【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 昨日24日ぶりにプラス評価を戴きました。ありがとうございます!
 ちなみに☆4以下がマイナス評価だというのは本作を投稿開始するまで作者は知りませんでした。

 [2025/12/29]レーザーの反射原理について追記しました。その他加筆・修正しました。


061. 道理でラストプリズム(Last Prism)の約2万DPSでも耐久が減らないわけだぜ

トリオ「その大型八脚はあとで見せてもらうとして、気になるのはバリアやリペアの性能じゃの。儂のところではエネルギーシールドMK2がジュール換算で300倍の電力を使って攻撃を防ぎ、損傷した分はドローン型の建設ロボットが随時補修を行うんじゃが、新顔の二人はもしかしてもっと高性能なシステムを採用しておらんかの?」

 

 ここで言うジュール換算とは、1クラフトピアライフ=1クラフトピアダメージ=10Jとする計算である。これは防御力(DEF)0のターゲットに対して拳銃弾が50ダメージで運動エネルギー500Jというところに由来している。同じジュールでもエネルギーの種類や収束度などによって実際のダメージは変わるが、とりあえず桁が概ね合う程度の統一基準としてジュールが採用されているのだ。特にこのクラフトピア世界ではダメージが直接数字に出るため、これで概ね計算が出来てしまう。

 この基準においてトリオ工場長のエネルギーシールドMK2では1ダメージ=10Jを防ぐのに3kJもの電力消費が必要ということになる。全周囲バリアは対象の全周を覆うため一点に集中する攻撃側に比べ必然的にエネルギー効率が悪いのだが、それでも300倍という数字は決して良いとは言えない。

 

テクス「ものによって効率が違うでござるな。この計算だとバリアフィールドはVenture製で半径3.75mの消費電力4.5倍、Hawkeye製で半径約7.5mの消費電力12.5倍になるでござる。リペアフィールドはVenture製で半径3.75mの消費電力1.0倍、秒間修復1,333J、GeoCorp製で半径8.75m、消費電力5.0倍、秒間修復2,857Jでござる。実際にはGeoCorp製リペアフィールド発生器が他に比べて極端にでかいので、2番目に半径が大きいHawkeye製、半径7.5m、消費電力4.0倍、秒間修復2,667Jを使うことが多いでござるな」

 

トリオ「ほう、効率が格段に良いの」

 

テクス「ただサイズが最小1mゆえ、人間が携行するには辛いでござるよ? Techなどの機械に組み込むためのものでござる」

 

スコア「幾ら小さいとは言え人間が使うには流石に大きいか」

 

 Techが名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の兵器群に比べて1/10程度のスケールしかないとはいえ、人が乗り込んで操縦するのを前提とした機械である。最小のブロックサイズが1m×1m×1mとなっているため、人間が携行する用途には使えないのだ。

 

サティ「マインの方はどうなの?」

 

マイン「まず言っておくが、我が中隊(カンパニー)はバリアをあまり使わん。30m四方の力場プロジェクターで半径約110m、消費電力1.8MW、耐久は数MJ程度だが実際には計測が難しい。ダメージに対する消費電力は等倍に近いが、そもそもレーザーや電撃のような貫通力が高い攻撃は防げないからあまり実用性があるとは言いがたい。だがその反面修復装置は凄いぞ? 聞いて驚け、10m四方の修復機で半径50m、消費電力180kW、修復速度は1.2()()()()()/()()だ。20m四方の修復プロジェクターとなると、半径106.2m、消費電力900kWで修復速度は2.7()()()()()/()()になる。しかも範囲内の対象全てを同時に回復する」

 

トピア「まさかの割合回復」

 

サティ「耐久が240MJのレインだと1.2%の回復で2.88MJ、2.7%だと6.48MJ=648,000ライフになるわね」

 

ラリー「元が頑丈なほど恩恵がでかいってわけか。……あのフォーシャドウっていう巨大タレットの耐久力はどのくらいだ?」

 

マイン「我が軍で言う2,400なので24MJだな」

 

ラリー「ってことは秒間64,800ライフも回復してたって訳かよ。道理でラストプリズム(Last Prism)の約2万DPSでも耐久が減らないわけだぜ」

 

テクス「20連装クアッドレールガンの斉射47,800DPSでも追いつかないでござるな」

 

