【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 第4章開始です。


第4章:クラフトピアン VS シームレスワールド
072. レッツ・オモチツキ!


 昼食後、トピア達はコア001でコアユニットの操縦訓練を受けることになった。

 とはいえやることはそれほど難しくない。名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)のユニットは基本的に遠隔操作であり、シミュレーターと実機の違いは機体側を実際に動かすかどうかの差でしかないのだ。

 加えて操縦するユニットを即座に切り替える機能も標準搭載なので、修理どころかメンテナンスも発進前のコンディションチェックも全て自動である。ただそこまで自動化されていてもパイロット自身が機体の状態を正しく理解出来ないとどうしようもないので、そのあたりのログの読み方と注意点が教え込まれることになった。

 そしていよいよシミュレーターを使った操縦訓練となったわけだが、これも存外に簡単であった。セルプロ型コアユニットの最上位であるガンマは航空機ではあるが、垂直離着陸機能から派生してほぼ完璧に空中静止するホバリングやロール軸を傾けないその場での瞬時の方向転換までが可能だったのだ。これはコアユニットが主に建築に使われるユニットであり、そのためには常に水平を維持する必要があるからこそ備わった挙動だ。

 そして肝心の操縦インターフェイスであるが、まさかの6ボタンツインスティックであった。航空機型から人型、多脚型まで共通の操縦席なので、これが一番汎用性が高いらしい。

 

トピア「これは分かりやすくていいですね! これが旋回、上昇、下降、横移動、前進、ブースト、攻撃ですよね?」

 

マイン「貴様何故瞬時に順応しているのだ……?」

 

トピア「ツインスティックは師匠に習いました! あ、ダッシュ攻撃とか近接攻撃とか無いんですか?」

 

マイン「そんなものは無い」

 

 教える側のマインが困惑しているが、ツインスティックは古くはサイバーコマンドー、その後バーチャロンや戦場の絆にも採用された由緒ある操作インターフェイスである。

 とはいえ孤児から社畜への道を辿ったトピアも実際にそれらのゲームをやったことは無い。トピアが存在を知ったのは理想郷の建設者(クラフトピアン)になってからで、将来きっと役に立つという名目で師匠に誘われたイマジナリーバーチャロン対戦会が原因である。

 Techの無限実弾の際に言及したリバースコンバートなどのバーチャロン基本設定はその対戦会の時に一緒に習ったものだ。

 初期の対戦会は、ドローンコントローラーの小さなスティックにまさに取って付けたような延長大型スティックとトリガースイッチをくっつけて水鉄砲付きの撮影ドローンを動かすものであった。当然ごっこ遊びでしかなく、トピアもそれを分かって遊んでいた筈なのだが、きっと将来役に立つという預言のまさかの的中にトピアは大興奮である。

 思い返してみれば対戦会を重ねるほどに何者かの手によってドローンもコントローラーもアップデートされており、徐々に人型ロボットの動きが出来るようになって、しまいには近接戦闘にすら対応していたものだ。やはりあれだけ本格的に取り組んでいたからには、このような事態を見越しての訓練の意味があったに違いない。

 そのような思い込みで益々トピアの信仰心が高まるのは勿論、周囲にも師匠の実際には存在しない凄まじい先見性が間違って伝わっていた。

 

サティ「本当にトピアの師匠って何者なのかしらね?」

 

ラリー「こんな事態まで想定してたってのはびっくりだよな」

 

スコア「くっ、ハードルが上がる……!」

 

 スコアが恋敵の手強さに唸っている間にもトピアは訓練をこなし、レインやトキソピッドの操縦もこなしていた。

 ツインスティックによる操縦インターフェイスは視界の中心に捉える以外にロックオン対象の指定手段が無いのが難点なのだが、カンパニーの操縦システムでは視線検知でこれを補っている。言わば欠点を補った完全版ツインスティック・インターフェイスである。カンパニーのユニットは敵と戦う以外にも建造・解体のたびにこの対象指定が必要になるため、即座に対象指定出来ないと使い物にならないのだ。

 

テクス「うん、なかなか良い操作系でござるな」

 

 トピアと同じくらい順応が早かったのがテクスだ。そもそもTechでは一つのコントロールユニットで車両、装軌車両、ホバークラフト、回転翼機、固定翼機、反重力マシン、更にはそれらの複合まで操縦するので、多少操作方法が変わったところでそれに対応するのは慣れっこなのだ。小人族(ランティノイド)自体の種族特性として操縦適性が高いというのもあり、それがわざわざ小人族(ランティノイド)に合わせたTechという規格が生まれた理由でもある。

 残りの順位としては、その次がスパイダートロンでの戦闘に慣れているトリオ工場長、車両や列車を乗り回しているサティ、最後に自動車免許持ちのスコアとUFOの操縦経験があるラリーが同着と言ったところであった。つまり操作に苦戦するような者はいなかったので、やはりツインスティックが優秀なインターフェイスであることが証明された形になった。

 

 シミュレーターとはいえ師匠から習った技能で実在巨大ロボットを動かすという望外の機会にテンションが上がったトピアはこのまま対戦会でも始めたい気分であったが、流石にこの状況で仕事の邪魔をするのが致命的事態を引き起こすことくらいは理解出来たので、不本意ながら自重することにした。

