、スコア、テクスあたりがうんざりした顔をしたが、マインの性格をおおよそ掴んでいるサティはそうではなかった。

 

サティ「FICSITの揚水ポンプだと1基当たり120m3/分の揚水に20MWかかるんだけど、そっちは?」

 

 つまりマインがケチを付ける時は大体自慢がセットなのだ。ではその自慢の設備とはどの程度の性能なのか、というのはこの話の本筋に関わる。

 

マイン「最高効率を誇るサーマルポンプが30m四方全体で118.7m3/秒、10m四方の1グリッドあたりだと13.2m3/秒。水深によっては更に1.5倍だ。消費電力は780kWだな」

 

トピア「秒!?」

 

 同じくらいの数かと思ったら単位がまさかの毎秒。60倍である。

 

サティ「30m四方で7,122m3/分から10,683m3/分、10m四方でも791m3/分から1,187m3/分ということね。自慢するだけあって省電力性能も申し分ないわ。これなら発電量が貧弱でも回せるはずね」

 

スコア「どうもマインの所は発電力が貧弱な代わりに省電力性能が優れているようだな。丁度FICSITの逆だ」

 

マイン「貴様ら、繰り返し貧弱呼ばわりするんじゃない!」

 

 マインの期待通りの反応にラリー、スコア、テクスが声を上げて笑った。

 

トピア「いや、つまりFICSITや工場長の強力な発電能力とカンパニーの省電力性能を組み合わせると凄まじいシナジー効果があるということでは?」

 

マイン「そう、それが言いたかったのだ。貴様ニンジャの割に良く分かっているではないか。ジュースを奢ってやろう」

 

トピア「わーいありがとうございます」

 

 マインがどこからともなく取り出したオレンジジュースらしきものをトピアは喜んで受け取った。

 なおトピアが喜んでいるのはジュースそのものが原因ではなく、「天然ブロンティストにジュースを奢ってもらう」といういかにもな実績を達成出来たせいだ。これは自慢出来る。何しろブロンティストは見て楽しめるコメディアン(オモシロ生物)枠なので。

 

マイン「ふむ、やはりニンジャはたまに話しかけてやると勝手に家来になるようだな」

 

トピア「おっ、早速代表争奪戦の意思表明ですか? 受けて立ちますよ!」

 

マイン「今はその時では無い。命拾いしたな」

 

 トピアが立ち上がって一騎討ちの用意をしようとするが、マインは肩をびくりと震わせてそれを拒否した。ただマウントを取りたいだけで、生身で戦って勝てる相手ではないと理解しているからだ。

 

ラリー「何だこの茶番」

 

テクス「どうして敵に回したくない相手を頻りに挑発するのか、これが分からないでござるね」

 

マイン「話を続けるぞ。このサーマルポンプは水だけでなく原油採掘にも使えるという特徴がある。このあたりの原油採掘だと1箇所あたり10m四方判定になるし、1.5倍にもならんが、鉱脈と同じ無限採掘だ」

 

サティ「うん? 原油採掘速度が791m3/分? うちの原油抽出機の限界速度の更に2.64倍なのだけれど?」

 

 原油採掘速度まで強化出来ると聞いて、サティの顔色が変わった。つまり必要電力に対する採掘所の設置数を1/2.64に減らすことが出来るということにほかならない。

 

マイン「付け加えるならば、直接的な水源が無い場合に地下から汲み上げる20m四方のウォーターポンプでも6.6m3/秒、消費電力は600kWだ。我が中隊(カンパニー)では使いどころが限られていたが、それほど発電に自信があるのならば使いこなせるだろう?」

 

サティ「近くに水源無しでも396m3/分で1MW未満? 実に素晴らしいわね。そうなると、ドリルの性能は?」

 

マイン「我が中隊(カンパニー)最大最強である40m四方のエアブラストドリルで最大16グリッドの同時採掘が出来るが、1グリッド10m四方の鉱脈を基準にすると基本0.21物資単位/秒、水冷で0.69物資単位/秒だな。ただこの速度は掘削対象の硬さに左右される。例えばチタンだとそれぞれ0.13、0.45まで低下する。使用電力は1.8MWだ」

 

サティ「2,322fr/分、7,630fr/分、1,437fr/分、4,977fr/分ね。消費電力が少なくて採掘速度が速くて精錬までセットでやってくれるのはすごいわね。採鉱機Mk.3の2.5倍速駆動でも到底追いつかないわ。水冷システムを含めてかさばりすぎるのが玉に瑕だけれど、パイプラインを立体的に組めばまだまだ圧縮できそうね」

 

マイン「ふむ、2.5倍速を勘定に入れていいのならポンプもドリルも速度は当然この2.5倍になるぞ? 電力もだが」

 

サティ「ここから更に2.5倍加速するの!? それってパワー・シャードみたいなシステム?」

 

マイン「パワー・シャードとかいうのは知らんが、我が中隊(カンパニー)には加速ドームという装置があってな。これ自体に電力を6MW、更にフェーズファイバーとシリコンを消費するのだが、半径250m範囲内の()()()()()を2.5倍加速するという絶大な効果があるのだ。まあ設備の消費電力が2.5倍になるため、加速ドーム自体の消費電力も実際は15MWになるのだが」

 

サティ「加速ドーム自体に電力が必要とは言え、電力効率が悪化してないのは助かるわね。でもそこまで加速するとロジスティクスの速度が足りなくならない?」

 

マイン「()()()()()と言ったぞ。当然コンベアやパイプラインも加速することになる。原理的にはほぼ時間加速のようなものだからな。だから消費電力効率が悪化したりはしないのだ。普通に2.5倍の経年劣化はするが、実質定格で動いているのだから、無理矢理加速するのに比べれば影響は限定的だ。そしてロジスティクスを含めて全体がくまなく加速するように必要最低限の数の加速ドームを配置するのが腕の見せ所だ」

 

トリオ「ふむ、時間加速でコンベアまでも加速? そうなると敵まで加速してしまいそうじゃが、どうやって区別しておるんじゃ?」

 

 中隊(カンパニー)の設備を自慢したいマインとその設備の性能をフル活用して業務を効率化したいサティが互いに早口でまくし立てるので大分周囲が置いてけぼりになっていたが、全員理解は出来ていたようで、ここで新たにトリオ工場長からの質問が飛んだ。

 

マイン「全ての設備に味方の識別タグをつけている。ああ、動き回る機動兵器にはそもそも効果が無いぞ?」

 

サティ「つまりそのタグさえつければネームレス・カンパニー規格のもの以外も加速出来るということ?」

 

マイン「理論上は可能だろうな」

 

トリオ「機動兵器だけが駄目っちゅうことは発電機やタレットも加速するのか?」

 

マイン「無論だ」

 

サティ「実に素晴らしいわね!」

 

マイン「フッ、それほどでもない」

 

 マインが謙遜の言葉を吐いているが、やはり承認欲求が強いためか、その表情はとても嬉しそうであった。




 ブロンティストの角を削って丸くしていくと段々サウザーイチゴ味風味が出てくる不思議。
 Mindustryも結構不意のシャットダウンがあるのですが、システムの不安定性はTerraTechが突出しており、革新的面白さと吃驚するくらいの雑さが同居した稀なゲームです。
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