トリオ「修復プロジェクターの性能は凄いんじゃが、流石に機動兵器には乗せるにも苦労するサイズじゃの。消費電力は頑張ればどうにかなりそうじゃが」

 

マイン「だから主力には搭載しておらんのだ。その分は一旦修復設備の近くに戻るか、修復担当ユニットを呼び寄せるわけだ」

 

テクス「あ、範囲内を同時回復するのはTech用リペアフィールドも一緒でござるよ。ただバリアもリペアも単体では範囲が狭い故、大型のTechには複数の発生器を組み込む必要があり、電力効率が悪化するのでござるが。あとバリアも爆風と大質量同士の衝突は防げんでござる」

 

トリオ「嬢ちゃん、BETAに爆発攻撃を使う奴はおるんかの?」

 

トピア「今のところ確認されてないですね。今後出現しない保証は無いですが」

 

 現在存在しないとしても、BETAの学習能力は高い。地球戦線で航空戦力メタである光線(レーザー)級を後から生み出したように、バリア対策用の種を生み出す可能性があるので油断は出来ない。

 

テクス「爆風を防ぐ一番の方法は装甲表面からバリア表面までのギャップを大きく取ることでござるよ。まあそれでも全ての爆風を完全に防げるバリアは無いのでござるが」

 

ラリー「というか大質量同士の衝突ってまんま突撃(デストロイヤー)級のことじゃねえのか?」

 

テクス「なのでござるよねえ」

 

スコア「まあ省電力でレーザーを防げる可能性があるだけでも十分有用だろう」

 

 170km/hを誇る突撃(デストロイヤー)級の突撃も厄介ではあるが、レーザーは文字通り光速なので一度狙われたら本当に回避が困難なのだ。こちらを防げる方がより有用であると言える。

 

サティ「ところで気になったのだけれど、物理的に修理せずにどういう原理で回復してるの?」

 

テクス「Techのブロックには形状記憶機能があるゆえ、機能が残っている限りはリペアウェーブによる修復が働くでござるよ」

 

マイン「フフ、我が中隊(カンパニー)は時をも操ると言ったはずだ。つまり状態そのものの巻き戻しを行っているわけだ」

 

トピア「ああ、だから割合回復なんですね」

 

マイン「ほう、貴様ニンジャにしては物わかりが良いではないか」

 

トリオ「まとめると、バリアはTech用のものが耐レーザーに限れば有用、基本的には耐久力がすこぶる高いカンパニーの最上位機動兵器をカンパニーの支援用ユニットで割合回復して運用するということになるかの」

 

サティ「組み合わせるなら基本的には割合回復で、コックピット周辺だけ最高効率のVenture製バリアで防御するのが良さそうね」

 

 トリオ工場長とサティがまとめた方針に一同は頷いた。特にトピアはEX-Sのコックピット周辺限定Iフィールドみたいな設計方針かと納得し、そのついでにリフレクターインコムを思い出した。

 

トピア「あっ、そうだ。レーザー防御なんですけど、そもそもレーザーって内部で何度も反射させてから発射するんですよね? 装甲表面にそれと同じような処理って出来ません? この方式ならバリアみたいな大電力も要らないと思うんですけど」

 

トリオ「つまりは誘電体多層膜じゃな? 理論上は可能なんじゃが、全反射出来る波長帯がこの膜の構成によって決まるけえ、相手のレーザーの波長が分からんとどうにもならん。つまり実際撃たれるまで分からんということじゃ」

 

トピア「波長……確か青白いレーザーだったような?」

 

サティ「青白い……それ本当にレーザー? 波長揃ってる?」

 

トピア「空気中で200km届く時点で十分異常なんですよねえ」

 

トリオ「超高出力レーザーならそいつは空気がプラズマ化して光っておる色の可能性もあるの」

 

ラリー「つまり?」

 

トリオ「要するに何も分からんということじゃ」

 

トピア「残念!」

 

トリオ「まあ発想は悪うない。事前対応は無理じゃが、いざ光線(レーザー)属種が出現した際には一旦リペアとバリアで耐えながら波長を計測してその方向での改修対応をすることも不可能ではないじゃろう。誘電体多層膜は破損しやすいが、状態巻き戻しが出来るなら維持に悩むことも無いじゃろうしな」

 

