トピア「さて、最後に私の装備の強化ですね。まず
トピアがエンチャントシミュレーターを操作して次の装備セットをディスプレイに出した。
トピア「はい、普通ですね! その代わり汎用性が高いので、状況に応じてヒルデブラントをつるはしや斧に、片方のロザリオを探知機に変えて使っています。ちなみに技倍率3.2はドラゴンフォールの連続ヒットカンスト時の倍率です」
スコア「確かに今までの強化プランから比べると大人しいものだが、強化前でこれか」
ラリー「そのドラゴンフォールってのはどんな技だ?」
トピア「敵の上にジャンプして、槍を下に向けて突き刺すたびにまたジャンプする技です。そこそこ使いやすいですが、重力加速度に左右されるのであんまり高速化できません」
テクス「それ以前に刺さった槍を抜きながらジャンプするのは無理がないでござるか?」
トピア「正直私もそう思いますが、そういう技です」
テクス「ファンタジーは自由でござるなぁ」
トリオ「他の二人と比べて基礎能力が妙に高くないかの? レベル幾つ換算じゃ?」
トピア「ああ、これはLv.60なんですけど、ミッション達成報酬や図鑑埋め報酬で微量ずつ積み重ねていった結果です。図鑑は確かアヌビス様のステータス付与でも対応してない部分だったと思いますが、ミッションのステータスアップってどうなんでしょうか?」
アヌビス神「XXX(ミッションを達成すればその報酬分は付与して進ぜよう)」
トピア「とのことです。図鑑に関しては、仮に対応していたとしても時間効率がかなり悪いのでお勧め出来ません」
トリオ「ふむ」
スコア「武器のエンチャントコストが18になっているが、これは旧来のエンチャントテーブルで作ったからこうなっているのか?」
トピア「いえ、これはホットドッグでもお見せした
スコア「うん? 確か確率で素材のエンチャントを引き継ぐという? この構成だと相当確率が低くならないか?」
トピア「はい。成功率は最悪0.1%を下回りますが、成功率が1/1,000ならば成功するまで1,000回以上繰り返せばよいのです」
マイン「何だその地獄のような作業は……」
マインが理解出来ないものを見る目でトピアを睨む。
トピア「慣れれば大したことはないんですけど、やってる人は少数派でしたね。素材集めのハードルは高いですが、それに関してはうちの工房の素材を使い放題にしてたんですけどねー」
サティ「これはクラフトピアンじゃなくてトピアがおかしいパターンじゃないかしら?」
トピア「失礼ですね、上位陣にはそれなりにいましたよ?」
テクス「苦労して集めた素材を他人に開放してたのでござるか?」
トピア「管理権を独占していないワールドへの出入りを利用するとバイバイン法で幾らでもアイテムを複製できましたからね。そうでもなければ流石にタダであげたりはしません」
テクス「そういうものでござるか……?」
スコア「うむ、トピアさんの優しさが良く分かるエピソードだな」
ラリー「優しさ……なのか?」
スコアは大分好意的に解釈しているが、首を傾げているのはラリーだけではなかった。
トピア「話を戻しまして、次にこちらがヒルデブラントとアスクレピオスの盾に修理台強化を施し、装備箇所を5つ増やして合計13箇所の装備枠を埋めたMk.5です」
サティ「Mk.5? 4は?」
トピア「以前作った失敗作がMk.4なのでその次の5になりました」
スコア「そういうことか」
テクス「やはり物作りは試行錯誤でござるなあ」
トピア「マナサイフォンをかけた状態で与ダメージ2.61倍と、それなりに順当な強化になっています。あとはエンチャント強化枠を武器枠からアクセサリ枠に移動してますね。影響は僅かですが」
スコア「順当と言えば順当な強化だな」
トピア「そしてモディファイアをつけてモルファのリングを一つ光のロザリオにしたのが次のMk.6です」
サティ「あまり変わってないわね」
ラリー「というか何故片方だけ? 大分強そうなアクセサリだが」
トピア「両方変えると逆に弱体化したので。あと前のバージョンでロザリオを使ってないのは、材料をドロップするサンドイーターワームをまだ見つけていないのと、見つけても材料が50個必要で結構労力がかかるためです。ですので、ほぼ代用になるモルファのリングが簡単に揃いそうなのは非常にありがたいですね。というわけで次は
スコア「やはりこの時点で一撃486万は圧倒的だな」
ラリー「あれはびびったよな」
トピア「とはいえ与ダメージ倍率とマナサイフォン3倍は装甲突破判定の後にかかるものなので、基礎ダメージは100万未満なんですよね」
テクス「はて、
トピア「はい、その通りです。しかし居合斬りは標的のどこに当てても自動的に胴体に当たったことになるので、胴体の非装甲部分を攻撃したことになるというからくりですね」
トリオ「嬢ちゃんが真っ正面から真っ二つにしたもんじゃから、スパイダートロンのレーザーでも簡単に抜けるじゃろと思って酷い目に遭ったぞい」
