【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2025/12/31]加筆・修正しました。


064. いよいよBETAとの陣取り合戦の様相を呈してきたな

 サティの報告が終わり、業務規模の順番からすると次はマインの番である。

 

サティ「順番的には次はマインの番だけど、既に聞きたいことはあらかた終わってるわね。何か言いたいことはある?」

 

マイン「そうだな、まずは戦略目標を明確にしておきたい。この星のハイヴを全て攻略するということで間違いないか?」

 

 マインが問いかける相手は当然匠衆(マイスターズ)の代表となったトピアだ。

 

トピア「その通りです。全てのハイヴを攻略して重頭脳(ブレイン)級並びに頭脳(ブレイン)級、加えてもしいるなら超重光線(レーザー)級を討滅すればこの星のBETAは恐らく活動停止、最低でも意味のある行動を取れなくなります」

 

サティ「うん? トピア、今何で超重光線(レーザー)級もカウントしたの?」

 

トピア「超重光線(レーザー)級は頭脳(ブレイン)級の材料と機能を含むために量産できないと目されているからです」

 

 つまり超重光線(レーザー)級も司令塔の一つである可能性が高いということだ。

 

ラリー「超重光線(レーザー)級と言えば、例の射程6,000kmの化け物だよな?」

 

トピア「はい、なので光線(レーザー)属種自体の出現をなるべく遅らせつつ、攻勢開始後は半端に追い詰めて超重光線(レーザー)級が出現しないように一気に攻略する必要があると考えています」

 

マイン「ふむ、では次に戦略方針だ。鉄壁の防衛ラインを備えた上で強力無比な機動兵器でハイヴを落としていく、それを圧倒的生産量とロジスティクスで支えるということで相違ないか?」

 

トピア「現状採択している方針はそうです。実は可能でさえあればもっと手っ取り早い方法もあるのですが」

 

サティ「えっ、そんなのあるの?」

 

 (マイスター)達の中でもトピアとの付き合いが一番長いにもかかわらず今初めて聞かされたサティが驚きの面持ちで問いただす。てっきり武力による制圧以外の方法は無いと思っていたのだ。

 

トピア「はい、具体的には司令塔のハッキングです。ただ現状連中がどうやって通信してるのかすら不明ですので、確実性が低いです。だからと言ってハッキングのために中枢に乗り込むのなら普通に戦うのと変わりませんし」

 

サティ「……まあそうなるわよね」

 

トピア「なので、生産自動化のプロが揃っているからこそ可能な、BETAの物量を正面から受け止めて叩き潰す王道の米帝戦略を目指しています」

 

マイン「ククッ、それならば我が今まで星々を制圧してきたやり方と大きく変わらんな。むしろ条約の縛り無しで戦えるだけ楽というものだ。任せておけ」

 

 マインは自信満々に言い放った。それは結構なのだが、マインは何に対しても無駄に自信満々なので、この宣言にどの程度確実性があるのか傍目には分からないのが困ったところだ。

 

トピア「注意すべき点としては、連中は地中を侵攻してきたり他の星から着陸ユニットを飛ばしてきたりすることがあるので、自動且つ完全な防衛体制を作り上げるのは大分苦労するということですね」

 

サティ「実際この大陸の中央に直接着陸ユニットが来たこともあったからね」

 

テクス「油断も隙もあったもんじゃないでござるなあ」

 

トピア「降ってきたばかりの着陸ユニットなら大した勢力ではないので初期対応を間違えなければどうとでもなるんですが、こちらから攻めている最中にカウンターで来るとか、複数同時に飛ばしてくるとかされると非常に困るんですよね。地中侵攻への備えはまず振動計など地中探査装置の配備からですね」

 

マイン「ふむ、地中については前線近くにコアを設置すれば資源探査のついでに探知出来そうだな。確か確認出来ている限りで最大4km程度の深さなのだろう?」

 

トピア「それは助かりますね」

 

サティ「でもカンパニーのシステムは不安定で度々止まるんじゃなかった?」

 

マイン「止まるとはいえ最長で1分にもならん。地中侵攻の監視用途ではその空白で手遅れになることはあるまい」

 

サティ「なら許容範囲……なのかしらね?」

 

トリオ「まあ現状で最有力じゃから採用はするとして、不安定な原因は探っておくべきじゃの」

 

スコア「しかしこうなると、いよいよBETAとの陣取り合戦の様相を呈してきたな」

 

ラリー「まあ勢力図が分かりやすくていいんじゃねーの?」

 

トリオ「飛んでくるのはどう対処するかの。レーザーが届かん距離じゃとすると、衛星からの核攻撃でもするか?」

 

トピア「地球の戦い方だと、地球と月の間の軍事衛星からの核攻撃で軌道変更していた模様ですね」

 

スコア「核攻撃でも撃破じゃなく軌道変更なのか?」

 

トピア「恐らく火力を集中すれば撃破も可能だと思いますが、宇宙空間で毎回それをやるのは物資的に辛いので地球に来なければ良しとしたのではないでしょうか」

 

テクス「しかしトピア殿はよくそんなの倒せたでござるな」

 

トピア「その頑丈な外殻が解体中だった上に、重頭脳(ブレイン)級も起動直後で戦力不十分でしたので。なので即時対応可能な状態で降ってきた着陸ユニットはカモですよ」

 

サティ「いや普通の人間には無理だから」

 