 そもそも空気中に放射されたレーザーは空気をプラズマ化させてそのプラズマの熱でも着弾点に被害を及ぼすのだが、これについてはBETAレーザーの射程が異様に長いため、空気で殆ど減衰しないのならば普通のレーザーに比べて空気に熱を与えるロスが少ないだろうと工場長は想定していた。それに加えて名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の状態巻き戻しリペアが使えるので、誘電体多層膜の保持は何とかなるだろうという見通しであった。

 

テクス「行けそうに感じるでござるが、これ万が一BETAに学ばれたら最悪でござるな」

 

 テクスの最悪の予想に場が静まりかえる。

 

スコア「それは……無いとも言い切れないな」

 

ラリー「レーザーを突然無効化されたらやべえから無限発射ミサイルの改良もやっぱり必要ってことだな」

 

トピア「リスク分散ですね。あ、特定の波長だけしか防げないのなら、レーザーの波長を変えれば良いのでは?」

 

トリオ「理論上は可能じゃが、それにはレーザーの増幅・発射装置全体を変更する必要があるけえ、簡単にはいかんの」

 

テクス「反射を警戒するならプラズマ兵器もあるでござるよ。まあ射程に少々問題があるのでござるが」

 

サティ「それはそれで磁力で防御されない?」

 

テクス「その可能性はあるでござるなあ」

 

トピア「比べると無限ミサイル強いですねえ」

 

スコア「弾着が遅いのと迎撃されるのが難点だが、飽和攻撃出来るほどならどうにかなるからな」

 

マイン「本来高コストかつ使い切り前提でも使われている武器を無限に使えるのだぞ。強くて当然だ」

 

サティ「確かにそうよね」

 

 そもそも地球戦線でBETA相手にあまりミサイルを使っていないのは、砲弾に比べてコストが格段に高い所為である。そのためあまり数が用意出来ず、レーザーであっさり迎撃されてしまうので光線(レーザー)属種を始末してからでないと使えない兵器という位置づけになってしまっているのだ。

 

トピア「まあ突撃(デストロイヤー)級への打撃用にミサイルを調整すると数の多い戦車(タンク)級への対処で手が足りなくなる可能性があるので、秒間4.8連射と手数の多いレーザーもやっぱり要るとは思いますが」

 

テクス「1発当たりの威力が低くてもいいのなら、連射性能に優れるアヴァランチというロケットランチャーもあるでござるよ」

 

トリオ「それもいっぺん見てみたいのう」

 

マイン「それはそうと、貴様ら我が中隊(カンパニー)の優秀なタレットを使う気は無いのか? 耐久力も()()()()なのだぞ?」

 

トピア「あー……」

 

サティ「それはねー……」

 

マイン「何だその目は!?」

 

 トピア達は残念なものを見る目をしていた。

 

トリオ「お主の所のタレットはでかすぎるんじゃよ。例えばランサーでも20m幅を取るけえ、レーザータレットで10基、巡航ミサイルなら1段に20基で更に多段構成が可能になるじゃろ? しかも背丈も無駄にあるけえ、地平線が遠くなる」

 

マイン「ふむ?」

 

トリオ「背丈が2mなら5km先が地平線になるが、背丈が20mなら15km先が地平線になる。つまり光線(レーザー)属種がおおよそその距離から撃ってくるということじゃから、射程をそこまで伸ばさんと一方的に撃たれるんじゃぞ?」

 

マイン「ちいっ、面倒な」

 

サティ「まあまあ、防衛ラインの主力になるレーザータレットでランサーの技術を参考にすると言ってるんだから、カンパニーのタレットそのものを使わなくてもいいじゃないの。貴女ここまででも既に結構仕事を振られてるの気付いてる?」

 

 サティが指摘した通り、マインに振られた仕事はこれまででも既に結構ある。具体的にはコアの大陸全体への敷設、惑星間加速器の建設、ポンプとドリルの設置、加速ドームの設置、IDタグとコアユニットのサンプル提出、フェーズファイバーとシリコンの工場建設、対環境性能の改善とパワー・シャードへの対応、そしてトキソピッドの建造だ。

 

マイン「まあ騎士(ナイト)は頼られるのが仕事だからな」

 

サティ「あ、これ承認欲求をこじらせてワーカホリックになってるタイプね」

 

 マインはいつでも承認欲求に飢えているので出来る仕事は何でも自分でやってしまおうとするところがあり、トピアとはまた別方向のワーカホリックなのだった。

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