トピア「その節は碌に説明もしておらず大変申し訳ありませんでした」
トリオ「まあええわい」
トピア「それでこの装備の特徴なんですが、居合斬りの際には下部の紫色部分、クリティカルダメージ倍率150%とクリティカル率100%が固定になっています。ですのでクリティカル関係を積まずに
スコア「なるほど、ルーンソングを居合特化にすると汎用性が下がるというのはそういうことか」
トピア「はい。あと自前の居合斬りとは別に試練の狐面に居合斬りLv.1が付いているお陰でスキルのクールダウンタイマーが2並列になって2連発できるので実際のDPSは47万ではなく82万程度になりますが、2回目の居合斬りは倍率が下がって45倍になり、入力欄の関係で2つ別々の倍率を指定出来ないので、単発ダメージ486万の表示優先で65倍だけ入力してあります」
テクス「技1つで攻撃力65倍というのも大概でござるな」
トピア「そしてジークフリートを修理台強化して、エンチャント強化をアクセサリに移して、装備欄を5つ埋めてエンチャントをつけたのが次のMk.3です」
トピア「1.64倍、まあ元から攻撃力が高かったのでそれなりには強くなってますね。それでスコアさん、この装備に使うためにオモロスのクチバシを2つお借りしても大丈夫ですか?」
スコア「そうだな、私の強化予定装備の中には入ってないから構わないぞ」
トピア「ありがとうございます! そしてモディファイアをつけてオモロスのクチバシを光のロザリオに変更したのがこちらのMk.4です」
サティ「ああ、借りるって本当に最終的には返すつもりなのね」
トピア「とはいえ光のロザリオでも性能的にはそこまで変わらないので、結構長い期間お借りすることになるかもしれません」
スコア「構わないさ」
何しろスコアとしてはトピアに頼られるほど存在感が増して嬉しいのだ。
マイン「何かこう……微妙に気に食わんな? 頼られるのは我であるべきだと思わんか?」
テクス「キャラ被りを訴えられても知らんでござるよ」
トピア「ではこの
トピア「どうですかこれ、どうなってるのか分かります?」
サティ「魔法クリティカル倍率はすごいけど、
ラリー「まさかマイナスにマイナスをかけてプラスになってるのか?」
トピア「そう見えるでしょう、私も師匠に最初にこの空回りアセンを見せてもらった時にはそう思いました」
サティ「あっ、これ師匠直伝なのね。なんか早くも納得したわ」
サティには既に師匠は大分おかしな人だというイメージがあった。
トピア「まずMATK%の倍率がどこにかかっているかというと、その左隣のMATKだけにかかります。そしてMATKは0未満が全て0と見なされます。つまり0にどんなマイナスをかけても0になるわけです。そして少し右の方になるMATK/MP、つまり『マナのn%MATK増加』はこれらとは全く別計算になるので、0になったMATKに2,285×1.38=3,153がそのまま加算されるわけです。フルエンチャントで
ラリー「言われてみれば武器の性能が何一つ記入されてねえな? こんな武器があるのか?」
トピア「実はこのエンチャントテーブルは武器ではなく設備です。設備だと使っても耐久が減っていかないので、対多数戦闘や繰り返し戦闘にとても便利なんですよ」
テクス「はー……よく考えたでござるなこんな変態的なビルド」
トピア「
サティ「その名前だとお金の力で殴るみたいに聞こえるわね」
トピア「まあクラフトピア世界における札束は、単に預金可能額を増やすためのアイテムなんですけどね。そしてこちらが改良版のMk.3ですが、実は殆ど強化出来ません」
サティ「8%しか変わってないわね?」
トピア「このタイプの打撃力を増すには 不安定な をできるだけ沢山積んでいく必要があるんですが、エンチャントスクロールのラインナップに 不安定な が存在しないので、ここの施設では根本的な強化が出来ないのです。また、 金天に舞う でクリティカル倍率を少しずつ増やしていますが、同時に
サティ「そう言えば前に言ってたわね、ステータスが伸びすぎると基礎
トピア「はい、それがこの状況です。ちなみにこれにモディファイアをつけたMk.4でも大きく改善されません」
スコア「ああ、この場合モディファイアでマナを積んでいくことになるんだな」
ラリー「あーそうだ、片手間に集めてたステータス強化アイテム、マナ+180は一人分集まってるんだが、攻撃力に直結するならトピアが使うか?」
ラリーがテーブルの上に9つのマナクリスタルを出して提案した。
トピア「えっ、いいんですか? 他に急ぎでマナを増やしたい人いませんか?」
トピアが
トピア「ではありがたく使わせていただきます。それで今日の予定なんですが、最初にモルファ狩りに行って、戦闘班三人分のエンチャント強化を済ませて、畜産施設を拡充して、湖の南南東の毒沼でハイドラを討伐してワールドLv7に進めるつもりです。ただ距離が1,000km以上あるんでですね、マインさんのところの予備のガンマを貸していただけませんか?」
