【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

62 / 387
 遂に総合評価100ポイントに到達しました。ありがとうございます!

 [2025/12/29]加筆・修正しました。


062. 結局お二人の喧嘩の原因って何だったんです?

トリオ「ではここらで方針決定会議の進行に戻って良いかの?」

 

 テクスとマインの持ち札に関する聴取が概ね終わったと見て、工場長が切り出した。テクスとマインの紛争という非常事態に対応するために朝の方針決定会議が中断したままだったのだ。

 

トピア「その前に一つ確認していいですか? 結局お二人の喧嘩の原因って何だったんです?」

 

 トピアが挙手して問いかけると、テクスとマインが視線を交差させ、まずはテクスの方から証言を始めた。

 

テクス「ラリー殿には既に言ったでござるが、軌道降下中に貰い事故をしたでござるよ。それで文句を言ったら問答無用で撃たれたでござる」

 

ラリー「そうだったな」

 

マイン「いや待て、問答無用で撃ったのは事実だが、ぶつけられたのはこちらの方だぞ?」

 

 早速両者の主張が食い違ったことで(マイスター)達は首を傾げた。信用度ではマインの方が低いのだが、それは承認欲求が高すぎるのと客観視能力が低すぎるのが原因であって、意図的に嘘をつく性格ではなさそうなのだ。マインには、もしくは両者に何が事実の誤認がありそうだということだ。

 

スコア「両方がぶつけられたと申告しているが、実際の所どうなんだ工場長?」

 

トリオ「いや落下物は3つと言ったじゃろ? 衛星観測によると隕石が両方にぶつかっただけで、そこの二人は直接衝突しとらんぞ?」

 

 トリオが壁面ディスプレイに出した写真には隕石が二人の降着ユニットそれぞれに衝突するところがはっきり写っていた。

 

サティ「ビリヤード……それともピンボールかしら?」

 

 ある程度距離があったのに、一方に当たった隕石が跳ね返ってもう一方に当たるなど、とんでもない確率であった。何者かの作為を感じざるを得ない。

 

トピア「とすると、マインさんに文句をつけに行ったテクスさんの言い分も的を外していたことになりますね」

 

テクス「……致し方なし、ここは双方間違いを認めて水に流すでござるよ」

 

マイン「ふざけるなよ、我に筋違いの文句をつけておいてそれで済むと思うのか? 今後後ろに気をつけることを勧めるぞ。不意弾で貴様の命は非常に不味いことになる」

 

 テクスは事実誤認を認めて引き下がろうとしたのだが、不利だった条件が五分に盛り返したとみたマインは逆に攻勢に出ようとした。当然他の(マイスター)達はまた始めたぞこいつという面倒そうな顔をし、代表してサティが説得に当たることにした。

 

サティ「いや弁明も事実確認もせずに問答無用で撃った時点で貴女の過失が大分大きいと思うけど?」

 

マイン「中隊(カンパニー)騎士(ナイト)として道を阻む敵対者を撃つのは当然の措置だ」

 

ラリー「そう言えば職業侵略者だったなこいつ」

 

サティ「だったら最初から問答無用で命を奪おうとしていた相手の敵対行動を咎めるのも筋が通らないと思うわよ? 握手しなさいとか言わないから、せめて今後味方の足を引っ張るような真似は慎むことよ。貴女の信用のためにもね」

 

マイン「……ちっ、命拾いしたな」

 

トピア「やはりサティ姐さんのお姉さんパワーはとどまるところを知りませんね」

 

テクス「大したものでござるね」

 

トリオ「んじゃ会議に戻るぞい。儂の報告の続きじゃが、素材拡張オプションに色々と投入した結果、まずそれらの鉱石に対応した新型工具、次に新型の自動工作機械が開発出来ての。オクタリンの靱性、ガラクサイトの硬度、チタンとレアメタルを元にした形状記憶合金の復元性を活かした新型の自動組立機が、まだ速度と電力と耐久性のバランスを調整中じゃが、動くようにはなった。といったところで嬢ちゃんが時代Lv6に達してダイヤのインゴットを生産出来るようになったんでの。早速スーパーダイヤモンドレンズを作ってみたわけじゃ」

 

 トリオがテーブルの上に直径5cmほどのレンズを2つ取り出した。

 

スコア「おお、これが」

 

サティ「見た感じ濁りも歪みも不均一性も無いわね」

 

