【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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078. それは死ぬんじゃないのかい!?

 楔の塔のまるで罠のような仕組みのせいでカミールが一度登った塔から降りられない猫のような状態になったため、トピアが助け船を出すことになった。

 

トピア「えー、そうですね。カミールさんがここから下に降りるには6つほど手段があります」

 

カミール「6つも思いついたのかい? 流石はクラフトピアンだね」

 

トピア「まず1つ目。普通に落下してダメージを受けた分をポーションで回復します」

 

カミール「ダメージを受ける前提で!? それは死ぬんじゃないのかい!?」

 

 のっけから単なる飛び降りという酷い選択肢にカミールは瞠目した。

 

トピア「いえ、落下ダメージは最大ライフに対する割合計算なのでライフ満タンなら158m以内の落下で死にはしません。ここの高さは100mほどなので1/3くらいはライフが残るでしょう。ヨユーヨユー」

 

 これは理想郷の建設者(クラフトピアン)達が身を挺して導出した落下ダメージ計算式である。つまり実際に飛び降りてダメージを計測したわけで、全く以て正気の沙汰ではないが信頼性は高い。

 

カミール「ほ、本当かい……? だとしても他に選択肢があるのなら選びたくはないものだね。ポーションも勿体ないし」

 

 どうもポーション勿体ない精神の比率が高そうだったので、トピアは「飛び降りたら回復分提供に加えて更に追加のハイポーション進呈!」というアイディアを思いついたが、背景に「ざわ……」が湧きそうな外道行為で無駄に協力者の信頼を損ねるのも宜しくないので自重した。

 

トピア「では2つ目です。ここから下に向けて坂もしくは階段を設置していきます。このように」

 

 トピアは塔の頂上から下に向けて金属製の階段を2ブロックほど設置してみせた。

 

カミール「おお、空中に階段が。これもクラフトピアンの権能かい? ただここからまっすぐ階段を下ろすと行き先がそこの湖の中になりそうだね?」

 

 ここで言う湖とは半島を取り巻く巨大湖のことではなく、楔の塔と集落の間にある小さな湖のことである。

 

トピア「ですね。まあ水上に床を敷いていけばどうにでもなりますが。次に3つ目。この場でグライダーを作るので、使い方を身につけてもらいます」

 

カミール「この場で……? 練習するにはちょっと足場が狭すぎないかい?」

 

 塔の屋上の直径は20mほど。立って歩くには不便しないが、飛行訓練をするにはあまりにも狭すぎる。

 

トピア「まあそうですよね。とりあえずグライダーは今作ったので渡しておきます」

 

カミール「仕事が早いね、ありがとう」

 

 トピアは話しながら作業台を出して早くもグライダーを組み立てていた。

 

トピア「次に4つ目。私が地上の転移先を確保してからそこに移動してもらいます」

 

カミール「確実性が高そうなプランだけど、手間がかかるんじゃないのかい?」

 

トピア「いえ、ファストトラベルの地図には出てませんが、個人用のマップには未解放の再起の剣やらワープポータルの所在が表示されてますので、それほどは掛からないと思います」

 

カミール「そうなのかい」

 

トピア「それから5つ目ですが、ここにポータルを設置します」

 

カミール「うん? それは今言ってたワープポータルとは違うのかい?」

 

トピア「実物はこれです。クラフトピアとは全く別の文明の産物ですね。起動まで20分かかりますが、ここから700kmほど北の我々の本拠地に繋がります」

 

 トピアは塔の北側にSFな屋根を伸ばして落下防止のためにSFな窓で囲み、上をSFな屋根で塞いだ後にその真ん中にポータルを設置してみせた。

 

カミール「情報が多い! 全く別の文明? それに我々とは? いやその前に700kmほど北と言ったね? もしかしてあの突如現れた北のミハシラもキミ達のかい?」

 

 カミールは遥か北にかすかに見えている上下一直線の構造物を指さして問うた。

 

トピア「はい、BETAを駆逐する為に別々の世界から集められた七人の(マイスター)達が結成した組織、それが我々匠衆(マイスターズ)です。なので色んな文明の産物を相互に利用しているわけです。北のミハシラというのは軌道エレベーターのことだと思いますが、あれも協力関係にある異文明の産物です」

 

カミール「また話が大きくなってきたねえ」

 

トピア「ちなみにこのポータルは元々私の帰り道として設置する予定でした。つまり勝手に通行されると不味いので一旦壁で塞いで密室にします」

 

 トピアはポータルを設置した仮拠点の入口をSFな窓で完全に塞いで誰も入れないようにした。使用する際に撤去する形だ。

 

カミール「まあ本拠地直通ともなればそうなるか」

 

トピア「そして最後の6つ目ですが……あ、ちょっと待ってください」

 

 トピアの目の前にいつものミッション達成ログが飛び出した。

 

外敵駆除

スケルトロン(Skeletron)を1体倒す

Clear

Get!