ガンマならばこれまでの他の乗り物の最大速度を何倍もぶっちぎる最大943.2km/hの速度が出るので、1時間と少しで現地に到着できるのだ。
マイン「……いいだろう。だが、条件がある」
トピア「条件、ですか?」
マイン「我が装備にもエンチャント強化とやらを施すのだ」
トピア「えっ、これ乗り物や銃器には効きませんよ?」
エンチャントは着用するものや手足で振り回すもの、或いは魔術的なものには効果があるが、機械式・電気式のものには全く効果が無いのだ。もしそんなことが出来るのであればとっととスパイダートロンを強化しているところだ。
マイン「そんなことは分かっている。先祖伝来の装備一式を強化せよと言っているのだ」
トピア「それなら出来ますが、指揮官がわざわざ前線に出て生身で戦うんですか?」
マイン「貴様だって代表だろうが。そもそも、
トピア「アッハイ」
テクス「あっ、これ羨ましくなっただけでござるな?」
マイン「何も貴様にガンマ1機を貸し出すだけでそれをやれとは言わん。全員分のガンマに操縦マニュアルと訓練用シミュレーターまでセットで用意してやるが、どうだ? 勿論メンテナンス設備も使って良いぞ」
トリオ「それは大陸中を整備するのに大いに助かるの」
サティ「有りなんじゃない? 手が空いた時にやってあげれば?」
トピア「うーん……わかりました、他に優先の仕事が無ければやりましょう。それでどんな装備を強化すればいいんですか?」
マイン「そうだな、この制帽に制服上下、貴様に没収された先祖伝来の剣と盾だ。後は適当に見繕ってくれ」
トピア「ああ、このグラットンソードとケーニヒシールドですか。グラットンすごいですね!」
捕縛の際に没収した剣と盾をトピアがテーブルの上に出した。青地に金色の縁取りの盾はともかく、剣は全体的に黒く尖った部分の多い禍々しいデザインである。
マイン「フッ、それほどでもない。だが貴様、グラットンソードの価値が分かるとはニンジャにしてはやるではないか」
トピア「ええ、
マイン「は?」
トピアの答えが意外だったらしく、グラットンソードを褒められて上機嫌だったマインはまず意表を突かれた表情をし、その後明らかに機嫌を損ねた表情になった。
マイン「レプリカだと? やはりニンジャには本物の価値は分からんようだな」
トピア「いやこれ、普通の鉄の剣と盾くらいの性能で特殊能力も何も無いんですけど、本物と言い張っていいんですか? グラットンソードってそんなものでしたっけ?」
グラットンソードの評価は謙虚なナイトのメイン装備として割と一人歩きしているのだが、流石に普通の鉄の剣と同等ではないだろう。
マイン「何だと……!? いや、そうか。道理で幾ら練習しても伝説のグラットンスウィフトが使えんはずだ。我が才能が足りないせいではなかったのだな」
どうやらマインにも思い当たる節があるようだった。
しかしグラットンスウィフトとはグラットンソードで放つスウィフトブレードのことであり、このスウィフトブレードは片手剣用の汎用スキルなので別にグラットンソード固有の技でもなければグラットンソードを使うことで何か特殊効果が発生するものでもないのだが、伝説が微妙に間違って伝わっているようだ。またトピアもその辺りのことまでは知らないので、ツッコミが不在であった。
スコア「最初からレプリカだったのか、途中ですり替えられたのか、どっちだろうな?」
サティ「えーその、ご愁傷様?」
トピア「私としては先祖代々ブロンティストという所にまず驚いてるんですが、それはともかく、鉄の剣と同じくらいの強化は出来ると思いますけど、どうします?」
マイン「いや待て、貴様ら仮にも
トピア「作れるとしたら工場長ですが、今手が空いてないですよね?」
トリオ「優先すべき仕事がかなりあるの」
マイン「チッ、この際順番が後になるのは仕方ない。その代わり我が名に恥じぬものを作ってもらうぞ」
ドワーフが作る武具ならば品質にも期待出来そうだと考えたマインは、納期については妥協することにした。
トリオ「うむ、それで材質は何なんじゃ?」
マイン「口伝によると黄金の鉄の塊とも言われるのだが」
テクス「黄金なのか鉄なのかどっちでござるかね?」
サティ「或いは合金かしら?」
スコア「合金なら真鍮のように金色に見えるものもあるが、強度的には鉄にも及ばないな」
マイン「それだけ既存の概念では言い表しがたい特別な物質ということだ。だが幸いここにはその手の不思議物質が色々とあるのだろう? この際強ければ文句は無い」
トリオ「んじゃ候補はルミナイトかの」
ラリー「ルミナイトで武具を作る場合は
サティ「その
マイン「やはりBETAはバラバラに引き裂いてやる必要があるようだな!」
予期せぬ理由でマインのBETAへの殺意が高まったのだった。
なおトピアはマインが真剣な顔で黄金の鉄の塊と言い出したあたりからずっと笑いをこらえていた。