トピア「表面がやや青く見えますがこれは?」

 

トリオ「オレンジ波長の反射を低減するための誘電体多層膜じゃぞ」

 

トピア「ああ、反射を抑えるためにも使うんですね」

 

テクス「というかダイヤのインゴット? でござるか?」

 

マイン「人工ダイヤか?」

 

トピア「うちの世界固有の謎技術です。天然ダイヤを超高熱で加工したものですが、実物はこれですね」

 

 トピアが取り出したダイヤのインゴットは他のクラフトピア産金属インゴットと同じ長さ75cm×幅27cm×高さ20cmサイズで、このインゴットから直径5cm厚み1cm程度のレンズなら1,000枚以上削り出せそうなものであった。

 

サティ「実物を見ても割と意味が分からないわね」

 

スコア「見たところ不純物が全く無いな。この品質を確実に維持出来るのならスーパーダイヤモンドと呼ぶのも頷ける」

 

テクス「なるほどこれを元にしておるゆえ、あの完成度のレンズになるのでござるね」

 

トリオ「そんでこのスーパーダイヤモンドレンズ、作ったからにはこの曲率の用途が決まっておるわけでの。早速焦点制御機能付きの新型レーザー防御モジュールに搭載してみたわけじゃ」

 

ラリー「つまりスパイダートロンがぶっ放してたあの長距離レーザーか。射程は?」

 

トリオ「現状で1.5kmに達しておる」

 

サティ「従来の100倍になってるわね」

 

トピア「そういえば装甲も変わって移動速度も大分向上してましたよね?」

 

トリオ「うむ、装甲だけでなくフレームやギアもガラクサイトに入れ替えてみた結果、強度が増して無理が利くようになったけえ、90km/h前後までは出るようになったぞい。大分別物になったけえ、スパイダートロン次世代技術試験型と呼んでおるが」

 

サティ「見違えるような強さになったわよね」

 

 テクスとマインの諍いに乱入しマイン側の戦力を圧倒した新型スパイダートロンの活躍は一同の記憶に新しい。同じ回想でもマインだけは苦い顔をしていたが。

 

トリオ「まあ作業用や技術検証には手頃なんじゃが、実際の戦闘用機動兵器は今後トキソピッドに譲ることになるかもしれんの。スパイダートロンの大きさでは耐久性に限界があって割合修復機との相性が良くないし、発電量の強化も難しいからの。とはいえトキソピッドをベースにしてからもモジュールやブロックへの規格対応、モーターの強化、焦点制御精度の向上など、やるべきことは山ほどあるぞい」

 

スコア「そう言えばそのトキソピッドの機関出力はどのくらいなんだ?」

 

マイン「環境にもよるが、ここでは約15MWだな。方式は再帰型重力傾斜発電だ」

 

サティ「再帰型重力傾斜発電? もしかして時空勾配発電と似たような方式という?」

 

マイン「その発展拡張型だな。実弾タレットを稼働させる程度の僅かな電力を供給するのならば通常の重力傾斜発電で発電量もコストも問題ないが、ここまでの電力を要求されると発展拡張型が必要になる。しかしこちらは発電量に対する設備コストがあまりにも膨大になるので設置型の発電機には使えん。我が中隊(カンパニー)の物資で万単位だぞ? frならば100万単位になるだろう」

 

サティ「確かにそれだけ物資を使うのなら石炭発電所や太陽光発電所でも建てた方がましね」

 

トピア「何か核融合炉と似た感じの微妙に残念な扱いですね。燃料が要らないのは素晴らしいですが」

 

テクス「まあそうなる……というか15MWも出せるものなんでござるなあ」

 

スコア「15MWは機動兵器搭載にしてはなかなかの大電力だな。スパイダートロンの何倍だ?」

 

トリオ「丁度4倍じゃが、100m級の巨体にしちゃあそれほどの出力とは言えんの。レーザー砲を大量搭載してターボモーターで駆動させるなら、モジュールのスロットを大きく取って携帯核融合炉を沢山積んだ方が良さそうじゃ。20基搭載すれば現在と同等、それ以上なら出力向上になる。元々高コストの発電機を搭載しておったなら、資源的にも問題ないじゃろう」

 

サティ「容積を考えるともう少し大型の核融合炉でも良さそうだけど、研究開発にかかる時間の方が問題ね」

 

 性能や生産コストも重要だが、開発に掛かる時間も短縮したい。悩ましいところである。

 

