【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

60 / 387
 [2023/08/22]Mindustry関連電力の桁が1つずれていたことに気付いたため、057話~059話の当該部分を修正し、話の流れも多少変更となりました。投稿前に気付けば良かったんですが、この話の投稿前チェックで太陽光発電の桁合わせを検算して初めて気付きました。
 [2025/12/25]加筆・修正しました。


060. かくなる上はテレポーターロジスティクスの実用化を進めるしかないわね

 サティが加速ドームを絶賛しているところであったが、ここでトピアが挙手して質問した。

 

トピア「あのー、フェーズファイバーっていうのはトリウムが原料なんですよね? 放射線は大丈夫なんですか?」

 

サティ「あっ」

 

 サティは放射線管理の面倒さから原子力発電所の使用にあまり前向きではない。

 というのも、FICSITは対環境性能に色々と気を遣っているが、放射線の遮蔽は完全とは言いがたい。何故なら、発電機自体が放射線を遮蔽していてもコンベアによる輸送で放射性物質がむき出しになるので燃料加工施設も含めて遮蔽しないと意味が無いからだ。

 そういった面倒を嫌っているサティからしても放射線管理を必要とする要素が増えるのは遠慮したいところなのだ。

 

マイン「無論フェーズファイバーにも放射能はあるが、それ以前にエアブラストドリル自体にもトリウムを使っているのだが?」

 

 トリオほど体が規格外に頑丈なわけではないが、基本的に本拠地施設であるコアから外に出ないマインも外の環境にはあまり気を遣わないタチであった。

 

サティ「待って、惑星争奪戦条約はどこに行ったの?」

 

テクス「確か環境保全目的で核兵器の使用は禁じてるのでござるよね?」

 

マイン「惑星争奪戦条約で核兵器の使用は禁じられているが、放射性物質の使用は禁じられていない。設備ならば争奪戦終了後に回収出来るし、弾薬として使ったとしてもガイガーカウンターに反応するのでむしろ発見しやすいからな」

 

トピア「そういう判断なんですねえ……で、実際の所この星が250mおきの放射性物質取り扱い施設とそれを繋ぐコンベアで埋め尽くされるのは非常に困る事態なのですが、どうしましょう?」

 

 幾らBETAと戦う為の準備とは言え、そんな放射線まみれでまともに出歩けない惑星を新たなクラフトピアワールドと称するのはかなり抵抗があるトピアである。困らないのはマインとトリオくらいだろう。

 そこで何とかするための案を出してきたのがいつも頼りになるサティである。

 

サティ「かくなる上はテレポーターロジスティクスの実用化を進めるしかないわね」

 

ラリー「テレポーター? そういえばテレポーターで輸送するとかそんな話をしてたっけか」

 

トリオ「儂の作る鉄道とFICSITの鉄道、両方の長所を活かすにはどうするか検討しとった時に突然テレポーターという概念が出てきたんでの。星全体の輸送を考えるなら長距離輸送はそれに置き換えた方がええんじゃないかっちゅう話になってな」

 

サティ「二つのテレポーターにそれぞれチェストを乗せて、生産側のチェストにインサータでどんどん物資を詰め込んでいって、同時に消費側はインサータでチェストから物資を取り出していって、それが空になったら生産側のチェストと入れ替える形ね。テレポーターの配線の手間は、そもそも鉄道よりは軽いはずだから問題ないわ」

 

ラリー「なるほどそういう使い方か」

 

サティ「この機構を使って、放射性物質の移動経路をテレポーターで代替することで居住区域を放射性物質が通行することが無くなるし、放射性物質取り扱い施設を放射線遮蔽材で密閉して物資のやりとりをテレポーター経由にすれば放射線の漏出は最低限になるはずよ。更に中距離以上の輸送を全部テレポーターで置き換えれば、加速が必要なエリア自体を小さく出来るわ」

 

スコア「考えたな」

 

テクス「放射線遮蔽材の構成はどうするでござる?」

 

サティ「FICSITの原子力発電機にも使っているコンクリートならガンマ線も中性子線もかなりの効率で遮蔽出来るはずよ。厚みは実際の放射線量を計測して決めるけれど」

 

トピア「ちょっと思ったんですけど、物流ロボットを強化してチェストを運べるようにしてポータル経由で輸送することは出来ないんですか?」

 