EXP +2,000

レベル上限解放 +1

 

 恐らくラリーがやったのだろう。ラリーの装備も問題無さそうだ。

 

カミール「ふむ、どうした?」

 

トピア「失礼しました。別の仲間が討伐を達成した通知が来ましたので」

 

カミール「そういうのもあるのか」

 

トピア「それはともかく6つ目でしたね」

 

 トピアは塔の東側にSFな屋根を10パネル×10パネル敷き詰めて50m×50mのスペースを作った。そしてその上にコアユニット・ガンマを出した。ガンマに垂直離着陸機能があることを利用して、簡易的な発着場にしたわけだ。

 

トピア「ヘーイ彼女ォ乗ってかなーい?」

 

カミール「乗る乗る! 是非間近で見せてくれたまえ!」

 

 トピアが親指を立ててナンパ風の台詞で空のドライブに誘うと、カミールは即座に飛びついた。

 

カミール「いやいや、これが一番の謎だったんだよ。一体これは何なんだい? 古代の資料にもこんなのは影も形も無かったぞ?」

 

トピア「これもまた別の異文明の産物で、コアユニット・ガンマという空飛ぶ建設機械です」

 

カミール「空飛ぶ建設機械? さっき化け物を倒してなかったかい?」

 

トピア「自衛用の武装に予想以上に威力がありました」

 

カミール「あれで自衛用なのかい……とんでもないね異文明」

 

トピア「それぞれ特徴があって面白いですよね」

 

カミール「全くだよ」

 

トピア「それで、これからこのガンマで台地を回って特産素材を一通り採取してまたここに戻ってきますけど、帰ってくるまで待ってます?」

 

 トピアは後部のサブシートを軽く叩いてカミールの意志を問うた。

 コアユニットは全長20m級の機体なので、二人分のシートを据え付けるくらいの余裕はあるのだ。尤も通常の惑星争奪戦で使われているのは遠隔操作専用の無人仕様であり、目の前のこれはオプションの操縦席とサブシートを追加設置した形だが。何故そんなオプションがあるのかと言えば、要するに負けた時の脱出用である。

 

カミール「いや、乗るよ。得がたい機会だからね」

 

 カミールは迷わず乗り込んでシートに座ると、ガンマの機能を確認し始めた。

 

カミール「……おお、足元が透明になっているんだね。それに前のシートの後ろには周辺の地形まで表示されている。これは探索にも便利そうだ」

 

 カミールが言うように後部シートは前部シートの後ろにマップ用ディスプレイが配置されているが、前部シートのマップ用ディスプレイは極力視界を遮らないように膝の上に配置されている。パイロットが座った後にアームで支えられたディスプレイが定位置に出てくる形だ。

 

トピア「地上に設備を建設していくのが本来の用法ですからね。まあ私は移動用に使ってるんですけど。そろそろ離陸するのでシートベルトつけてください」

 

カミール「シートベルト? ああ、横にあるこれかい? 確か古代文明では乗り物に乗る時にこれをつけてないと世にも恐ろしい懲罰を受けるんだったね?」

 

トピア「……それも一側面ですが、メインは安全確保のためです」

 

 懲罰を受けたくないからルールを守るというのも事実ではあるのだが、カミールが調べた資料にはそもそもの存在意義についての情報が抜け落ちているようだった。

 

カミール「分かったよ」

 

 トピアがシートベルトの存在意義を言い含めると、カミールは金具の構造を観察するのをやめて大人しくシートベルトを装着した。

 

トピア「では離陸します。まずは東の『アイアンウッド』から行きますね」

 

 トピアがツインスティックを左右に開くとガンマが素早く垂直離陸し、両スティックを前に傾けると前進し始めた。

 

カミール「おお、飛んでる、ワタシ今飛んでるよ!? これは記念すべき出来事だね!」

 

 初めての飛行機にカミールは大興奮であった。

 

 

 それから1分もかからずトピア達はアイアンウッドの採取ポイントに到着。台地の地形は起伏が激しく、徒歩で到達するには何十倍もの時間が掛かったことだろう。

 

トピア「じゃあ行ってきます」

 

カミール「行ってらっしゃい……でいいのかい? この場合」

 