 

 シミュレーター訓練終了後、ガンマの実機訓練に移った。基本的には遠隔操作するものだが、移動に使うならば本人が乗らないと意味が無いからだ。幸いと言うべきか、そういった用途も見越してコアユニットには有人操縦用の操縦席が元々ついていた。

 コアユニットは建設がメインの仕事なので、操縦席は足元が透明になっており、下方視界が大きく取られている。この点が地上探索にも有利だった。足元を透明にしても目の前に操縦桿があると視界を阻害するため、左右の操縦桿もシートの肘掛けの先に付いている形だ。

 有人操縦のためには加速Gに耐える必要があったが、トピア、サティ、トリオ、ラリー、スコアはレベル上昇による人間離れした身体能力を持っていたし、まだレベルが上がっていないテクスも元々航空機型を含むTechの操縦者であるためある程度の加速Gには慣れていたので問題は無かった。

 ガンマにはこれからトリオ機をベースとして複合建設機能やTechインベントリの搭載など色々な改造が待っているが、ひとまず(マイスター)達の移動能力が格段に向上することになった。

 

 

 操縦訓練を終えたトピア、ラリー、スコアの3人はポータルでモルファ狩りに赴いた。

 まずはスコアが真紅石のくわで『すべりやすいスライムの地面』を除去して足場を整え、同時にラリーがゼニス(Zenith)で周囲のブルースライムを討滅する。あっという間に周囲が片付き、スライムの地面に隠れていた召喚陣が姿を現した。

 

トピア「ここがモルファの出現ポイントですか。目印があって分かりやすいですね。では手順通りにお願いします。レッツ・オモチツキ!」

 

 事前説明を受けていたラリーとスコアが頷く。

 召喚陣から3m程の距離に円環魔導士の装(フォーム・サーキュラー・ソーサラー)Mk.2装備のトピアが立ち、マントラLv6(Max)、マジックシールドLv6(Max)、マナサイフォンLv.6(MAX)を自分にかけてからボールライトニングを発動。6.75秒のクールダウンを挟んで更にもう一度発動。2体の雷の精霊が待機状態になったところでラリーがアヌビスの免罪符を読み上げる。

 

ラリー「アヌビス神の名において汝の罪を許す」

 

 免罪符が消えていくのと同時に召喚陣が輝き、水棲生命体モルファが水色の巨体を現す。このモルファはジャンボスライムの一種で、足元を滑らせる『すべりやすいスライムの地面』をまき散らしながらジャンプ踏みつけや全方位泡飛ばしなどで攻撃してくるボスモンスターだ。

 召喚成功と見たスコアが悲願の罪の薬を一気飲みしてその場の全員にドロップ10倍バフをかける。免罪符での召喚が成功しなければ数を揃えるのが若干面倒な『ジャンボスライムの召喚像』を使うつもりだったが、その必要は無かったようだ。

 そして召喚が完了した直後に2体の雷の精霊からそれぞれ1発10万ダメージほどの雷が放たれ、直撃を受けたモルファが爆発を始めた。念のためラリーがゼニスを構えていたがその必要も無かった。モルファが砕け散った後にはドロップアイテムが入ったモルファの宝箱が残される。これをスコアがつるはしで叩いて中身ごと乱暴に回収し、同時にラリーが免罪符を読み上げる。

 

ラリー「アヌビス神の名において汝の罪を許す」

 

 そして出現したモルファが雷に撃たれて爆散し、そのドロップアイテム回収と次の召喚が始まる。トピアは延々バフとマナを切らさないようにボールライトニングを唱え続けるだけだ。

 この一連の流れ作業の繰り返しがクラフトピア名物、餅つきである。悲願の罪の薬1つあたりの効果時間が63秒なので、それを最大限利用すべく最速でボスを倒し続けるのだ。つまり1回のループを10秒まで縮めれば6回、5秒まで縮めれば12回、確率10倍でドロップ品回収が出来ることになる。一人でも大して効率は違わないと思えるかもしれないが、インベントリが溢れてしまった場合に役割を交代してチェストに収納する余裕があるのが多人数制の良いところだ。

 三人はこれを20分ほど続けて30個のモルファのリングを入手した。現在の必要数は14個だが、今後必要になるかもしれないので多めに確保しておいたのだ。

 

トピア「十分な成果ですね。ではコアベースに戻って装備の強化に入りましょうか」

 

スコア「アヌビス神の偉大さが身に染みるな」

 

ラリー「俺はまたあとで合流するからスコアの分を先にやっといてくれ」

 

 ラリーには一度装備を分解してルミナイト(Luminite)鉱脈を設置し、それから東海岸に仮拠点を設置してくる仕事があるのだ。

 

 斯くして必要なアイテムを揃えた三人の装備強化が始まるのであった。

 ただその前にモルファのリング以外の余剰ドロップ装備をコアベースまで往復して持って帰る作業が待っていたのだが、トピアとスコアがそれに気付いたのはラリーがそそくさと去った後であった。

 トピアが後片付けをサボられたと感じる一方で、スコアはラリーのナイスアシストに感謝したのは言うまでもない。

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