サティ「それも検討したんだけどね、ポータルだと全部が相互に繋がるから却って接続先が混乱しやすいし、いざ私たちが最前線に急行しようとする時に物流ロボが入り口・出口どちらかのポータルを使用中だと通れない問題もあるでしょう?」

 

 この場合の最前線とは、BETA領域に接してレーザータレットで防衛線を展開するエリアに限らない。内地に突然着陸ユニットが降ってくる場合もあるのだ。

 

トピア「うーん、そう考えると配線の手間があってもテレポーターの方が安全ですか」

 

トリオ「というわけで、メカニックの救出もなるはやで頼むぞい」

 

ラリー「おう、優先ならこの後すぐにでも行けるぜ。ただテレポーターの値段が金貨2枚半でそこそこ高いんだが、資金の足しになりそうなものはねえか?」

 

 ラリーが(マイスター)達の顔を見回すと、トピアが元気よく手を挙げた。

 

トピア「うちで大量生産してる農作物とかどうですか? エンチャントがついてないのなら無限に作れますよ?」

 

 ちなみに最近の農場はタネ抽出機とマルチスリングの間の輸送をトリオの物流ロボットに手伝ってもらうことで完全自動化に成功している。

 

ラリー「果物が標準売価で一律銀貨20枚になるから割がいいな。ダイヤでも銀貨30枚だからな」

 

トピア「じゃあリンゴでいいですか? うちのショップだとあんまり高く売れないので。既に大容量コンテナ一杯分溜まってて25,600個もありますよ」

 

 クラフトピアにおいて作物最上位にあたる★×14のピーチが1つ12,600ゴールドで売却出来るのに対し、★×4のリンゴは1つ375ゴールドにしかならない。つまりピーチはトピアの金策に使って、リンゴをラリーの金策に使うのが妥当だ。

 クラフトピアでは『市場』、もしくはその上位の『活気のある市場』のインベントリスロットに値段の付くアイテムを入れておくと地球時間で5分ごとに勝手に売却手続きされるようになっている。誰が買っているのかは全く分からないが、特定の購買者が存在しないためか却ってこの不安定なベータワールドでも機能しているのは幸いである。なおこの2つの設備の違いはインベントリスロットの数が8から12に増えているだけで、売却価格は変わらない。

 

ラリー「つまりは……白金貨51.2枚分か! よし、それにしよう」

 

 白金貨は金貨100枚分の価値なので、大容量コンテナ一杯のリンゴと引き換えにテレポーターを2,048個買える計算になる。大変割が良いと言える。

 

トピア「やはり大量生産はパワーですね」

 

サティ「というかそんな大量に買い取ってもらえるの? あとテレポーターが2,000個欲しいと言ったら2,000個売ってくれるものなの?」

 

ラリー「仕組みは分からんが、今まで売買の数に制限がかかったことはねえな。環境や住民同士の相性によって値段は上下するが」

 

サティ「……大分不思議だけれど、出来るなら言うことは無いわ」

 

テクス「それでいいのでござるか?」

 

サティ「魔法文明(ファンタジー)とは不思議なものよ」

 

 科学や物理が通用しない不思議なものは不思議なものとして理解するしか無い。それがサティなりの結論である。原理が分かるに越したことはないが、それよりも使える物は使わないとこの戦いには生き残れない。

 

トピア「ところで加速ドームと逆にパワー・シャードでマインさんの設備を加速することは出来ないんですか? 原理的には重ねがけで6.25倍になりそうだと思うんですが」

 

サティ「うーん、原理的には確かに可能でしょうけど、FICSITの設備は単にパワー・シャードを組み込むスロットがついているだけじゃなくて全体がパワー・シャードによるオーバークロックに耐えるように余裕を持って作られているから、カンパニーの設備に適用する場合は大幅に改造する必要があるわ。あと汚染対策も大分怪しいからそのあたりも一緒に改造する必要があるかもしれないわね。マイン、カンパニーの設備品の設計をいじるツールって何かある? 或いは設計図そのものとか」

 

マイン「想定外の星の環境に現場で対応するための設計ツールならばあるぞ。しかし設計データは軍事情報で基本部外秘なのだがな……」

 

テクス「そんなことを言っている状況では無いと思うでござるよ?」

 

ラリー「そもそも既に鹵獲されてるしな」

 

マイン「分かっている。だからコアユニットを提供すると既に言っているだろうが。……問題が起きたら貴様らも当事者だからな!? 特に暫定代表のニンジャ!」

 

