時代の祭壇前。トピアが必要な情報の確認を終えたのを見計らってか、頭上からカミールが疑問を投げかけてきた。
カミール「そろそろ質問してもいいかな?」
トピア「何でしょう?」
カミール「もしかしてなんだが、この遺跡を起こしたのはキミかい?」
トピア「……分かりますか」
カミール「まあ、これだけ状況証拠が揃えばね。つまりキミ……クラフトピアンは文明を進めて普及させる使命を負っている、ということでいいのかな?」
トピア「そうですね」
考古学者を名乗るだけあり、それなりに頭が回る人物のようだ。ただの遺物マニアではないようだとトピアはカミールの評価を上方修正した。
カミールから見れば突然遺跡が活性化したかと思えば異邦人がやって来て見たこともない遺物を気軽に陳列し、しかもその遺物には時代を進めて文明を広める使命を果たせとまで書いてあるのだ。これで何も気付かないようであれば大分愚鈍であろう。
しかしクラフトピアの住民は水辺で放っておけば勝手に水没して死んでしまうこともあるくらいなので、トピアはクラフトピア住民の知能をあまり信用していなかった。これが仮にラリーの所の住民だったとしても襲撃中に勝手に扉を開けて開けっぱなしで死んでしまうような知能水準なのでどちらにしろ信用できない。
なので並以上の知能があるというだけでも評価が高くなってしまうのだった。
カミール「ならば話は早い。文明を進めて普及させたいキミと、持論を証明したいワタシ。利害が一致するんじゃないかい?」
カミールはトピアの肩から手を離して右側に回り込むと、左手で右肘を抱え、右手で眼鏡を上げながら協力を提言し始めた。
ポーズ的には左腕の上辺りの起伏に存在感が足りないのがやや残念に見えた。
トピア「ええ、遺跡を復旧させないと仕事が進みませんのでそういうことになりますね。ただ状況が切迫してますので、かなり急ぐことになりますが」
カミール「状況? ああ、さっきみたいな化け物が出てくるってことかい?」
トピア「あー……あれも状況の一端ではあるんですが、端的に言うとこの星の裏側はBETAという異星からの侵略者にほぼ征服されています。それを撃退し駆逐する為に今生産力と戦力を整えているところです」
カミール「星の裏側? もしや地動説のことを言ってるのかい? 古代文明の学説によると天動説が正しいとなっていたはずだけど?」
なるほど、古代文明がレガシーワールドのことだとすれば、島ごとに世界が区切られていたので地動説の入り込む余地が無いことになる。こんなところで足を引っ張らなくても、とトピアは内心頭を抱えた。
トピア「えーまあ、その辺りは後で資料を見て納得していただくとして、問題はここから12,000kmほど離れるとそこはBETAの天下になっているということです。放っておけば連中はこの星から資源を掘り尽くし、遭遇した生命体を殺し尽くします」
カミール「……それはまた随分と物騒な連中だね?」
この星は狙われているどころの騒ぎではない。既に半分近く征服されているのだ。知っている世界が狭いカミールには想像が及ばないが、放っておくと不味そうなことはひとまず理解出来た。
トピア「というわけで、あまりのんびりしている暇はありませんので、可及的速やかにワールドLv8に到達しようと思います。ご協力お願い致します。あ、鍛冶屋のファーガスって人を知りません?」
カミール「うん、宜しく頼むよ。しかしファーガスか……うーん知らないね。ワタシの他に集落の外の人を知ってそうなのは商人のスミスくらいかな」
カミールはちらりと集落に視線を送りながらそう答えた。
トピア「あ、商人スミスはいるんですね。後で
トピアが石と銅のコンソールパネルに歩み寄ると、まずその上に『ギーザ台地の塔[建設中0/3]』とポップアップが表示された。やはりここから塔の建設が始まる流れらしい。