マイン「あとはそうだな、再帰ループを減らした7.8MWタイプが上から2番目のTier4にも搭載されているぞ。特にこの電力を活かした空軍モノ系のTier4にあたるクアッドの半径100m範囲秒間16.35%修復は効果絶大だ」

 

スコア「異様に頼もしいな。まさか修復プロジェクターの6倍とは」

 

マイン「うむ、クアッドと一緒に進軍すればまず壊滅は無いと言われるほどだ」

 

トリオ「やはり発電機よりも専用の修復装置が容積を取ってそうじゃの」

 

トピア「あとは光線(レーザー)属種が出てきた場合に真っ先に狙われそうなので、どう対処するかですね」

 

マイン「我が中隊(カンパニー)の空軍は陸軍にも随行出来るように元々ホバリング機能がある。通常はそれなりに高度を取るものだが、低空飛行も問題は無い。流石に通常高度の限界速度である197km/hは出せんがな」

 

テクス「めちゃめちゃ優秀でござるなクアッド」

 

マイン「フフッ、それほどでもないがな!」

 

 繰り返し誉められてマインの鼻息が荒い。マインはこの状況に我が世の春を感じていた。

 中隊(カンパニー)では業務内容的に下手に顔を晒すと命を狙われる危険もあるので、基本的に外部の人間に戦績をひけらかすことは出来ない。仮にやったとしても個人証明が出来ないので嘘つき呼ばわりである。加えて、部隊内で一定期間ごとに業績を認められることはあっても基本が単独行動なので他の隊員と関わることも少ない。当然装備は同一水準なのでこれを誉められることも無い。ついでに言うと口を開けば自慢と罵倒が飛び出すマイン当人のコミュニケーション能力が壊滅的なので同僚に避けられがちであり、飲み会に誘われることも無い。マインが本当に謙虚ならばそんな状況に陥ることも無かったのだが、下手に実績がある上に当人があまりに実績を誇りすぎるため、周囲の同僚も素直に誉める機会を逸してしまったのだ。

 本人の自業自得でもあるが、承認欲求の塊のようなマインが承認される機会が少ない業務に就いていること自体が承認欲求をこじらせている原因の一端であるとも言えた。

 

 トピアの視界の端でマインのマップマーカーが点滅どころかまばゆく輝きを放って笑顔の吹き出しアイコンまで表示されており、褒め殺しが覿面に効いていることが見事に露見していた。というより、表情を見るだけでも分かってしまうのでトピア以外にもそのチョロさはあっさり知れ渡っていた。

 まあ別に心にも無いおべっかで持ち上げているわけでもなく、中隊(カンパニー)の装備品を誉めるだけで勝手に喜んで裏切りの心配が減っていくのならばこれはこれでWIN-WINの関係なのだろう。中隊(カンパニー)の中でも特に承認欲求をこじらせたマインがここに呼ばれたのもある意味理にかなっていると言えた。

 

トリオ「報告の続きじゃが、あとは物流ロボットと建設ロボットも新素材導入でちっとばかし強化したぞい。そんで今後の予定じゃが、運搬互換性整備の話じゃ」

 

マイン「運搬互換性?」

 

トリオ「うむ、今まで儂と姉ちゃんと嬢ちゃんのコンベアやパイプの相互乗り入れアタッチメントだけでしのいでおったんじゃが、全員揃ったことじゃしそろそろ本格的な整備が必要じゃろ。接続部分で単に太さだけでなく物資単位も一緒に変換した方がええじゃろうしな」

 

テクス「なるほどそれぞれ規格が違う故、必要でござるな」

 

 規格がきちんと統一されていないと酷いことになるのはTechの異様な不安定性でこの上なく証明されているので、テクスの同意には実感がこもっていた。

 

サティ「それで二人のコンベアやパイプラインの最高運搬速度とコンベア幅と物資を含めた高さを教えてほしいのよ。ああ、時間加速は抜きでね?」

 

テクス「Tech用のパイプラインは無いのでござるが、ベルトコンベアは標準速度で1物資/秒、ペースメーカー加速で4物資/秒でござるな。占有幅は1m、高さは物資を含め3mでござる」

 

サティ「つまりそれに60秒と0.36frをかけて最高86.4fr/分、幅あたり86.4fr/分・m、断面積あたり28.8fr/分・m2ってことね。マインは?」

 