トピア「はい、それはもう。いざというときは匠衆(マイスターズ)()()のアヌビス様に何とかしていただきましょう」

 

アヌビス神「XX!? XXX……X,XX!(我がか!? しかし顧問……ええい、良かろう!)」

 

 トピアは秒で責任をアヌビス神に押しつけた。そしてアヌビス神は即興ででっち上げられた顧問という肩書きが欲しかったので多少の葛藤の末にこれを呑んだ。

 

サティ「そう言えばトピアの上役だったわねアヌビス様」

 

トリオ「相変わらず便利に使われとるの」

 

スコア「ああ、つまり最終的には代表のトピアさんからアヌビス神を経てこの作戦行動の発起人である女神らしき存在に責任がまっすぐエスカレーションしていく訳か。そういう意味でも代表は適任だったな」

 

 最終的に女神的存在(クラエル・ザ・グレート)に責任を押しつける流れになっているが、実際今回のベータテストをやれと命じた張本人であるのは間違いなく、何であれ組織において責任の所在がわかりやすいのは良いことである。

 

サティ「それでマイン、設備の改造経験は?」

 

マイン「環境適応のための最低限ならあるぞ。大幅な改造はしたことがない」

 

サティ「となると、パワー・シャード対応も兼ねて私も手伝う必要があるわね。工場長は大分忙しそうだけれど、対環境性能改善の要領だけでも教えてもらえるかしら?」

 

トリオ「まあそのくらいならええぞ。必要なことじゃからな。じゃが設計改善は全部の資源が研究ラインに乗ってからの方がええと思うぞ」

 

サティ「それはそうね。順番を考えないと」

 

スコア「そう言えば大規模発電には向いていないと言っていたが、テクスの所の動力はどうなってるんだ? 太陽光パネルらしきものが見えていたが」

 

 大規模発電と設備加速と環境対応の方針が一段落したところで、テクスの電力事情の詳細にまだ触れていないことにスコアが気付いた。

 

テクス「基本的には時空勾配発電で動いてるでござるね。これでブロック自体の動力は十分なのでござるが、バリアやリペア、あとはテスラコイルには別途電力が必要ゆえ、太陽光パネルで補っているでござるよ。他にも大型プラズマカッターのギガ・プラズマは核融合炉内蔵でござる」

 

トリオ「その時空勾配発電とは何じゃ?」

 

テクス「時空の勾配、つまり重力によって発生する流れを利用した、水力発電のようなものでござるよ。太陽光パネルで補っていることからも分かる通り、発電量はそれほど多くないでござる」

 

マイン「似たような発電方式ならば我が中隊(カンパニー)も採用しているぞ。大電力を要求しない実弾タレットなどがそれで動いている」

 

サティ「どうもかなり高度な技術のようね」

 

トピア「ギガ・プラズマというのに搭載されてる核融合炉の出力はどのくらいですか?」

 

テクス「正確には分からんでござるが、ギガ・プラズマの攻撃力が50kWなので最低そのくらいでござろうな。500kWは行かないと思うでござる」

 

トピア「となると、工場長の携帯核融合炉の方が出力が高そうですね……」

 

トリオ「核融合炉の構造の参考にはなりそうじゃがの」

 

サティ「参考までに太陽光パネルの面積当たりの発電量は?」

 

テクス「前にいたところでは最大25TechW……2.5kW/m2が出ていたでござるが、この星は太陽光が弱いので1.3kW/m2くらいでござるね」

 

トリオ「儂のも最大では6.67kW/m2を記録しとったが、この星の環境では1.3kW/m2程度しか発電できんの」

 

マイン「我が中隊(カンパニー)のソーラーパネルはそこまで効率が良くないな。セルプロ型惑星で0.866kW/m2、この星も同じくらいだろう。まあ使わんのだが」

 

サティ「待って、ハビタブルゾーンにある地球型惑星で1.38kW/m2前後がそもそも太陽から受け取るエネルギー量なんだけど、テクスも工場長もそれを遥かに超える光に照らされる星で活動してたの?」

 

 太陽光発電の元手になっている太陽光エネルギーが人間が居住可能な惑星で通常どのくらいになるのかという知識がサティにはあった。だからその限界量に対して何割くらいが電力に変換出来ているかで太陽光発電の効率を算出するつもりだったのだが、100%相当の1.38kW/m2を優に超える数字が出てきたことに困惑していた。