そのコンソールに手を触れると、選択肢が表示された。『ファストトラベル』と『楔の塔を復旧』だ。これが時代の祭壇で示された楔の塔であることが確定したが、トピアが気になったのはファストトラベルの方だ。恐らく転移の祭壇に代わるワープ機能があるのだろう。
トピアがファストトラベルを選択すると周辺マップが表示されたが、移動先の選択肢となるような施設は全く無い。
カミール「ああ、ファストトラベルの地図を見てるのかい? それ選択肢が全く無いだろう? 恐らくは移動先の施設も起動しないといけないのではと睨んでいるところだよ」
トピア「多分そんなところでしょうね」
ならばとトピアはマップをどんどん縮小して広い範囲が表示されるようにしてみた。表示範囲が湖の端に到達して遙か北のユグドラシルとコアベースも画面内に入ったが、ポータルやテレポーターは移動先として候補に表示されないようで一安心だ。何が一安心かと言えば、野ざらしのワープ施設が本拠地直通になってしまったら非常に困るということだ。最悪塔を一つ一つ壁で囲って閉鎖していくことになる。まあポータルは門の内側に空間接続ゲートを開く方式だし、テレポーターは有線接続なので、その仕様上繋がる可能性は低かったが。
カミール「そうそう、この地図すごく広範囲を表示できるようになってるよね。この大地をとりまく巨大湖がこんな形になってるなんてワタシも今日知ったところだよ。湖にしてはあまりに広いから、内陸にあるものを湖と呼んで外側は海と呼ぶ人が多いんだけどね」
トピア「これ世界最大の湖だそうですよ」
カミール「ほう、世界最大! 海呼ばわりされるだけのことはあるんだね」
会話しつつもトピアは「楔の塔を復旧」メニューの方を確認していく。見たところ『石』×50、『砂』×10、『原木』×50を納品すれば3段階のうち1段階の建築が進むようだ。どれもこれも初期に使う素材ばかりだ。
自分で引き連れてきた
となるとBETA勢力圏からの距離は修正後のスタート地点と大差無いのだが、赤道直下の方が軌道エレベーター的にもラリーのイベント的にも都合が良いのでそうなったのだろうか。
それはそうと、時代の祭壇でLv7に進めるまで塔が起動しなかったのは何故だろう。いや、侵略者のせいで世界が不安定化していたからか。だからまずは時代の祭壇で行き着くところまで
それはともかく、一つ気になったことをトピアは質問してみた。
トピア「この最初の納品って簡単に出来そうですけど、やってみました?」
以前のように時代の祭壇を
カミール「いや、やってみようとは思ったんだけどまだ素材が集まってないんだ」
トピア「足りないのは何ですか?」
カミール「原木があと30ほど」
トピア「分かりました」
トピアは近くの木に駆け寄ると装備とスキルセットを変更して素手で殴りつけ、木こりの目利きであっという間に必要数の原木を揃えた。
トピア「どうぞ」
カミール「木を切らずに原木を採取した……!?」
トピア「フフフ、師匠直伝の森林資源活用法です」
カミール「切り株を残しておけばまたすぐに生えてくるのに効率のためにそこまでするのか」
トピア「……この辺りの木はまた生えてくるんですか?」
カミール「ああ、夜が明けるたびに生えるぞ。ワタシが苦労していたのはどちらかと言うと切り倒すための労力の問題だな。石斧は切れ味が悪くてな……」
トピアは試しに近くの大木を 灰燼に帰す ファーヴニルの 危険な 炎の悪魔の プラチナの斧で切り倒してみた。確かに以前と違って切り株が残るようになっている。だが樹木1本当たりの原木入手量が少ない。これならばやはり木こりの目利きスキルを使った方が効率が良いだろうとトピアは結論づけた。
トピア「木材の調達については色々と語りたいところですが、ともかく建築を実行してみてください」
カミール「わ、分かったよ」
トピアに必要数の原木を手渡されたカミールは、楔の塔のコンソールを操作して納品を試みた。