マイン「通常の高速コンベアならばチタンコンベアや装甲コンベアの11物資/秒だな。プラスタニウムコンベアは40物資/秒になるが、圧縮・解凍プロセスがボトルネックになるのでそれを解消するための設備が大がかりになる。占有幅は10m、縦に積んだことは無いが、ジャンクションの大きさを見るに高さは30mもあれば足りるだろう。これと別に30m幅のマスコンベアもあるが、これは大型機動兵器の運搬専用だ」

 

 なお段階的に上位機種に改修していく名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の機動兵器建造施設は隣接させて方向を合わせて建造すればそれだけで接続出来るようになっているのだが、それと別にマスコンベアというものが存在するのは、陸上の工場で建造した海軍ユニット、つまり艦艇を工場から水源まで運搬するためである。

 

サティ「じゃあ普通の高速コンベアで121,651fr/分、12,165fr/分・m、406fr/分・m2、圧縮コンベアで442,368fr/分、44,237/分・m、1,475fr/分・m2ってことね。採掘のボトルネックにならないほどの余裕があるのはいいわね」

 

マイン「まあ複数のドリルの出力を1つのコンベアで受け入れるように出来ているからな。そのくらいの余裕はある」

 

サティ「ちなみにそれでも運搬速度は第2位よ」

 

マイン「は?」

 

 マインの自慢げな表情が凍り付いた。

 

サティ「トピアのところのコンベアがね。どういうわけか大きさに関わらず最大1,280スタックも載るのよ。それで通常コンベアが30タイル/分、高速コンベアで90タイル/分だから、最大115,200スタック、1スタックに100アイテム詰めておけば11,520,000物資/分になるわ」

 

トピア「以前は島ごとに128スタックの10倍モードで1,280スタックだったんですが、どうもシームレス化したことで全世界でカウントを共有するのに無理が出て、1チャンク20m×20m×20mごとの限界に変わったようですね。なので実質の限界値はサティ姉さんが述べた数字の1/4から1/64になります」

 

 この仕様を把握したトピアによって、大量の作物を運搬する自動農場は1種類ごとに20m間隔で設備が並べてあるのだ。畑から収穫した直後のアイテムの存在限界は等倍64スタックでやや厳しいという事情もある。

 

マイン「ええい魔法文明(ファンタジー)はこれだから!」

 

サティ「まあ分かるけど、結局長距離の運搬手段はテレポーターになるから、張り合っても意味ないわよ。問題はカンパニーやFICSITの採鉱機で掘削した物資を一旦それぞれのコンベアに乗せてから、他の規格の工場にも流していく過程の互換性だからね」

 

トリオ「まあそういうわけで、全7種の規格に対応したコンバータをコンベアとコンベアの間に挟む形式で今日中に作っておくわい。ああ、Tech用コンベアはあとで現物を頼む」

 

テクス「承知つかまつった」

 

トピア「いつも頼ってすみませんね、工場長」

 

トリオ「工場を回すのが儂の仕事じゃからな。あとは素材拡張オプションとその後の研究の為になるべく多くの素材サンプルを送ってもらえると助かるの。儂からは以上じゃ」

 

 (マイスター)達の工業規格がばらばらな問題は依然として存在していたが、ひとまず資源をそれぞれの工場の規格に合わせて搬入するためのシステム構築は工場長の豪腕でどうにか進められそうであった。




 Mindustry原作にはユニットの発電力設定は勿論無いわけですが、

・修復プロジェクターの6倍ほどの修復力を誇るクアッドがTier4にいるので900kW×6で5.4MW程度の発電力はある筈、駆動動力と合わせて7.5MWくらい? 7.8MWだと丁度建造時電力と同じになるね
→Tier5ともなればそれ以上の発電力の筈、となるとやっぱり建造時電力と同じにして15MW?
→ゲーム内1,500かつ燃料も消費しない驚異的発電量を何故発電設備に使わないのか
→やはりバカ高い建造コストが問題か

 という感じになりました。

 ところで何故立て続けに惑星降下イベントや墜落事故が起きているかというと、原作ゲームでSatisfactory、Factorio、TerraTech、Mindustryという科学系4作品全てが惑星降下から始まっており、そのうちFactorioとTerraTechは墜落事故という形になっているからです。
 中でもTerraTechだけはオープニングで明確に何かにぶつかられた描写があり、つまり因果強制力から言うとマインの方が貰い事故になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。