 その言葉にトリオとテクスも深く頷いた。

 

トリオ「地球と月の間となると、ラグランジュ1か? 衛星の打ち上げとはまた違った対応が必要になるの。それこそ惑星間加速器の世話になる必要があるかもしれん」

 

マイン「いや待て、その前に連中は必ず月から来るのか?」

 

トピア「一概にそうとは言えません。地球の場合は月がBETAに征服されていたのでそこから飛ばされていましたが、他の惑星から飛んでくる場合もあります」

 

マイン「それだけか?」

 

トピア「と言いますと?」

 

 マインがやけに食い下がってきたが、どうも自己顕示欲の類いではなさそうだと察したトピアが逆に意図を問い質す。

 

マイン「我が中隊(カンパニー)であれば、()()()()()()()()()()()()ぞ。BETAが我らと似たような拠点運用をするのであれば、その可能性を考慮すべきだ」

 

トピア「あっ」

 

 言われてみれば着陸ユニットの射出機能があるのは惑星外のハイヴだけではない。同じ星の裏側から着陸ユニットが飛んでくるとなれば、攻撃衛星で外側に対処するだけではカバーしきれない。トピアはその危険性に気付いて覿面に表情を変えた。

 

スコア「言われてみればあり得る話だな」

 

サティ「どうなのトピア?」

 

 サティが確認すると、トピアは数秒思案してから見解を述べた。

 

トピア「そういった前例は聞いたことがありませんが、確かに出来ないと決めつけるのは早計ですね。ご指摘ありがとうございます」

 

マイン「フフ、我にとっては造作も無いことだ」

 

 相変わらずのビッグマウスであるが、軍事方面の実績はあながち嘘ではないかもしれぬと(マイスター)達の中のマインの評価がやや上昇した。しかし当人の自画自賛が酷いのでそれでも「全くの法螺話」が「話半分」になった程度であった。

 

トリオ「しかしそうなると軌道上での迎撃は益々猶予が無くなるの」

 

トピア「当面の対応としては、最初から対応用の人員を残しておくか、侵攻中でもカウンターを察知したら対応可能な人員を戻すかですね」

 

サティ「即時急行出来るようにするには、内地にもテレポーターを配備する必要があるわね」

 

マイン「む? コア同士のリンク機能を使えば人員くらいなら瞬時に移動出来るぞ?」

 

トピア「何と!?」

 

 マインがもたらした新情報に(マイスター)達がどよめいた。

 

スコア「そんなことが出来るのか?」

 

マイン「基本一人で自軍の陣地を広げつつ、敵が攻勢を仕掛けてきたら速やかに対応しなければならなかったのだ。そのくらいの機能はある」

 

サティ「となると、コアとコアの中間地点が1,000kmくらいだから、コアに転移してそこから943.2km/hのガンマで移動すれば1時間と少しで現場に急行出来るわね。十分実用的よ」

 

スコア「むしろポータルが不要にならないか?」

 

サティ「スクランブル以外にも拠点や重要地点への円滑な移動にはポータルが必要よ。ポータルに比べコアの生産コストは文字通り桁違いに重いのだから、ポータルの量産計画は今まで通り進めましょう」

 

スコア「ふむ……了解した」

 

サティ「それで、マインの確認事項は以上でいいかしら?」

 

マイン「問題ない」

 

 マインの順番が終了しようとしたところで、トピアが挙手して追加の質問をした。

 

トピア「一つ気になってたんですけど、カンパニーの機動兵器って基本遠隔操作や自動操作ですよね? 地底4kmまでの操作って可能なんですか? あと通信が届かない環境で完全に自動にした場合どの程度働けますか?」

 

マイン「出来んことはないが、それだけの深度となると余裕が無い。動きが鈍くなるかもしれんし、通信妨害次第では動作も保証出来ん。完全自動操作は射程が有利でも構わず突撃するなど動作が単純になるので、あまり勧られたものではないな。手動で操作する隊長機に随伴させて火力増強や修復に使った方が余程役に立つぞ」

 

サティ「自動操作の事情はスパイダートロンと似た感じのようね」

 

トリオ「となると、通信も強化検討項目じゃの。確かFICSITの無線制御ユニットが大分優秀な筈じゃな? 相互に参考にするとええかもしれん」

 

サティ「無線制御ユニットならもう生産ラインがあるから現物を出せるわよ。個人用の無線機もそろそろ人数分揃えたいと思っていたところね」

 

トリオ「そこも一緒に検討してみるかの……業務円滑化に必要じゃから、早めにやっておいた方が良さそうじゃの」

 

トピア「テクスさんの通信事情はどんな感じですか? 確か物資を通信販売で購入出来たんですよね?」

 

テクス「長距離通信は交易所による中継を前提にしたものでござったからなあ。同じ惑星上で遠方のAI稼働Techの制御にも支障が出るくらいだったゆえ、あんまり参考にならんと思うでござるよ」

 

トピア「そうですかー」

 

サティ「それで次はテクスの番だけど、何かある?」

 

テクス「うーん、そうでござるな。土台無理と思って提案してなかったでござるが、Techの通信を改善できればロジスティクスに貢献できるかもしれんでござるよ」

 

サティ「何それ、詳しく」

 

 テレポーターロジスティクスの時は特に提案が無かったテクスの話に、サティが即座に食いついた。

 この広大な星を舞台とする以上、輸送の効率化は少しでもしておきたいところなのだ。

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