 

テクス「あれは多くの湖が干上がった星でござったな。ヒューマンにはだいぶ厳しいようなので、むしろ小人族(ランティノイド)の独占状態だったでござるよ。故にTechの楽園テラテックなどと呼ばれてたでござる」

 

トリオ「まあちっとばかし暑かったの。水はあったんで助かったが」

 

トピア「ドワーフだと地球の5倍くらい暑くてもちっとばかしで済むんですねえ」

 

スコア「むしろよく水が蒸発しなかったな」

 

トリオ「いや別に赤道直下ではなかったし、1日の周期も短かったからの。パネルは斜めに立てて使っとった。水が尽く蒸発せんかったのは、重力が強くて気圧が高かったせいもあるの。そろそろ話を戻そうと思うんじゃが、フェーズファイバーっちゅうのはその加速ドーム用の燃料ということでええんかの?」

 

マイン「それが最大の役割だが、防壁や設備の材料にも使えるし、何より上位機動兵器の材料として不可欠だ」

 

サティ「あれも放射性物質を使ってたのね」

 

マイン「そうだな、各系統上位2種はフェーズファイバーが無いと作れん」

 

トピア「各系統? ということは最終到達点がレイン以外にも色々あるんですか?」

 

マイン「勿論あるぞ。セルプロ用だけでも陸軍3系統、空軍2系統、海軍2系統が存在する。戦場にあわせてそれらを使い分けるのだ」

 

トピア「あー、でも空軍は……」

 

マイン「対抗して光線(レーザー)属種とかいう厄介な奴が出てくるのだったな? だが安心するがいい、我が空軍は攻撃だけが能ではない。建設補助に修理、ユニットや設備の運搬などにも幅広く役に立つのだ。伊達に複数の系統があるわけではない」

 

トピア「おおー、システマティックですね」

 

 トピアは名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の軍団構成が攻撃一辺倒では無いことに感心したが、マインがBETAの特徴を踏まえてそれらを使いこなそうとしていることにも同時に感心していた。

 

マイン「フハハ、そう誉めるな。貴様らは確かレインの地形踏破能力と近接防御能力に不満があるのだったな? ならば同じ陸軍でも八脚型のトキソピッドを使えば良い。防壁でも設備でも無視して進軍が可能で、135km/hとかなりの高速移動が可能だ。耐久もレインに近い22,000に13アーマー……貴様らの単位で言う2200万ライフに1万3千DEFがあるので文句は無かろう。最大射程も現行モデルで310mで、レインに勝る。まあ遠距離火力はレインの方が高いので、修復設備が万全な相手にはレイン部隊でないと対応しづらいのだが、代わりに近接防御用の連装パルスレーザー砲が付いているぞ」

 

トリオ「ほう、でかいスパイダートロンみたいなもんか。是非見てみたいの。もう少し強化して170km/hを超えれば言うこと無いぞい」

 

テクス「武装もモジュールやブロックの後付けでどうにかなるかもしれんでござるな」

 

 斯くして次期主力陸戦機動兵器(の改造元)候補にトキソピッドがエントリーした。これが歴史に語られるシームレスワールドの大多脚時代の幕開け……かどうかは定かでは無い。




 MindustryもTerraTechも電力単位の設定が無いので、最終的に大きく動かしようがない太陽光発電の発電量を基準に桁を調整することになりました。結論としては1Mindustry電力(工業W)=10kW、1TerraTech電力(TechW)=100W。
 そして初稿→戦力観点電力桁調整→太陽光基準電力桁調整→fr物資単位からの効率算出で、両者の登場以降の話を3回書き直すことになりました。
 また、桁を合わせたはずのMindustry電力を無意識に100kWで計算していたことが発覚したため、057話以降に4度目の修正をかけることになりました。つまりMindustryは発電が貧弱でその分ものすごく省電力というTerraTech寄りの位置づけになりました。

 あとTech本体やMindustryの実弾タレットが電力供給無しで動いている理由を時空勾配発電の一言で勝手に説明しましたが、勿論原作にそんな設定はありません。

 なお工場長の異常な太陽光発電量は完全に原作通りで、どう見ても鉄と銅しか使ってない実弾タレットが動く原理も不明です。いや回路基板やソーラーパネルが鉄と銅で製造出来るから、工程を飛ばしただけとすれば一応可能なのか……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。