 ガンマを空中待機させてそこから平然と飛び降りる形でトピアは採取を開始した。落下しながらカミールに手を振るくらいの余裕である。

 採取ポイントの周囲にはモノ、ゴブリン、グレムリンといったモンスターがおり、グレムリンの中でも大盾を構えたタイプはややダメージが通りにくかったが、従来のフルエンチャントから更に2.61倍強化された機動軽槍兵の装(フォーム・スピーディー・スピアマン)Mk.5が序盤のMOBに苦戦するはずもなく、例外なく一突きで討ち滅ぼしていった。

 トピアはグレムリンを初めて見たが、ゴブリンも以前とはデザインがかなり違っており、以前に比べると頭身が低くて大分可愛い感じになっていた。それに対してモノは相変わらずの無駄が無い容姿で、実家のような安心感があった。トピアも師匠が採用したこのモノボディの高いデザイン性に関しては女神的存在を認めざるを得ないところだ。

 アイアンウッドの伐採は、獄炎木の伐採にも使った灰燼に帰す ファーヴニルの 危険な 炎の悪魔の プラチナの斧で問題なく遂行できた。

 敵対MOBと採取に関しては何ら問題にならなかったのだが、トピアは探索中に見慣れないアイテムを拾った。中にクラフトピアの紋章が輝く黄色い光球だ。進化のカギと同じ『だいじなもの』カテゴリに入るこれはソウルオーブという名前らしく、説明にはこう書いてある。

 

――アヌビスの魂が込められたオーブ。多くのオーブが各地へ散っているが、かつて君達が手にかけたアヌビスの魂の数に比べれば極僅かなようだ。

 

 仰る通り理想郷の建設者(クラフトピアン)達がアヌビス神を手にかけた数はそれこそ数え切れないほどである。それはそれとしてこれは持ち帰ってアヌビス神に訊いてみようとトピアは心にメモをした。

 そして採集作業を再開したトピアだが、数分もしないうちにまた見覚えの無いものを発見してしまった。

 

トピア「修羅の試練……とは?」

 

 円柱を重ねた形の祭壇の上に赤い結晶が浮いており、近寄ってみると『修羅の試練』という名前が浮かび上がってきたのだ。トピアが試しにアクセスしてみると、60秒のカウントダウンが始まり、周囲に敵対MOBがポップし始めた。自然ポップのMOBよりは若干強いかなという程度の敵を手早く撃滅しポップ待ちで若干の待ち時間を持て余しながらも試練を終えると、終了と同時に成長の石板が1つ入手出来た。この成長の石板もインベントリの『だいじなもの』カテゴリに入った。

 試練を終えると結晶は緑色に変わってしまい、再挑戦出来る気配は無い。

 

トピア「え、まさかこっちの世界では試練を探して一つ一つこなして石板を手に入れろっていう……?」

 

 時間制限無しでのんびり進めるなら全部こなすのもやぶさかではないが、何しろ今はBETAとの戦争準備中である。こんなものをやっている暇は無いのだ。

 そして女神的存在の意図をメタ読みすると、成長の石板には新しくこのような入手手段を用意したのだから従来の供給源であった原木おじさんこと鍛冶屋ファーガスは要らないな、となるはずである。奴ならまず間違いなくそうする。

 トピアはファーガスを持ち込みリストに入れていなかったことを少し後悔した。

 

 『アイアンウッド』の採取ポイントの近くにワープポータルがあったので、トピアはこれを開放した。台座の上に立てたリング状の構造物が乗っていてその内側に時空の歪みが出来るタイプだ。ゲートを通過する形式なのでコア由来のポータルと繋がってないか一応マップで確認したが、幸い互換性は無いようだった。同じクラフトピア由来の台地の塔とは普通に往来できた。どうやらこれが従来の転移の祭壇の代わりなのだろう。

 

 素材自体は問題なく必要数プラスアルファを集め終わったトピアは、ジェットパックでガンマに飛び乗って次の採取ポイントへと向かった。

 

 その後たまにソウルオーブを拾いつつ、トピアは『台地のムーンストーン』、『クローバー』、『台地の古代人形の破片』の採取をこなした。

 最後の採取ポイントの直近に再起の剣があったので、トピアはこれに触れて起動した。どうもリポップポイントを更新する装置のようだが、この安定していない世界でリポップが可能かどうかは試してみる気になれないので、当面使う用事は無いことになる。

 また、『修羅の試練』の他にも空中の的を射貫いていく『狙撃の試練』や空中の結晶を拾い集める『滑空の試練』というのも見つけたが、どれもこれも『修羅の試練』より手間の掛かるものであった。やはり限られた時間で成長の石板を必要数集めるのは厳しいと言わざるを得ない。

 

 これらの用事を一通りこなしたトピアはまたガンマに飛び乗ってカミールととも台地の塔へと戻……る前に、近場で見かけたアヌビス神殿に立ち寄ることにした。

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